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エピローグ
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「リノア様達もどこかへお出かけ?」
屋敷から出ると、大きな宝石のついたアクセサリーを身につけたロレーヌ男爵令嬢が話しかけてこられました。
どうしたら、そんな贅沢をしようという気になるのでしょう。
お父様を見ていますと、暮らしが厳しいわけではありませんが、その分、自らが働き、事業をいくつも掛け持って、お金を稼いでくださっています。
だからこそ、我が家はお金に困らずに済んでいるのです。
それをわかっていますから、私の場合は無駄遣いをしないようにと心がけていますが、ロレーヌ男爵令嬢はこれから自分の家の事を管理しなければならないのに、どうされるおつもりなんでしょうか。
使用人のお給料もラルフ様が1ヶ月分は先にお支払いしてあげているそうですが、その後、どうするかなんて考えてもいないのでしょうね。
まあ、私という金づるがいるから良いと思っているのかもしれませんが、残念でしたね。
「ええ。ラルフ様のお屋敷に招待いただいたので、しばらくお世話になろうと思っているんです」
「あら、羨ましいです! お土産を楽しみにしていますね! あ、私達もいつかお誘いいただけます?」
「それは無理ですかね」
にっこり笑って拒否すると、ロレーヌ男爵令嬢は頬を膨らませて抗議してきます。
「そんな意地悪な事言わないでください、リノア様。私達の仲じゃないですか!」
「どんな仲です?」
「同じ男性を好きになった仲です! まあ、私が奪っちゃったので、リノア様は悔しいでしょうけど、同じ男性を好きになったという事は趣味も似通っていると思うんです! だから仲良く出来るはずですよ!」
「お断りです」
はっきりと気持ちをお伝えしてから、私の為に用意された馬車に近付いていく。
「リノア様、つれない事を言わないで下さい! 今はまだ失恋の痛みが消えないだけで、落ち着けばきっと」
ロレーヌ男爵令嬢が追いすがって来た時でした。
「そんな、嘘だ!!」
ディーンの叫ぶ声が聞こえ、ラルフ様が私に近付いてくると、少し乱暴に私の腕を取ってから言いました。
「早く馬車に乗るんだ」
「は、はい!」
ラルフ様に促され、何台かある内のひときわ豪華な馬車に押し込まれるように入れられると、私が座ったのを確認し、ラルフ様も中に入り、私の向かいに座られると、ケイン様が外から馬車の扉を閉めて下さいました。
すると、ディーンの叫び声が聞こえました。
「そんな、待ってくれ! リノアが助けてくれると思ったから彼女と結婚したんだ! それに旅行先で贅沢して、もう手持ちのお金がないんだよ!」
「どうかしたの、ディーン?」
「大変だ、ヴィアラ! リノア達は旅行に行くんじゃない! 引っ越すんだ!」
「引っ越す?」
「もうこの土地には戻ってこないんだよ!」
「なんですって!?」
二人が騒いでいる間に、御者から声がかかり、ゆっくりと馬車が動き出す。
「待って! 行かないで!」
ロレーヌ男爵令嬢の叫び声と共に、馬車をどんどんと叩く音が聞こえます。
窓から外を見ると、ディーンとばっちり目があってしまいました。
彼は、私に向かって泣きそうな顔で訴えてきます。
「行かないでくれ、リノア! 君がいなくなったら、俺達はどうやって生きていけばいいんだよ!」
「そうよ、リノア様! リノア様は私達の幸せに欠かせない人なんです!」
なんて迷惑で、自分勝手な人達なんでしょう!
馬車は狭く細い道のため、スピードが出せず、彼らは必死に追いかけてきます。
普通なら気の毒に思うところなのかもしれませんが、どうせ私の事などお財布か何かとしか思っていない人達です。
罪悪感はわきませんし、それよりも言いたいことがあります。
馬車の窓を小さく開けて、私の声を聞こえやすくした後、追いすがってくる二人に叫びます。
「カンタス伯爵、婚約破棄してくれてありがとう! ロレーヌ男爵令嬢、カンタス伯爵を誘惑してくれてありがとう! 二人ならきっと二人に似合う生活を送れると思います! 頑張って下さいね!」
「待ってくれ、リノア! 俺が悪かった! だから戻ってきてくれ!」
「リノア様、待って!」
広い道に出た所で、御者の方が「振り切るためスピードを上げます」とおっしゃったので、ラルフ様が私の隣に座ると私の身体を抱きしめました。
「ラ、ラルフ様!?」
「揺れるから危ない」
ラルフ様のおっしゃる通り、スピードを上げた馬車は今までと段違いに揺れて、身体が上下左右に動きましたが、ラルフ様が抱きしめてくださっていたため、身体をぶつける事なく済みました。
「待って! リノア様! ひどいわ! こんなのってあんまりよ!」
ロレーヌ男爵令嬢の泣き叫ぶ声が耳に届きましたが、もう私にはどうでも良い事です。
後日、人から聞いた話によりますと、新婚旅行中も金貸しからお金を借りて買い物をしていたようで、手持ちのお金がなくなり、借金も返せなくなったカンタス伯爵夫妻は、借金取りから逃れるため、なけなしのお金で王都に出ると、無銭飲食や、暴力で平民からお金を奪ったり、店の商品を盗んで、それを売りさばいたりするなどの悪事を仕出かしたりと、色々な罪状で捕まり、現在は投獄されているとの事でした。
ディーンは牢屋の中で私に会いたいと喚いているらしいですが、私の知った事ではありません。
もう私にこだわってほしくないものです!
「どうして私にこだわるんですか!?」完結
屋敷から出ると、大きな宝石のついたアクセサリーを身につけたロレーヌ男爵令嬢が話しかけてこられました。
どうしたら、そんな贅沢をしようという気になるのでしょう。
お父様を見ていますと、暮らしが厳しいわけではありませんが、その分、自らが働き、事業をいくつも掛け持って、お金を稼いでくださっています。
だからこそ、我が家はお金に困らずに済んでいるのです。
それをわかっていますから、私の場合は無駄遣いをしないようにと心がけていますが、ロレーヌ男爵令嬢はこれから自分の家の事を管理しなければならないのに、どうされるおつもりなんでしょうか。
使用人のお給料もラルフ様が1ヶ月分は先にお支払いしてあげているそうですが、その後、どうするかなんて考えてもいないのでしょうね。
まあ、私という金づるがいるから良いと思っているのかもしれませんが、残念でしたね。
「ええ。ラルフ様のお屋敷に招待いただいたので、しばらくお世話になろうと思っているんです」
「あら、羨ましいです! お土産を楽しみにしていますね! あ、私達もいつかお誘いいただけます?」
「それは無理ですかね」
にっこり笑って拒否すると、ロレーヌ男爵令嬢は頬を膨らませて抗議してきます。
「そんな意地悪な事言わないでください、リノア様。私達の仲じゃないですか!」
「どんな仲です?」
「同じ男性を好きになった仲です! まあ、私が奪っちゃったので、リノア様は悔しいでしょうけど、同じ男性を好きになったという事は趣味も似通っていると思うんです! だから仲良く出来るはずですよ!」
「お断りです」
はっきりと気持ちをお伝えしてから、私の為に用意された馬車に近付いていく。
「リノア様、つれない事を言わないで下さい! 今はまだ失恋の痛みが消えないだけで、落ち着けばきっと」
ロレーヌ男爵令嬢が追いすがって来た時でした。
「そんな、嘘だ!!」
ディーンの叫ぶ声が聞こえ、ラルフ様が私に近付いてくると、少し乱暴に私の腕を取ってから言いました。
「早く馬車に乗るんだ」
「は、はい!」
ラルフ様に促され、何台かある内のひときわ豪華な馬車に押し込まれるように入れられると、私が座ったのを確認し、ラルフ様も中に入り、私の向かいに座られると、ケイン様が外から馬車の扉を閉めて下さいました。
すると、ディーンの叫び声が聞こえました。
「そんな、待ってくれ! リノアが助けてくれると思ったから彼女と結婚したんだ! それに旅行先で贅沢して、もう手持ちのお金がないんだよ!」
「どうかしたの、ディーン?」
「大変だ、ヴィアラ! リノア達は旅行に行くんじゃない! 引っ越すんだ!」
「引っ越す?」
「もうこの土地には戻ってこないんだよ!」
「なんですって!?」
二人が騒いでいる間に、御者から声がかかり、ゆっくりと馬車が動き出す。
「待って! 行かないで!」
ロレーヌ男爵令嬢の叫び声と共に、馬車をどんどんと叩く音が聞こえます。
窓から外を見ると、ディーンとばっちり目があってしまいました。
彼は、私に向かって泣きそうな顔で訴えてきます。
「行かないでくれ、リノア! 君がいなくなったら、俺達はどうやって生きていけばいいんだよ!」
「そうよ、リノア様! リノア様は私達の幸せに欠かせない人なんです!」
なんて迷惑で、自分勝手な人達なんでしょう!
馬車は狭く細い道のため、スピードが出せず、彼らは必死に追いかけてきます。
普通なら気の毒に思うところなのかもしれませんが、どうせ私の事などお財布か何かとしか思っていない人達です。
罪悪感はわきませんし、それよりも言いたいことがあります。
馬車の窓を小さく開けて、私の声を聞こえやすくした後、追いすがってくる二人に叫びます。
「カンタス伯爵、婚約破棄してくれてありがとう! ロレーヌ男爵令嬢、カンタス伯爵を誘惑してくれてありがとう! 二人ならきっと二人に似合う生活を送れると思います! 頑張って下さいね!」
「待ってくれ、リノア! 俺が悪かった! だから戻ってきてくれ!」
「リノア様、待って!」
広い道に出た所で、御者の方が「振り切るためスピードを上げます」とおっしゃったので、ラルフ様が私の隣に座ると私の身体を抱きしめました。
「ラ、ラルフ様!?」
「揺れるから危ない」
ラルフ様のおっしゃる通り、スピードを上げた馬車は今までと段違いに揺れて、身体が上下左右に動きましたが、ラルフ様が抱きしめてくださっていたため、身体をぶつける事なく済みました。
「待って! リノア様! ひどいわ! こんなのってあんまりよ!」
ロレーヌ男爵令嬢の泣き叫ぶ声が耳に届きましたが、もう私にはどうでも良い事です。
後日、人から聞いた話によりますと、新婚旅行中も金貸しからお金を借りて買い物をしていたようで、手持ちのお金がなくなり、借金も返せなくなったカンタス伯爵夫妻は、借金取りから逃れるため、なけなしのお金で王都に出ると、無銭飲食や、暴力で平民からお金を奪ったり、店の商品を盗んで、それを売りさばいたりするなどの悪事を仕出かしたりと、色々な罪状で捕まり、現在は投獄されているとの事でした。
ディーンは牢屋の中で私に会いたいと喚いているらしいですが、私の知った事ではありません。
もう私にこだわってほしくないものです!
「どうして私にこだわるんですか!?」完結
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