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第14話 お茶会への誘い
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私が屋敷の生活に慣れ、やっと公爵家の仕事を少しずつではありますが、させてもらえる様になった頃に、シーンウッドからの手紙がお兄様経由で届きました。
そこには自分が何とか元気にしている事、モナ様達も元気だという事、宰相が離縁されたという事が書かれていました。
宰相が離縁された原因は、やはり仕事をしていなかった事がバレたからだそうです。
奥様は最初は彼の事を子煩悩だから、仕事を何とか終わらせて早く帰ってきてくれていると思われていた様ですが、職場の人が減り、遅くまで帰ってこない夫を浮気かと心配して城に確認しに来た際に、部下の人達が彼の今までの所業をぶちまけたのだそうです。
もちろん、仕事の中身は明かさずに、私や皆に仕事を押し付けていたサボり癖の事を伝えた様です。
忙しさに拍車がかかっていますから、イライラする気持ちがおさえられなかったのでしょう。
それを聞いた奥様は宰相に確認し、私に謝り、許してもらえるまで帰ってくるな、もし、許してもらえなかったら離縁すると言われたのだそう。
宰相は私が国に帰れば許してくれた事になるだろうと考え、私を迎えに来た様でした。
ですが、それも失敗に終わり、自ら真相を調べた奥様から離縁状を叩きつけられたのだそうです。
そして、子供と会う条件は何年かかってでも、こき使った部下の人達に謝罪に回り許してもらう事でした。
謝罪にまわる事はできても許してもらう事は全員には難しいでしょうね。
会いたくないと言う人もたくさんいるでしょうし。
仕事の休憩時間にそんな事を考えていると、侍女がやって来て、封が切られた何通かの封筒を私に手渡してくれました。
「これは?」
「奥様宛に届けられたお茶会への招待状です。奥様は今まで夜会にも出席されておられませんでしょう? 何より結婚式だって挙げておられません!」
侍女が不満そうに言いますが、苦笑して首を横に振ります。
「結婚式をしない事については私が望んでいる事ですから気にしないで下さい。ドレスの値段を聞いて恐ろしくなりましたから」
普通のドレスもそうですが、ウエディングドレスってとてもお金がかかるのですね。
一生に一度のものかもしれませんからお金をかけるのはわからないでもないのですが、ドレスを買うお金で貧しい人に何日か分の炊き出しなどが出来そうです。
ノルドグレンと違い、アッセルフェナムは貧富の差が激しい国です。
格差をなくそうと努力はされているようですが、国が指示をしても個人事業主が労働者の給料をあげなければ意味がありません。
内部留保があるようなので、それなのに賃金を上げないのは、いつ何時という時の為なのかもしれませんが、もう少し還元してあげられないのかとは思います。
かくいう私も公爵家の賃金について頭を悩ませているところです。
口に出しては言いませんが、賃金アップは皆望んでいる事はわかりますが、何かが起きて給料を下げないといけないとなった時に不満が出るのではないかと思うと、たくさん上げにくいというのも現実です。
「難しいところです」
「お茶会がそんなに嫌なのですか?」
侍女のマーサが心配そうに聞いてきたので苦笑して答えます。
「そういう意味じゃないんです。ごめんなさい。他のことを考えていまして…」
「なら良いのですが、お茶会の参加はどうされますか? 全て参加する必要はないとは思いますが」
「マーサはどの家のお茶会に出席した方が良いと思いますか?」
手紙をマーサの方に差し出すと、軽く頭を下げてからそれを受け取ってくれました。
「私が選んでもよろしいのですか?」
「もちろん。マーサは侯爵家の次女なのですよね? という事は社交界にも詳しいのでは?」
侍女達ともだいぶ仲も良くなり家庭の話などもするようになりましたので聞いてみると、マーサは小首をかしげて言います。
「奥様よりは詳しいかもしれません。ですので、個人的な意見として言わせていただきますと、こちらのお茶会がよろしいかと」
そう言って差し出してくれたのは、白を基調とした封筒で、端の方に青色の小花柄が描かれていてとても綺麗です。
差出人の名前は、サマンサ・ジィルワ。
たしか、この方は隣の領の公爵令嬢だったかと思われます。
「公爵令嬢に呼ばれているのでしたら出席せざるを得ませんね」
「この方は公爵家の次女なのですが、お姉様の方はすでに嫁いでおられる為、家にはいらっしゃいません」
「資料によりますと、この方、とても公爵夫妻に甘やかされて育ったようですね」
仕事をさせてもらえない間、読書だけでなく、この国の貴族の事などを一生懸命覚えた為、サマンサ様の事も頭の中に簡単ではありますが情報が入っています。
「そうなんです。自分の気に入らない事があると癇癪を起こす事で有名で、真面目なお姉様とは大違いだと比較され、余計にワガママになっていったようですね」
「それを直そうとは思わなかったんですね?」
「さすがに20歳になってからでは難しいかと…」
「自分でそれがいけない事だと理解できれば直す努力もできますのにね」
