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第24話 言葉に出来ない気持ち
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ライト様の料理が運ばれてきたので、ライト様は自分の席に移動されました。
ライト様が前菜を食べ終えられたところで話しかけます。
「あの方はそんなにも私に嫌がらせをしたいのでしょうか?」
「本人はそのつもりはないだろう。ただ、君に会いたいだけだろうな」
「迷惑なんですけれど?」
「君は会う事を望んでいないと伝えたが、本人が納得しないんだ。実際に会って話し合えばわかる話だから君ととにかく話をさせてくれと言うんだ」
「話し合えばわかる話って何なのでしょうか…」
全く内容が思い浮かばなくて眉を寄せると、ライト様も首を傾げます。
「俺だってわからない。ただ、自信があるみたいだな。急に俺の元にやって来て、君と話をさせろと命令してきた」
「お仕事中にご迷惑をかけてしまったのですね…。申し訳ございません」
「君が謝る事じゃないだろう。勝手に押しかけてきたのは向こうだ」
「私がライト様の妻でなければ、そんな事は起こりませんでしたのに」
「君を妻にと差し出してきたのは向こうなんだ。君が気にする必要はない」
「……そうでしたね。ここでの居心地が良すぎて、そんな事をすっかり忘れてしまっておりました」
苦笑すると、ライト様はホッとした様な顔をされます。
「今の暮らしを気に入ってくれているなら良かった。先程の話に戻るが、話し合いをして君が俺と別れたいと言い出せば素直に別れるようにとも言ってきたから、アバホカ陛下は君とよりを戻したいようだ」
「私がライト様と別れて、陛下の元に帰る事なんて絶対にありないんですが…。しかもよりを戻すも何も始まってもいません」
「話が通じない人だよ。言葉遣いも汚いというよりかは酷いよな。あと、気になったんだが、君の兄上を人質にとったりする様な事はないよな?」
「…あの方なら、誰かを人質に取ろうとする事はありえますが…」
そう言われると少し不安になってきました。
お兄様は侯爵の座についてはいますが、若いですし味方もあまりいないと思われます。
ですから、あれに脅された時には味方になってくれる人はいないかもしれません…。
「あの、ライト様…、もし、お兄様に何かあった時は…」
「君の兄は良い人だろう? だから、何かあった時は心配するな。俺が間に入る」
「……ありがとうございます」
考えてみたら、私はとても素敵な旦那様に恵まれたのですね…。
フローレンス様も大人しく浮気などせずにおられたら、ライト様と結婚できて幸せになれたのに…。
そう思うと、また胸が痛くなりました。
お医者様に相談しても大丈夫だと診断していただいたのに…。
「リーシャ、どうかしたのか?」
「いえ、何でもありません」
ライト様が心配そうな顔をされるので、どう答えたら良いか迷っていると、キヤセワさんが声を掛けてくれます。
「すっかり、お料理が冷めてしまいましたので温め直させましょう。気が利かずに申し訳ございませんでした」
「……え?」
私が不思議そうにすると、キヤセワさんは優しい笑みを浮かべてくれました。
ああ、なんて気遣いの出来る方なんでしょう。
私が浮かない顔をしていたのを、そうではないとわかっていながらも料理が冷めてしまったせいにしてくれたみたいです。
この気持ちをライト様には素直に伝えられないので、本当に助かりました。
「そうですね。申し訳ありませんがお願いします」
「とんでもございません」
キヤセワさんが近くのメイドに視線を送ると、メイドはサービングカートを持ってきて、私の目の前に置かれていた皿を運んでいってくれました。
「……」
ライト様はその様子を見て何か言いたげな顔をされましたが、話題を変えてくださり、私が食べ終わるまで席は立たずに待って下さったのでした。
その日の晩、あれの話が途中だった事に気が付いた時のは、おやすみなさいの挨拶をした後でした。
何だか寝つけなくて寝返りを打っていると、ライト様が話しかけてこられました。
「眠れないのか?」
「……申し訳ございません。寝返りが気になりますか?」
「いや。ただ、肝心な話が出来ていなかったから…」
「あれが屋敷に来るという件ですね」
「そうだ。どうしても婚約者に会いたいとうるさいんだ。もう、元婚約者なのにな」
部屋の明かりがついていないのと、目が暗闇になれていないせいか、ライト様がどんな顔をしているかはわかりませんが、どこかうんざりした声が聞こえてきました。
「招待するしかないのですよね…?」
「断る理由がないからな」
「ですよね…」
「しかも建前だけかもしれないが、部下達がいる前で、リーシャ様に謝りたいと言っている以上、断るわけにもいかないだろ」
「私が会いたくないと言っても、相手は国王陛下ですからね」
「そういう事だ…。本当にすまない。ただこれだけは約束する。2人きりにだけは絶対にさせない」
ライト様がこちらの方に体を向けた気がして、私もライト様の方に体を向けると、目がなれてきたのと月明かりのせいで、ライト様と目があったのがわかりました。
すると、ライト様がこちらに手を伸ばしてきたので、私はゆっくりと起き上がり、自分のベッドからライト様のベッドに移動しました。
なぜ、そうしたのかは、自分でもわかりません。
ただ、勝手に体が動いたとしか言いようがないです。
私が寝転ぶと、無言でライト様は私の事を抱きしめてくださいました。
ドキドキよりも、なぜかホッとしてしまい、目を閉じた後は、知らない間に眠ってしまっていたのでした。
ーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただき、ありがとうございます!
