幸せなお飾りの妻になります!

風見ゆうみ

文字の大きさ
上 下
59 / 69
第二部

9  女王陛下の思いつき

しおりを挟む
 現れたのは、ピンク色の髪をシニヨンにした大きなピンク色のリボンをつけた可愛らしい少女と、その隣には小柄で華奢な体型のセーラ女王陛下よりもはるかに背が高く、すらりとした体型の男性だった。
 たぶん、彼が王配のディール殿下なのだと思われる。
 
 私達のいる位置からは少し遠いので、リアムに促されて、ゆっくりと近寄っていくと、余計に女王様の顔が小顔でとても可愛いらしいということがわかった。
 そして、その配偶者であるディール殿下も、リアムとは違い、堀の深いワイルドな感じの整った顔立ちで、女性に人気のありそうなお顔をされていた。

 お二人が可愛い、そして、格好良いので、ついつい見惚れていると、強く肩を抱き寄せられたので、リアムのほうを見る。

「ど、どうしたんですか?」
「見すぎだよ」
「え? あ、そんなに失礼でしたかね」
「違う。セーラ女王陛下を見るのはいいけど、ディール殿下を見すぎ」
「もっと私を信用してください。そういう気持ちで見ていたんじゃありません」
「そういうように見えたんだけど?」

 両思いになるまでは落ち着いたイメージのリアムだったけど、思いが通じ合ってからのリアムは嫉妬深くもなった。
 束縛とまではいかないけれど、私が他の男性と一緒にいたりすると、少しだけ不機嫌になる。
 たとえ、私が誰かに見惚れたとしても、相手は私になんて興味がないのだから、気にしなくても良いのに。

 って、そういう問題じゃなかったりする?

「別に殿下だけを見て、惚けていたわけじゃありません。セーラ女王陛下のことも素敵な方だなあ、と思って見惚れていましたから」
「でも、アイリス、これからは気を付けてね? 最近、気付いたんだけど、僕は嫉妬深いみたいだから」

 それは知ってます。
 それにしても、私の言葉は彼の耳に届かなかったのかしら?
 女王陛下のことも見ていたと言ったはずなんだけど?
 
 そうこうしている内に、女王陛下からの挨拶があり、それが終わると、また先程の様に歓談の時間になった。
 会場のど真ん中に、これまたピンク色の椅子が置かれていて、そこに両陛下が座られたので、貴族は順番に挨拶していくことになった。

「僕達も行かないといけないね」
「はい! あの、リアム! 挨拶が終わったら、あっちのスイーツを食べても良いですか?」

 少しだけ緊張がほぐれてきたのもあり、リアムに聞いてみると、優しく微笑んでくれる。

「いいよ。食べすぎて苦しくならないようにね」
「加減くらい出来ます!」

 ムッとして言い返すと、リアムは微笑んだまま、何も言わずに私の頬を撫でた。

 子供扱いされてるわ!
 でも、スイーツは食べたいのよね。
 だって、住んでる国では見かけないスイーツが並んでるんだもの!
 別にスイーツを食べたいという気持ちは、私以外の大人にだってあるんだから、子供扱いしないでほしい。

「何を言われようが私は食べますから。ちょっとくらいワガママ言っても良いと思うんです」
「うん、いいよ。そんな可愛いワガママなら大歓迎だし、アイリスはもっとワガママ言ってもいいんだよ?」
「十分ワガママを言ってるからいいんです!」

 リアムが優しすぎて、ついつい意地を張ってしまう。
 それに、彼は私よりも大人だからなのか、公爵という自覚からなのか、大人な余裕を見せてくるのが悔しい。

 そんなことを思っていたら、ついに私達が挨拶する番になった。
 リアムと私が定型文のような挨拶の言葉を述べて頭を下げると、女王陛下は言った。

「可愛らしい奥様ね! それにしても、マオニール公爵は噂で聞いていた通り、本当に素敵だわ!」
 
 女王陛下は壇上から私達を見下ろし、ぱちんと手を打つと叫んだ。

「私、マオニール公爵が欲しいわ!」
「はい?」

 私とリアムの聞き返す声が重なった。



しおりを挟む
感想 179

あなたにおすすめの小説

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

【完結】え、お嬢様が婚約破棄されたって本当ですか?

瑞紀
恋愛
「フェリシア・ボールドウィン。お前は王太子である俺の妃には相応しくない。よって婚約破棄する!」 婚約を公表する手はずの夜会で、突然婚約破棄された公爵令嬢、フェリシア。父公爵に勘当まで受け、絶体絶命の大ピンチ……のはずが、彼女はなぜか平然としている。 部屋まで押しかけてくる王太子(元婚約者)とその恋人。なぜか始まる和気あいあいとした会話。さらに、親子の縁を切ったはずの公爵夫妻まで現れて……。 フェリシアの執事(的存在)、デイヴィットの視点でお送りする、ラブコメディー。 ざまぁなしのハッピーエンド! ※8/6 16:10で完結しました。 ※HOTランキング(女性向け)52位,お気に入り登録 220↑,24hポイント4万↑ ありがとうございます。 ※お気に入り登録、感想も本当に嬉しいです。ありがとうございます。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~

ゆうき
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。 長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。 心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。 そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。 そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。 レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。 毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。 レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく―― これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。 ※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら? この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。 主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。 以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。 ※カクヨム。なろうにも時差投稿します。 ※作者独自の世界です。

処理中です...