ふぅと小さく息を吐いてから、波乱の予感を感じつつもマーサに言います。
「いつかはお会いしないといけませんし、出席するつもりで考えますが、まずはライト様に確認しようと思います」
そして、その日の晩、ライト様に早速、お茶会に行く話をしてみました。
「ジィルワ家か。あそこは次女だけが変わってる事で有名だな」
「変わっているというのはワガママだというお話でしょうか?」
「そうだな。たしか、今はもう20歳くらいだったか?」
「ええ。そうです」
「そうとは思えない精神年齢の低さらしい。泣かされている令嬢もいるみたいだから気を付けた方がいい…。と思ったが、君はそんなタイプではなさそうだな」
「自分で言うのもなんですが、打っても響かないとイライラされるタイプかもしれません」
「敵を作りに行くだけのような気もするが、まあ、君は公爵夫人だから、向こうも嫌な事は言ってこないかもしれない」
ライト様は呑気な事を仰られますが、実はその既婚者という事が彼女のコンプレックスを刺激してしまうらしいのですよね。
サマンサ様は癇癪を起こすで有名ですが、それを引き起こすワードがあり、それが結婚という言葉です。
ワガママな性格のせいで貰い手がない彼女は結婚できない事にコンプレックスを抱いていて、既婚女性が大嫌いだという事です。
特に彼女のターゲットになるのは、結婚する予定がないと言っていた人間が結婚する事で、その様な女性に対しては、執拗な嫌がらせをするんだそうです。
ここまでくるとワガママではなく、性格が悪い人ですね。
ノルドグレンにも意地悪な人がいましたが、さて、サマンサ様はどんな事をされてくるのでしょうか。
ただ、私の場合はすでに結婚している人間ですから、少しはましなのでしょうか。
「行ってもよろしいですか?」
「駄目だとは言わないが、ちょっと気になる事があるから少しだけ返事は待ってくれないか」
「…承知いたしました」
気になる事とは何なのでしょう?
そう思っていますと、次の日の晩、ライト様が答えを教えてくれました。
「お茶会の件だが、シルフィーも来るかもしれないがどうする?」
「……シルフィーがですか」
1人をお相手するにも面倒ですのに、2人も相手にするのは少し辛いです。
敵前逃亡するのは嫌ですが、相手をするのが面倒くさいという気持ちが勝ってしまい、今回はお誘いのお茶会を全てお断りする事にしました。
そして、変わらない日常が続くと思っていたのですが、サマンサ様も諦めなかったのです。
今度はお茶会の誘いではありましたが、大人数ではなく、私と2人で会いたいという内容の手紙が送られてきたのです。
さすがに断る事が出来ず、彼女と会う事を決めたのですが、当たり前ですが、何もないわけがありませんよね。
そこには自分が何とか元気にしている事、モナ様達も元気だという事、宰相が離縁されたという事が書かれていました。
宰相が離縁された原因は、やはり仕事をしていなかった事がバレたからだそうです。
奥様は最初は彼の事を子煩悩だから、仕事を何とか終わらせて早く帰ってきてくれていると思われていた様ですが、職場の人が減り、遅くまで帰ってこない夫を浮気かと心配して城に確認しに来た際に、部下の人達が彼の今までの所業をぶちまけたのだそうです。
もちろん、仕事の中身は明かさずに、私や皆に仕事を押し付けていたサボり癖の事を伝えた様です。
忙しさに拍車がかかっていますから、イライラする気持ちがおさえられなかったのでしょう。
それを聞いた奥様は宰相に確認し、私に謝り、許してもらえるまで帰ってくるな、もし、許してもらえなかったら離縁すると言われたのだそう。
宰相は私が国に帰れば許してくれた事になるだろうと考え、私を迎えに来た様でした。
ですが、それも失敗に終わり、自ら真相を調べた奥様から離縁状を叩きつけられたのだそうです。
そして、子供と会う条件は何年かかってでも、こき使った部下の人達に謝罪に回り許してもらう事でした。
謝罪にまわる事はできても許してもらう事は全員には難しいでしょうね。
会いたくないと言う人もたくさんいるでしょうし。
仕事の休憩時間にそんな事を考えていると、侍女がやって来て、封が切られた何通かの封筒を私に手渡してくれました。
「これは?」
「奥様宛に届けられたお茶会への招待状です。奥様は今まで夜会にも出席されておられませんでしょう? 何より結婚式だって挙げておられません!」
侍女が不満そうに言いますが、苦笑して首を横に振ります。
「結婚式をしない事については私が望んでいる事ですから気にしないで下さい。ドレスの値段を聞いて恐ろしくなりましたから」
普通のドレスもそうですが、ウエディングドレスってとてもお金がかかるのですね。
一生に一度のものかもしれませんからお金をかけるのはわからないでもないのですが、ドレスを買うお金で貧しい人に何日か分の炊き出しなどが出来そうです。
ノルドグレンと違い、アッセルフェナムは貧富の差が激しい国です。
格差をなくそうと努力はされているようですが、国が指示をしても個人事業主が労働者の給料をあげなければ意味がありません。
内部留保があるようなので、それなのに賃金を上げないのは、いつ何時という時の為なのかもしれませんが、もう少し還元してあげられないのかとは思います。
