30 / 43
29 自分なりに考えた最良
しおりを挟む
「寮って、どういうこと?」
ロブが訝しげな顔をして聞いてきたので答える。
「両親からもロザンナからも離れた学園で、色々と学んできなさい。長期休暇の時は両親の元へ戻っても大丈夫よ」
「そんな! 僕、勉強なんてしたことないのに!」
「大丈夫よ。まだ学期は始まったばかりだから、みんな、あなたと似たようなものだと思う」
学園に通うことは義務ではない。
でも、大体の子供は遅くとも8歳までには学園に通うようになる。
ロブはまだ7歳だから、少し早いほうなので、絶対についていけないレベルではないはず。
ロザンナがメイドに文字を教えてもらっている時に、ロブも一緒に覚えていたらしく、文字の読み書きができるのは本当に助かった。
「どうしてそんな大事なことを勝手に決めちゃうんだよ!」
「あなたに確認はしたわ」
「したかもしれないけど、そんな所に行かされるなんて思ってなかったよ!」
「学園はそんな所って言うものじゃない。病弱だとか事情がない限り、貴族はみんな学園に通っているんだから」
「ロザンナお姉様は通ってなかったよ!」
「通うために必死に勉強しているじゃないの!」
「嫌だよ! 僕は行きたくない!」
これ以上、話をしても理解は得られないと感じて、座っていた椅子から立ち上がる。
すると、ロブの後ろに立っていた看守がロブに近づいて話しかけた。
「面会は終わりだ。行くよ」
「嫌だ! 僕は帰るんだよ!」
「ロブ、あなたはわたしのことが嫌いなのよね? それなのに、わたしの所に戻って来るの?」
「そんな、意地悪言わないでよ。謝るから」
ポロポロとロブは大粒の涙を流し始めた。
可哀想だとは思う。
でも、両親を釈放させて、3人で暮らしたからといって、ロブが幸せになるとは限らない。
現在、ソナルナ伯爵家の仕事は、他の伯爵家が代理でしてくれている。
このままいけば、ソナルナ伯爵家は没落するでしょう。
わたしに付いてきたロザンナは、陛下からわたしに与えられる姓を名乗れば良い。
でも、ロブはどうなるの?
学もないのでは、生きていくことだって辛くなるでしょう。
そう思ったから、わたしはロブを全寮制の学園に通わせることに決めた。
礼儀などにも厳しい学園だと聞いているから、ロブも色々と学んでくれたら良いと思う。
ロブが無理やり看守に連れて行かれるのを見送ったあと、小さく息を吐いた。
何が正しいのかはわからない。
でも、悪い道ではないと信じたい。
「大丈夫か?」
アクス様が顔を覗き込んできたので、笑顔を作って頷く。
「はい」
「彼のためを思っての行動だということを、彼も成長すればわかるようになるだろう」
「……そうだと良いのですが」
「言い方は悪いが、本当に彼が悪い子なら、この国の神様は君の家の火事の時に彼を巻き込んでいたと思う」
アクス様に言われて、そう納得することにした。
「そうですよね。ロブが良い子に育ってくれるから、神様は命を奪わなかったんだと思うようにします。ロブの場合に限ってですが」
ソナルナ伯爵夫妻の命を奪わなかったのは、彼らにとっては、生きているよりも死のほうが楽な道だからかもしれない。
それに、ロブとロザンナをわたしの所へ連れて来る人が必要だったのもしれないわね。
「これから、ソナルナ伯爵夫妻には罰が当たるでしょうか」
「そうだな。それに、君の元婚約者や友人たちもどうなるだろうな」
アクス様に言われて思い出す。
テナミ様やムーニャ、ハリー様だって、良くないことをしている。
神様が見ているのであれば、彼らにも罰が当たってよいはずだわ。
ロブが訝しげな顔をして聞いてきたので答える。
「両親からもロザンナからも離れた学園で、色々と学んできなさい。長期休暇の時は両親の元へ戻っても大丈夫よ」
「そんな! 僕、勉強なんてしたことないのに!」
「大丈夫よ。まだ学期は始まったばかりだから、みんな、あなたと似たようなものだと思う」
学園に通うことは義務ではない。
でも、大体の子供は遅くとも8歳までには学園に通うようになる。
ロブはまだ7歳だから、少し早いほうなので、絶対についていけないレベルではないはず。
ロザンナがメイドに文字を教えてもらっている時に、ロブも一緒に覚えていたらしく、文字の読み書きができるのは本当に助かった。
「どうしてそんな大事なことを勝手に決めちゃうんだよ!」
「あなたに確認はしたわ」
「したかもしれないけど、そんな所に行かされるなんて思ってなかったよ!」
