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第8章 暴走する者たち
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デスタの世話をしてあげる必要はないので、わたしとランシード様は彼らを置いて部屋を出た。
「悪いけど、迎賓館に戻りたいんだ」
ランシード様が廊下で待っていた騎士に言うと「ご案内いたします」と言って騎士が歩き出した。
そのあとをついて歩きながら、ランシード様が話しかけてくる。
「一体、何があったんだ」
「なぜかわかりませんが、ロイアン卿もあの部屋にいたんです。ポーラ様と上手くいっていないのかもしれません」
「ポーラ姫も君がロイアン卿に興味がないから、彼がいらなくなったと言ったところかな?」
「そうではないかと思います」
ランシード様は大きく息を吐いてから口を開く。
「扇のことも気になる。あれは、どういう状況だったの?」
「それはですね」
その時の話をすると、ランシード様は不機嫌そうな顔になる。
「子供じゃねぇんだから、そんなことするなんてありえねぇだろ」
「癇癪を起こすと、そういうことをしてしまう時もあるかと思いますわ」
「相手は王妃だろ?」
すっかりシード様化してしまった、ランシード様の腕を空いているほうの手で掴む。
「それについては、わたしもそう思います。カッとなったからと言って、やっても良い行為ではありません。ですから、そちらについての判断は、ランシード様やシドナ様にお願いしたいと思うんですが、よろしいでしょうか?」
「かまわない。母上も了承してくれるはずだ」
迎賓館に着いたので、付いてきてくれていた騎士に礼を言ってから中に入った。
「でも、戦争を起こすまで、酷いことをされたわけではないのですよね」
「そうだな。別に残り二日でどうこうしろとは言ってないから、セフィリアは気にしなくて良い」
ランシード様とわたしは、手を繋いだままシドナ様の部屋に向かった。
シドナ様は手を繋いでいるわたしたちを歓迎してくれていたけれど、わたしの話を聞いた途端に表情が一変した。
「ありえないわ! なんて失礼なの! それにロイアン卿については絶対に許せない! 嫌がる女性に抱きついたりするなんて!」
シドナ様は声を荒らげて、座っていたソファから立ち上がり、部屋から出ていこうとする。
そんなシドナ様をランシード様が呼び止める。
「母上! どうされるおつもりですか?」
「もちろん抗議しに行くに決まっているでしょう。ロイアン卿を止めなかった、ロロゾフの王妃陛下にも問題があるわ。ロイアン卿は今は王女殿下の婚約者なんだから、黙って見ている場合ではないでしょう!」
「ポーラ様はロイアン卿への興味は薄れているようですから止める気にならなかったのでしょう」
わたしが言うと、シドナ様は頷く。
「たぶん、そうでしょうね。陛下には後で連絡を入れるけれど、先に抗議に行くわ」
シドナ様が言う陛下というのは、テイルスの国王陛下のことだと思われる。
王妃陛下のシドナ様への態度によっては、ロロゾフの王家は終わることになる。
そう思うと、わたしも一緒に付いていくことにした。
シドナ様がロロゾフの王妃陛下への謁見を求め、別室に行かれている間、わたしとランシード様は応接間で待っていた。
さっきの部屋の隣りにある部屋だ。
ランシード様と並んで座り、話をしながら待っていると、廊下で悲鳴やうめき声が聞こえたため、ランシード様が立ち上がった。
すると、ノックもなく扉が開いた。
扉の向こうに立っていたのは長剣を手にしたデスタだった。
「悪いけど、迎賓館に戻りたいんだ」
ランシード様が廊下で待っていた騎士に言うと「ご案内いたします」と言って騎士が歩き出した。
そのあとをついて歩きながら、ランシード様が話しかけてくる。
「一体、何があったんだ」
「なぜかわかりませんが、ロイアン卿もあの部屋にいたんです。ポーラ様と上手くいっていないのかもしれません」
「ポーラ姫も君がロイアン卿に興味がないから、彼がいらなくなったと言ったところかな?」
「そうではないかと思います」
ランシード様は大きく息を吐いてから口を開く。
「扇のことも気になる。あれは、どういう状況だったの?」
「それはですね」
その時の話をすると、ランシード様は不機嫌そうな顔になる。
「子供じゃねぇんだから、そんなことするなんてありえねぇだろ」
「癇癪を起こすと、そういうことをしてしまう時もあるかと思いますわ」
「相手は王妃だろ?」
すっかりシード様化してしまった、ランシード様の腕を空いているほうの手で掴む。
「それについては、わたしもそう思います。カッとなったからと言って、やっても良い行為ではありません。ですから、そちらについての判断は、ランシード様やシドナ様にお願いしたいと思うんですが、よろしいでしょうか?」
「かまわない。母上も了承してくれるはずだ」
迎賓館に着いたので、付いてきてくれていた騎士に礼を言ってから中に入った。
「でも、戦争を起こすまで、酷いことをされたわけではないのですよね」
「そうだな。別に残り二日でどうこうしろとは言ってないから、セフィリアは気にしなくて良い」
ランシード様とわたしは、手を繋いだままシドナ様の部屋に向かった。
シドナ様は手を繋いでいるわたしたちを歓迎してくれていたけれど、わたしの話を聞いた途端に表情が一変した。
「ありえないわ! なんて失礼なの! それにロイアン卿については絶対に許せない! 嫌がる女性に抱きついたりするなんて!」
シドナ様は声を荒らげて、座っていたソファから立ち上がり、部屋から出ていこうとする。
そんなシドナ様をランシード様が呼び止める。
「母上! どうされるおつもりですか?」
「もちろん抗議しに行くに決まっているでしょう。ロイアン卿を止めなかった、ロロゾフの王妃陛下にも問題があるわ。ロイアン卿は今は王女殿下の婚約者なんだから、黙って見ている場合ではないでしょう!」
「ポーラ様はロイアン卿への興味は薄れているようですから止める気にならなかったのでしょう」
わたしが言うと、シドナ様は頷く。
「たぶん、そうでしょうね。陛下には後で連絡を入れるけれど、先に抗議に行くわ」
シドナ様が言う陛下というのは、テイルスの国王陛下のことだと思われる。
王妃陛下のシドナ様への態度によっては、ロロゾフの王家は終わることになる。
そう思うと、わたしも一緒に付いていくことにした。
シドナ様がロロゾフの王妃陛下への謁見を求め、別室に行かれている間、わたしとランシード様は応接間で待っていた。
さっきの部屋の隣りにある部屋だ。
ランシード様と並んで座り、話をしながら待っていると、廊下で悲鳴やうめき声が聞こえたため、ランシード様が立ち上がった。
すると、ノックもなく扉が開いた。
扉の向こうに立っていたのは長剣を手にしたデスタだった。
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