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27 現実での出来事②
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エディ様が近くにいることはわかっていた。
でも、お義父様たちがいるとまでは思っていなかったので驚いていると、エディ様が話し掛けてくる。
「大丈夫だった? よく頑張ったね」
「ありがとうございます」
「今すぐリネを抱きしめたいけど、君のご両親が帰られるまでは我慢するよ」
エディ様はそう言って、私には優しい笑みを浮かべてくれた。
でも、部屋の中に目を向けた時には厳しい表情になっていた。
「答えてくれ。私がリネを迷惑だと思っていると言いたいのか?」
お義父様が部屋の中に入ってきて、お父様に尋ねた。
「そ、そうではないのですか!? リネをこの家に連れ帰っても何の得にもならないでしょう!?」
「損得の問題ではないが、強いて答えるならリネがこの家に来てくれたことで、私たちには迷惑どころか、かなりのメリットがあった」
「リネがですか!? リネに何の特技があると言うのです!?」
お母様が驚いた表情で、お義父様に聞き返した。
「特技とかそういう問題じゃない」
お義父様は不機嫌そうに答えたあと、お父様たちに告げる。
「もうこれ以上話すことはないだろう? さっさと出ていってくれ」
「そ、それが、その、私の娘のトワナが、リネがいなくなって寂しいと言っているのです」
「そんな訳ないでしょう? 今までお姉様は結婚して実家にいなかったのですよ? その間、私に会いたいだなんて一言も連絡がなかったのに」
黙っていられなくなり、お義父様たちの会話に割って入ると、お父様は鬱陶しそうな顔で私を見つめて言い返してくる。
「トワナは愛する夫を病で亡くし、寂しくてこちらに帰ってきたんだ。だから、お前も帰ってきてトワナの傍にいてやりなさい」
「お父様とお母様がいれば十分でしょう!」
「十分ではないから、わざわざここまでお前を迎えに来てやったんだろう!」
「あなた!」
お父様が本音を口に出してしまったことに気が付いたお母様が、慌てて、お父様の腕を掴んで止めた。
「本音が出たな。よくもまぁ、今まで伯爵としての仕事を務めてこれたものだ。もしくは、部下が優秀だったか?」
「閣下! いくら閣下でも言って良いことと悪いことがあると思います! 人を侮辱するような発言はおやめください!」
「それは失礼した」
お義父様は軽く頭を下げてから、私のほうを見る。
「何か話しておくことはあるか?」
「私はありません」
「父上、僕はあります」
「私もあるわ」
エディ様とお義母様が言うと、お義父様は小さく息を吐いてから、部屋の入口に立ったままだった私に部屋の中に入るように促してきた。
私が中に入ると、エディ様とお義母様も中に入ってきた。
横に避けた私の左右に立ち、左側に立ったエディ様が、私の両親に向かって口を開く。
「ティファス伯爵夫妻、お帰りはあちらです。帰りの道はメイドに案内させますのでご安心を。それから、リネは僕の婚約者になったんです。婚約者の変更などは絶対にありえませんし、彼女をティファス伯爵家に戻すこともありませんので諦めてください」
「エディの言う通りです。私にとってリネは本当の娘のように可愛いわ。あなた方の頭の中は長女のことだけしかないようね。それなら、その分、私がリネに愛情を注ぎますから心配しなくても結構よ? あなた方はトワナ嬢の寂しさを埋めることだけ考えてあげて?」
私の右隣に立っているお義母様はそう言うと、廊下に向かって指を差す。
「エディが言った通り、お帰りはあちらよ」
部屋の前にメイドと騎士が二人、姿を現した。
現れたメイドは私の専属メイドの一人であるミシェルで、話が聞こえていたのか仏頂面になってしまっている。
まだ若いから、感情のコントロールが上手くできないのかもしれない。
「ご案内いたします」
「ちょ、ちょっと待ってください。リネを連れて帰るとトワナと約束しているんです!」
「リネが嫌がっている以上、連れて帰ることなどは許さない」
お義父様に冷たい声で言われ、お父様は額から汗を流す。
このまま素直に帰らないといけないことはわかっているけれど、お姉様をがっかりさせることも嫌らしい。
「お父様、お姉様には別の機会にお会いできたらお会いましょうとお伝え下さい。夜会などではどうでしょう?」
「夜会は、その、無理だろう。今、トワナにはパートナーになってくれる相手がいないんだから」
「では、探してくださいませ」
「そんな……」
私がこんなに強い言い方をするだなんて思ってもいなかったらしく、両親は顔を見合わせた。
すると、お義父様は口元に笑みを浮かべる。
「もっと先にするつもりだったが、エディとリネの婚約披露パーティーを近い内に開くことにしよう。招待するから、その時にリネと会えば良い」
「それまでにパートナーが見つかれば良いですね」
お義父様のあとにエディ様が笑顔で両親に向かって言った。
もしかして、閣下たちはお姉様のパートナー探しを妨害するつもりなのかしら?
※
お読みいただきありがとうございます!
