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最終章 あなたには彼女がお似合いです
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ディエル様たちが調べてくれたところによると、ファーラ様とロロゾフの国王陛下の離婚は、わたしたちが実家を出た朝に成立していた。
お父様が手を貸したのではないかと聞いて、ファーラ様を楽に死なせないようにしたのだとわかり、お父様らしいとも思った。
それと同時にポーラ様の親権もファーラ様に移り、処刑されるのは国王陛下のみになった。
本来なら、こんなことは許されるはずもなく、ポーラ様もファーラ様も処刑されなければならない。
でも、それをしなかったのは、生かして地獄を味あわせたいという、わたしたち家族の強い思いを汲んでくださったからだった。
*****
それから数日後のロロゾフ王国の国王陛下が処刑される当日、わたしはランシード様と一緒に実家に向かった。
ロビースト様だけでなく、ファーラ様も、未だ地下牢に入れられたままでいたからだ。
ラソウエ公爵家の仕事は、お父様含む、他の公爵家で手分けをしていて、ロビースト様は爵位を剥奪されていた。
でも、本人も地下牢にいれられているファーラ様も、そのことは知らなかった。
そして、私たちが出て行ったあとに、地下牢には新たなお客様が増えていて、そのお客様もロビースト様の爵位の剥奪のことは知らなかった。
地下牢の中はランタンの明かりが届きにくく、まだ昼前だというのに薄暗かった。
外の光を入れられる天窓はあるけれど、かなり高い位置にあり、どうしたって逃げ出すことはできない。
騎士たちを連れた、わたしとランシード様が牢屋の前に立つと、ロビースト様が鉄格子を掴んで叫ぶ。
「セフィリア! わたくしをここから出してください! こんなことをしても良いと思っているんですか!」
「してはいけないことをしておいて、よくも、そんなことが言えますわね?」
失笑すると、ロビースト様は血走った目でわたしを見つめる。
「おかしいでしょう! わたくしは公爵です。ある程度なら無茶をしても許されるはずです! わたくしはただ、妻がほしいだけです! わたくしの子供を生んでもらうために!」
「女性はあなたにとっては子供を生んでもらうためのものなのですか?」
「そうです! それくらいしかできないじゃないですか」
「そんな訳無いでしょう!」
わたしが声を荒らげると、ロビースト様は言う。
「あなたはわたくしに選ばれたのですから、自信を持って良いのですよ?」
「多くの女性はあなたになんて選ばれたくないようですけど?」
「わたくしの良さがわからない愚か者なんですよ」
ロビースト様は笑顔で答えた。
お父様は性格が悪いから、地下牢に閉じ込めてはいるけれど、身なりを整えさせ、食事もちゃんとしたものを与えていた。
だから、ロビースト様は自分の爵位が剥奪されたなんて思ってもいないのでしょう。
公爵だから、良い待遇をしてもらっていると思い込んでいるのだと思う。
わたしはランシード様に目を向ける。
ランシード様はわたしに任せてくれるのか、首を小さく縦に振った。
思惑を悟られないように注意して、ロビースト様に話しかける。
「外に出たいですか?」
「もちろんです! 仕事が溜まっているでしょうから」
「あなたをここから出しても良いのですが、条件があります」
「何でしょう?」
ロビースト様は希望の光が見えてきたと思ったのか、笑みを浮かべた。
「元王女殿下である、ポーラ様と結婚してください」
「はあ!?」
反応したのは、隣の牢に入れられているポーラ様だった。
「どうして、わたくしがラソウエ公爵と結婚しなければならないの!?」
「ちょっと待って、ポーラ! 私たちはここを出たら、どうやって暮らしていけば良いのかわからないわ!」
「お母様の実家に帰るんじゃないんですか!?」
「そうしようと思っていたけれど、あなたがラソウエ公爵と結婚すれば、実家に帰るよりも贅沢ができるわ!」
ファーラ様とポーラ様が会話をしている間に、ロビースト様がわたしに訴えてくる。
「嫌に決まっているでしょう! どうしてわたくしが王家に関わりのある娘と結婚しなければならないんですか!」
ロビースト様が文句を言ってきた。
答えは簡単だから、笑顔で伝える。
「あなたには彼女がお似合いです」
性格の悪い者同士、しかも、ロビースト様は王族を嫌っている。
そんな女性と結婚しなければならないことは苦痛以外の何物でもないでしょう。
「彼女がお似合いですって?」
ロビースト様は良い意味に捉えてくれたらしい。
「まあ、子供を生んでくれるのなら、それで良いでしょう。王族ではなくなりましたしね」
「私も一緒に養ってくれるわよね!?」
