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11 撃退しましょうか
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お兄様に連絡したところ、すんなりと二人の婚約が決まった。
はたから見ればお互いに考えていることが見え見えなのに、当の本人たちは気が付いていないようだった。
シイオ子爵夫妻はお兄様との婚約に乗り気ではなかった。
でも、このままでは娘を誰ももらってくれる人がいないということで、お兄様で妥協したという形だった。
お兄様にしてみれば、シイオ子爵令嬢はわたくしから婚約者を奪った女性ですから、とても素敵な女性に感じられるのでしょうね。
それに、見た目だって素敵ですもの。
性格はわたくしとシイオ子爵令嬢のどちらが悪いかと言われれば……、たぶん、わたくしでしょうね。
わたくしの性格は悪いかもしれない。
でも、シイオ子爵令嬢のように関係のない人に迷惑をかけるような真似はしていないはずだわ。
……たぶん、きっと、
わたくしがこんなくだらないことを考えている間に、ランドリュー様があることで動いてくれていることなど、この時は想像もしていなかった。
******
それは、お兄様とシイオ子爵令嬢の婚約が決まってから、約十日が過ぎた頃だった。
「いよいよ、モフルー伯爵家は財政が厳しくなったようで、屋敷を売りに出しましたよ」
「や、屋敷をですか? よっぽど苦しくなったのですね」
「そうなんです。で、良かったら一緒に屋敷を見に行きませんか」
ランドリュー様は満面の笑みで、わたくしを誘ってきた。
少し考えてから尋ねる。
「あの家に行けば、両親やお兄様、ケサス様にも会うことになるのでしょう?」
「今は家族揃って子爵家にお世話になってるようですよ。没落する前に屋敷を売ったんですから、思ったよりも賢かったようですね」
「でも、領民が気の毒ですわ」
「屋敷がなくても仕事はできますから大丈夫でしょう」
「それはまあ、そうですわね」
家を売ったとしても、領民に迷惑がかかることはない。
使用人たちは職を失うけれど、賢い人はすでに辞めているでしょうしね。
「ファリンが喜んでくれると良いのですが」
「わたくしが喜ぶというのは、一体何なのでしょうか」
「とりあえず行ってみましょう」
不思議そうにしているわたくしの手を引いて、ランドリュー様は待たせていた馬車に乗り込んだ。
馬車の中で詳しい話を聞こうとしてみたけれど、ランドリュー様は可愛らしい笑みを浮かべるだけで何も教えてくれなかった。
モフルー伯爵邸に着き、門番に門を開けてもらうために馬車が停まった時だった。
「モフルー卿! やっと戻ってきてくれたのか! 早く中に入れてくれ!」
ケサス様の声が聞こえてきた。
馬車にはミノスラード家の家紋があるはずなのに、モフルー家の馬車だと思い込んでいるらしい。
「兄さんはモフルー家がここを売ったことを知らないようです。モフルー家に捨てられたんですね」
「撃退しましょうか」
持参していたランちゃんを見せると、ランドリュー様は苦笑する。
「ファリンはそれを使いたくてしょうがないみたいですね」
「はい!」
笑顔で頷くと、ランドリュー様は御者に扉を開けるように声を掛けた。
扉が開くと、まずはランドリュー様が外に出て、わたくしに手を差しのべてくれた。
その手を借りて、ケサス様の前に降り立つと、ケサス様の表情が歪んだ。
「どうして、お前たちがここにいるんだ?」
「兄さん、あなたこそ、どうしてこんな所にいるんです?」
「俺はここの家に世話になってるんだ。この家は俺の家のようなもんなんだ!」
何を訳のわからないことを言っているのかしら。
ランちゃんを握る手を強めた時、ランドリュー様が口を開く。
「兄さん、ここはあなたの家ではありません。そして、モフルー家のものでもありません。この家は僕が買い取りましたから、僕のものです」
