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第11話 あれ、からの手紙
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食べては読書、食べてはちょっとだけ散歩などを繰り返している内に、私の中の仕事中毒という一種の病気は少しずつなくなっていき、ダラける事が好きになってきました。
そんな生活を続けて20日目には寝転ぶ事がとても好きになっていました。
もちろん、私の体はすぐには太るわけもないのですが、肌艶が良くなってきました。
食事をする時間や就寝、起床の時間も決めて、規則正しい生活を送っているからかもしれません。
「出会った時よりもだいぶ、顔色が良くなってきたな」
「ありがとうございます。お肉もついてきた気がします」
ライト様とは寝室で、毎日1時間程、話をする様になりました。
ライト様は私がすぐには外に出かけられないと判断してからは、陛下に許しをもらい、私が家で大人しくしている間は軍に関わる仕事をして、私が出かけられる様になったらお休みを取るという事にされた為、毎日、登城されています。
陛下というと、あれを思い出しますが、あれではなくナトマモ陛下の方です。
そういえば、あれからは毎日連絡が来ていて、手紙を受け取ってもらえないなら帰ってくるなと言われたらしく、気の毒ですので最近は手紙は受け取り、ライト様が中身を確認してくれています。
「今日のあれ、からの手紙は何と書いてあったのですか?」
「君はそんな事を聞いて何が楽しいんだ?」
「また何かふざけた事を言ってらっしゃるのかなと思いまして」
「まあ、そうだな。俺にはとにかく離縁しろの一点張りだ。それから…」
そう言った後、サイドテーブルの引き出しから便箋を一枚出すと、私に向かって差し出してきます。
「読むか?」
「これは?」
「あれからの手紙だ。しかも君宛に」
「私宛に? 読む必要ありますか?」
「わからん。彼は読んでほしいから書いたんだろう」
「…ライト様はお読みになったんですか?」
「君の許可なく読むわけにもいかないから読んでいない」
ライト様の手から手紙を受け取り、どうしようか考えます。
別に読む必要はないんですよね…。
かといって、大事な事が書いてあっても嫌ですし…。
ちらりとライト様の方を見ると、言いたい事をわかってくださったのか、手を差し出してこられましたので、手紙を渡します。
「内容を読んで要約すればいいのか?」
「はい。くだらない内容しか書いていなければ、くだらなかったとだけ教えていただければと思います」
「わかった」
そう言って、ライト様は手紙を開き、中に目を通してくれます。
読み進めていく内に、ライト様の眉間のシワが深くなっていくので、あまり良い内容ではない事がわかります。
「どうでしたか?」
手紙から目を離されたので聞いてみると、ライト様は答えてくれます。
「どうやら、城内での仕事が上手くいっていないみたいだな」
「そうなんですか?」
「ああ。次々と下の人間が辞めていっているみたいだ」
「そうなんですか…」
辛ければ辞めたらいいと言っておりましたが、皆、やはり辛くなってしまったのですね…。
無理して働くよりかは良いことですし、皆が仕事を辞めて幸せになっている事を祈らないと。
「君と仲の良かったという男はまだ頑張っているみたいだな」
「シーンウッドですか?」
「俺にはわからないが、手紙にはお前の大事な男は今でも頑張っているぞと書いてある」
「大事なお友達の一人です。責任感の強い人でしたから、ある程度きりの良い所まで頑張ろうとしてくれているのかもしれません」
無理をして体を壊さなければいいのですが…。
しんみりしていると、ライト様が続けます。
「その男が大事なら戻ってこいと」
「戻ってこいですか!?」
「ああ。このままでは君の大事な男性は過労死してしまうと書いてある。というか、それがわかってるならどうにかしてやればいいものを…。まあ、君を戻らせたいから、わざとそうしているのかもしれないが」
「大変です! かといって戻るわけには…」
シーンウッド達の事は心配ですが、あれがいる国に帰るのも嫌です。
そういえば、宰相はどうしているのでしょうか…。
