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15 疑問
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「ま、まさか、レイズなのか!? ど、どうしてお前が生きているんだ。死んだんじゃなかったのか!?」
ディール様も声だけでわかったらしく、お母様を掴んでいる手を緩めて叫んだ。
「……レ、レイズってまさか」
逃げられる状況になったにもかかわらず、お母様は逃げることはせずに、レイズのほうを見て震え始めた。
死んだと思っていたはずの人が生きていたのだから、驚くのも無理はない。
でも、そこまで怯えるものなのかしら。
「今は、誰かさんのおかげでレイズではないんだよな」
フードをめくったレイズは、大きなため息を吐いてから、ディール様を睨みつける。
「親友だと思っていたのは、俺だけだったみたいで残念だよ」
「ち、違う、そういうわけじゃなくて」
「じゃあ、どういうわけなんだ。相手がオードルじゃなかったら、俺は本当に死んでたかもしれないんだぞ。しかも、お前の嘘のせいでな」
先日、オードル様と一緒にいたレイズを見た時は、夢でも見ているのではないかと思った。
オードル様が何も言わなかったということもあるけど、もしかしたら、レイズは生きているのではないかという希望を失いたくなくて、わざとレイズのことは聞かないでいたからだ。
あの時、詳しい話を聞いたところ、ディール様はレイズに私が会いに来ていて、違う宿屋にいるから、そちらに行ってあげろと嘘をついたらしい。
その宿屋が大通りに面していたため、夜でも外に出たレイズは何者かに襲われた。
それが、オードル様たちだったといういわけだ。
オードル様は「妻の所に行くだけだ」というレイズの言葉を、逃げた妻を追いかけている夫と捉えたらしく、痛い目にあわせようとした。
だけど、レイズは人違いだと訴えた。
義理の弟が人違いで殺されたオードル様は、その言葉がどうしても引っかかり、レイズを連れて帰り、もう一度調べ直す間は貧困街の身元不明者用の遺体置き場から背格好の似た若い男の遺体を持って返ってきて、レイズの代わりにしたのだ。
顔が潰されていたのは、レイズではないとわからなくするためと、わたしが直視できないようにしたのだ。
「おい! どうしてこいつが生きてるんだ!?」
ディール様が責めると、オードル様はわざとらしく肩を竦める。
「殺したかどうかは伝えていないし、金だって返しただろう」
「じゃあ、葬儀の時の顔の潰れた遺体は誰のものだったの!? わざわざ、他の人間を殺したって言うの!?」
お母様はディール様側の発言を止めようとしない。
オードル様が答える前に、わたしがお母様に尋ねる。
「お母様、先程から気になっていたのですが、どうして、お母様はディール様の立場になって話をしているんですか? おかしいでしょう。ディール様はレイズを殺そうとしたんですよ。そんなこと、してはいけないことですよね」
「そ、それはそうかもしれないけど、ディール様にだって何か理由があるはずだわ」
「俺は殺されるまでのことはディールにしてませんよ。家族の仇でもない」
レイズが睨みつけると、お母様は黙り込んでしまう。
「まさか、お母様、あなたがディール様と親しくなったのは、私とレイズが結婚する前だったわけではないですよね?」
疑問をぶつけてみると、お母様は苦虫を噛み潰したような顔になった。
ディール様も声だけでわかったらしく、お母様を掴んでいる手を緩めて叫んだ。
「……レ、レイズってまさか」
逃げられる状況になったにもかかわらず、お母様は逃げることはせずに、レイズのほうを見て震え始めた。
死んだと思っていたはずの人が生きていたのだから、驚くのも無理はない。
でも、そこまで怯えるものなのかしら。
「今は、誰かさんのおかげでレイズではないんだよな」
フードをめくったレイズは、大きなため息を吐いてから、ディール様を睨みつける。
「親友だと思っていたのは、俺だけだったみたいで残念だよ」
「ち、違う、そういうわけじゃなくて」
「じゃあ、どういうわけなんだ。相手がオードルじゃなかったら、俺は本当に死んでたかもしれないんだぞ。しかも、お前の嘘のせいでな」
先日、オードル様と一緒にいたレイズを見た時は、夢でも見ているのではないかと思った。
オードル様が何も言わなかったということもあるけど、もしかしたら、レイズは生きているのではないかという希望を失いたくなくて、わざとレイズのことは聞かないでいたからだ。
あの時、詳しい話を聞いたところ、ディール様はレイズに私が会いに来ていて、違う宿屋にいるから、そちらに行ってあげろと嘘をついたらしい。
その宿屋が大通りに面していたため、夜でも外に出たレイズは何者かに襲われた。
それが、オードル様たちだったといういわけだ。
オードル様は「妻の所に行くだけだ」というレイズの言葉を、逃げた妻を追いかけている夫と捉えたらしく、痛い目にあわせようとした。
だけど、レイズは人違いだと訴えた。
義理の弟が人違いで殺されたオードル様は、その言葉がどうしても引っかかり、レイズを連れて帰り、もう一度調べ直す間は貧困街の身元不明者用の遺体置き場から背格好の似た若い男の遺体を持って返ってきて、レイズの代わりにしたのだ。
顔が潰されていたのは、レイズではないとわからなくするためと、わたしが直視できないようにしたのだ。
「おい! どうしてこいつが生きてるんだ!?」
ディール様が責めると、オードル様はわざとらしく肩を竦める。
「殺したかどうかは伝えていないし、金だって返しただろう」
「じゃあ、葬儀の時の顔の潰れた遺体は誰のものだったの!? わざわざ、他の人間を殺したって言うの!?」
お母様はディール様側の発言を止めようとしない。
オードル様が答える前に、わたしがお母様に尋ねる。
「お母様、先程から気になっていたのですが、どうして、お母様はディール様の立場になって話をしているんですか? おかしいでしょう。ディール様はレイズを殺そうとしたんですよ。そんなこと、してはいけないことですよね」
「そ、それはそうかもしれないけど、ディール様にだって何か理由があるはずだわ」
「俺は殺されるまでのことはディールにしてませんよ。家族の仇でもない」
レイズが睨みつけると、お母様は黙り込んでしまう。
「まさか、お母様、あなたがディール様と親しくなったのは、私とレイズが結婚する前だったわけではないですよね?」
疑問をぶつけてみると、お母様は苦虫を噛み潰したような顔になった。
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