ファーラ様が問いかけたけれど、それに対して、ロビースト様は何も答えなかった。
*****
地下牢の中で手続きは終わり、ロビースト様とポーラ様は婚姻関係を結んだ。
三人を牢屋から出して、彼らが希望したラソウエ公爵家の門の前まで送っていった。
彼らが馬車から降りると、邸の異変に気が付かれない内に、馬車の窓を開けて別れを告げる。
「さようなら。もう二度と会うことはないでしょう。これからが大変かと思います。今までやってきたことの報いだと思って受け入れてくださいね」
わたしが話し終えると馬車が動き出す。
ロビースト様たちは、門に向かっていき、すぐに異変に気がついたようだった。
「どうして中にはいれないんですか! わたくしはこの家の当主ですよ!」
ラソウエ公爵家はなくなり、今は新たな人物が住んでいた。
だから、ロビースト様たちが中に入れるわけがない。
後ろにも窓があるので、離れていく彼らを見ていると、馬車を追って走ってくる姿が見えた。
「そんな! どういうことなんですか!」
「これからわたくしたちはどうなるの!? お願い! やっぱり地下牢に戻して!」
ロビースト様とポーラ様の叫ぶ声が聞こえた。
「豚だなんて言って悪かったわ! 謝るから許してちょうだい!」
絶望しているのか、ファーラ様が地面に膝をついている姿も見える。
彼らには生きている間は監視がつく。
貴族や王族じゃなくなった彼らが、これからどんな道を歩むのかはわからない。
ただ、楽な人生を歩むことはできないということだけはわかった。
*****
それから約1年後、ロロゾフ国に新たな国王が即位した。
それと同時に、テイルス王国は政治介入をやめ、配備していた軍隊も撤退した。
そのことで観光客が戻り始めた。
それから五十日が経った今では、観光地は多くの人で賑わっているそうだ。
この1年と少しの間にデスタは処刑され、ソレーヌ様はラソウエ公爵家がなくなった時点で解放されて、今は修道院にいる。
わたしとランシード様の距離もかなり近づいていて、結婚の日も間近に迫っていた。
「ロビーストとポーラは今も一緒にいて、観光客にお金を恵んでもらいながら生きてるらしいよ。喧嘩ばかりしているらしいけど」
並んでソファに座り、わたしの肩に腕を回しているランシード様が教えてくれた。
わたしはランシード様の肩に自分の頬を寄せて尋ねる。
「少しは自分のやったことを悔いてはいるんでしょうか?」
「いや、責任転嫁ばかりしてるみたいだ。ロビーストはポーラが稼いだお金を奪おうとして、通行人に痛い目に遇わされてるようだよ。それにポーラの性格だから、もしかしたら、彼女は近いうちにロビーストを自分の母親のような目に遭わせるかもしれない」
ファーラ様は半年前に暴漢に刺されて亡くなっていた。
ファーラ様は王妃時代にお母様以外の人もいじめていたらしく、その中の誰かが復讐を依頼したのではないかと言われている。
お父様に何かしたかと手紙を送ると「私は何もしていない。因果応報だ」と返事がきたので、お父様が手配した人間ではないらしい。
ポーラ様がロビースト様に危害を加えたとしたら、今度こそ、ポーラ様は捕まり、その後はどうなるかわからない。
「そんなことにならないと人は、自分が悪いことをしたと気付けないものなんでしょうか?」
「一部の人間だけだろ。人の多くは悪人ではないんだから」
「そうですね」
苦笑して頷くと、ランシード様がわたしの顎を手で上げてキスをしてきた。
「ど、どうしてキスするんですか!?」
「セフィリアと二人きりなのに、何もしないなんておかしいでしょ?」
「駄目です!」
「キスは良いって言ったじゃないか」
ランシード様は彼の口を押さえているわたしの両手首を掴んで、またキスをしてきた。
結婚するまではキスまでという話になっているから、彼の言っていることは間違っていない。
でも、彼のキスは甘いから、その先まで許してしまいそうになるから嫌なのだ。
唇が離れると、ランシード様は名残惜しそうな顔をするから困ってしまう。
「ロビーストにはポーラがお似合いだと言ってただろ?」
「はい」
「俺には誰が似合うと思う?」
ランシード様はわたしの額に自分の額を当てて、意地悪な笑みを浮かべて聞いてきた。
わたしが眉根を寄せると、ランシード様は笑って、またキスをしてきた。
本当に意地悪な人だわ。
出会いからして、普通の出会いじゃなかった。
一緒にいて、どんどん惹かれてしまったけれど、ランシード様は義務感だったりしたら、どうしようかと不安になった。
でも、そんな不安もすぐに払拭してくれるくらい、ランシード様はわたしを大事にしてくれている。
繰り返されるキスが心地よくてふわふわするような感覚を覚えながらも、ランシード様にお似合いだと言われる女性になりたいと、心から思った。
