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第20話 ビリーの悲鳴
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あの後すぐはドキドキして中々眠れなかったのですが、ライト様の寝息が聞こえ始めた頃にはドキドキも落ち着いて、気が付いた時には眠ってしまっておりました。
そして、朝、目を覚ました時にはライト様はすでに起きておられました。
「おはよう。起こしてしまったか?」
いつもはライト様が先に起きられても目を覚まさないのですが、やはり同じベッドで寝ている為、動くとベッドが軋んだりするからでしょうか、今日は目を覚ましてしまいました。
「おはようございます」
寝ぼけ眼で体を起こすと、ライト様が口元に笑みを浮かべます。
「すごい寝癖だな」
そう言った後、ライト様が目の前でシャツを脱ぎ、上半身裸になったのです。
「ひゃあっ!」
思わず声を上げて体を背けると、ライト様の苦笑する声が聞こえました。
「服を脱いだだけだぞ」
「で、ですが!」
一瞬見えただけですが、腕だけでなくお腹にも筋肉がついておられて私の体とは全然違いました。
いつもは自分の部屋で着替えられていますが、今日は自分の部屋というものがないからか、この場で着替えようとされているようです。
「着替えたらすぐに出ていくから安心してくれ。君はまだ眠っていていいから」
そう言われて近くにあった時計を見ると、外はもう明るいですがまだ早朝でした。
いつもなら寝ている時間です。
「どこかへ行かれるのですか?」
「出かけるんじゃない。朝の日課をするだけだ」
ライト様がいう朝の日課とは剣の鍛練の事ですから、私ではお付き合いできませんので部屋から出ていかれる際に、起き上がってお見送りします。
「無理はなさらないようにして下さいね」
「わかってる。一眠りしてくれたらいいが、起きたら、今日はどこに行きたいか、もしくは何をしたいか考えておいてくれ」
そう言って、私が顔を背けている間に服に着替え終えたライト様は、私の頭を撫でたあと部屋を出ていってしまわれたのでした。
その後にベッドの上でひたすら考えましたが、特に何も思い浮かばなかったので、この近くにある有名な湖にピクニックに行こうかと考えたのでした。
時にはライト様だって休養が必要なはずです。
朝食に向かう前に調理場に顔を出し、ピクニックに行きたいのだけれど、持っていく食べ物を作ってもらえないかとお願いすると、急なお願いにも関わらず、サンドイッチを作ると快く言ってくれました。
その事に何度も感謝の言葉を述べると、見た目がコワモテの料理長のゴデウスさんは気難しそうな表情を緩めて言います。
「せっかくの新婚旅行なのですから、奥様と旦那様に楽しんでいただきたいんです。出来る事は何でもさせていただきます」
「ありがとうございます!」
お礼を言うと、デゴウスさんは笑顔を見せてくださいました。
考えてみたら、デゴウスさんだって一見、怖そうな顔をされていますが、今の様に笑顔を見せてくださったら、怖いだなんて感じませんでした。
という事はやはり笑ってみたら、怖さも軽減するかもしれません。
考えてみたら、ライト様の笑顔を見た事がありませんから、ぜひ笑っていただきたいです。
そんな風に思っていましたのに…。
ライト様が朝食の時間になってもいらっしゃらず、ダイニングルームの窓から外を眺めた時でした。
かすかに誰かの叫び声が聞こえた気がしました。
窓を開けて確認してみると、どこからかはわかりませんが、静かな森の中だからでしょうか。
はっきりと声だけは聞こえてきます。
「お願いします! 娘に会わせて下さい! 本当に後悔しているんです! あんなに幼い娘になんて仕打ちをしたのだろうかと!」
屋敷と門扉の間には木々があり、ここからは見えませんが、どうやらその付近で誰かとビリーが話をしている様です。
「あなたとリーシャを会わせるつもりはない。後悔だけなら勝手にしろ。どうせ反省などしてないんだろう!」
「いいえ! 反省しているから娘に会いたいのです! お願いします! 会えば娘もわかってくれます!」
「ふざけた事を言うな。それ以上言ったら……」
その先の言葉は声がいきなり小さくなった為聞こえませんでした。
ですが、すぐにビリーの悲鳴が聞こえました。
「ぎゃあああ! 助けて! 助けて下さい! まだ死にたく」
ビリーの叫びの途中で近くにいたキヤセワさんが慌てて窓をしめます。
「奥様、旦那様はお取り込み中のようですから、先に朝食をお取りになられますか?」
「あの、何か絶叫が…」
「何かあったのかもしれませんが、奥様は気にされなくて良いかと思われます」
キヤセワさんがニコニコして言うと、近くにいたメイドも笑顔で私の席の椅子をひいてくれました。
何も聞かずに座って先に朝食を…という事なのでしょうね。
さ、さすがに殺したりはしていませんよね…?