「……え?」
「な、なんだってぇ?」
わたくしの聞き返す声と、ケサス様の驚いた声が重なった。
はたから見ればお互いに考えていることが見え見えなのに、当の本人たちは気が付いていないようだった。
シイオ子爵夫妻はお兄様との婚約に乗り気ではなかった。
でも、このままでは娘を誰ももらってくれる人がいないということで、お兄様で妥協したという形だった。
お兄様にしてみれば、シイオ子爵令嬢はわたくしから婚約者を奪った女性ですから、とても素敵な女性に感じられるのでしょうね。
それに、見た目だって素敵ですもの。
性格はわたくしとシイオ子爵令嬢のどちらが悪いかと言われれば……、たぶん、わたくしでしょうね。
わたくしの性格は悪いかもしれない。
でも、シイオ子爵令嬢のように関係のない人に迷惑をかけるような真似はしていないはずだわ。
……たぶん、きっと、
わたくしがこんなくだらないことを考えている間に、ランドリュー様があることで動いてくれていることなど、この時は想像もしていなかった。
******
それは、お兄様とシイオ子爵令嬢の婚約が決まってから、約十日が過ぎた頃だった。
「いよいよ、モフルー伯爵家は財政が厳しくなったようで、屋敷を売りに出しましたよ」
「や、屋敷をですか? よっぽど苦しくなったのですね」
「そうなんです。で、良かったら一緒に屋敷を見に行きませんか」
ランドリュー様は満面の笑みで、わたくしを誘ってきた。
少し考えてから尋ねる。
「あの家に行けば、両親やお兄様、ケサス様にも会うことになるのでしょう?」
「今は家族揃って子爵家にお世話になってるようですよ。没落する前に屋敷を売ったんですから、思ったよりも賢かったようですね」
「でも、領民が気の毒ですわ」
「屋敷がなくても仕事はできますから大丈夫でしょう」
「それはまあ、そうですわね」
家を売ったとしても、領民に迷惑がかかることはない。
使用人たちは職を失うけれど、賢い人はすでに辞めているでしょうしね。
「ファリンが喜んでくれると良いのですが」
「わたくしが喜ぶというのは、一体何なのでしょうか」
「とりあえず行ってみましょう」
不思議そうにしているわたくしの手を引いて、ランドリュー様は待たせていた馬車に乗り込んだ。
馬車の中で詳しい話を聞こうとしてみたけれど、ランドリュー様は可愛らしい笑みを浮かべるだけで何も教えてくれなかった。
モフルー伯爵邸に着き、門番に門を開けてもらうために馬車が停まった時だった。
「モフルー卿! やっと戻ってきてくれたのか! 早く中に入れてくれ!」
ケサス様の声が聞こえてきた。
馬車にはミノスラード家の家紋があるはずなのに、モフルー家の馬車だと思い込んでいるらしい。
「兄さんはモフルー家がここを売ったことを知らないようです。モフルー家に捨てられたんですね」
「撃退しましょうか」
持参していたランちゃんを見せると、ランドリュー様は苦笑する。
「ファリンはそれを使いたくてしょうがないみたいですね」
「はい!」
笑顔で頷くと、ランドリュー様は御者に扉を開けるように声を掛けた。
扉が開くと、まずはランドリュー様が外に出て、わたくしに手を差しのべてくれた。
その手を借りて、ケサス様の前に降り立つと、ケサス様の表情が歪んだ。
「どうして、お前たちがここにいるんだ?」
「兄さん、あなたこそ、どうしてこんな所にいるんです?」
「俺はここの家に世話になってるんだ。この家は俺の家のようなもんなんだ!」
何を訳のわからないことを言っているのかしら。
ランちゃんを握る手を強めた時、ランドリュー様が口を開く。
「兄さん、ここはあなたの家ではありません。そして、モフルー家のものでもありません。この家は僕が買い取りましたから、僕のものです」
「……え?」
「な、なんだってぇ?」
わたくしの聞き返す声と、ケサス様の驚いた声が重なった。
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