そして、それから2年後、わたしはお母様のお墓にランシード様との子供を連れて行って口には出さずに話しかけた。
お母様、わたしを生んでくれてありがとう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
元々、このお話を書き始めたのは、映画の「ゴーン・ガー○」や「ガー○・オン・ザ・トレイン」のようなテイストの作品を書いてみたいと思ったからなんですが、まあ、違うものになりました。
(両方とも正確にいえば、ガールという年齢ではない映画で、内容が云々というより、登場人物のクズっぷりが私の中では本当にすごかった。しかも主人公も両方酷かった)
ただ、クズが多いお話にはなったかなと思っております。(良くない)
ストレスが溜まったという方には申し訳ないです。
あと、ロビーストとポーラはこうするつもりでいたので、一人称を「わたくし」に統一しておりました。
そして、ロビーストとポーラの最後に関してはR15で良いのかわからないので、最後は匂わす程度でわざと書いておりません。
お気に入り、感想、しおり、エールをありがとうございました。
本当に励みになりました。
少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。
というわけで、新作を投稿しております!
相変わらずクズは多いですが、ヒロインの気が強いため、ヒロインが可哀想というストレスは、ほぼ皆無のものとなっております。
タイトルは「必要ないものは「いりません」と言うことにしました」になります。
幼い頃から色々と我慢してきたヒロインが、とあることをきっかけに、人間関係の断捨離を決意します。
すると、家族や元婚約者など、ヒロインを裏切った人たちは……といった感じです。
ご興味ありましたら、そちらでもお会いできますと幸いです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
お父様が手を貸したのではないかと聞いて、ファーラ様を楽に死なせないようにしたのだとわかり、お父様らしいとも思った。
それと同時にポーラ様の親権もファーラ様に移り、処刑されるのは国王陛下のみになった。
本来なら、こんなことは許されるはずもなく、ポーラ様もファーラ様も処刑されなければならない。
でも、それをしなかったのは、生かして地獄を味あわせたいという、わたしたち家族の強い思いを汲んでくださったからだった。
*****
それから数日後のロロゾフ王国の国王陛下が処刑される当日、わたしはランシード様と一緒に実家に向かった。
ロビースト様だけでなく、ファーラ様も、未だ地下牢に入れられたままでいたからだ。
ラソウエ公爵家の仕事は、お父様含む、他の公爵家で手分けをしていて、ロビースト様は爵位を剥奪されていた。
でも、本人も地下牢にいれられているファーラ様も、そのことは知らなかった。
そして、私たちが出て行ったあとに、地下牢には新たなお客様が増えていて、そのお客様もロビースト様の爵位の剥奪のことは知らなかった。
地下牢の中はランタンの明かりが届きにくく、まだ昼前だというのに薄暗かった。
外の光を入れられる天窓はあるけれど、かなり高い位置にあり、どうしたって逃げ出すことはできない。
騎士たちを連れた、わたしとランシード様が牢屋の前に立つと、ロビースト様が鉄格子を掴んで叫ぶ。
「セフィリア! わたくしをここから出してください! こんなことをしても良いと思っているんですか!」
「してはいけないことをしておいて、よくも、そんなことが言えますわね?」
失笑すると、ロビースト様は血走った目でわたしを見つめる。
「おかしいでしょう! わたくしは公爵です。ある程度なら無茶をしても許されるはずです! わたくしはただ、妻がほしいだけです! わたくしの子供を生んでもらうために!」
「女性はあなたにとっては子供を生んでもらうためのものなのですか?」
「そうです! それくらいしかできないじゃないですか」
「そんな訳無いでしょう!」
わたしが声を荒らげると、ロビースト様は言う。
「あなたはわたくしに選ばれたのですから、自信を持って良いのですよ?」
「多くの女性はあなたになんて選ばれたくないようですけど?」
「わたくしの良さがわからない愚か者なんですよ」
ロビースト様は笑顔で答えた。
お父様は性格が悪いから、地下牢に閉じ込めてはいるけれど、身なりを整えさせ、食事もちゃんとしたものを与えていた。
だから、ロビースト様は自分の爵位が剥奪されたなんて思ってもいないのでしょう。
公爵だから、良い待遇をしてもらっていると思い込んでいるのだと思う。
わたしはランシード様に目を向ける。
ランシード様はわたしに任せてくれるのか、首を小さく縦に振った。