ビリーがどうなっても良いとは思いますが、屋敷に訪ねてきただけで殺されるのはちょっと可哀想な気がします。
正直、何があったのか気になって食事が進むとは思えませんが、キヤセワさん達にすすめられるがまま、朝食をとる事にしたのでした。
そして、朝、目を覚ました時にはライト様はすでに起きておられました。
「おはよう。起こしてしまったか?」
いつもはライト様が先に起きられても目を覚まさないのですが、やはり同じベッドで寝ている為、動くとベッドが軋んだりするからでしょうか、今日は目を覚ましてしまいました。
「おはようございます」
寝ぼけ眼で体を起こすと、ライト様が口元に笑みを浮かべます。
「すごい寝癖だな」
そう言った後、ライト様が目の前でシャツを脱ぎ、上半身裸になったのです。
「ひゃあっ!」
思わず声を上げて体を背けると、ライト様の苦笑する声が聞こえました。
「服を脱いだだけだぞ」
「で、ですが!」
一瞬見えただけですが、腕だけでなくお腹にも筋肉がついておられて私の体とは全然違いました。
いつもは自分の部屋で着替えられていますが、今日は自分の部屋というものがないからか、この場で着替えようとされているようです。
「着替えたらすぐに出ていくから安心してくれ。君はまだ眠っていていいから」
そう言われて近くにあった時計を見ると、外はもう明るいですがまだ早朝でした。
いつもなら寝ている時間です。
「どこかへ行かれるのですか?」
「出かけるんじゃない。朝の日課をするだけだ」
ライト様がいう朝の日課とは剣の鍛練の事ですから、私ではお付き合いできませんので部屋から出ていかれる際に、起き上がってお見送りします。
「無理はなさらないようにして下さいね」
「わかってる。一眠りしてくれたらいいが、起きたら、今日はどこに行きたいか、もしくは何をしたいか考えておいてくれ」
そう言って、私が顔を背けている間に服に着替え終えたライト様は、私の頭を撫でたあと部屋を出ていってしまわれたのでした。
その後にベッドの上でひたすら考えましたが、特に何も思い浮かばなかったので、この近くにある有名な湖にピクニックに行こうかと考えたのでした。
時にはライト様だって休養が必要なはずです。
朝食に向かう前に調理場に顔を出し、ピクニックに行きたいのだけれど、持っていく食べ物を作ってもらえないかとお願いすると、急なお願いにも関わらず、サンドイッチを作ると快く言ってくれました。
その事に何度も感謝の言葉を述べると、見た目がコワモテの料理長のゴデウスさんは気難しそうな表情を緩めて言います。
「せっかくの新婚旅行なのですから、奥様と旦那様に楽しんでいただきたいんです。出来る事は何でもさせていただきます」
「ありがとうございます!」
お礼を言うと、デゴウスさんは笑顔を見せてくださいました。
考えてみたら、デゴウスさんだって一見、怖そうな顔をされていますが、今の様に笑顔を見せてくださったら、怖いだなんて感じませんでした。
という事はやはり笑ってみたら、怖さも軽減するかもしれません。
考えてみたら、ライト様の笑顔を見た事がありませんから、ぜひ笑っていただきたいです。
そんな風に思っていましたのに…。
ライト様が朝食の時間になってもいらっしゃらず、ダイニングルームの窓から外を眺めた時でした。
かすかに誰かの叫び声が聞こえた気がしました。
窓を開けて確認してみると、どこからかはわかりませんが、静かな森の中だからでしょうか。
はっきりと声だけは聞こえてきます。
「お願いします! 娘に会わせて下さい! 本当に後悔しているんです! あんなに幼い娘になんて仕打ちをしたのだろうかと!」
屋敷と門扉の間には木々があり、ここからは見えませんが、どうやらその付近で誰かとビリーが話をしている様です。
「あなたとリーシャを会わせるつもりはない。後悔だけなら勝手にしろ。どうせ反省などしてないんだろう!」
「いいえ! 反省しているから娘に会いたいのです! お願いします! 会えば娘もわかってくれます!」
「ふざけた事を言うな。それ以上言ったら……」
その先の言葉は声がいきなり小さくなった為聞こえませんでした。
ですが、すぐにビリーの悲鳴が聞こえました。
「ぎゃあああ! 助けて! 助けて下さい! まだ死にたく」
ビリーの叫びの途中で近くにいたキヤセワさんが慌てて窓をしめます。
「奥様、旦那様はお取り込み中のようですから、先に朝食をお取りになられますか?」
「あの、何か絶叫が…」
「何かあったのかもしれませんが、奥様は気にされなくて良いかと思われます」
キヤセワさんがニコニコして言うと、近くにいたメイドも笑顔で私の席の椅子をひいてくれました。
何も聞かずに座って先に朝食を…という事なのでしょうね。
さ、さすがに殺したりはしていませんよね…?
ビリーがどうなっても良いとは思いますが、屋敷に訪ねてきただけで殺されるのはちょっと可哀想な気がします。
正直、何があったのか気になって食事が進むとは思えませんが、キヤセワさん達にすすめられるがまま、朝食をとる事にしたのでした。
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