かくいう私も公爵家の賃金について頭を悩ませているところです。
口に出しては言いませんが、賃金アップは皆望んでいる事はわかりますが、何かが起きて給料を下げないといけないとなった時に不満が出るのではないかと思うと、たくさん上げにくいというのも現実です。
「難しいところです」
「お茶会がそんなに嫌なのですか?」
侍女のマーサが心配そうに聞いてきたので苦笑して答えます。
「そういう意味じゃないんです。ごめんなさい。他のことを考えていまして…」
「なら良いのですが、お茶会の参加はどうされますか? 全て参加する必要はないとは思いますが」
「マーサはどの家のお茶会に出席した方が良いと思いますか?」
手紙をマーサの方に差し出すと、軽く頭を下げてからそれを受け取ってくれました。
「私が選んでもよろしいのですか?」
「もちろん。マーサは侯爵家の次女なのですよね? という事は社交界にも詳しいのでは?」
侍女達ともだいぶ仲も良くなり家庭の話などもするようになりましたので聞いてみると、マーサは小首をかしげて言います。
「奥様よりは詳しいかもしれません。ですので、個人的な意見として言わせていただきますと、こちらのお茶会がよろしいかと」
そう言って差し出してくれたのは、白を基調とした封筒で、端の方に青色の小花柄が描かれていてとても綺麗です。
差出人の名前は、サマンサ・ジィルワ。
たしか、この方は隣の領の公爵令嬢だったかと思われます。
「公爵令嬢に呼ばれているのでしたら出席せざるを得ませんね」
「この方は公爵家の次女なのですが、お姉様の方はすでに嫁いでおられる為、家にはいらっしゃいません」
「資料によりますと、この方、とても公爵夫妻に甘やかされて育ったようですね」
仕事をさせてもらえない間、読書だけでなく、この国の貴族の事などを一生懸命覚えた為、サマンサ様の事も頭の中に簡単ではありますが情報が入っています。
「そうなんです。自分の気に入らない事があると癇癪を起こす事で有名で、真面目なお姉様とは大違いだと比較され、余計にワガママになっていったようですね」
「それを直そうとは思わなかったんですね?」
「さすがに20歳になってからでは難しいかと…」
「自分でそれがいけない事だと理解できれば直す努力もできますのにね」
ふぅと小さく息を吐いてから、波乱の予感を感じつつもマーサに言います。
「いつかはお会いしないといけませんし、出席するつもりで考えますが、まずはライト様に確認しようと思います」
そして、その日の晩、ライト様に早速、お茶会に行く話をしてみました。
「ジィルワ家か。あそこは次女だけが変わってる事で有名だな」
「変わっているというのはワガママだというお話でしょうか?」
「そうだな。たしか、今はもう20歳くらいだったか?」
「ええ。そうです」
「そうとは思えない精神年齢の低さらしい。泣かされている令嬢もいるみたいだから気を付けた方がいい…。と思ったが、君はそんなタイプではなさそうだな」
「自分で言うのもなんですが、打っても響かないとイライラされるタイプかもしれません」
「敵を作りに行くだけのような気もするが、まあ、君は公爵夫人だから、向こうも嫌な事は言ってこないかもしれない」
ライト様は呑気な事を仰られますが、実はその既婚者という事が彼女のコンプレックスを刺激してしまうらしいのですよね。
サマンサ様は癇癪を起こすで有名ですが、それを引き起こすワードがあり、それが結婚という言葉です。
ワガママな性格のせいで貰い手がない彼女は結婚できない事にコンプレックスを抱いていて、既婚女性が大嫌いだという事です。
特に彼女のターゲットになるのは、結婚する予定がないと言っていた人間が結婚する事で、その様な女性に対しては、執拗な嫌がらせをするんだそうです。
ここまでくるとワガママではなく、性格が悪い人ですね。
ノルドグレンにも意地悪な人がいましたが、さて、サマンサ様はどんな事をされてくるのでしょうか。
ただ、私の場合はすでに結婚している人間ですから、少しはましなのでしょうか。
「行ってもよろしいですか?」
「駄目だとは言わないが、ちょっと気になる事があるから少しだけ返事は待ってくれないか」
「…承知いたしました」
気になる事とは何なのでしょう?
そう思っていますと、次の日の晩、ライト様が答えを教えてくれました。
「お茶会の件だが、シルフィーも来るかもしれないがどうする?」
「……シルフィーがですか」
1人をお相手するにも面倒ですのに、2人も相手にするのは少し辛いです。
敵前逃亡するのは嫌ですが、相手をするのが面倒くさいという気持ちが勝ってしまい、今回はお誘いのお茶会を全てお断りする事にしました。
そして、変わらない日常が続くと思っていたのですが、サマンサ様も諦めなかったのです。
今度はお茶会の誘いではありましたが、大人数ではなく、私と2人で会いたいという内容の手紙が送られてきたのです。
さすがに断る事が出来ず、彼女と会う事を決めたのですが、当たり前ですが、何もないわけがありませんよね。
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