思惑を悟られないように注意して、ロビースト様に話しかける。
「外に出たいですか?」
「もちろんです! 仕事が溜まっているでしょうから」
「あなたをここから出しても良いのですが、条件があります」
「何でしょう?」
ロビースト様は希望の光が見えてきたと思ったのか、笑みを浮かべた。
「元王女殿下である、ポーラ様と結婚してください」
「はあ!?」
反応したのは、隣の牢に入れられているポーラ様だった。
「どうして、わたくしがラソウエ公爵と結婚しなければならないの!?」
「ちょっと待って、ポーラ! 私たちはここを出たら、どうやって暮らしていけば良いのかわからないわ!」
「お母様の実家に帰るんじゃないんですか!?」
「そうしようと思っていたけれど、あなたがラソウエ公爵と結婚すれば、実家に帰るよりも贅沢ができるわ!」
ファーラ様とポーラ様が会話をしている間に、ロビースト様がわたしに訴えてくる。
「嫌に決まっているでしょう! どうしてわたくしが王家に関わりのある娘と結婚しなければならないんですか!」
ロビースト様が文句を言ってきた。
答えは簡単だから、笑顔で伝える。
「あなたには彼女がお似合いです」
性格の悪い者同士、しかも、ロビースト様は王族を嫌っている。
そんな女性と結婚しなければならないことは苦痛以外の何物でもないでしょう。
「彼女がお似合いですって?」
ロビースト様は良い意味に捉えてくれたらしい。
「まあ、子供を生んでくれるのなら、それで良いでしょう。王族ではなくなりましたしね」
「私も一緒に養ってくれるわよね!?」
ファーラ様が問いかけたけれど、それに対して、ロビースト様は何も答えなかった。
*****
地下牢の中で手続きは終わり、ロビースト様とポーラ様は婚姻関係を結んだ。
三人を牢屋から出して、彼らが希望したラソウエ公爵家の門の前まで送っていった。
彼らが馬車から降りると、邸の異変に気が付かれない内に、馬車の窓を開けて別れを告げる。
「さようなら。もう二度と会うことはないでしょう。これからが大変かと思います。今までやってきたことの報いだと思って受け入れてくださいね」
わたしが話し終えると馬車が動き出す。
ロビースト様たちは、門に向かっていき、すぐに異変に気がついたようだった。
「どうして中にはいれないんですか! わたくしはこの家の当主ですよ!」
ラソウエ公爵家はなくなり、今は新たな人物が住んでいた。
だから、ロビースト様たちが中に入れるわけがない。
後ろにも窓があるので、離れていく彼らを見ていると、馬車を追って走ってくる姿が見えた。
「そんな! どういうことなんですか!」
「これからわたくしたちはどうなるの!? お願い! やっぱり地下牢に戻して!」
ロビースト様とポーラ様の叫ぶ声が聞こえた。
「豚だなんて言って悪かったわ! 謝るから許してちょうだい!」
絶望しているのか、ファーラ様が地面に膝をついている姿も見える。
彼らには生きている間は監視がつく。
貴族や王族じゃなくなった彼らが、これからどんな道を歩むのかはわからない。
ただ、楽な人生を歩むことはできないということだけはわかった。
*****
それから約1年後、ロロゾフ国に新たな国王が即位した。
それと同時に、テイルス王国は政治介入をやめ、配備していた軍隊も撤退した。
そのことで観光客が戻り始めた。
それから五十日が経った今では、観光地は多くの人で賑わっているそうだ。
この1年と少しの間にデスタは処刑され、ソレーヌ様はラソウエ公爵家がなくなった時点で解放されて、今は修道院にいる。
わたしとランシード様の距離もかなり近づいていて、結婚の日も間近に迫っていた。
「ロビーストとポーラは今も一緒にいて、観光客にお金を恵んでもらいながら生きてるらしいよ。喧嘩ばかりしているらしいけど」
並んでソファに座り、わたしの肩に腕を回しているランシード様が教えてくれた。
わたしはランシード様の肩に自分の頬を寄せて尋ねる。
「少しは自分のやったことを悔いてはいるんでしょうか?」
「いや、責任転嫁ばかりしてるみたいだ。ロビーストはポーラが稼いだお金を奪おうとして、通行人に痛い目に遇わされてるようだよ。それにポーラの性格だから、もしかしたら、彼女は近いうちにロビーストを自分の母親のような目に遭わせるかもしれない」
ファーラ様は半年前に暴漢に刺されて亡くなっていた。
ファーラ様は王妃時代にお母様以外の人もいじめていたらしく、その中の誰かが復讐を依頼したのではないかと言われている。
お父様に何かしたかと手紙を送ると「私は何もしていない。因果応報だ」と返事がきたので、お父様が手配した人間ではないらしい。
ポーラ様がロビースト様に危害を加えたとしたら、今度こそ、ポーラ様は捕まり、その後はどうなるかわからない。
