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38 必要ないもの④ (付きまとってくる人たち①)
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「会いたかったよ、リアンナ」
テナミ様の誕生日パーティーから10日ほどしか経っていない。
それなのに、テナミ様はやせ細り、目は落ちくぼんでいて、先日見た時とは、まるで別人のようだった。
「テナミ殿下、一体何があったんですか?」
「神様から天罰を下されたみたいなんだ。この何日間か、良いことがないんだよ」
「では、こんな所に来るほうがもっと良くないのではないでしょうか」
「大丈夫だよ。だって、ここに来れているんだから、来ても良いと言うことなんだ」
ははは、と半ば自棄糞といった感じで、テナミ様は笑う。
「城から出ないように言われていたはずです。それなのに、どうしてここへ?」
「君に会いたくてしょうがなかったんだ」
テナミ様を支えていたシスターたちは、彼の様子がおかしいことに気がついたのか、彼の体を支えるのはやめて、近くにあった椅子に座らせた。
「会いたいたからといって、城から出れるわけがないでしょう!」
あの一件の後、両陛下はテナミ様とハリー様を部屋に閉じ込めておくとおっしゃっていた。
それなのにどうして?
わたしの疑問に答えるように、テナミ様は口を開く。
「父上と母上は今、他国に出かけているんだ。だから、今、城内で一番偉いのは僕なんだよ」
「まさか、騎士を買収したのですか?」
「騎士だけじゃない、何人かの使用人もだよ。俺のやっていることが正しいから、ここまで来れたんだ!」
「そうとは思えません! あなたは今、自分で天罰を下されたと言っていたじゃないですか!」
「でも、殺されていない!」
「それは神が慈悲深いからでしょう!」
わたしとテナミ様が揉めていることに気が付いた騎士は、わたしの安全を確保するために、テナミ様との間に入ってくれた。
「何だよ。神は俺を苦しませて、自分がしたことが悪いことだったと知れって言うのか!?」
テナミ様は立ち上がって叫んだ。
神様が人払いしてくれたのか、いつの間にか、この場にいるのは、わたしとテナミ様、そしてシスターと護衛騎士だけになっていた。
だから、遠慮なく言わせてもらう。
「あなたがそんなだから、神様はあなたを王太子の座から外したんです!」
「何だって?」
「ムーニャとハリー様に言われたからって、無条件に浮気をしているだなんて信じるのはおかしいでしょう! 信じるべきは婚約者である、わたしの言葉だったんじゃないんですか!? 簡単な真実を見極められない人を国王になんてできないでしょう!」
「そ、それは……!」
テナミ様は言い返す言葉が思い浮かばないのか、唇を噛んで、わたしを睨んできた。
わたしはそんなテナミ様を睨んで口を開く。
「テナミ様、わたしのことはもうお忘れください」
「嫌だ! リアンナは俺のものだ!」
「違いますよ」
否定したのはわたしではなかった。
また、新たな人物の声が聞こえてきたので目を向ける。
教会の入口に立っていたのは、正装姿ではあるけれど、テナミ様と同じように傷だらけで、服もボロボロになった、ハリー様だった。
※完結まであと少し。もう少しお付き合いくださいませ。
テナミ様の誕生日パーティーから10日ほどしか経っていない。
それなのに、テナミ様はやせ細り、目は落ちくぼんでいて、先日見た時とは、まるで別人のようだった。
「テナミ殿下、一体何があったんですか?」
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「では、こんな所に来るほうがもっと良くないのではないでしょうか」
「大丈夫だよ。だって、ここに来れているんだから、来ても良いと言うことなんだ」
ははは、と半ば自棄糞といった感じで、テナミ様は笑う。
「城から出ないように言われていたはずです。それなのに、どうしてここへ?」
「君に会いたくてしょうがなかったんだ」
テナミ様を支えていたシスターたちは、彼の様子がおかしいことに気がついたのか、彼の体を支えるのはやめて、近くにあった椅子に座らせた。
「会いたいたからといって、城から出れるわけがないでしょう!」
あの一件の後、両陛下はテナミ様とハリー様を部屋に閉じ込めておくとおっしゃっていた。
それなのにどうして?
わたしの疑問に答えるように、テナミ様は口を開く。
「父上と母上は今、他国に出かけているんだ。だから、今、城内で一番偉いのは僕なんだよ」
「まさか、騎士を買収したのですか?」
「騎士だけじゃない、何人かの使用人もだよ。俺のやっていることが正しいから、ここまで来れたんだ!」
「そうとは思えません! あなたは今、自分で天罰を下されたと言っていたじゃないですか!」
「でも、殺されていない!」
「それは神が慈悲深いからでしょう!」
わたしとテナミ様が揉めていることに気が付いた騎士は、わたしの安全を確保するために、テナミ様との間に入ってくれた。
「何だよ。神は俺を苦しませて、自分がしたことが悪いことだったと知れって言うのか!?」
テナミ様は立ち上がって叫んだ。
神様が人払いしてくれたのか、いつの間にか、この場にいるのは、わたしとテナミ様、そしてシスターと護衛騎士だけになっていた。
だから、遠慮なく言わせてもらう。
「あなたがそんなだから、神様はあなたを王太子の座から外したんです!」
「何だって?」
「ムーニャとハリー様に言われたからって、無条件に浮気をしているだなんて信じるのはおかしいでしょう! 信じるべきは婚約者である、わたしの言葉だったんじゃないんですか!? 簡単な真実を見極められない人を国王になんてできないでしょう!」
「そ、それは……!」
テナミ様は言い返す言葉が思い浮かばないのか、唇を噛んで、わたしを睨んできた。
わたしはそんなテナミ様を睨んで口を開く。
「テナミ様、わたしのことはもうお忘れください」
「嫌だ! リアンナは俺のものだ!」
「違いますよ」
否定したのはわたしではなかった。
また、新たな人物の声が聞こえてきたので目を向ける。
教会の入口に立っていたのは、正装姿ではあるけれど、テナミ様と同じように傷だらけで、服もボロボロになった、ハリー様だった。
※完結まであと少し。もう少しお付き合いくださいませ。
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