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34 チープ男爵令息の現在①
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「リネお姉様、ぼくと遊んでください!」
私の弟になったシオン様、ではなく、シオンは栗毛色の軽いパーマのかかった髪を持つ、目が大きくて、まるで女の子みたいに可愛らしい5歳の少年だ。
よく食べ、よく遊ぶ男の子で、痩せ型で、背丈は私の腰に届くか届かないかといったところだ。
新しい両親も二人共、温かく私を迎えてくれて、年齢もまだ若い。
親子というよりか、兄妹、姉妹でも通りそうだ。
お母様はシオンと同じ髪色と瞳を持つ、少し痩せすぎといった感じの体型だけど、タレ目気味だから温和な見た目の、とても可愛らしい人で、お父様は黒髪に紺色の瞳を持ち、長身痩躯で鼻筋の通った凛々しそうな見た目の男性だ。
お母様はまだ若いのだけど、体が弱くて二人目を生むとなると、母体が危なくなる可能性があると言われていて、二人目の子供を諦めていた。
そんなところに、私の話を聞いたんだそう。
顔合わせをしてすぐにシオンは私に懐いてくれて、普段は学校が休みの日に1泊、長期休みの時は数十日程、こちらに滞在するという話を聞いて、毎日いてほしいと寂しがってくれた。
だから、休みの日に遊びに来ると、こうやって甘えてきてくれる。
「シオン、あまり、リネを困らせては駄目よ」
「だって、お姉様は、普段は学校が休みの日にしか一緒にいれないじゃないですか」
お母様に怒られたシオンは私の足にぎゅうっとしがみついたあと、庭園に置かれた白いティーテーブルを私の両親と一緒に囲んでいるエディ様のほうを見て、べーっと舌を出した。
エディ様の笑顔が引きつった気がしたけれど、私が見つめると、すぐにふにゃりと表情を緩めた。
お母様とお父様は慌ててエディ様に謝る。
「息子が申し訳ございません!」
「気にしなくて良いですよ。リネは僕の妻になる人ですから、彼はいつかは義理の弟になりますしね」
そこは子供相手には怒らないとは言わないんですね。
シオンの頭を撫でながら思っていると、シオンがエディ様に言う。
「では、それまでは、お姉様をぼくが独り占めします。エディ様はお帰りください」
「言っておくけど、ここに来ている日以外は、リネは僕が独り占めしているからね。それにリネは明日は学校なんだ。だから、迎えに来た僕と一緒に帰るんだよ」
「むーー!」
シオンがエディ様を睨んで、頬を膨らませた。
エディ様は大人の余裕といった笑みを見せているように見えるけれど、いつもの笑顔と違うということくらい、最近はわかるようになっていた。
だから、少し意地悪を言ってみる。
「エディ様、先に帰られますか?」
「そんな冷たいことを言わないでよ。昨日の晩はリネと一緒にいれなくて寂しかったんだから」
「では、シオンと仲良くしてくださいますか?」
「はい」
大きく頷いたエディ様を見て、お父様とお母様は笑いをこらえているように見えた。
言わなくても大丈夫だと思うけど、後でお父様たちには普段のエディ様の姿を他の人の前では内緒にしてほしいとお願いしておかなくちゃ。
その日の帰り道、ぴったりと隙間なく、私の隣りに座ったエディ様にお願いする。
「シオンと仲良くしてくださいね」
「するつもりはあるんだよ。リネに懐くなんて見る目が良いからね。だけど、すごく敵意を剥き出しにしてくるから、つい」
「エディ様だけにしか、あんな態度を見せませんから、ライバル視しているのはエディ様だけなんでしょう」
「そうだとは思う。もちろん、本気で怒ったりしないから安心して?」
「はい」
膝に置いていた手をエディ様が優しく包んでくれる。
人によってはエディ様の距離感を嫌がる人もいるかもしれない。
でも、私は全く嫌じゃない。
これは、エディ様のことが好きだからなんだと思う。
手を握ると、エディ様はまた、にやけたような笑顔になった。
何だか恥ずかしくなって目を逸らす。
暗くなる前に帰り着けるようにと、今はまだ昼過ぎで、馬車の窓から見える通りは人の往来も激しい。
そんなことを思った時、急に外が騒がしくなった。
「おい、近寄るな! 殺されたいのか!」
馬車を護ってくれている騎士の声だった。
「お願いです、話をさせてください! 知り合いなんです! リネ、エディ様! 僕です! チープ男爵令息です! 話を聞いてください!」
叫ぶ声が聞こえて、私とエディ様は思わず顔を見合わせた。
チープ男爵令息はデイリ様と一緒に私をいじめて、退学処分になってからは家の手伝いをしていると聞いていた。
でも、この地域はチープ男爵令息が住んでいる地域ではない。
「どうして、こんな所に?」
「リネ、大丈夫だよ。後で調べさせる」
「ありがとうございます」
一体、私たちに何を言おうとしているの?
