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28 祖父母とは思えない行動
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エルンベル元伯爵は怒りの矛先を自分の息子に変更した。
ミシェルに平手打ちしたことや、自分たちを追い出したことが元伯爵にとっては裏切り行為と思えたようだった。
こんな話を聞くと、ますますエルンベル男爵がミシェルたちと縁を切りたくなる気持ちがわかる。
だから、エルンベル男爵を狙う彼の父を放っておいてよいのか迷っていた。
ちょうどその頃、ミオ様と一緒にエイト公爵家の別邸に戻った私の所に、元エルンベル伯爵夫人が手紙を送ってきた。
内容を読んでみると、現在、夫婦揃ってサンニ子爵家に居候していると書かれていた。
そして、自分の夫が恐ろしいことを考えているので、何とか助けてもらえないだろうかとも書かれていた。
次の日、フェリックスが様子を見に来てくれたので、ミオ様にも相談した話をフェリックスにも伝えてみた。
「甥っ子を誘拐しようとしてるだって?」
「ええ。元エルンベル伯爵夫人はそう書いてきていたの。エルンベル男爵……、エルンベルばかりでややこしいから、ソラン様と呼ばせてもらうけど、ソラン様は自分の家族、特に子供を可愛がっているから、子供が誘拐されたらかなりショックだろうと思っているみたいよ」
ソラン様が自分の妻や子供だけを可愛がるのは、自分の父親のようになりたくないという理由らしい。
父親を反面教師にして、自分が子供の頃に味わった寂しさを、自分は息子に感じさせないようにしたいそうだ。
「どの親も自分の子供は可愛いだろうからな。自分に何かあるよりも辛いだろう。だけど、元エルンベル伯爵にしてみれば、自分の孫だぞ? 可愛くないなんてことはないだろ」
「元伯爵夫人は孫を殺すだなんて馬鹿なことはしないと思っているみたいよ」
「どうして自分で止めないんだ?」
「聞く耳を持たないって書いてあったわ。少し胡散臭い気もするから、どうしたら良いか迷ってるの。それから、ミシェルも賛成しているみたい」
「賛成してる?」
フェリックスが眉根を寄せて聞き返してきた。
「ええ。ソラン様が自分の頬を叩いたことを、まだ怒っているみたい」
「体罰は良くないが、彼女には口で言っても通じないからな」
「そうなのよね。あと、ロータス様にも連絡を入れたら、奥様の実家に連絡を入れてくれたみたい」
「そういえば今は、エルンベル男爵の嫁は実家に帰ってるのか」
「ええ。予定日が近いし、出産から少し経つまで男爵夫人には知らせないようにしてもらったわ」
ソラン様の奥様の実家は子爵家だけど、裕福なほうだから、護衛を雇うお金はある。
狙われている子供は、しばらくは外には出さないと約束してくれた。
自分の孫が狙われているとわかったのだから、外に出すような馬鹿なことはしないわよね。
「ならいい。でも、元エルンベル伯爵は孫に会う権利はあるだろう。孫に会いたいと言って訪ねてきたらどうするつもりなんだ」
「無事に第二子を出産してから連絡すると応えるとのことだそうよ」
「そうか」
フェリックスは少し考える表情になってから頷いた。
そんな彼に言い訳をする。
「もう関係ないから知らないふりをしようかと思ったけれど、小さな子供が危険な目に遭うかもしれないとわかっているのに何もしないわけにはいかなかったのよ」
「別に何も言ってないだろ。エルンベル男爵の子供には何の罪もないしな」
「……ええ。それにしても本当にエルンベルの子供じゃなくなって良かったわ」
大きくため息を吐くと、向かい側のソファに座るフェリックスが苦笑する。
「エルンベル男爵の子供のことはシェリルは気にしなくていい。俺が手を打つ」
「何をするつもりなの」
「シミュレーションを何度か頭の中で繰り返さないと、はっきりとは言えない」
「何よ、それ」
不服そうに言うと、フェリックスは渋々といった感じで、これから起こり得るであろう話を私にしてくれた。
「そんな馬鹿なことをするかしら」