「学園はそんな所って言うものじゃない。病弱だとか事情がない限り、貴族はみんな学園に通っているんだから」
「ロザンナお姉様は通ってなかったよ!」
「通うために必死に勉強しているじゃないの!」
「嫌だよ! 僕は行きたくない!」
これ以上、話をしても理解は得られないと感じて、座っていた椅子から立ち上がる。
すると、ロブの後ろに立っていた看守がロブに近づいて話しかけた。
「面会は終わりだ。行くよ」
「嫌だ! 僕は帰るんだよ!」
「ロブ、あなたはわたしのことが嫌いなのよね? それなのに、わたしの所に戻って来るの?」
「そんな、意地悪言わないでよ。謝るから」
ポロポロとロブは大粒の涙を流し始めた。
可哀想だとは思う。
でも、両親を釈放させて、3人で暮らしたからといって、ロブが幸せになるとは限らない。
現在、ソナルナ伯爵家の仕事は、他の伯爵家が代理でしてくれている。
このままいけば、ソナルナ伯爵家は没落するでしょう。
わたしに付いてきたロザンナは、陛下からわたしに与えられる姓を名乗れば良い。
でも、ロブはどうなるの?
学もないのでは、生きていくことだって辛くなるでしょう。
そう思ったから、わたしはロブを全寮制の学園に通わせることに決めた。
礼儀などにも厳しい学園だと聞いているから、ロブも色々と学んでくれたら良いと思う。
ロブが無理やり看守に連れて行かれるのを見送ったあと、小さく息を吐いた。
何が正しいのかはわからない。
でも、悪い道ではないと信じたい。
「大丈夫か?」
アクス様が顔を覗き込んできたので、笑顔を作って頷く。
「はい」
「彼のためを思っての行動だということを、彼も成長すればわかるようになるだろう」
「……そうだと良いのですが」
「言い方は悪いが、本当に彼が悪い子なら、この国の神様は君の家の火事の時に彼を巻き込んでいたと思う」
アクス様に言われて、そう納得することにした。
「そうですよね。ロブが良い子に育ってくれるから、神様は命を奪わなかったんだと思うようにします。ロブの場合に限ってですが」
ソナルナ伯爵夫妻の命を奪わなかったのは、彼らにとっては、生きているよりも死のほうが楽な道だからかもしれない。
それに、ロブとロザンナをわたしの所へ連れて来る人が必要だったのもしれないわね。
「これから、ソナルナ伯爵夫妻には罰が当たるでしょうか」
「そうだな。それに、君の元婚約者や友人たちもどうなるだろうな」
アクス様に言われて思い出す。
テナミ様やムーニャ、ハリー様だって、良くないことをしている。
神様が見ているのであれば、彼らにも罰が当たってよいはずだわ。
100
お気に入りに追加
2,848
あなたにおすすめの小説
聖女の能力で見た予知夢を盗まれましたが、それには大事な続きがあります~幽閉聖女と黒猫~
猫子
恋愛
「王家を欺き、聖女を騙る不届き者め! 貴様との婚約を破棄する!」
聖女リアはアズル王子より、偽者の聖女として婚約破棄を言い渡され、監獄塔へと幽閉されることになってしまう。リアは国難を退けるための予言を出していたのだが、その内容は王子に盗まれ、彼の新しい婚約者である偽聖女が出したものであるとされてしまったのだ。だが、その予言には続きがあり、まだ未完成の状態であった。梯子を外されて大慌てする王子一派を他所に、リアは王国を救うためにできることはないかと監獄塔の中で思案する。
※本作は他サイト様でも掲載しております。
〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……
藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」
大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが……
ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。
「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」
エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。
エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話)
全44話で完結になります。
私が公爵の本当の娘ではないことを知った婚約者は、騙されたと激怒し婚約破棄を告げました。
Mayoi
恋愛
