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23.5 兄の裏切り(ミシェル視点)
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お姉様の養子縁組の解消について、お兄様は反対してきた。
そんなことをしたら、エイト公爵家を敵に回すようなものだと訴えた。
でも、お父様はこう言った。
「シェリルは私たちの子供ではないんだ。母親もいないんだから解消してもおかしくない」
「そうよ。まだ、この人の血を継いでいるというならまだしもそうじゃないんだから」
お母様も笑顔で頷き、わたしの味方になってくれた。
お兄様は保身のために必死だわ。
エイト公爵家に喧嘩を売るようなものだから、そんな馬鹿なことはしたくないという気持ちはわかる。
だって、平穏に暮らしていくほうが楽だもの。
でも、わたしだってプライドがある。
貴族の血を引くわたしが平民の血しか引いていない、お姉様、いえ、シェリルさんには負けられないわ。
いくら、フェリックス様がお姉様を好きだったとしても、公爵家が平民を妻に迎えることなんてできない。
それにシェリルさんは一度、結婚に失敗している。
公爵家から見捨てられたシェリルさんの末路がどうなるのか今から楽しみだわ。
そして、今度こそ、フェリックス様に目を覚ましてもらわないといけない。
*****
シェリルさんは相変わらずエイト公爵邸に図々しくも居座っていたので、養子縁組の解消の話をするために、お父様が連絡を入れた。
お父様からの連絡にシェリルさんからすぐに返事が来て、会わなくても用件を教えてくれれば良いと書かれていたそうだ。
援助は許されていないけれど、家族と会うことに制限はない。
エルンベル邸の夕食に招待されたわたしは、実家の料理を久しぶりに堪能した。
そして、そのまま話をすることになり、わたしの隣に座っているお母様は楽しそうに話し始める。
「きっと、養子縁組解消の話をどこかから聞いて、直接話を聞くのが怖くて会おうとしないんじゃないかしら」
「先延ばしにしても一緒なのにな」
お父様も一緒になって笑い、わたしも笑った。
だけど、その場にいたお兄様だけは険しい顔をしている。
お兄様の妻である、わたしにとっての義理の姉は二人目の出産が近いため、2歳の甥っ子と一緒に実家に帰っているから、今、席についているのは家族だけだ。
だから、遠慮なく話をする。
「お兄様、そんなに怯えなくても大丈夫ですよ。きっと上手くいきますから」
「いや、そうとは思えない。シェリルから僕宛に連絡が来たんだ」
お兄様の話に驚いて聞き返す。
「どういうことですか!? お兄様とお姉様は別に仲が良かったわけでは無いでしょう。それなのに連絡を取っているんですか?」
「シェリルとは仲良くもないし、仲が悪かったわけでもない。僕は彼女に興味がなかっただけだ。本当の兄妹じゃないんだから、僕が面倒を見てやる筋合いはないだろう」
お兄様は自分の利益しか考えていない。
そんなお兄様が浮かない顔をしているということは、シェリルさんに弱みでも握られて脅されているのかしら。
シェリルさんなんて怖くないわ。
養子縁組の解消の件を知ったら、フェリックス様だけじゃなく、ミオ様もシェリルさんを見捨てるんだから、ただの無力な女よ。
「お兄様、心配しなくても大丈夫ですわ。お姉様に何ができると言うのです? そんなに心配ならフェリックス様の怒りを買わないように、わたしとフェリックス様の仲を取り持ってくださいませ」
「……意味がわからない。どうしてそれが怒りを買わないことになるんだ」
「わたしとフェリックス様が恋仲になれば、エルンベル家が疎まれる理由はなくなるでしょう」
「……ミシェル、どうしてお前はそんなに自分に自信をもてるんだ?」
訝しげな様子のお兄様を見て、不思議に思って問いかける。
「どうしてそんなことを思うんですか?」
「そうよ。ミシェルのように可愛い子がフェリックス様に選ばれないわけがないわ」
お母様が言うと、お兄様は大きなため息を吐いてから、信じられないことを言い始める。
「世間一般に可愛いと言われているのはシェリルだぞ。彼女は母親似だ。万人受けする顔をしてるんだから」
「……ちょっと待ってください! そんな訳ありません! わたしのほうが可愛いってみんな言ってくれます!」
「本人にシェリルのほうが可愛いだなんて言えるわけがないだろう。性格だって、シェリルのほうがマシだ」
「「「この裏切り者!」」」
お父様たちと一緒に声を荒らげると、お兄様は椅子から立ち上がる。
「なんとでも言えばいい。僕は自分の家族を守りたい。それだけだ」
訳のわからないことを言って、お兄様はダイニングルームから出ていった。