「スケープゴートを用意している可能性もあるだろ」
「結局、元エルンベル伯爵はそんなことをして何がしたいのかしら」
「エルンベル男爵を苦しめたいだけだろ」
「ということは……」
元伯爵夫人が私に連絡してくることもおかしいとは思っていた。
ふと思いついた最悪なシナリオを頭から振り払う。
そして、甘い考えを持っていた自分に喝を入れる。
人間の本質なんてそう変わらない。
相手が悪い人間だとわかっているならば、悲しいことではあるけれど、信じる前に疑わなければならない。
******
それから数日後、ソラン様の奥様が無事に子供を出産したとの連絡があった。
そして、私の名前で出産祝いがソラン様の奥様に届けられた。
私の名前であろうが誰であろうが警戒するように伝えていたので、贈り物はすぐに開封されて、中身を確認された。
贈り物はクッキーなどのお菓子で、ターゲットにしている長男に食べさせてあげてほしいというメッセージカードが添えられていた。
調べた結果、見ただけではわからないようにか、クッキーの表面から見えない部分にピーナッツがすり潰されたものが入っていた。
私たちが住んでいる国の子爵家では毒見はされないことが多い。
だから、何者かがソラン様の長男を殺すつもりなのだとわかった。
長男はピーナッツアレルギーだから、食べてしまうと死に至る可能性が高い。
ソラン様を恨んでいたのは元伯爵だけではなかった。
元伯爵夫人もだった。
自分の孫を殺めてでも、ソラン様を苦しめようとした。
そして、私に罪をなすりつけようとしたというところかしら。
でも、どうしてそれなら、私に連絡してきたのかわからない。
何にしても絶対に許せない。
私はミオ様から許可をもらい、元エルンベル伯爵夫妻に別邸まで、来てもらうことにした。
フェリックスも同席したいというので、その旨を書いて送ると、ミシェルも含めた3人で伺うと返事が来た。
ミシェルはお呼びじゃないのだけど、まあいいわ。
彼女の目の前でフェリックスと仲良くして、ミシェルの両親には然るべき処置をさせてもらうことにした。
※
次の話はミシェル視点です。
ミシェルに平手打ちしたことや、自分たちを追い出したことが元伯爵にとっては裏切り行為と思えたようだった。
こんな話を聞くと、ますますエルンベル男爵がミシェルたちと縁を切りたくなる気持ちがわかる。
だから、エルンベル男爵を狙う彼の父を放っておいてよいのか迷っていた。
ちょうどその頃、ミオ様と一緒にエイト公爵家の別邸に戻った私の所に、元エルンベル伯爵夫人が手紙を送ってきた。
内容を読んでみると、現在、夫婦揃ってサンニ子爵家に居候していると書かれていた。
そして、自分の夫が恐ろしいことを考えているので、何とか助けてもらえないだろうかとも書かれていた。
次の日、フェリックスが様子を見に来てくれたので、ミオ様にも相談した話をフェリックスにも伝えてみた。
「甥っ子を誘拐しようとしてるだって?」
「ええ。元エルンベル伯爵夫人はそう書いてきていたの。エルンベル男爵……、エルンベルばかりでややこしいから、ソラン様と呼ばせてもらうけど、ソラン様は自分の家族、特に子供を可愛がっているから、子供が誘拐されたらかなりショックだろうと思っているみたいよ」
ソラン様が自分の妻や子供だけを可愛がるのは、自分の父親のようになりたくないという理由らしい。
父親を反面教師にして、自分が子供の頃に味わった寂しさを、自分は息子に感じさせないようにしたいそうだ。
「どの親も自分の子供は可愛いだろうからな。自分に何かあるよりも辛いだろう。だけど、元エルンベル伯爵にしてみれば、自分の孫だぞ? 可愛くないなんてことはないだろ」
「元伯爵夫人は孫を殺すだなんて馬鹿なことはしないと思っているみたいよ」
「どうして自分で止めないんだ?」
「聞く耳を持たないって書いてあったわ。少し胡散臭い気もするから、どうしたら良いか迷ってるの。それから、ミシェルも賛成しているみたい」
「賛成してる?」
フェリックスが眉根を寄せて聞き返してきた。
「ええ。ソラン様が自分の頬を叩いたことを、まだ怒っているみたい」
「体罰は良くないが、彼女には口で言っても通じないからな」
