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18 殿下の弱み
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王妃になんてなりたくない。
だけど、お姉さまの思うようにさせたくもない。
どちらの気持ちが強いか。
選ぶなら、お姉さまに負ける方が嫌だわ。
何より、アーク殿下の気持ちに対して失礼すぎる。
こんな気持ちがグルグル渦巻いて、本当に私らしくない。
「どうしたら良いのかしら」
ポールにアーク殿下に渡すように頼まれた書類を胸に抱きしめながら、アーク殿下の執務室に向かっていた。
すると、執務室の前で誰かが騒いでいるのが見えて、ぎょっとした。
殿下の執務室の前で騎士のアイラと揉み合っていたのは、私のお姉さまだった。
うわあ、最悪。
そう思って、その場で足を止める。
「アーク殿下に会わせなさい! 騎士のくせに生意気よ!」
「騎士だから通せないと言ってるんです! 私の事は何とでも言って下さって結構ですから、本日はお帰り下さい!」
アイラとお姉さまが言い合っている横で、この先は行かせないと言わんばかりに男性の騎士が立っている。
男性の騎士は、私の視線に気が付いた様で小さく頭を下げ、自分の背中の方にある扉を指差す。
入りたいのかと聞かれているのかと思って頷くと、騎士は扉をノックして、私の来訪を告げてくれた。
それと同時に、お姉さまが私に気付いた。
「ルルア、あなた!」
「ルルア様! 中にお入り下さい」
近寄ってきたお姉さまと私の間にアイラが入ってくれて、私は小さく開いた扉の隙間から入ると、すぐに扉が閉められ、近くにいた、殿下の側近が鍵を締めた。
「あの、姉が申し訳ございません」
「ルルア様が謝られる事ではないですよ」
側近の人に謝ると、彼は苦笑しながら首を横に振った。
「ルルア、どうした?」
「あ、あの、ポールから資料を頼まれまして」
アーク殿下が仕事の手を止めて、立ち上がって私の方に近付いてくる。
それと同時に殿下の側近は何も言わずに、執務室の中にある小さな小部屋に続く扉を開けて、中に入ってしまった。
どう気遣ったのかわからないけれど、2人きりにしてくれたみたい。
「わざわざお前に運ばせるなんて、あいつも悪い奴だな」
「殿下、どうしたんです?」
近付いてきた殿下の目の下に大きなくまが出来ていたから、慌てて尋ねると視線をそらされた。
「何があったんです? 眠れてないんですか?」
殿下は私の質問には答えずに、私が持っていた書類を奪い取るようにして受け取ったあと、机の上に放り投げて、いきなり私を抱きしめてきた。
「で、殿下!? 一体、何を考えてるんです!?」
押しのけようとするけれど、彼の力が強いので無理だった。
しょうがないので、そのままの状態で尋ねる。
「どうかされたんですか?」
「いや、しばらく忙しくなりそうだから、気力の充電をさせてもらった」
「ここ最近、本当に遠慮がなくなってきましたね」
「元々、俺に遠慮なんてない」
「そうですか? なら、どうして昔から私にアピールしてこなかったんです?」
殿下が無言になってしまったので、何か変な事を聞いたかな、と不安に思っていると、少し時間がたってから口を開いた。
「お前がポールを好きな事をわかっているのに、どうこうする訳にはいかないだろう。ポールの気持ちもわからなかったしな」
「ポールと私が上手くいっていたら、何も言わないつもりだったんですか」
「そうなるな…」
そこまで言ったところで、殿下の身体の力が抜け、崩れ落ちそうになったので、何とか抱きとめる。
「殿下! しっかりして下さい! 殿下! すぐにお医者様を呼びますね! ティーダさん!」
「……大丈夫だ、ルア。大げさに騒ぐな。眠いだけだ」
「大丈夫じゃないです! ティーダさん来て下さい!」
慌てて殿下の側近の名前を呼ぶと、隣の小部屋から執務室に戻ってくるなり、殿下の様子見て、慌てて私から殿下を受け取ってくれ、殿下を抱えたので、扉を開ける。
私達が出てきた事でお姉さまが何やら叫んでいたけれど、そんな事を気にしていられなかった。
ティーダさんと一緒に殿下の部屋に向かい、ベッドの上に横たわらせると「少し仮眠する」と言って、すぐに殿下は眠りについてしまった。
「たぶん、寝不足なんだと思います。ここ最近、ほとんど寝ずに仕事と、問題事をどう片付けるかを考えていらっしゃったようですので」
「問題事?」
「そうなんです。でも、それが何かは教えてくれないんですけど」
殿下のお世話はメイドにお願いして、私とティーダさんが部屋を出ると、お姉さまが可愛らしい顔を歪めて近寄ってきた。
「ルルア、あなたに話があるの」
「私はないわ」
背を向けて歩き出すと、お姉さまは言った。
「私、殿下の弱みを握ってるの。だから、その内、殿下は私のものになるわ!」