「あの、ボサマリ宰相はどうされているのか気になります。あの方、政治のトップのはずなんですが、仕事をせずに遊んでばかりだったんです。さすがに今は働いてくれているのでしょうか?」
「その事はここには書かれていないな」
「彼が逃げていない事を祈ります。そうだわ。お兄様にも手紙を書かなくては」
お兄様は城の内情はわからないかもしれませんが、愛人の皆さんから話は聞けるはずです。
ここに来てから一度だけお手紙のやり取りをしていますが、城の話はしていません。
そう思い、次の日に早速手紙を書き、早馬で届けてもらう事にしたのでした。
お兄様宛の手紙と一緒にモナ様達への手紙も入れておきましたので、きっとお兄様は渡して下さるでしょう。
それまでにシーンウッドがどうにかならなければ良いのですが…。
心配ではありますが、どうしようもないので、とりあえず、お兄様からの連絡を待つ事にしました。
そして、その間に、私は初めてライト様とお出かけする事になったのです。
アーミテム公爵家にやって来て初めて敷地の外に出るので、少し緊張しましたが、ほとんど馬車移動の為、馬車の中ではライト様とお話をしておりましたので、時間はすぐにたちました。
「シルフィー達はまだ近くにいるのでしょうか」
「いや、さすがに君が出てこないので諦めたようだな。それを確認したから街に出る事にした」
「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」
「気にしなくて良い」
繁華街の手前で馬車を降り、ライト様と護衛騎士様と侍女達と一緒に店が立ち並ぶ通りを歩きます。
小さい頃にノルドグレンの繁華街に連れて行ってもらった事はありましたが、また違った雰囲気で、白亜の建物がとても可愛らしいです。
「まずは何を見ればいいんだ?」
「そうですね、まずはこちらに……」
ライト様が侍女と話を始めたので、キョロキョロと辺りを見回していると、暗い路地の方に人が入っていくのが見えました。
「ライト様、あちらには何があるんですか?」
指を差して尋ねると、ライト様はなぜか驚いた顔をされた後、私を促します。
「気にしなくていい。あちらには近付くな。とりあえず先に服を買いに行こう。予約をしてくれているらしい」
「…わかりました」
焦っているのが何だか気になりましたが、深く聞かない事にして、帰り際まで、この事はすっかり忘れていたのでした。
そんな生活を続けて20日目には寝転ぶ事がとても好きになっていました。
もちろん、私の体はすぐには太るわけもないのですが、肌艶が良くなってきました。
食事をする時間や就寝、起床の時間も決めて、規則正しい生活を送っているからかもしれません。
「出会った時よりもだいぶ、顔色が良くなってきたな」
「ありがとうございます。お肉もついてきた気がします」
ライト様とは寝室で、毎日1時間程、話をする様になりました。
ライト様は私がすぐには外に出かけられないと判断してからは、陛下に許しをもらい、私が家で大人しくしている間は軍に関わる仕事をして、私が出かけられる様になったらお休みを取るという事にされた為、毎日、登城されています。
陛下というと、あれを思い出しますが、あれではなくナトマモ陛下の方です。
そういえば、あれからは毎日連絡が来ていて、手紙を受け取ってもらえないなら帰ってくるなと言われたらしく、気の毒ですので最近は手紙は受け取り、ライト様が中身を確認してくれています。
「今日のあれ、からの手紙は何と書いてあったのですか?」
「君はそんな事を聞いて何が楽しいんだ?」
「また何かふざけた事を言ってらっしゃるのかなと思いまして」
「まあ、そうだな。俺にはとにかく離縁しろの一点張りだ。それから…」
そう言った後、サイドテーブルの引き出しから便箋を一枚出すと、私に向かって差し出してきます。
「読むか?」
「これは?」
「あれからの手紙だ。しかも君宛に」
「私宛に? 読む必要ありますか?」
「わからん。彼は読んでほしいから書いたんだろう」
「…ライト様はお読みになったんですか?」
「君の許可なく読むわけにもいかないから読んでいない」
ライト様の手から手紙を受け取り、どうしようか考えます。
別に読む必要はないんですよね…。
かといって、大事な事が書いてあっても嫌ですし…。
ちらりとライト様の方を見ると、言いたい事をわかってくださったのか、手を差し出してこられましたので、手紙を渡します。