ニーソン公爵邸に戻ってから、エディ様が調べてくれたところによると、私にしていた行為が、チープ男爵家の近所でも広まったらしく、チープ男爵家は現在、平民たちから嫌がらせを受けているとのことだった。
私の弟になったシオン様、ではなく、シオンは栗毛色の軽いパーマのかかった髪を持つ、目が大きくて、まるで女の子みたいに可愛らしい5歳の少年だ。
よく食べ、よく遊ぶ男の子で、痩せ型で、背丈は私の腰に届くか届かないかといったところだ。
新しい両親も二人共、温かく私を迎えてくれて、年齢もまだ若い。
親子というよりか、兄妹、姉妹でも通りそうだ。
お母様はシオンと同じ髪色と瞳を持つ、少し痩せすぎといった感じの体型だけど、タレ目気味だから温和な見た目の、とても可愛らしい人で、お父様は黒髪に紺色の瞳を持ち、長身痩躯で鼻筋の通った凛々しそうな見た目の男性だ。
お母様はまだ若いのだけど、体が弱くて二人目を生むとなると、母体が危なくなる可能性があると言われていて、二人目の子供を諦めていた。
そんなところに、私の話を聞いたんだそう。
顔合わせをしてすぐにシオンは私に懐いてくれて、普段は学校が休みの日に1泊、長期休みの時は数十日程、こちらに滞在するという話を聞いて、毎日いてほしいと寂しがってくれた。
だから、休みの日に遊びに来ると、こうやって甘えてきてくれる。
「シオン、あまり、リネを困らせては駄目よ」
「だって、お姉様は、普段は学校が休みの日にしか一緒にいれないじゃないですか」
お母様に怒られたシオンは私の足にぎゅうっとしがみついたあと、庭園に置かれた白いティーテーブルを私の両親と一緒に囲んでいるエディ様のほうを見て、べーっと舌を出した。
エディ様の笑顔が引きつった気がしたけれど、私が見つめると、すぐにふにゃりと表情を緩めた。
お母様とお父様は慌ててエディ様に謝る。
「息子が申し訳ございません!」
「気にしなくて良いですよ。リネは僕の妻になる人ですから、彼はいつかは義理の弟になりますしね」
そこは子供相手には怒らないとは言わないんですね。
シオンの頭を撫でながら思っていると、シオンがエディ様に言う。
「では、それまでは、お姉様をぼくが独り占めします。エディ様はお帰りください」
「言っておくけど、ここに来ている日以外は、リネは僕が独り占めしているからね。それにリネは明日は学校なんだ。だから、迎えに来た僕と一緒に帰るんだよ」
「むーー!」
シオンがエディ様を睨んで、頬を膨らませた。
エディ様は大人の余裕といった笑みを見せているように見えるけれど、いつもの笑顔と違うということくらい、最近はわかるようになっていた。
だから、少し意地悪を言ってみる。
「エディ様、先に帰られますか?」
「そんな冷たいことを言わないでよ。昨日の晩はリネと一緒にいれなくて寂しかったんだから」
「では、シオンと仲良くしてくださいますか?」
「はい」
大きく頷いたエディ様を見て、お父様とお母様は笑いをこらえているように見えた。
言わなくても大丈夫だと思うけど、後でお父様たちには普段のエディ様の姿を他の人の前では内緒にしてほしいとお願いしておかなくちゃ。
その日の帰り道、ぴったりと隙間なく、私の隣りに座ったエディ様にお願いする。
「シオンと仲良くしてくださいね」
「するつもりはあるんだよ。リネに懐くなんて見る目が良いからね。だけど、すごく敵意を剥き出しにしてくるから、つい」
「エディ様だけにしか、あんな態度を見せませんから、ライバル視しているのはエディ様だけなんでしょう」
「そうだとは思う。もちろん、本気で怒ったりしないから安心して?」
「はい」
膝に置いていた手をエディ様が優しく包んでくれる。
人によってはエディ様の距離感を嫌がる人もいるかもしれない。
でも、私は全く嫌じゃない。
これは、エディ様のことが好きだからなんだと思う。
手を握ると、エディ様はまた、にやけたような笑顔になった。
何だか恥ずかしくなって目を逸らす。
暗くなる前に帰り着けるようにと、今はまだ昼過ぎで、馬車の窓から見える通りは人の往来も激しい。
そんなことを思った時、急に外が騒がしくなった。
「おい、近寄るな! 殺されたいのか!」
馬車を護ってくれている騎士の声だった。
「お願いです、話をさせてください! 知り合いなんです! リネ、エディ様! 僕です! チープ男爵令息です! 話を聞いてください!」
叫ぶ声が聞こえて、私とエディ様は思わず顔を見合わせた。
チープ男爵令息はデイリ様と一緒に私をいじめて、退学処分になってからは家の手伝いをしていると聞いていた。
でも、この地域はチープ男爵令息が住んでいる地域ではない。
「どうして、こんな所に?」
「リネ、大丈夫だよ。後で調べさせる」
「ありがとうございます」
一体、私たちに何を言おうとしているの?
ニーソン公爵邸に戻ってから、エディ様が調べてくれたところによると、私にしていた行為が、チープ男爵家の近所でも広まったらしく、チープ男爵家は現在、平民たちから嫌がらせを受けているとのことだった。
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