上 下
14 / 18

11 どういうことですか?

しおりを挟む
 国家間の問題になりそうだということと、わたしとランとの婚約についての返事をするという理由もあったため、陛下との謁見はすぐに認められた。

 お父様が陛下に話をしてくれている間、陛下の許可を取り、わたしとチワーは、ランがいると思われる、王太子殿下の執務室に向かった。

 チワーは他の人にバレないように、バスケットの中で大人しくしている。

 ランは普段は彼の兄である王太子殿下の付き人をしていて、王太子殿下が国王に即位されたあとも、そのまま付き人として働く予定だと聞いた。

 メイドが執務室をノックし、わたしの来訪を告げてくれると、横にある側近用の部屋で待っていてくれと言われた。メイドに案内された部屋で、チワーと大人しく待っていると、少ししてから、ランが入ってきた。

「待たせて悪い」
「気にしないで。こちらこそ、突然、押しかけてしまってごめんなさい」
「ランディス~!」

 わたしとランしかいないので、チワーはバスケットから飛び出し、尻尾をぶんぶん振りながらランに飛びついた。

「何だよ、えらく甘えん坊だな」
「われに会いたかったじゃろ?」
「んー。どうだろうな」
「何じゃと!?」
「まだ離れて1日も経ってないだろ」

 ランが呆れた顔をして身をかがめ、チワーの体を撫でながら言った時だった。
 バタバタと足音が聞こえ、足音が止まると同時に、部屋の扉がノックされた。

 慌てて、チワーをバスケットの中に隠してから、ランが返事をする。

「誰だ?」
「テラエルです」

 返ってきた声はお父様の声だった。

 ランが頷いたのを確認して、わたしが慌てて扉を開けると、お父様は部屋の中に入ってくるなり、焦った顔で言う。

「リンファ、家から連絡が来たんだが、サウロン陛下が家に来ているらしい」
「サウロン陛下が!?」
「ああ。どうやら、魔物が結界の張られていない場所から出てきたらしく、なぜか、サウロン陛下だけを狙っているらしい」
「どういうことですか?」

 サウロン陛下だけを狙っているという意味が分からなくて聞き返すと、お父様は渋い顔をして答える。

「私にもよくわからないが、とにかくリンファを出せと言っている。他国とはいえ国王陛下だ。命令をいつまでも無視するわけにはいかない。しかも、家に来ているのでは余計にな」
「わかりました」

 頷くと、お父様だけだとわかったチワーはバスケットの中から飛び出して叫ぶ。

「たしか、サウロンという奴はリンファの元婚約者じゃったな!? よし、ランディス! お主も一緒に行って、リンファへの愛を叫ぶのじゃ!」
「一緒には行くけど、愛は叫ばん!!」
「なぜじゃ!? ランディスはリンファのことが好きなんじゃろ!? ま、まさか、お主、好きでもないおなごと婚約するつもりなのか!?」
「違う! そっちの話じゃない! サウロン陛下に愛は叫ばないって意味だよ!」
「別に、われはサウロンとかいう男への愛を叫べとは言っておらん! リンファへの愛を叫べと!」
「ああ、もういい! とにかく俺も行きます!」

 ランはチワーを片手で持ち上げてバスケットの中に押し込むと、お父様に向かって叫んだのだった。






※長編から短編に変更いたしました。あと3話~4話で終わる予定です。(新作を書いてまして、そちらに頭がもっていかれてしまっており、書きたかったエピソードはあるのですが、筆が止まる前に完結させます。申し訳ございません!)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、 それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。 しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、 結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。 3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか? 聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか? そもそも、なぜ死に戻ることになったのか? そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか… 色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、 そんなエレナの逆転勝利物語。

好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

大切なあのひとを失ったこと絶対許しません

にいるず
恋愛
公爵令嬢キャスリン・ダイモックは、王太子の思い人の命を脅かした罪状で、毒杯を飲んで死んだ。 はずだった。 目を開けると、いつものベッド。ここは天国?違う? あれっ、私生きかえったの?しかも若返ってる? でもどうしてこの世界にあの人はいないの?どうしてみんなあの人の事を覚えていないの? 私だけは、自分を犠牲にして助けてくれたあの人の事を忘れない。絶対に許すものか。こんな原因を作った人たちを。

【完結】悪役令嬢と言われている私が殿下に婚約解消をお願いした結果、幸せになりました。

月空ゆうい
ファンタジー
「婚約を解消してほしいです」  公爵令嬢のガーベラは、虚偽の噂が広まってしまい「悪役令嬢」と言われている。こんな私と婚約しては殿下は幸せになれないと思った彼女は、婚約者であるルーカス殿下に婚約解消をお願いした。そこから始まる、ざまぁありのハッピーエンド。 一応、R15にしました。本編は全5話です。 番外編を不定期更新する予定です!

役立たずのお飾り令嬢だと婚約破棄されましたが、田舎で幼馴染領主様を支えて幸せに暮らします

水都 ミナト
恋愛
 伯爵令嬢であるクリスティーナは、婚約者であるフィリップに「役立たずなお飾り令嬢」と蔑まれ、婚約破棄されてしまう。  事業が波に乗り調子付いていたフィリップにうんざりしていたクリスティーヌは快く婚約解消を受け入れ、幼い頃に頻繁に遊びに行っていた田舎のリアス領を訪れることにする。  かつては緑溢れ、自然豊かなリアスの地は、土地が乾いてすっかり寂れた様子だった。  そこで再会したのは幼馴染のアルベルト。彼はリアスの領主となり、リアスのために奔走していた。  クリスティーナは、彼の力になるべくリアスの地に残ることにするのだが… ★全7話★ ※なろう様、カクヨム様でも公開中です。

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

冬野月子
恋愛
「私は確かに19歳で死んだの」 謎の声に導かれ馬車の事故から兄弟を守った10歳のヴェロニカは、その時に負った傷痕を理由に王太子から婚約破棄される。 けれど彼女には嫉妬から破滅し短い生涯を終えた前世の記憶があった。 なぜか死に戻ったヴェロニカは前世での過ちを繰り返さないことを望むが、婚約破棄したはずの王太子が積極的に親しくなろうとしてくる。 そして学校で再会した、馬車の事故で助けた少年は、前世で不幸な死に方をした青年だった。 恋や友情すら知らなかったヴェロニカが、前世では関わることのなかった人々との出会いや関わりの中で新たな道を進んでいく中、前世に嫉妬で殺そうとまでしたアリサが入学してきた。

処理中です...