「そうなのよね。あと、ロータス様にも連絡を入れたら、奥様の実家に連絡を入れてくれたみたい」
「そういえば今は、エルンベル男爵の嫁は実家に帰ってるのか」
「ええ。予定日が近いし、出産から少し経つまで男爵夫人には知らせないようにしてもらったわ」
ソラン様の奥様の実家は子爵家だけど、裕福なほうだから、護衛を雇うお金はある。
狙われている子供は、しばらくは外には出さないと約束してくれた。
自分の孫が狙われているとわかったのだから、外に出すような馬鹿なことはしないわよね。
「ならいい。でも、元エルンベル伯爵は孫に会う権利はあるだろう。孫に会いたいと言って訪ねてきたらどうするつもりなんだ」
「無事に第二子を出産してから連絡すると応えるとのことだそうよ」
「そうか」
フェリックスは少し考える表情になってから頷いた。
そんな彼に言い訳をする。
「もう関係ないから知らないふりをしようかと思ったけれど、小さな子供が危険な目に遭うかもしれないとわかっているのに何もしないわけにはいかなかったのよ」
「別に何も言ってないだろ。エルンベル男爵の子供には何の罪もないしな」
「……ええ。それにしても本当にエルンベルの子供じゃなくなって良かったわ」
大きくため息を吐くと、向かい側のソファに座るフェリックスが苦笑する。
「エルンベル男爵の子供のことはシェリルは気にしなくていい。俺が手を打つ」
「何をするつもりなの」
「シミュレーションを何度か頭の中で繰り返さないと、はっきりとは言えない」
「何よ、それ」
不服そうに言うと、フェリックスは渋々といった感じで、これから起こり得るであろう話を私にしてくれた。
「そんな馬鹿なことをするかしら」
「スケープゴートを用意している可能性もあるだろ」
「結局、元エルンベル伯爵はそんなことをして何がしたいのかしら」
「エルンベル男爵を苦しめたいだけだろ」
「ということは……」
元伯爵夫人が私に連絡してくることもおかしいとは思っていた。
ふと思いついた最悪なシナリオを頭から振り払う。
そして、甘い考えを持っていた自分に喝を入れる。
人間の本質なんてそう変わらない。
相手が悪い人間だとわかっているならば、悲しいことではあるけれど、信じる前に疑わなければならない。
******
それから数日後、ソラン様の奥様が無事に子供を出産したとの連絡があった。
そして、私の名前で出産祝いがソラン様の奥様に届けられた。
私の名前であろうが誰であろうが警戒するように伝えていたので、贈り物はすぐに開封されて、中身を確認された。
贈り物はクッキーなどのお菓子で、ターゲットにしている長男に食べさせてあげてほしいというメッセージカードが添えられていた。
調べた結果、見ただけではわからないようにか、クッキーの表面から見えない部分にピーナッツがすり潰されたものが入っていた。
私たちが住んでいる国の子爵家では毒見はされないことが多い。
だから、何者かがソラン様の長男を殺すつもりなのだとわかった。
長男はピーナッツアレルギーだから、食べてしまうと死に至る可能性が高い。
ソラン様を恨んでいたのは元伯爵だけではなかった。
元伯爵夫人もだった。
自分の孫を殺めてでも、ソラン様を苦しめようとした。
そして、私に罪をなすりつけようとしたというところかしら。
でも、どうしてそれなら、私に連絡してきたのかわからない。
何にしても絶対に許せない。
私はミオ様から許可をもらい、元エルンベル伯爵夫妻に別邸まで、来てもらうことにした。
フェリックスも同席したいというので、その旨を書いて送ると、ミシェルも含めた3人で伺うと返事が来た。
ミシェルはお呼びじゃないのだけど、まあいいわ。
彼女の目の前でフェリックスと仲良くして、ミシェルの両親には然るべき処置をさせてもらうことにした。
※
次の話はミシェル視点です。
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※小説家になろうにも掲載しています
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