次の話はトワナ視点になります。
でも、お義父様たちがいるとまでは思っていなかったので驚いていると、エディ様が話し掛けてくる。
「大丈夫だった? よく頑張ったね」
「ありがとうございます」
「今すぐリネを抱きしめたいけど、君のご両親が帰られるまでは我慢するよ」
エディ様はそう言って、私には優しい笑みを浮かべてくれた。
でも、部屋の中に目を向けた時には厳しい表情になっていた。
「答えてくれ。私がリネを迷惑だと思っていると言いたいのか?」
お義父様が部屋の中に入ってきて、お父様に尋ねた。
「そ、そうではないのですか!? リネをこの家に連れ帰っても何の得にもならないでしょう!?」
「損得の問題ではないが、強いて答えるならリネがこの家に来てくれたことで、私たちには迷惑どころか、かなりのメリットがあった」
「リネがですか!? リネに何の特技があると言うのです!?」
お母様が驚いた表情で、お義父様に聞き返した。
「特技とかそういう問題じゃない」
お義父様は不機嫌そうに答えたあと、お父様たちに告げる。
「もうこれ以上話すことはないだろう? さっさと出ていってくれ」
「そ、それが、その、私の娘のトワナが、リネがいなくなって寂しいと言っているのです」
「そんな訳ないでしょう? 今までお姉様は結婚して実家にいなかったのですよ? その間、私に会いたいだなんて一言も連絡がなかったのに」
黙っていられなくなり、お義父様たちの会話に割って入ると、お父様は鬱陶しそうな顔で私を見つめて言い返してくる。
「トワナは愛する夫を病で亡くし、寂しくてこちらに帰ってきたんだ。だから、お前も帰ってきてトワナの傍にいてやりなさい」
「お父様とお母様がいれば十分でしょう!」
「十分ではないから、わざわざここまでお前を迎えに来てやったんだろう!」
「あなた!」
お父様が本音を口に出してしまったことに気が付いたお母様が、慌てて、お父様の腕を掴んで止めた。
「本音が出たな。よくもまぁ、今まで伯爵としての仕事を務めてこれたものだ。もしくは、部下が優秀だったか?」
「閣下! いくら閣下でも言って良いことと悪いことがあると思います! 人を侮辱するような発言はおやめください!」
「それは失礼した」
お義父様は軽く頭を下げてから、私のほうを見る。
「何か話しておくことはあるか?」
「私はありません」
「父上、僕はあります」
「私もあるわ」
エディ様とお義母様が言うと、お義父様は小さく息を吐いてから、部屋の入口に立ったままだった私に部屋の中に入るように促してきた。
私が中に入ると、エディ様とお義母様も中に入ってきた。
横に避けた私の左右に立ち、左側に立ったエディ様が、私の両親に向かって口を開く。
「ティファス伯爵夫妻、お帰りはあちらです。帰りの道はメイドに案内させますのでご安心を。それから、リネは僕の婚約者になったんです。婚約者の変更などは絶対にありえませんし、彼女をティファス伯爵家に戻すこともありませんので諦めてください」
「エディの言う通りです。私にとってリネは本当の娘のように可愛いわ。あなた方の頭の中は長女のことだけしかないようね。それなら、その分、私がリネに愛情を注ぎますから心配しなくても結構よ? あなた方はトワナ嬢の寂しさを埋めることだけ考えてあげて?」
私の右隣に立っているお義母様はそう言うと、廊下に向かって指を差す。
「エディが言った通り、お帰りはあちらよ」
部屋の前にメイドと騎士が二人、姿を現した。
現れたメイドは私の専属メイドの一人であるミシェルで、話が聞こえていたのか仏頂面になってしまっている。
まだ若いから、感情のコントロールが上手くできないのかもしれない。
「ご案内いたします」
「ちょ、ちょっと待ってください。リネを連れて帰るとトワナと約束しているんです!」
「リネが嫌がっている以上、連れて帰ることなどは許さない」
お義父様に冷たい声で言われ、お父様は額から汗を流す。
このまま素直に帰らないといけないことはわかっているけれど、お姉様をがっかりさせることも嫌らしい。
「お父様、お姉様には別の機会にお会いできたらお会いましょうとお伝え下さい。夜会などではどうでしょう?」
「夜会は、その、無理だろう。今、トワナにはパートナーになってくれる相手がいないんだから」
「では、探してくださいませ」
「そんな……」
私がこんなに強い言い方をするだなんて思ってもいなかったらしく、両親は顔を見合わせた。
すると、お義父様は口元に笑みを浮かべる。
「もっと先にするつもりだったが、エディとリネの婚約披露パーティーを近い内に開くことにしよう。招待するから、その時にリネと会えば良い」
「それまでにパートナーが見つかれば良いですね」
お義父様のあとにエディ様が笑顔で両親に向かって言った。
もしかして、閣下たちはお姉様のパートナー探しを妨害するつもりなのかしら?
※
お読みいただきありがとうございます!
次の話はトワナ視点になります。
応援ありがとうございます!
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