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第8章 暴走する者たち
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「な、なんてことを言うんだ! そんなことを勝手に決めるんじゃない!」
国王陛下はファーラ様に掴みかかって叫ぶ。
「私は知らんからな! やったのはポーラだ! 娘の責任を親に取れというのなら、お前が罰を受ければいい!」
「今まで父親らしいことをしたことがないのですから、今回くらいは役に立ったらどうなんです!?」
「自分が死ぬくらいなら娘などいらん!」
国王陛下はファーラ様に向かって言い放つと、ランシード様とシドナ様に話しかける。
「私は悪くないんだ。それだけはわかっておいてほしい。娘が勝手にやったことだ」
「どうするか判断するのは私ではありません。夫に連絡を入れて確認を取ります」
シドナ様はそう応えたあと、大きく息を吸ってから話を続ける。
「私は息子の命が危険にさらされたことに対して、大変憤っておりますので、夫にはそのままの気持ちを伝えます」
「そ、それはかまわないが、私が悪いわけではないということを伝えておいてくれ!」
「そう言っていたとお伝えしますわ」
シドナ様は国王陛下を冷たい目で見つめたあと、わたしたちに視線を移した。
「ランシード、セフィリア、行くわよ」
「「はい」」
わたしたちは同時に返事をして、先に歩き出したシドナ様の後を追って歩き出した。
*****
シドナ様が夫であるテイルスの国王陛下に連絡した結果、王太子であるランシード様を暗殺しようとしたという理由で、テイルス王国がロロゾフ王国に宣戦布告することが決まった。
宣戦布告はわたしのことを考えてくださり、一日だけ待ってくれることになった。
かといって、あんなことがあったのに、のんびり滞在していられるわけがなく、シドナ様は予定を早めて帰国の途に着いた。
ランシード様はわたしが家族に挨拶する時間が必要だろうということで、一晩だけ、わたしの家に泊まることになり、明日にはわたしと一緒にこの国を出ることになった。
一日早まった出発の報告に、テックは悲しそうな顔をしたけれど、わたしが幸せになるのなら、それで良いと言ってくれた。
お姉様のほうは例の男性に会ってみたらしく、とても好印象だったそうだ。
「お相手は背がとても高くて引き締まった体の持ち主なのよ。わたしのことも簡単に横抱きしてくれるの。相手がロビースト様だったら、腰を痛めてしまうでしょうね」
嬉しそうに笑うお姉様は、まるで昔のお姉様に戻ったかのようだった。
「セフィリア、本当にごめんなさい。私は本当にどうかしていたわ」
夕食を終えて自室に戻る途中で、お姉様は立ち止まって、わたしに頭を下げた。
「お相手の方は今のままの私でも良いと言ってくれたの。でも、健康でいたいから、ダイエットを頑張ってみるわ。だから、あなたの結婚式には姉として呼んでくれる? 必ず、あなたに痩せた私の姿を見せるから」
「もちろんです。でも、頑張りすぎて体調を崩さないようにしてくださいね?」
頷くと、お姉様は大粒の涙を流して「ありがとう、ありがとう」と何度もお礼を言った。
お姉様と別れてからは、ランシード様のいる客室に向かった。
夜に男性の部屋に行くのは、はしたない行為かもしれない。
でも、ランシード様は婚約者だし、分別のある人だと信じて、客室の扉をノックした。
「どうしたの?」
扉を開けてくれたランシード様は不思議そうな顔をして、わたしに尋ねてきた。
「おやすみなさいの挨拶をしたかっただけです。申し訳ございません」
「謝らなくてもいいよ。嬉しいから」
ランシード様は扉を大きく開いてくれたけれど、困ったような顔をする。
「部屋に入れてあげたいけど、手を出さないと言い切れない自分がいるからやめておくよ」
客室の前の廊下に立っていた、ランシード様の専属騎士が、その言葉を聞いて微笑んだ。
それを見たランシード様が騎士に言う。
「しょうがないだろ。僕だって男なんだから」
「殿下、男性のすべてが好きな女性にいつでも襲いかかるわけではありませんよ。理性を保てる人もいます」
「僕は理性を保たないといけない立場の人間だとわかっているから、セフィリアを部屋の中に入れるのをやめただろう?」
騎士とランシード様の会話を聞きながら、和んでいた時だった。
ドーンッという音と共に窓がガタガタと揺れた。
「何なの!?」
声を上げたと同時に、ランシード様がわたしを抱き寄せた。
「何かが爆発みたいだったな」
「爆発?」
聞き返した時、屋敷の外から声が聞こえてきた。
「ポーラは何も悪くないわ! それなのに、どうして罰を受けなくちゃいけないのよ!」
ファーラ様の声に似た人物の声のあと、ロビースト様らしき人の声が聞こえる。
「セフィリア! 出てきなさい! テイルス王国に行くだなんて、わたくしが許しません!」
「何で二人が一緒にいるんだよ。それに、一体、何をしたんだ」
ランシード様はわたしを抱きしめたまま、大きく息を吐いた。
※あと、3話くらいで終わる予定です。
もう少しお付き合いくださいませ!