ウェスリーは婚約者のオリビアの出自を調べ、公爵の実の娘ではないことを知った。
そのようなことは婚約前に伝えられておらず、騙されたと激怒しオリビアに婚約破棄を告げた。
二人の婚約は大公が認めたものであり、一方的に非難し婚約破棄したウェスリーが無事でいられるはずがない。
自分の正しさを信じて疑わないウェスリーは自滅の道を歩む。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
星名柚花
恋愛
魔法が使えない伯爵令嬢セレスティアには美しい双子の妹・イノーラがいる。
国一番の魔力を持つイノーラは我儘な暴君で、セレスティアから婚約者まで奪った。
「もう無理、もう耐えられない!!」
イノーラの結婚式に無理やり参列させられたセレスティアは逃亡を決意。
「セラ」という偽名を使い、遠く離れたロドリー王国で侍女として働き始めた。
そこでセラには唯一無二のとんでもない魔法が使えることが判明する。
猫になる魔法をかけられた女性不信のユリウス。
表情筋が死んでいるユリウスの弟ノエル。
溺愛してくる魔法使いのリュオン。
彼らと共に暮らしながら、幸せに満ちたセラの新しい日々が始まる――
※他サイトにも投稿しています。
【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?
なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」
顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される
大きな傷跡は残るだろう
キズモノのとなった私はもう要らないようだ
そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ
そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった
このキズの謎を知ったとき
アルベルト王子は永遠に後悔する事となる
永遠の後悔と
永遠の愛が生まれた日の物語
甘やかされて育った妹が何故婚約破棄されたかなんて、わかりきったことではありませんか。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるネセリアは、家でひどい扱いを受けてきた。
継母と腹違いの妹は、彼女のことをひどく疎んでおり、二人から苛烈に虐め抜かれていたのである。
実の父親は、継母と妹の味方であった。彼はネセリアのことを見向きもせず、継母と妹に愛を向けていたのだ。
そんなネセリアに、ある時婚約の話が持ち上がった。
しかしその婚約者に彼女の妹が惚れてしまい、婚約者を変えることになったのだ。
だが、ネセリアとの婚約を望んでいた先方はそれを良しとしなかったが、彼らは婚約そのものを破棄して、なかったことにしたのだ。
それ妹達は、癇癪を起した。
何故、婚約破棄されたのか、彼らには理解できなかったのだ。
しかしネセリアには、その理由がわかっていた。それ告げた所、彼女は伯爵家から追い出されることになったのだった。
だがネセリアにとって、それは別段苦しいことという訳でもなかった。むしろ伯爵家の呪縛から解放されて、明るくなったくらいだ。
それからネセリアは、知人の助けを借りて新たな生活を歩むことにした。かつてのことを忘れて気ままに暮らすことに、彼女は幸せを覚えていた。
そんな生活をしている中で、ネセリアは伯爵家の噂を耳にした。伯爵家は度重なる身勝手により、没落しようとしていたのだ。
婚約者の妹が結婚式に乗り込んで来たのですが〜どうやら、私の婚約者は妹と浮気していたようです〜
あーもんど
恋愛
結婚式の途中……誓いのキスをする直前で、見知らぬ女性が会場に乗り込んできた。
そして、その女性は『そこの芋女!さっさと“お兄様”から、離れなさい!ブスのくせにお兄様と結婚しようだなんて、図々しいにも程があるわ!』と私を罵り、
『それに私達は体の相性も抜群なんだから!』とまさかの浮気を暴露!
そして、結婚式は中止。婚約ももちろん破談。
────婚約者様、お覚悟よろしいですね?
※本作はメモの中に眠っていた作品をリメイクしたものです。クオリティは高くありません。
※第二章から人が死ぬ描写がありますので閲覧注意です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる