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19 言いましたわよね?
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登城する際に、ジェドももちろん付いてきてくれることになった。
リュージ様が国王陛下に話した内容は、お父様経由で教えてもらえた。
リュージ様がどんなことを言っていたかというと「私はレイティアを大事にしていたのに、彼女は愛が足りないと言って、私を家から追い出しました。かなり嫉妬深い女性なのです。私の気を引きたくて離婚の話をしてきますが、彼女は自分の実家に帰るわけではありません。ということは、彼女は私を愛しているのです。自分勝手な女性ではありますが、私はそんな彼女を愛しています」などと、聞いただけで殺意を覚えてしまうような話をしていた。
ただ、リュージ様の言うことに一つだけ納得できることもあった。
「やっぱり実家に帰ったほうが良かったのかしら」
「そうなると、公爵家の仕事をする人がいなくなります。たとえ、タワオ公爵がやるとしても、彼一人では無理でしょう。領民が気の毒です」
「そうだと思ったから、私もタワオ公爵家を出なかったのよ。だけど、リュージ様には未練があると思われてしまったみたいね」
城に着いたあとは、何度も通っている謁見の間に向かうことになった。
案内してくれるメイドの後を付いて歩きながら、ジェドと話を続ける。
私もジェドも案内されなくても謁見の間への行き方はわかるから、話に集中して歩くことができた。
「向こうは家に入れてくれなかったから、仕事ができなかったのだと言うだけでしょうからね」
「家に入れたって、どうせ仕事なんてしないでしょうに」
「レイティア様に好かれたくて頑張るつもりだったのかもしれません」
「ジェド、私はあの人と結婚生活を続けるのは無理よ」
「誰となら良いんです?」
ジェドに聞かれて言葉に詰まる。
前を歩いているメイドがちらりと後ろを振り返り、私のほうを見た気がした。
まだ私はリュージ様の妻なのだから、ジェドの質問には答えられない。
ジェドもそれに気が付いたらしく、慌てて謝ってくる。
「申し訳ございません。勢いで失礼なことを聞いてしまいました」
「気にしないでちょうだい。結婚生活を続けるのは無理だと言ったのは私だから」
もし、素直に答えたりしたら、メイドに浮気を疑われてしまう。
そんなことだけは絶対にしたくない。
そして、それはジェドも同じ気持ちのようだった。
「軽率な発言をしてしまい、申し訳ございませんでした
ジェドが再度謝ってくれたあとは、下手なことを口にするわけにはいかないので、無言で歩いた。
謁見の間に通されたのは、約束時刻よりも10分ほど早い時間だった。
謁見の間には普通なら両陛下の騎士しか中に入ることはできない。
けれど、両陛下はジェドが一緒に入ることを許してくださった。
相手がジェドだから許してくださったんだと思われる。
両陛下に挨拶をすると、私たちに優しい笑顔を向けてくださった。
ダークブラウンの長い髪を後ろで一つにまとめ、大柄な体系に渋い見た目の陛下と、黒髪をシニヨンにした細くてとても整った顔立ちの王妃陛下は壇上の椅子に座って、私たちを満足気に見つめる。
「やっとここまで来たな」
「巻き込んでごめんなさいね、レイティア、ジェド。その分、二人には褒美を授けるつもりよ」
私とジェドが挨拶をすると、両陛下が私たちにそう話しかけてこられた。
応えようとした時、ルワ様とリュージ様が謁見の間に入って来た。
両陛下に挨拶をすると、発言の許可も得ていないのに、リュージ様が勝手に話し始める
「お聞きください、両陛下。私の妻がそちらにいる騎士に誘惑されているんです!」
リュージ様が指差したのはジェドだった。
私の横に立っているジェドはリュージ様に対して、冷たい視線を送るだけで何も言わない。
「ほら、言い返せないということは、やはりそうなんだ! シルーク卿は私の妻を」
リュージ様の話の途中で、国王陛下が口を開く。
「シルーク卿をレイティアの専属護衛騎士に指名したのは私だが? お前は人妻を誘惑するような騎士を俺がレイティアに付けたと言いたいのか?」