こちらの作品も終わりが見えてきましたので、新作「彼女を選んだのはあなたです」を投稿いたしました。
「聖女もの」でもあり「学園もの」でもあり、相変わらずクズが出ますが、ご興味ありましたら読んでいただけますと嬉しいです。
(拙作の他作品を読んでくださっている方には2度目の報告になり申し訳ございません)
ライト様が前菜を食べ終えられたところで話しかけます。
「あの方はそんなにも私に嫌がらせをしたいのでしょうか?」
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「話し合えばわかる話って何なのでしょうか…」
全く内容が思い浮かばなくて眉を寄せると、ライト様も首を傾げます。
「俺だってわからない。ただ、自信があるみたいだな。急に俺の元にやって来て、君と話をさせろと命令してきた」
「お仕事中にご迷惑をかけてしまったのですね…。申し訳ございません」
「君が謝る事じゃないだろう。勝手に押しかけてきたのは向こうだ」
「私がライト様の妻でなければ、そんな事は起こりませんでしたのに」
「君を妻にと差し出してきたのは向こうなんだ。君が気にする必要はない」
「……そうでしたね。ここでの居心地が良すぎて、そんな事をすっかり忘れてしまっておりました」
苦笑すると、ライト様はホッとした様な顔をされます。
「今の暮らしを気に入ってくれているなら良かった。先程の話に戻るが、話し合いをして君が俺と別れたいと言い出せば素直に別れるようにとも言ってきたから、アバホカ陛下は君とよりを戻したいようだ」
「私がライト様と別れて、陛下の元に帰る事なんて絶対にありないんですが…。しかもよりを戻すも何も始まってもいません」
「話が通じない人だよ。言葉遣いも汚いというよりかは酷いよな。あと、気になったんだが、君の兄上を人質にとったりする様な事はないよな?」
「…あの方なら、誰かを人質に取ろうとする事はありえますが…」
そう言われると少し不安になってきました。
お兄様は侯爵の座についてはいますが、若いですし味方もあまりいないと思われます。
ですから、あれに脅された時には味方になってくれる人はいないかもしれません…。
「あの、ライト様…、もし、お兄様に何かあった時は…」
「君の兄は良い人だろう? だから、何かあった時は心配するな。俺が間に入る」
「……ありがとうございます」
考えてみたら、私はとても素敵な旦那様に恵まれたのですね…。
フローレンス様も大人しく浮気などせずにおられたら、ライト様と結婚できて幸せになれたのに…。
そう思うと、また胸が痛くなりました。
お医者様に相談しても大丈夫だと診断していただいたのに…。
「リーシャ、どうかしたのか?」
「いえ、何でもありません」
ライト様が心配そうな顔をされるので、どう答えたら良いか迷っていると、キヤセワさんが声を掛けてくれます。
「すっかり、お料理が冷めてしまいましたので温め直させましょう。気が利かずに申し訳ございませんでした」
「……え?」
私が不思議そうにすると、キヤセワさんは優しい笑みを浮かべてくれました。
ああ、なんて気遣いの出来る方なんでしょう。
私が浮かない顔をしていたのを、そうではないとわかっていながらも料理が冷めてしまったせいにしてくれたみたいです。
この気持ちをライト様には素直に伝えられないので、本当に助かりました。
「そうですね。申し訳ありませんがお願いします」
「とんでもございません」
キヤセワさんが近くのメイドに視線を送ると、メイドはサービングカートを持ってきて、私の目の前に置かれていた皿を運んでいってくれました。
「……」
ライト様はその様子を見て何か言いたげな顔をされましたが、話題を変えてくださり、私が食べ終わるまで席は立たずに待って下さったのでした。
その日の晩、あれの話が途中だった事に気が付いた時のは、おやすみなさいの挨拶をした後でした。
何だか寝つけなくて寝返りを打っていると、ライト様が話しかけてこられました。
「眠れないのか?」
「……申し訳ございません。寝返りが気になりますか?」
「いや。ただ、肝心な話が出来ていなかったから…」
「あれが屋敷に来るという件ですね」
「そうだ。どうしても婚約者に会いたいとうるさいんだ。もう、元婚約者なのにな」
部屋の明かりがついていないのと、目が暗闇になれていないせいか、ライト様がどんな顔をしているかはわかりませんが、どこかうんざりした声が聞こえてきました。
「招待するしかないのですよね…?」
「断る理由がないからな」
「ですよね…」
「しかも建前だけかもしれないが、部下達がいる前で、リーシャ様に謝りたいと言っている以上、断るわけにもいかないだろ」
「私が会いたくないと言っても、相手は国王陛下ですからね」
「そういう事だ…。本当にすまない。ただこれだけは約束する。2人きりにだけは絶対にさせない」
ライト様がこちらの方に体を向けた気がして、私もライト様の方に体を向けると、目がなれてきたのと月明かりのせいで、ライト様と目があったのがわかりました。
すると、ライト様がこちらに手を伸ばしてきたので、私はゆっくりと起き上がり、自分のベッドからライト様のベッドに移動しました。
なぜ、そうしたのかは、自分でもわかりません。
ただ、勝手に体が動いたとしか言いようがないです。
私が寝転ぶと、無言でライト様は私の事を抱きしめてくださいました。
ドキドキよりも、なぜかホッとしてしまい、目を閉じた後は、知らない間に眠ってしまっていたのでした。
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