「そんなことにならないと人は、自分が悪いことをしたと気付けないものなんでしょうか?」
「一部の人間だけだろ。人の多くは悪人ではないんだから」
「そうですね」
苦笑して頷くと、ランシード様がわたしの顎を手で上げてキスをしてきた。
「ど、どうしてキスするんですか!?」
「セフィリアと二人きりなのに、何もしないなんておかしいでしょ?」
「駄目です!」
「キスは良いって言ったじゃないか」
ランシード様は彼の口を押さえているわたしの両手首を掴んで、またキスをしてきた。
結婚するまではキスまでという話になっているから、彼の言っていることは間違っていない。
でも、彼のキスは甘いから、その先まで許してしまいそうになるから嫌なのだ。
唇が離れると、ランシード様は名残惜しそうな顔をするから困ってしまう。
「ロビーストにはポーラがお似合いだと言ってただろ?」
「はい」
「俺には誰が似合うと思う?」
ランシード様はわたしの額に自分の額を当てて、意地悪な笑みを浮かべて聞いてきた。
わたしが眉根を寄せると、ランシード様は笑って、またキスをしてきた。
本当に意地悪な人だわ。
出会いからして、普通の出会いじゃなかった。
一緒にいて、どんどん惹かれてしまったけれど、ランシード様は義務感だったりしたら、どうしようかと不安になった。
でも、そんな不安もすぐに払拭してくれるくらい、ランシード様はわたしを大事にしてくれている。
繰り返されるキスが心地よくてふわふわするような感覚を覚えながらも、ランシード様にお似合いだと言われる女性になりたいと、心から思った。
そして、それから2年後、わたしはお母様のお墓にランシード様との子供を連れて行って口には出さずに話しかけた。
お母様、わたしを生んでくれてありがとう。
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最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
元々、このお話を書き始めたのは、映画の「ゴーン・ガー○」や「ガー○・オン・ザ・トレイン」のようなテイストの作品を書いてみたいと思ったからなんですが、まあ、違うものになりました。
(両方とも正確にいえば、ガールという年齢ではない映画で、内容が云々というより、登場人物のクズっぷりが私の中では本当にすごかった。しかも主人公も両方酷かった)
ただ、クズが多いお話にはなったかなと思っております。(良くない)
ストレスが溜まったという方には申し訳ないです。
あと、ロビーストとポーラはこうするつもりでいたので、一人称を「わたくし」に統一しておりました。
そして、ロビーストとポーラの最後に関してはR15で良いのかわからないので、最後は匂わす程度でわざと書いておりません。
お気に入り、感想、しおり、エールをありがとうございました。
本当に励みになりました。
少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。
というわけで、新作を投稿しております!
相変わらずクズは多いですが、ヒロインの気が強いため、ヒロインが可哀想というストレスは、ほぼ皆無のものとなっております。
タイトルは「必要ないものは「いりません」と言うことにしました」になります。
幼い頃から色々と我慢してきたヒロインが、とあることをきっかけに、人間関係の断捨離を決意します。
すると、家族や元婚約者など、ヒロインを裏切った人たちは……といった感じです。
ご興味ありましたら、そちらでもお会いできますと幸いです。
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感想をありがとうございます!
楽しんでいただけたなら嬉しいです✨
そして、ヒーローが気に入っていただけたことも幸せです💖
最後までお読みいただきありがとうございました✨
お祝いのお言葉をありがとうございます!
サフィーラというのは、セフィリアのことですかね?
私、どこかに間違えて書いてましたか😱
本当に申し訳ないです!
最後まで書いちゃうと血みどろになってしまうのでやめましたΣ(゚∀゚ノ)ノキャー
おっしゃるとおり、悪い人間には悪い人間がお似合いなのかなと思ってしまいます。(更生するなら別ですが)
引き続き、頑張って書いていきますので、よろしくお願い致します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました✨
お祝いのお言葉をありがとうございます!
馬鹿キャラにイライラしつつも、楽しんで読んでいただけたのであれば良かったです。
太真様の感情を揺さぶれたのかと思うと、私としては嬉しいです(´∀`*)ウフフ
最後までお読みいただき、ありがとうございました✨