「何よ。結婚したら、わたしは家族じゃないって言うの!?」
わたしはお兄様が出ていった扉を睨みつけて叫んだ。
そんなことをしたら、エイト公爵家を敵に回すようなものだと訴えた。
でも、お父様はこう言った。
「シェリルは私たちの子供ではないんだ。母親もいないんだから解消してもおかしくない」
「そうよ。まだ、この人の血を継いでいるというならまだしもそうじゃないんだから」
お母様も笑顔で頷き、わたしの味方になってくれた。
お兄様は保身のために必死だわ。
エイト公爵家に喧嘩を売るようなものだから、そんな馬鹿なことはしたくないという気持ちはわかる。
だって、平穏に暮らしていくほうが楽だもの。
でも、わたしだってプライドがある。
貴族の血を引くわたしが平民の血しか引いていない、お姉様、いえ、シェリルさんには負けられないわ。
いくら、フェリックス様がお姉様を好きだったとしても、公爵家が平民を妻に迎えることなんてできない。
それにシェリルさんは一度、結婚に失敗している。
公爵家から見捨てられたシェリルさんの末路がどうなるのか今から楽しみだわ。
そして、今度こそ、フェリックス様に目を覚ましてもらわないといけない。
*****
シェリルさんは相変わらずエイト公爵邸に図々しくも居座っていたので、養子縁組の解消の話をするために、お父様が連絡を入れた。
お父様からの連絡にシェリルさんからすぐに返事が来て、会わなくても用件を教えてくれれば良いと書かれていたそうだ。
援助は許されていないけれど、家族と会うことに制限はない。
エルンベル邸の夕食に招待されたわたしは、実家の料理を久しぶりに堪能した。
そして、そのまま話をすることになり、わたしの隣に座っているお母様は楽しそうに話し始める。
「きっと、養子縁組解消の話をどこかから聞いて、直接話を聞くのが怖くて会おうとしないんじゃないかしら」
「先延ばしにしても一緒なのにな」
お父様も一緒になって笑い、わたしも笑った。
だけど、その場にいたお兄様だけは険しい顔をしている。
お兄様の妻である、わたしにとっての義理の姉は二人目の出産が近いため、2歳の甥っ子と一緒に実家に帰っているから、今、席についているのは家族だけだ。
だから、遠慮なく話をする。
「お兄様、そんなに怯えなくても大丈夫ですよ。きっと上手くいきますから」
「いや、そうとは思えない。シェリルから僕宛に連絡が来たんだ」
お兄様の話に驚いて聞き返す。
「どういうことですか!? お兄様とお姉様は別に仲が良かったわけでは無いでしょう。それなのに連絡を取っているんですか?」
「シェリルとは仲良くもないし、仲が悪かったわけでもない。僕は彼女に興味がなかっただけだ。本当の兄妹じゃないんだから、僕が面倒を見てやる筋合いはないだろう」
お兄様は自分の利益しか考えていない。
そんなお兄様が浮かない顔をしているということは、シェリルさんに弱みでも握られて脅されているのかしら。
シェリルさんなんて怖くないわ。
養子縁組の解消の件を知ったら、フェリックス様だけじゃなく、ミオ様もシェリルさんを見捨てるんだから、ただの無力な女よ。
「お兄様、心配しなくても大丈夫ですわ。お姉様に何ができると言うのです? そんなに心配ならフェリックス様の怒りを買わないように、わたしとフェリックス様の仲を取り持ってくださいませ」
「……意味がわからない。どうしてそれが怒りを買わないことになるんだ」
「わたしとフェリックス様が恋仲になれば、エルンベル家が疎まれる理由はなくなるでしょう」
「……ミシェル、どうしてお前はそんなに自分に自信をもてるんだ?」
訝しげな様子のお兄様を見て、不思議に思って問いかける。
「どうしてそんなことを思うんですか?」
「そうよ。ミシェルのように可愛い子がフェリックス様に選ばれないわけがないわ」
お母様が言うと、お兄様は大きなため息を吐いてから、信じられないことを言い始める。
「世間一般に可愛いと言われているのはシェリルだぞ。彼女は母親似だ。万人受けする顔をしてるんだから」
「……ちょっと待ってください! そんな訳ありません! わたしのほうが可愛いってみんな言ってくれます!」
「本人にシェリルのほうが可愛いだなんて言えるわけがないだろう。性格だって、シェリルのほうがマシだ」
「「「この裏切り者!」」」
お父様たちと一緒に声を荒らげると、お兄様は椅子から立ち上がる。
「なんとでも言えばいい。僕は自分の家族を守りたい。それだけだ」
訳のわからないことを言って、お兄様はダイニングルームから出ていった。
「何よ。結婚したら、わたしは家族じゃないって言うの!?」
わたしはお兄様が出ていった扉を睨みつけて叫んだ。
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