「あ、あの、いえ、そういうつもりでは……」
しどろもどろになっているリュージ様の横に立っているルワ様が、リュージ様を助けるかのように国王陛下に叫ぶ。
「陛下が悪いわけではございません! 誘惑するシルーク卿と誘惑に負けてしまったレイティア様がいけないのですわ!」
「だから、そんな人間を普段から近くに置いている俺も悪いのかと聞いている」
陛下は普段は自分のことを「私」と言う。
でも、機嫌が悪い時は「俺」に変わることを知っている私とジェドは、ルワ様が自爆していくのを見守ることにした。
「近くに置いている? あ、いえ、その、そういうつもりでは……」
ジェドが国王陛下の護衛騎士だということを思い出したのか、ルワ様は焦った顔になる。
そして、リュージ様に小声で言う。
「リュージ様! あなたは国王陛下と仲が良いんですわよね? ちゃんと説明してくださいませ」
「えー、まあ、そうだな」
リュージ様はルワ様に視線を合わせずに頷いた。
カイセイク公爵家はリュージ様と陛下が本当に仲が良いのかと陛下に確認していた。
その質問に対して「陛下はよく知っている」と答えられたらしい。
以前のタワオ公爵家の悪評を聞いているから、カイセイク公爵も不安そうにしていたという。
だけど、陛下のその返答を聞いて娘を送り出したみたいだった。
ルワ様の態度によっては、カイセイク公爵家にもお咎めがありそうね。
そんなことを思っていると、リュージ様が陛下に言う。
「陛下、お聞きください。ルワ嬢も悪気があって言ったわけではありません。事実を述べたまででございます。現にシルーク卿は護衛という立場にも関わらず、今、この場にいるではありませんか。なんと図々しい」
リュージ様はジェドを見て鼻で笑った。
リュージ様は自分の勝ちを確信しているような表情だった。
けれど、すぐにその笑みは消えることになる。
「ジェドを中に入れても良いと許可したのはわたくしたちですけれど?」
王妃陛下が不満そうな声で言葉を続ける。
「あなた、どうしてもわたくしたちが浮気を推奨していると言いたいようね?」
「いえ! そういうわけではございません!」
「では、どういうつもりなの?」
「ですから、その、シルーク卿が、その」
王妃陛下に尋ねられたリュージ様は、またしどろもどろになる。
ルワ様も思っていた状況と違うことを感じ取ったのか、ピンク色のプリンセスドレスを握りしめて叫ぶ。
「あの、両陛下にお話があります!」
両陛下は黙ってルワ様を見た。
話を続けても良いと理解したルワ様は、私を睨みつけて口を開く。
「ここにいるレイティア様は夫であり、タワオ公爵であるリュージ様をタワオ公爵家から追い出した女性です! その行為はたとえ妻であったとしても、やり過ぎの行為であると思われます。それに、浮気まで疑われる始末です。レイティア様に重い罰を与えてくださるようにお願いいたします!」
ルワ様は一気にまくし立てると、私から両陛下に視線を移した。
両陛下が言葉を発する前に、リュージ様が私に言う。
「そうだぞ、レイティア! お前のやっていることは妻としては越権行為だ!」
リュージ様は怒りで息を荒くしながら私に近付いてこようとした。
するとジェドがリュージ様との間に割って入る。
「ジェド、私に任せてくれない?」
「ですが……」
「お願い」
ジェドは無言で小さく息を吐いてから、私の後ろに移動してくれた。
障害がなくなったリュージ様は私の前に立つと、困ったような表情をする。
「許してくれ、レイティア。お前にやったことは酷いことだったかもしれない。でも、しょうがないじゃないか。俺には駄目だと教えてくれる人がいなかったから」
「では、暴力は誰かにそうしろと教えてもらったのですか?」
「は?」
「あなたはメイドに暴力をふるっていましたよね? それはそうするようにと誰かに教えてもらったのですか? むやみに暴力をふるってはいけないと誰も教えてくれなかったのですか? 自分でも判断できないことなのでしょうか?」
「や、いや、その」
リュージ様はメイドに暴力をふるったことを両陛下に聞かれたくなかったようだった。
もう、とっくの昔にバレているのにね?
