11 / 52
第2章 新たな婚約者
4
しおりを挟む
シード様はわたし達の様子を確認した後は「じゃあ、もう帰るわ。ねみぃし」と言って、誰の返事を待つことなく部屋を出て行ってしまった。
シード様に対するお父様たちの様子に驚いたわたしは、シード様にお礼を言うことも忘れて、しばらく呆然としていた。
それはロイアン伯爵たちも同じで、不思議そうな顔をして、お父様とロビースト様を見つめていた。
そんな中、一番に我に返ったのは、お姉様だった。
「あの、ロビースト様! お願いです! 痩せます! 痩せますから! 私と結婚してください!」
「うるさい!」
ロビースト様は縋りつこうとした、お姉様を蹴り飛ばすと、シード様の後を追うように部屋から出て行った。
「待って! ロビースト様!」
お姉様はまだ、ロビースト様のことが諦められないようで、必死の形相で彼を追いかけて部屋を出ていった。
「あ、あの、今日のところは私共も失礼させていただきます」
お姉様が部屋を出て行った後、ロイアン伯爵が何度も頭を下げて去ろうとした。
すると、ソレーヌ様がロイアン伯爵にしがみつく。
「お父様、さっきの言葉は嘘ですわよね? お母様と離婚なんてしませんわよね?」
「……ソレーヌ、お前たち二人の関係に気付けなかったということで、今回の責任は私にもある」
「で、でしたら……!」
「だから、責任を取って婚約破棄を認めるんだ。そして、お前の母と離婚する」
「そんな! 責任の取り方が間違っています!」
ソレーヌ様が叫ぶと、ロイアン伯爵が静かに尋ねる。
「では、どう責任を取ればいいんだ?」
「あの、慰謝料などを払うのは間違っていないと思います。でも、離婚するのは間違っています!」
「そうだな。離婚で責任を取るのはまた違うかもしれない」
「で、では!」
ソレーヌ様の表情が笑顔に変わった。
でも、ロイアン伯爵はすぐに彼女の希望の光をなかったのものにする。
「私がお前たちを見たくない。それだけだ。だから、離婚は絶対にする」
そう言うと、ロイアン伯爵はデスタとソレーヌ様を促す。
「デスタ、婚約破棄の書類を交わすまでは、お前は私の息子だ。そして、ソレーヌ、お前も離婚するまでは娘だ。家に帰るぞ」
「お父様! 考え直してください!」
「父上! 僕を捨てないでください! 父上に捨てられたら僕はどうなるんですか!」
「そんなものは知らん! こうなることを考えないお前らが悪い!」
縋ってくるデスタを突き放した後、ロイアン伯爵は、わたしとお父様に再度、深々と頭を下げる。
「お見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ございません。失礼いたします」
「あの、セフィリア様! 改めて、お話する機会をいただけませんか?」
「そ、そうだ、セフィリア! 落ち着いてからまた話をしよう! 君は感情的になっているだけなんだ!」
ロイアン伯爵とは、後からでも話が出来ると思ったのか、デスタとソレーヌ様は、わたしに救いを求めてきた。
「ソレーヌ様、申し訳ございませんが、あなたとお話することはありません。それから、デスタ様。今回のお話は、悩んで考え抜いた結果です。それを感情的だなんて言われては不愉快です。あなたは、わたしがどれだけ傷ついていたかわかっていないようですね」
「悪いと思っているよ! 今度こそは君を大事にする! ソレーヌなんかよりも君のほうが良いんだ」
デスタの言葉を聞いたソレーヌ様の顔が一瞬だけ歪んだ。
でも、この場は話を合わせておいたほうが良いと思ったのか、すぐに泣きそうな表情を作って私に訴える。
「申し訳ございませんでした。あの、寂しかっただけなんです! セフィリア様やお兄様の優しさに甘えていただけなんです! そんなに傷ついてらしたなんて知りませんでした! これからはもう」
「ソレーヌ様、これからはありません。どうぞお帰りください」
話を打ち切ると、ロイアン伯爵に目を向ける。
「お気をつけてお帰りくださいませ」
「ありがとうございます。息子と娘が失礼いたしました。また、明日に改めてお詫びと婚約破棄の件でお伺いさせていただきます」
ロイアン伯爵は頭を下げると、嫌がるデスタとソレーヌ様を連れて部屋から出て行った。
三人が出て行ってからすぐに、お父様が口を開く。
「予想外のことが起きたせいで、思った以上に面白いものになったな」
「お父様、遊びではないのですよ! それに、シード様は一体何者なのです!? お父様が逆らえない方だなんて、よっぽどの方だとしか思えません!」
「お前は知らなくても良いことだ」
話すことが出来ないのか、話したくないだけなのか確認しようとした時だった。
お姉様が暗い表情で応接室に戻ってきた。
涙も枯れ果てたといった様子で、目もうつろだった。
「お姉様」
何と声をかけたら良いのか迷った時だった。
「そうよ! ロビースト様がおっしゃる通り、全部あなたのせいよ! あなたが太らなかったから悪いのよ!」
お姉様は、憎しみのこもった目で私を睨み付けてきた。
シード様に対するお父様たちの様子に驚いたわたしは、シード様にお礼を言うことも忘れて、しばらく呆然としていた。
それはロイアン伯爵たちも同じで、不思議そうな顔をして、お父様とロビースト様を見つめていた。
そんな中、一番に我に返ったのは、お姉様だった。
「あの、ロビースト様! お願いです! 痩せます! 痩せますから! 私と結婚してください!」
「うるさい!」
ロビースト様は縋りつこうとした、お姉様を蹴り飛ばすと、シード様の後を追うように部屋から出て行った。
「待って! ロビースト様!」
お姉様はまだ、ロビースト様のことが諦められないようで、必死の形相で彼を追いかけて部屋を出ていった。
「あ、あの、今日のところは私共も失礼させていただきます」
お姉様が部屋を出て行った後、ロイアン伯爵が何度も頭を下げて去ろうとした。
すると、ソレーヌ様がロイアン伯爵にしがみつく。
「お父様、さっきの言葉は嘘ですわよね? お母様と離婚なんてしませんわよね?」
「……ソレーヌ、お前たち二人の関係に気付けなかったということで、今回の責任は私にもある」
「で、でしたら……!」
「だから、責任を取って婚約破棄を認めるんだ。そして、お前の母と離婚する」