「弱み?」
聞き返すと、お姉さまはにんまりと笑った。
だけど、お姉さまの思うようにさせたくもない。
どちらの気持ちが強いか。
選ぶなら、お姉さまに負ける方が嫌だわ。
何より、アーク殿下の気持ちに対して失礼すぎる。
こんな気持ちがグルグル渦巻いて、本当に私らしくない。
「どうしたら良いのかしら」
ポールにアーク殿下に渡すように頼まれた書類を胸に抱きしめながら、アーク殿下の執務室に向かっていた。
すると、執務室の前で誰かが騒いでいるのが見えて、ぎょっとした。
殿下の執務室の前で騎士のアイラと揉み合っていたのは、私のお姉さまだった。
うわあ、最悪。
そう思って、その場で足を止める。
「アーク殿下に会わせなさい! 騎士のくせに生意気よ!」
「騎士だから通せないと言ってるんです! 私の事は何とでも言って下さって結構ですから、本日はお帰り下さい!」
アイラとお姉さまが言い合っている横で、この先は行かせないと言わんばかりに男性の騎士が立っている。
男性の騎士は、私の視線に気が付いた様で小さく頭を下げ、自分の背中の方にある扉を指差す。
入りたいのかと聞かれているのかと思って頷くと、騎士は扉をノックして、私の来訪を告げてくれた。
それと同時に、お姉さまが私に気付いた。
「ルルア、あなた!」
「ルルア様! 中にお入り下さい」
近寄ってきたお姉さまと私の間にアイラが入ってくれて、私は小さく開いた扉の隙間から入ると、すぐに扉が閉められ、近くにいた、殿下の側近が鍵を締めた。
「あの、姉が申し訳ございません」
「ルルア様が謝られる事ではないですよ」
側近の人に謝ると、彼は苦笑しながら首を横に振った。
「ルルア、どうした?」
「あ、あの、ポールから資料を頼まれまして」
アーク殿下が仕事の手を止めて、立ち上がって私の方に近付いてくる。
それと同時に殿下の側近は何も言わずに、執務室の中にある小さな小部屋に続く扉を開けて、中に入ってしまった。
どう気遣ったのかわからないけれど、2人きりにしてくれたみたい。
「わざわざお前に運ばせるなんて、あいつも悪い奴だな」
「殿下、どうしたんです?」
近付いてきた殿下の目の下に大きなくまが出来ていたから、慌てて尋ねると視線をそらされた。
「何があったんです? 眠れてないんですか?」
殿下は私の質問には答えずに、私が持っていた書類を奪い取るようにして受け取ったあと、机の上に放り投げて、いきなり私を抱きしめてきた。
「で、殿下!? 一体、何を考えてるんです!?」
押しのけようとするけれど、彼の力が強いので無理だった。
しょうがないので、そのままの状態で尋ねる。
「どうかされたんですか?」
「いや、しばらく忙しくなりそうだから、気力の充電をさせてもらった」
「ここ最近、本当に遠慮がなくなってきましたね」
「元々、俺に遠慮なんてない」
「そうですか? なら、どうして昔から私にアピールしてこなかったんです?」
殿下が無言になってしまったので、何か変な事を聞いたかな、と不安に思っていると、少し時間がたってから口を開いた。
「お前がポールを好きな事をわかっているのに、どうこうする訳にはいかないだろう。ポールの気持ちもわからなかったしな」
「ポールと私が上手くいっていたら、何も言わないつもりだったんですか」
「そうなるな…」
そこまで言ったところで、殿下の身体の力が抜け、崩れ落ちそうになったので、何とか抱きとめる。
「殿下! しっかりして下さい! 殿下! すぐにお医者様を呼びますね! ティーダさん!」
「……大丈夫だ、ルア。大げさに騒ぐな。眠いだけだ」
「大丈夫じゃないです! ティーダさん来て下さい!」
慌てて殿下の側近の名前を呼ぶと、隣の小部屋から執務室に戻ってくるなり、殿下の様子見て、慌てて私から殿下を受け取ってくれ、殿下を抱えたので、扉を開ける。
私達が出てきた事でお姉さまが何やら叫んでいたけれど、そんな事を気にしていられなかった。
ティーダさんと一緒に殿下の部屋に向かい、ベッドの上に横たわらせると「少し仮眠する」と言って、すぐに殿下は眠りについてしまった。
「たぶん、寝不足なんだと思います。ここ最近、ほとんど寝ずに仕事と、問題事をどう片付けるかを考えていらっしゃったようですので」
「問題事?」
「そうなんです。でも、それが何かは教えてくれないんですけど」
殿下のお世話はメイドにお願いして、私とティーダさんが部屋を出ると、お姉さまが可愛らしい顔を歪めて近寄ってきた。
「ルルア、あなたに話があるの」
「私はないわ」
背を向けて歩き出すと、お姉さまは言った。
「私、殿下の弱みを握ってるの。だから、その内、殿下は私のものになるわ!」
「弱み?」
聞き返すと、お姉さまはにんまりと笑った。
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