「リュージ様、あなたは本当に反省しておられますか?」
「している、しているから、お前も俺に優しくしてくれ!」
「あなたが普通の人でしたら優しくしていましたわ。ですが、あなたはそうではありませんわよね?」
「じゃあ、どうすれば良かったんだ! お前が現れてから、俺の人生は無茶苦茶だ! お前が責任を取るべきじゃないのか!」
リュージ様は激昂すると、私に殴りかかってこようとした。
手を掴んで躱してから、リュージ様の両方の向う脛に素早く鉄板の入ったつま先で蹴りを入れた。
そして、足の痛みで腰を折り曲げたリュージ様の背中に肘鉄を食らわせる。
「契約違反をすれば痛い目に遭うと言いましたわよね?」
「……へ、陛下っ! ……見ましたか!? レイティアは……こんな様子でっ!」
リュージ様は赤いカーペットに膝を付いて、両陛下を見上げた。
すると、国王陛下は冷めた目をして口を開く。
「先に暴力をふるおうとしたのはお前だろう?」
「で、ですがっ!」
「陛下! 今の行為は淑女としてはありえない行為です! 許されるものではありません!」
「許可している」
リュージ様に加勢したルワ様に、陛下は冷たく言い放った。
ルワ様は口元を引きつらせて聞き返す。
「……は、はい? 今、なんと?」
「暴力をふるわれそうになったら、攻撃して身を守ることを許可しているんだ」
「……あの、それは、法律で、ですか?」
ルワ様の声が震えているのがわかった。
自分の置かれている状況が良くないことに、やっと気が付いたらしい。
「違う。俺が許可をしている。レイティアにタワオ公爵家の悪事を明るみにするように命令したのは俺だからな」
陛下の言葉を聞いたルワ様とリュージ様は声にならない声を上げて、その場に崩れ落ちた。
※
明日に完結予定です。
新タイトルで新たな敵(他国に出張です!)を相手にする続編を考えているのですが、読みたいと思ってくださる方はいるでしょうか……。(タイトル変えるのは私のこだわりです。ごめんなさい)
リュージ様が国王陛下に話した内容は、お父様経由で教えてもらえた。
リュージ様がどんなことを言っていたかというと「私はレイティアを大事にしていたのに、彼女は愛が足りないと言って、私を家から追い出しました。かなり嫉妬深い女性なのです。私の気を引きたくて離婚の話をしてきますが、彼女は自分の実家に帰るわけではありません。ということは、彼女は私を愛しているのです。自分勝手な女性ではありますが、私はそんな彼女を愛しています」などと、聞いただけで殺意を覚えてしまうような話をしていた。
ただ、リュージ様の言うことに一つだけ納得できることもあった。
「やっぱり実家に帰ったほうが良かったのかしら」
「そうなると、公爵家の仕事をする人がいなくなります。たとえ、タワオ公爵がやるとしても、彼一人では無理でしょう。領民が気の毒です」
「そうだと思ったから、私もタワオ公爵家を出なかったのよ。だけど、リュージ様には未練があると思われてしまったみたいね」
城に着いたあとは、何度も通っている謁見の間に向かうことになった。
案内してくれるメイドの後を付いて歩きながら、ジェドと話を続ける。
私もジェドも案内されなくても謁見の間への行き方はわかるから、話に集中して歩くことができた。
「向こうは家に入れてくれなかったから、仕事ができなかったのだと言うだけでしょうからね」
「家に入れたって、どうせ仕事なんてしないでしょうに」
「レイティア様に好かれたくて頑張るつもりだったのかもしれません」
「ジェド、私はあの人と結婚生活を続けるのは無理よ」
「誰となら良いんです?」
ジェドに聞かれて言葉に詰まる。
前を歩いているメイドがちらりと後ろを振り返り、私のほうを見た気がした。
まだ私はリュージ様の妻なのだから、ジェドの質問には答えられない。
ジェドもそれに気が付いたらしく、慌てて謝ってくる。
「申し訳ございません。勢いで失礼なことを聞いてしまいました」
「気にしないでちょうだい。結婚生活を続けるのは無理だと言ったのは私だから」