「内容を読んで要約すればいいのか?」
「はい。くだらない内容しか書いていなければ、くだらなかったとだけ教えていただければと思います」
「わかった」
そう言って、ライト様は手紙を開き、中に目を通してくれます。
読み進めていく内に、ライト様の眉間のシワが深くなっていくので、あまり良い内容ではない事がわかります。
「どうでしたか?」
手紙から目を離されたので聞いてみると、ライト様は答えてくれます。
「どうやら、城内での仕事が上手くいっていないみたいだな」
「そうなんですか?」
「ああ。次々と下の人間が辞めていっているみたいだ」
「そうなんですか…」
辛ければ辞めたらいいと言っておりましたが、皆、やはり辛くなってしまったのですね…。
無理して働くよりかは良いことですし、皆が仕事を辞めて幸せになっている事を祈らないと。
「君と仲の良かったという男はまだ頑張っているみたいだな」
「シーンウッドですか?」
「俺にはわからないが、手紙にはお前の大事な男は今でも頑張っているぞと書いてある」
「大事なお友達の一人です。責任感の強い人でしたから、ある程度きりの良い所まで頑張ろうとしてくれているのかもしれません」
無理をして体を壊さなければいいのですが…。
しんみりしていると、ライト様が続けます。
「その男が大事なら戻ってこいと」
「戻ってこいですか!?」
「ああ。このままでは君の大事な男性は過労死してしまうと書いてある。というか、それがわかってるならどうにかしてやればいいものを…。まあ、君を戻らせたいから、わざとそうしているのかもしれないが」
「大変です! かといって戻るわけには…」
シーンウッド達の事は心配ですが、あれがいる国に帰るのも嫌です。
そういえば、宰相はどうしているのでしょうか…。
「あの、ボサマリ宰相はどうされているのか気になります。あの方、政治のトップのはずなんですが、仕事をせずに遊んでばかりだったんです。さすがに今は働いてくれているのでしょうか?」
「その事はここには書かれていないな」
「彼が逃げていない事を祈ります。そうだわ。お兄様にも手紙を書かなくては」
お兄様は城の内情はわからないかもしれませんが、愛人の皆さんから話は聞けるはずです。
ここに来てから一度だけお手紙のやり取りをしていますが、城の話はしていません。
そう思い、次の日に早速手紙を書き、早馬で届けてもらう事にしたのでした。
お兄様宛の手紙と一緒にモナ様達への手紙も入れておきましたので、きっとお兄様は渡して下さるでしょう。
それまでにシーンウッドがどうにかならなければ良いのですが…。
心配ではありますが、どうしようもないので、とりあえず、お兄様からの連絡を待つ事にしました。
そして、その間に、私は初めてライト様とお出かけする事になったのです。
アーミテム公爵家にやって来て初めて敷地の外に出るので、少し緊張しましたが、ほとんど馬車移動の為、馬車の中ではライト様とお話をしておりましたので、時間はすぐにたちました。
「シルフィー達はまだ近くにいるのでしょうか」
「いや、さすがに君が出てこないので諦めたようだな。それを確認したから街に出る事にした」
「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」
「気にしなくて良い」
繁華街の手前で馬車を降り、ライト様と護衛騎士様と侍女達と一緒に店が立ち並ぶ通りを歩きます。
小さい頃にノルドグレンの繁華街に連れて行ってもらった事はありましたが、また違った雰囲気で、白亜の建物がとても可愛らしいです。
「まずは何を見ればいいんだ?」
「そうですね、まずはこちらに……」
ライト様が侍女と話を始めたので、キョロキョロと辺りを見回していると、暗い路地の方に人が入っていくのが見えました。
「ライト様、あちらには何があるんですか?」
指を差して尋ねると、ライト様はなぜか驚いた顔をされた後、私を促します。
「気にしなくていい。あちらには近付くな。とりあえず先に服を買いに行こう。予約をしてくれているらしい」
「…わかりました」
焦っているのが何だか気になりましたが、深く聞かない事にして、帰り際まで、この事はすっかり忘れていたのでした。
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