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38 姉との2戦目③

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  私とエディ様が簡単に挨拶した後は、歓談の時間が再開された。
 でも、多くの人が自分たちのことよりも、私たちに興味があるようで、多くの人が話しかけてきた。
 エレインとテッド様がすぐにやって来て、人払いをしてくれたので助かった。

 エディ様が苦笑して尋ねてくる。

「僕と結婚したら、あんな感じのことが多くなるかもしれないけど大丈夫?」
「もちろんです。今は、エレインたちに助けてもらいましたが、これからは自分で対処できるように頑張ろうと思います」
「リネは本当に優しいよね」
「そんなことはありません!」

 エディ様の言葉を否定すると、エレインが必死に訴えてくる。

「リネ様は優しい方だと思います! 人の顔色を気にするのは、思いやりがあるからこそできることですから!」
「そうですよ。エレインには無理です」
「表情で相手の考えていることはわかるわよ! わざわざ優しくしないだけで!」
 
 テッド様に言われ、エレインは憤慨して言い返した。

 仲良く喧嘩をしている二人に微笑んで話しかける。

「エレインたちもせっかくだから、パーティーを楽しんでね?」
「はい! ありがとうございます!」

 エレインは笑顔で頷き、テッド様も口元に笑みを浮かべて一礼した。
 最近のエレインはエディ様よりも私を優先してくれているような気がする。

 エディ様に何か言われたのかも?
 それとも、仲良くなった証拠なのかしら?

「テッドもエレインと仲良くするんだよ?」
「承知しました」

 テッド様はエディ様の言葉に軽く頭を下げた後、エレインに話し掛ける。

「今日は喧嘩をしに来たんじゃない」
「そんなことは言われなくてもわかっているわよ」

 エレインが不服そうな顔で言い返してすぐに、私の後ろを見て目を見開いた。

 気になって振り返ると、トワナ様がこちらに向かって歩いてきているところだった。

 私を睨みつけている顔が恐ろしくて、一瞬、怯んでしまいそうになった。
 でも、負けてはいられないとすぐに睨み返した。

 トワナ様はすぐに視線を逸らしたけど、私の所へ向かってくる足は止めない。

 私のすぐ近くでトワナ様が足を止めると、エディ様たちは警戒態勢をとった。
 そんな3人に「大丈夫です」と声をかけてから、トワナ様に話しかける。

「お久しぶりですね、トワナ様。最近、ティファス家の話をよく聞きますけれど、あまり良いお話ではありませんわね」
「うるさいわね。誰のせいだと思っているのよ」
「元々はトワナ様たちの責任でしょう? お金に困っているのは特にそうだわ。借金までしてドレスが必要ですか?」
「しゃ、借金ですって!?」

 トワナ様は知らなかったのか、大きな声で聞き返してきた。
 でも、すぐに周りの視線に気が付いて、声のボリュームを抑える。

「お父様は借金してドレスを買ってるって言うの?」

 今日のトワナ様のドレスは気合いが入っていた。
 赤色のプリンセスラインのドレスに、小さな宝石が散りばめられている。

 シャンデリアの光に反射して、トワナ様は光り輝いているようにも見えて、外見だけはとても美しかった。

「ティファス伯爵はトワナ様が本当に大事なのですね。ですから、トワナ様も大事にして差し上げたらどうなのです?」
「うるさいわね! 大事にしているからこうやって、相手を探しに来ているんじゃない!」
「それは違うでしょう? 良い人と結婚して、贅沢したいだけでしょう?」
「馬鹿なことを言わないで! ちゃんと目的はあるわよ!」

 トワナ様は叫んだ後、慌てて周りを見回す。

 すると、こちらに目を向けていた人たちが一斉に目を逸らした。

「リネ! 絶対に許さないわ! 私を馬鹿にしに来たの?」
「違います。トワナ様には私を忘れてもらうようにお願いしに来ました」
「嫌よ!」

 そう言って、トワナ様は私により近付いてくると、小さな声で言う。

「私はここでパートナーを見つけて、夜会に出席するの。そして、エディ様と仲良くなって、あんたから奪うと決めたのよ!」
「ここは真剣に相手を探している場なんですよ? お相手の方に失礼じゃないですか!」
「合う合わないは誰にでもあるんだから、しょうがないことよ! 私とエディ様は惹かれ合うの。だから、あんたの出番なんてないのよ!」

 トワナ様は素直に私から執着するのをやめたのかと思ったけど、そうではなかったのね。

「エディ様はトワナ様のものにはなりませんわ」
「さあ、どうかしらね?」

 トワナ様はふんと鼻で笑った後、エディ様に視線を移して微笑みかける。

「エディ様とは、またゆっくりとお話したいですわ」
「僕は話したくないから遠慮するよ」
「なっ!」

 エディ様に冷たくあしらわれて、トワナ様は羞恥心で顔を真っ赤にした。

「トワナ様、エディ様は私の婚約者です。絶対にあなたのものにはなりません」

 言い切ると、トワナ様は悔しそうな顔をして、私を睨んできたのだった。
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