(終わりと同時に新作投稿予定です)
そして、ちょっと宣伝ですが「妹に邪魔される人生は終わりにします」が1月末にレジーナブックス様より刊行されます!
予約も始まっております。ご興味ある方は手にとっていただけますと幸いです。
国王陛下はファーラ様に掴みかかって叫ぶ。
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国王陛下はファーラ様に向かって言い放つと、ランシード様とシドナ様に話しかける。
「私は悪くないんだ。それだけはわかっておいてほしい。娘が勝手にやったことだ」
「どうするか判断するのは私ではありません。夫に連絡を入れて確認を取ります」
シドナ様はそう応えたあと、大きく息を吸ってから話を続ける。
「私は息子の命が危険にさらされたことに対して、大変憤っておりますので、夫にはそのままの気持ちを伝えます」
「そ、それはかまわないが、私が悪いわけではないということを伝えておいてくれ!」
「そう言っていたとお伝えしますわ」
シドナ様は国王陛下を冷たい目で見つめたあと、わたしたちに視線を移した。
「ランシード、セフィリア、行くわよ」
「「はい」」
わたしたちは同時に返事をして、先に歩き出したシドナ様の後を追って歩き出した。
*****
シドナ様が夫であるテイルスの国王陛下に連絡した結果、王太子であるランシード様を暗殺しようとしたという理由で、テイルス王国がロロゾフ王国に宣戦布告することが決まった。
宣戦布告はわたしのことを考えてくださり、一日だけ待ってくれることになった。
かといって、あんなことがあったのに、のんびり滞在していられるわけがなく、シドナ様は予定を早めて帰国の途に着いた。
ランシード様はわたしが家族に挨拶する時間が必要だろうということで、一晩だけ、わたしの家に泊まることになり、明日にはわたしと一緒にこの国を出ることになった。
一日早まった出発の報告に、テックは悲しそうな顔をしたけれど、わたしが幸せになるのなら、それで良いと言ってくれた。
お姉様のほうは例の男性に会ってみたらしく、とても好印象だったそうだ。
「お相手は背がとても高くて引き締まった体の持ち主なのよ。わたしのことも簡単に横抱きしてくれるの。相手がロビースト様だったら、腰を痛めてしまうでしょうね」
嬉しそうに笑うお姉様は、まるで昔のお姉様に戻ったかのようだった。
「セフィリア、本当にごめんなさい。私は本当にどうかしていたわ」
夕食を終えて自室に戻る途中で、お姉様は立ち止まって、わたしに頭を下げた。
「お相手の方は今のままの私でも良いと言ってくれたの。でも、健康でいたいから、ダイエットを頑張ってみるわ。だから、あなたの結婚式には姉として呼んでくれる? 必ず、あなたに痩せた私の姿を見せるから」
「もちろんです。でも、頑張りすぎて体調を崩さないようにしてくださいね?」
頷くと、お姉様は大粒の涙を流して「ありがとう、ありがとう」と何度もお礼を言った。
お姉様と別れてからは、ランシード様のいる客室に向かった。
夜に男性の部屋に行くのは、はしたない行為かもしれない。
でも、ランシード様は婚約者だし、分別のある人だと信じて、客室の扉をノックした。
「どうしたの?」
扉を開けてくれたランシード様は不思議そうな顔をして、わたしに尋ねてきた。
「おやすみなさいの挨拶をしたかっただけです。申し訳ございません」
「謝らなくてもいいよ。嬉しいから」
ランシード様は扉を大きく開いてくれたけれど、困ったような顔をする。
「部屋に入れてあげたいけど、手を出さないと言い切れない自分がいるからやめておくよ」
客室の前の廊下に立っていた、ランシード様の専属騎士が、その言葉を聞いて微笑んだ。
それを見たランシード様が騎士に言う。
「しょうがないだろ。僕だって男なんだから」
「殿下、男性のすべてが好きな女性にいつでも襲いかかるわけではありませんよ。理性を保てる人もいます」
「僕は理性を保たないといけない立場の人間だとわかっているから、セフィリアを部屋の中に入れるのをやめただろう?」
騎士とランシード様の会話を聞きながら、和んでいた時だった。
ドーンッという音と共に窓がガタガタと揺れた。
「何なの!?」
声を上げたと同時に、ランシード様がわたしを抱き寄せた。
「何かが爆発みたいだったな」
「爆発?」
聞き返した時、屋敷の外から声が聞こえてきた。
「ポーラは何も悪くないわ! それなのに、どうして罰を受けなくちゃいけないのよ!」
ファーラ様の声に似た人物の声のあと、ロビースト様らしき人の声が聞こえる。
「セフィリア! 出てきなさい! テイルス王国に行くだなんて、わたくしが許しません!」
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