もし、素直に答えたりしたら、メイドに浮気を疑われてしまう。
そんなことだけは絶対にしたくない。
そして、それはジェドも同じ気持ちのようだった。
「軽率な発言をしてしまい、申し訳ございませんでした
ジェドが再度謝ってくれたあとは、下手なことを口にするわけにはいかないので、無言で歩いた。
謁見の間に通されたのは、約束時刻よりも10分ほど早い時間だった。
謁見の間には普通なら両陛下の騎士しか中に入ることはできない。
けれど、両陛下はジェドが一緒に入ることを許してくださった。
相手がジェドだから許してくださったんだと思われる。
両陛下に挨拶をすると、私たちに優しい笑顔を向けてくださった。
ダークブラウンの長い髪を後ろで一つにまとめ、大柄な体系に渋い見た目の陛下と、黒髪をシニヨンにした細くてとても整った顔立ちの王妃陛下は壇上の椅子に座って、私たちを満足気に見つめる。
「やっとここまで来たな」
「巻き込んでごめんなさいね、レイティア、ジェド。その分、二人には褒美を授けるつもりよ」
私とジェドが挨拶をすると、両陛下が私たちにそう話しかけてこられた。
応えようとした時、ルワ様とリュージ様が謁見の間に入って来た。
両陛下に挨拶をすると、発言の許可も得ていないのに、リュージ様が勝手に話し始める
「お聞きください、両陛下。私の妻がそちらにいる騎士に誘惑されているんです!」
リュージ様が指差したのはジェドだった。
私の横に立っているジェドはリュージ様に対して、冷たい視線を送るだけで何も言わない。
「ほら、言い返せないということは、やはりそうなんだ! シルーク卿は私の妻を」
リュージ様の話の途中で、国王陛下が口を開く。
「シルーク卿をレイティアの専属護衛騎士に指名したのは私だが? お前は人妻を誘惑するような騎士を俺がレイティアに付けたと言いたいのか?」
「あ、あの、いえ、そういうつもりでは……」
しどろもどろになっているリュージ様の横に立っているルワ様が、リュージ様を助けるかのように国王陛下に叫ぶ。
「陛下が悪いわけではございません! 誘惑するシルーク卿と誘惑に負けてしまったレイティア様がいけないのですわ!」
「だから、そんな人間を普段から近くに置いている俺も悪いのかと聞いている」
陛下は普段は自分のことを「私」と言う。
でも、機嫌が悪い時は「俺」に変わることを知っている私とジェドは、ルワ様が自爆していくのを見守ることにした。
「近くに置いている? あ、いえ、その、そういうつもりでは……」
ジェドが国王陛下の護衛騎士だということを思い出したのか、ルワ様は焦った顔になる。
そして、リュージ様に小声で言う。
「リュージ様! あなたは国王陛下と仲が良いんですわよね? ちゃんと説明してくださいませ」
「えー、まあ、そうだな」
リュージ様はルワ様に視線を合わせずに頷いた。
カイセイク公爵家はリュージ様と陛下が本当に仲が良いのかと陛下に確認していた。
その質問に対して「陛下はよく知っている」と答えられたらしい。
以前のタワオ公爵家の悪評を聞いているから、カイセイク公爵も不安そうにしていたという。
だけど、陛下のその返答を聞いて娘を送り出したみたいだった。
ルワ様の態度によっては、カイセイク公爵家にもお咎めがありそうね。
そんなことを思っていると、リュージ様が陛下に言う。
「陛下、お聞きください。ルワ嬢も悪気があって言ったわけではありません。事実を述べたまででございます。現にシルーク卿は護衛という立場にも関わらず、今、この場にいるではありませんか。なんと図々しい」
リュージ様はジェドを見て鼻で笑った。
リュージ様は自分の勝ちを確信しているような表情だった。
けれど、すぐにその笑みは消えることになる。
「ジェドを中に入れても良いと許可したのはわたくしたちですけれど?」
王妃陛下が不満そうな声で言葉を続ける。
「あなた、どうしてもわたくしたちが浮気を推奨していると言いたいようね?」
「いえ! そういうわけではございません!」
「では、どういうつもりなの?」
「ですから、その、シルーク卿が、その」
王妃陛下に尋ねられたリュージ様は、またしどろもどろになる。
ルワ様も思っていた状況と違うことを感じ取ったのか、ピンク色のプリンセスドレスを握りしめて叫ぶ。
「あの、両陛下にお話があります!」
両陛下は黙ってルワ様を見た。
話を続けても良いと理解したルワ様は、私を睨みつけて口を開く。
「ここにいるレイティア様は夫であり、タワオ公爵であるリュージ様をタワオ公爵家から追い出した女性です! その行為はたとえ妻であったとしても、やり過ぎの行為であると思われます。それに、浮気まで疑われる始末です。レイティア様に重い罰を与えてくださるようにお願いいたします!」
ルワ様は一気にまくし立てると、私から両陛下に視線を移した。
両陛下が言葉を発する前に、リュージ様が私に言う。
「そうだぞ、レイティア! お前のやっていることは妻としては越権行為だ!」
リュージ様は怒りで息を荒くしながら私に近付いてこようとした。
するとジェドがリュージ様との間に割って入る。
「ジェド、私に任せてくれない?」
「ですが……」
「お願い」
ジェドは無言で小さく息を吐いてから、私の後ろに移動してくれた。
障害がなくなったリュージ様は私の前に立つと、困ったような表情をする。
「許してくれ、レイティア。お前にやったことは酷いことだったかもしれない。でも、しょうがないじゃないか。俺には駄目だと教えてくれる人がいなかったから」
「では、暴力は誰かにそうしろと教えてもらったのですか?」
「は?」
「あなたはメイドに暴力をふるっていましたよね? それはそうするようにと誰かに教えてもらったのですか? むやみに暴力をふるってはいけないと誰も教えてくれなかったのですか? 自分でも判断できないことなのでしょうか?」
「や、いや、その」
リュージ様はメイドに暴力をふるったことを両陛下に聞かれたくなかったようだった。
もう、とっくの昔にバレているのにね?
「リュージ様、あなたは本当に反省しておられますか?」
「している、しているから、お前も俺に優しくしてくれ!」
「あなたが普通の人でしたら優しくしていましたわ。ですが、あなたはそうではありませんわよね?」
「じゃあ、どうすれば良かったんだ! お前が現れてから、俺の人生は無茶苦茶だ! お前が責任を取るべきじゃないのか!」
リュージ様は激昂すると、私に殴りかかってこようとした。
手を掴んで躱してから、リュージ様の両方の向う脛に素早く鉄板の入ったつま先で蹴りを入れた。
そして、足の痛みで腰を折り曲げたリュージ様の背中に肘鉄を食らわせる。
「契約違反をすれば痛い目に遭うと言いましたわよね?」
「……へ、陛下っ! ……見ましたか!? レイティアは……こんな様子でっ!」
リュージ様は赤いカーペットに膝を付いて、両陛下を見上げた。
すると、国王陛下は冷めた目をして口を開く。
「先に暴力をふるおうとしたのはお前だろう?」
「で、ですがっ!」
「陛下! 今の行為は淑女としてはありえない行為です! 許されるものではありません!」
「許可している」
リュージ様に加勢したルワ様に、陛下は冷たく言い放った。
ルワ様は口元を引きつらせて聞き返す。
「……は、はい? 今、なんと?」
「暴力をふるわれそうになったら、攻撃して身を守ることを許可しているんだ」
「……あの、それは、法律で、ですか?」
ルワ様の声が震えているのがわかった。
自分の置かれている状況が良くないことに、やっと気が付いたらしい。
「違う。俺が許可をしている。レイティアにタワオ公爵家の悪事を明るみにするように命令したのは俺だからな」
陛下の言葉を聞いたルワ様とリュージ様は声にならない声を上げて、その場に崩れ落ちた。
※
明日に完結予定です。
新タイトルで新たな敵(他国に出張です!)を相手にする続編を考えているのですが、読みたいと思ってくださる方はいるでしょうか……。(タイトル変えるのは私のこだわりです。ごめんなさい)
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