上 下
29 / 69

29 目的は謝罪ではない?

しおりを挟む
叶斗の飛沫を受けるまで逝っても飢えが収まらなかった俺は、発情期が直ぐそこまで来ていたみたいだ。それは三人と番になる時が来たのと同じ意味で、俺は少し焦った様子の叶斗に言った。

「…まだ今すぐじゃないと思うけど、でも時間の問題だと思う。誠に連絡したほうが良いよね?あと、どうしたら…。」

自分でも冷静になろうと考えを巡らせていたけれど、何処かぼんやりとしてくる。そんな俺の様子を見て、叶斗は俺にシャワーを浴びせて言った。

「とりあえず、マットプレイのヌルヌルは取らないとベッド行けないだろ?そろそろ新も戻ってくるだろうし、俺もあちこち連絡しないと。部屋に戻ろう。…くそっ、岳の匂いが強くてマジでヤバい。でもさっきより落ち着いた?」


「…ああ。叶斗のが俺の中に入ってるからかも。」

叶斗に洗われながら、俺は目の前の叶斗をじっと見つめてしまう。ああ、このアルファを喰いたい。思わず首に手を伸ばして強請ってしまった。

「かなと…。キスして。」

叶斗は息を止めて眉を顰めると首を振った。

「応えたいけど、とりあえずベッド行こ。新にも言わないと。あー、岳が可愛いし、煽ってくるし、良い匂い過ぎて俺もう流されたい!」


俺はボンヤリした頭で、叶斗に浴室から引っ張り出されながらベッドへ連れて行かれた。叶斗が俺にネックガードの鍵について尋ねてきて、僕はスマホを取り出して認証すると、ネックの鍵と連動させた。

時々自宅では取っていたので慣れたものだ。思いの外大きな電子音が聞こえると、首がすっきりと開放感に包まれた。特殊な素材で出来たそれは蒸れるという事もなかったけれど、ネックガードがひざに落ちると、これから番うのだと妙な緊張感が感じられた。


食い入る様な視線を感じて顔をあげると、叶斗が顔を赤くして俺を見下ろしていた。

「ふー、ヤバい。ガード無しとかエロい。」

俺はクスッと笑って何も防御されてない首を撫でた。

「何それ。でも何も無いと怖い感じするのって、アルファのお前が側にいるせいかな…。まだ噛むなよ?正直本格的な発情期来ないと噛んでも痛いだけみたいだし。」


すると叶斗は両手で顔を覆って上を向いた。

「あー!しまったぁっ!これって一番最初が新ってことじゃん!」

そう言って悲嘆にくれる叶斗を呆れて見つめながら、それでも自分の中でじわじわ暴れ出す覚えのある感覚に息を吐き出した。丁度その時、新が帰ってきて口元に腕を押し付けながら俺たちを見つめた。

「え!どういう事!?凄い匂いだぞ!?」


まるで俺が臭い元の様な言い草に、俺は新を睨んだ。すると新は両手に下げた荷物をテーブルに置いて呟いた。

「マジで…。発情期来るの?」

俺は新の顔が満面の笑みに変わるのを見つめながら、荷物に目を移して言った。

「とりあえず、まだ冷静なうちに腹ごしらえするよ。父さんにも連絡しなくちゃ。」









しおりを挟む
感想 179

あなたにおすすめの小説

【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。

千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。 だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。 いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……? と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。

愛人がいらっしゃるようですし、私は故郷へ帰ります。

hana
恋愛
結婚三年目。 庭の木の下では、旦那と愛人が逢瀬を繰り広げていた。 私は二階の窓からそれを眺め、愛が冷めていくのを感じていた……

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ
恋愛
 ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。  ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。  その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。  ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?  

辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜

津ヶ谷
恋愛
 ラース・ナイゲールはローラン王国の伯爵令嬢である。 次期公爵との婚約も決まっていた。  しかし、突然に婚約破棄を言い渡される。 次期公爵の新たな婚約者は妹のミーシャだった。  そう、妹に婚約者を奪われたのである。  そんなラースだったが、気持ちを新たに次期辺境伯様との婚約が決まった。 そして、王国の辺境の地でラースは持ち前の医学知識と治癒魔法を活かし、獣医となるのだった。  次々と魔獣や神獣を治していくラースは、魔物たちに気に入られて楽しく過ごすこととなる。  これは、辺境の獣医令嬢と呼ばれるラースが新たな幸せを掴む物語。

求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。

待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。 父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。 彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。 子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

処理中です...