「そんな! 責任の取り方が間違っています!」
ソレーヌ様が叫ぶと、ロイアン伯爵が静かに尋ねる。
「では、どう責任を取ればいいんだ?」
「あの、慰謝料などを払うのは間違っていないと思います。でも、離婚するのは間違っています!」
「そうだな。離婚で責任を取るのはまた違うかもしれない」
「で、では!」
ソレーヌ様の表情が笑顔に変わった。
でも、ロイアン伯爵はすぐに彼女の希望の光をなかったのものにする。
「私がお前たちを見たくない。それだけだ。だから、離婚は絶対にする」
そう言うと、ロイアン伯爵はデスタとソレーヌ様を促す。
「デスタ、婚約破棄の書類を交わすまでは、お前は私の息子だ。そして、ソレーヌ、お前も離婚するまでは娘だ。家に帰るぞ」
「お父様! 考え直してください!」
「父上! 僕を捨てないでください! 父上に捨てられたら僕はどうなるんですか!」
「そんなものは知らん! こうなることを考えないお前らが悪い!」
縋ってくるデスタを突き放した後、ロイアン伯爵は、わたしとお父様に再度、深々と頭を下げる。
「お見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ございません。失礼いたします」
「あの、セフィリア様! 改めて、お話する機会をいただけませんか?」
「そ、そうだ、セフィリア! 落ち着いてからまた話をしよう! 君は感情的になっているだけなんだ!」
ロイアン伯爵とは、後からでも話が出来ると思ったのか、デスタとソレーヌ様は、わたしに救いを求めてきた。
「ソレーヌ様、申し訳ございませんが、あなたとお話することはありません。それから、デスタ様。今回のお話は、悩んで考え抜いた結果です。それを感情的だなんて言われては不愉快です。あなたは、わたしがどれだけ傷ついていたかわかっていないようですね」
「悪いと思っているよ! 今度こそは君を大事にする! ソレーヌなんかよりも君のほうが良いんだ」
デスタの言葉を聞いたソレーヌ様の顔が一瞬だけ歪んだ。
でも、この場は話を合わせておいたほうが良いと思ったのか、すぐに泣きそうな表情を作って私に訴える。
「申し訳ございませんでした。あの、寂しかっただけなんです! セフィリア様やお兄様の優しさに甘えていただけなんです! そんなに傷ついてらしたなんて知りませんでした! これからはもう」
「ソレーヌ様、これからはありません。どうぞお帰りください」
話を打ち切ると、ロイアン伯爵に目を向ける。
「お気をつけてお帰りくださいませ」
「ありがとうございます。息子と娘が失礼いたしました。また、明日に改めてお詫びと婚約破棄の件でお伺いさせていただきます」
ロイアン伯爵は頭を下げると、嫌がるデスタとソレーヌ様を連れて部屋から出て行った。
三人が出て行ってからすぐに、お父様が口を開く。
「予想外のことが起きたせいで、思った以上に面白いものになったな」
「お父様、遊びではないのですよ! それに、シード様は一体何者なのです!? お父様が逆らえない方だなんて、よっぽどの方だとしか思えません!」
「お前は知らなくても良いことだ」
話すことが出来ないのか、話したくないだけなのか確認しようとした時だった。
お姉様が暗い表情で応接室に戻ってきた。
涙も枯れ果てたといった様子で、目もうつろだった。
「お姉様」
何と声をかけたら良いのか迷った時だった。
「そうよ! ロビースト様がおっしゃる通り、全部あなたのせいよ! あなたが太らなかったから悪いのよ!」
お姉様は、憎しみのこもった目で私を睨み付けてきた。
80
お気に入りに追加
3,470
あなたにおすすめの小説
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
御機嫌ようそしてさようなら ~王太子妃の選んだ最悪の結末
Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。
生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。
全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。
ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。
時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。
ゆるふわ設定の短編です。
完結済みなので予約投稿しています。
妹に人生を狂わされた代わりに、ハイスペックな夫が出来ました
コトミ
恋愛
子爵令嬢のソフィアは成人する直前に婚約者に浮気をされ婚約破棄を告げられた。そしてその婚約者を奪ったのはソフィアの妹であるミアだった。ミアや周りの人間に散々に罵倒され、元婚約者にビンタまでされ、何も考えられなくなったソフィアは屋敷から逃げ出した。すぐに追いつかれて屋敷に連れ戻されると覚悟していたソフィアは一人の青年に助けられ、屋敷で一晩を過ごす。その後にその青年と…
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。
しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。
それを指示したのは、妹であるエライザであった。
姉が幸せになることを憎んだのだ。
容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、
顔が醜いことから蔑まされてきた自分。
やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。
しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。
幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。
もう二度と死なない。
そう、心に決めて。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる