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23 誘われました
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部屋に戻ってきたソラに聞くと、何かあった時の為にと、窓ガラスの予備があるとの事でしたので、彼に部屋の片付けを任せ、ティールームに移動して話す事になりました。
「先程の話の続きだが」
「あ、はい」
「彼らが建てている家の土地の現在の所有者に確認してみたのだが、一年契約をしてしまっているらしいな」
「そうなのです。現在の状況ですと、父が土地をその方に貸しており、その土地をどう使うかは好きなように任せている状態です。ですから、カンタス伯爵達を排除しようとなると、まずは父とその方との契約を無効にしなければなりません。ですが、事情を知らない方にしてみれば、貴族の横暴だと仰る方もいるでしょう」
土地を貸している方に、お父様自らが話をしに行かれましたが、ディーンと契約書を交わしている上に、もらった頭金は全て使い果たしたそうなのです。
平民の方がいきなり手に入れた大金ですから、持っていても不安だったのでしょう。
盗られてしまっては何もないですものね。
「まあ、契約者にしてみれば、貸しただけで金が入るはずだったのに、契約を無効にするなら入ってくるはずだった金を払えと言ってくるだろうな」
「気持ちはわからないでもありません。入ってくるお金を信じて皮算用されていてもおかしくないですから」
「ブルーミング伯爵は土地の整備を条件に無料で貸し出していたのだな?」
「それに関しましては…」
素直に答えようとしたけれど、慌てて口を閉ざす。
悪い方ではありませんが、ラルフ様は辺境伯なのですから、私の家の内情を明かすわけにはいきません。
「何にしましても、今の状態ではカンタス伯爵が払うはずの金額をお渡しするか、もしくは権力にものを言わせて土地を返却してもらうしかありませんが、お金に関しましては使わなくても良いお金を使う事になりますし、返却に関しては、お父様の評判の事を考えると、やはり気がのりません。どうしても嫌なら、また私が実家に戻れば良いだけなのです」
また新たに嫌な噂を立てられそうですが、屋敷の中で引きこもっていれば、そんな声も聞かなくて済むのですから。
「やはり、一緒に住まないか?」
「は?」
「婚約に関してはリノアのお父上には承諾いただけたことだし」
「その話は私も聞きましたが…」
お父様から連絡があり、私の意思を確認してから返事をすると言ったら、選択する権利はないから、すぐに承諾しろとラルフ様の部下の方から脅されたらしい。
まあ、ラルフ様自体は嫌な方というわけではないので、私はそれで良いと言えば良いですし、政略結婚が当たり前の世の中ですから、今回に関しましても、そう思えばいいだけですしね。
「一緒に住むから結婚というわけではない。一緒に住む事によって俺への警戒心を解いてほしいし、何より君を家族に紹介したい」
「ご家族に…紹介」
そうですよね。
もし、私がラルフ様のご家族に気に入られなければ、この婚約話も真っ白になるという事ですよね?
それに一緒に過ごしてみて、ラルフ様も私に幻滅なさるかも。
「俺から婚約破棄をする事はないから安心していい」
「んん?」
にっこり笑ってラルフ様に言われ、思っていた事がバレてしまった私は思わず変な声を出してしまった。
「リノアが俺の事を恋愛対象として見ていない事はわかっている。しかも俺はあなたに、してはいけない事をしてしまった」
「…どういう事です?」
「リノアにその事を伝えなければならないのは確かだが、そんな事くらいでは嫌わないという人間もいれば、そんな事をされては許せないという考えの人間もいたんだ。リノアが後者だった場合、俺は」
ずーんと落ち込んだ表情になってしまわれたので、慌てて慰めます。
「よくわかりませんが、まずは話をしていただいても?」
「無理だ。心の準備が出来ていない」
「ちょっと待って下さい。心の準備の前にその状態で私を妻になさろうとしているんですよね? いつ心の準備は出来るんです? 結婚前ですよね?」
「結婚してから話す」
「そんな!」
声を上げると、ラルフ様は悲しげな笑みを浮かべたあと「すまない」と小さな声で謝られたのでした。
「先程の話の続きだが」
「あ、はい」
「彼らが建てている家の土地の現在の所有者に確認してみたのだが、一年契約をしてしまっているらしいな」
「そうなのです。現在の状況ですと、父が土地をその方に貸しており、その土地をどう使うかは好きなように任せている状態です。ですから、カンタス伯爵達を排除しようとなると、まずは父とその方との契約を無効にしなければなりません。ですが、事情を知らない方にしてみれば、貴族の横暴だと仰る方もいるでしょう」
土地を貸している方に、お父様自らが話をしに行かれましたが、ディーンと契約書を交わしている上に、もらった頭金は全て使い果たしたそうなのです。
平民の方がいきなり手に入れた大金ですから、持っていても不安だったのでしょう。
盗られてしまっては何もないですものね。
「まあ、契約者にしてみれば、貸しただけで金が入るはずだったのに、契約を無効にするなら入ってくるはずだった金を払えと言ってくるだろうな」
「気持ちはわからないでもありません。入ってくるお金を信じて皮算用されていてもおかしくないですから」
「ブルーミング伯爵は土地の整備を条件に無料で貸し出していたのだな?」
「それに関しましては…」
素直に答えようとしたけれど、慌てて口を閉ざす。
悪い方ではありませんが、ラルフ様は辺境伯なのですから、私の家の内情を明かすわけにはいきません。
「何にしましても、今の状態ではカンタス伯爵が払うはずの金額をお渡しするか、もしくは権力にものを言わせて土地を返却してもらうしかありませんが、お金に関しましては使わなくても良いお金を使う事になりますし、返却に関しては、お父様の評判の事を考えると、やはり気がのりません。どうしても嫌なら、また私が実家に戻れば良いだけなのです」
また新たに嫌な噂を立てられそうですが、屋敷の中で引きこもっていれば、そんな声も聞かなくて済むのですから。
「やはり、一緒に住まないか?」
「は?」
「婚約に関してはリノアのお父上には承諾いただけたことだし」
「その話は私も聞きましたが…」
お父様から連絡があり、私の意思を確認してから返事をすると言ったら、選択する権利はないから、すぐに承諾しろとラルフ様の部下の方から脅されたらしい。
まあ、ラルフ様自体は嫌な方というわけではないので、私はそれで良いと言えば良いですし、政略結婚が当たり前の世の中ですから、今回に関しましても、そう思えばいいだけですしね。
「一緒に住むから結婚というわけではない。一緒に住む事によって俺への警戒心を解いてほしいし、何より君を家族に紹介したい」
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そうですよね。
もし、私がラルフ様のご家族に気に入られなければ、この婚約話も真っ白になるという事ですよね?
それに一緒に過ごしてみて、ラルフ様も私に幻滅なさるかも。
「俺から婚約破棄をする事はないから安心していい」
「んん?」
にっこり笑ってラルフ様に言われ、思っていた事がバレてしまった私は思わず変な声を出してしまった。
「リノアが俺の事を恋愛対象として見ていない事はわかっている。しかも俺はあなたに、してはいけない事をしてしまった」
「…どういう事です?」
「リノアにその事を伝えなければならないのは確かだが、そんな事くらいでは嫌わないという人間もいれば、そんな事をされては許せないという考えの人間もいたんだ。リノアが後者だった場合、俺は」
ずーんと落ち込んだ表情になってしまわれたので、慌てて慰めます。
「よくわかりませんが、まずは話をしていただいても?」
「無理だ。心の準備が出来ていない」
「ちょっと待って下さい。心の準備の前にその状態で私を妻になさろうとしているんですよね? いつ心の準備は出来るんです? 結婚前ですよね?」
「結婚してから話す」
「そんな!」
声を上げると、ラルフ様は悲しげな笑みを浮かべたあと「すまない」と小さな声で謝られたのでした。
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