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「借金と言ってましたが、ついにそこまできているのですね」
「自業自得でしょう。リノア様は気にされなくて良いですよ」
ソラと話をしながら屋敷に戻ると、扉の前で立っているラルフ様に気付き、慌てて駆け寄る。
「どうなされたのです?」
「あなたの帰りを待ってたんだ」
「中に入って待って下さればよろしいのに」
辺境伯を待たせてしまった上に、屋敷の中にも入れない非常識な令嬢と噂が立っても困ります。
といっても、そんな噂を流す人は、ここにはいないでしょうけれど。
「中へどうぞ」
ソラが扉を開けてくれたので、二人並んで屋敷に入ると、たまたま居合わせたメイドが、ラルフ様を見て飛び上がらんばかりに驚いた表情をしたあと、すぐに頭を下げました。
そんな彼女にお茶の用意を頼んでから、ソラの先導で応接間に着き、私達がソファーに座ったのを確認してから、ソラは一礼して部屋を出ていきました。
「ケイン様から連絡が?」
「ああ。何かあった時に通信のできる魔道具を渡していたんだ」
「そうですか。…で、なぜ、こちらに?」
次のデートの約束は二日後。
ですから、その時に話をするのでも良いと思うのですが…。
「いや、こういう話は早くにしておいた方が良いと思ってな」
「どういう事でしょう?」
「あいつらは、今、建てている家に住む気なんだろう?」
「そうらしいですが、支払うお金があるのかわかりませんね」
首を傾げてから、ラルフ様に答えてから考える。
たしか、家が出来上がってから支払うのが普通です。
ですから、今の状態でお金がないと言っているのなら、建てても支払うお金がないはずなのですが…。
しかも借金がどうとか言っていましたし。
「それで案を思いついたのだがな」
「なんでしょう?」
「俺のところに来ないか?」
「はい?」
何を言い出されたのか、意味がわからず聞き返してしまった時でした。
ガチャン、という音が窓の方から聞こえ、音に驚いた私は立ち上がり、そちらに振り返ろうとしましたが、ラルフ様がローテーブルを飛び越え、後ろにに立つなり私を庇うように抱き寄せたため、私の視界に入るのはラルフ様の白いシャツだけになってしまった。
「ラ、ラルフ様?」
驚いて名を呼ぶと、私の背中に片方の腕を回されました。
大変です!
今、私はラルフ様に抱きかかえられています!
「リノア! クラーク辺境伯、俺の話を聞いて下さい!」
ディーンの声が聞こえて、自由になっている顔だけそちらに向けると、窓ガラスのかけらが部屋の中に散乱していて、窓の向こうにはディーンがいたのです。
「ケインの奴、何をしている」
ラルフ様は小さな声で呟いたあと、ディーンに向かって言った。
「そこは扉ではないぞ」
「わかってます! でも、アトラスが邪魔をして中に入れてくれないんですよ!」
光をとり入れるために、カーテンを締めていなかったのが仇になったみたいです。
カーテンがなければ、中が丸見えですからね。
あと、ディーンの言い方だと、ケイン様も屋敷に戻ってらっしゃるようです。
「何か音が聞こえたようですが!?」
廊下側からソラの声が聞こえると同時、外にはケイン様が現れて、ディーンを羽交い締めにしました。
「アトラス! 君が金を融通してくれれば、こんな事をしなくて良かったんだぞ!」
「お前が選んだ女性の金遣いの荒さを管理できなかったのが原因だろう!」
ディーンは相変わらず、自分が悪いという発想はないようです。
「リノア、やり直そう! やっぱり、俺の妻は君しかいない。ディアラは愛人にする!」
「はあ?」
ここ最近、間抜けな声ばかり出している気がします。
「リノア、本当に俺は君を捨ててしまった事を後悔している!」
「何を馬鹿な事を言ってるんですか!」
「…す」
「…はい?」
ラルフ様の腕の力が強まったのと、何か仰ったようなので聞き返してから、彼を見上げると、それはもう恐ろしい表情をしていらっしゃいました。
「あの、ラルフ様?」
「リノア」
「はい?」
「あいつを始末しても良いか?」
笑顔を作って聞いてこられるので、私も笑顔で答える。
「駄目です」
だって、あんな人間でも伯爵ですからね。
ラルフ様のお立場がこんな事で悪くなるのは良くないのです!
「自業自得でしょう。リノア様は気にされなくて良いですよ」
ソラと話をしながら屋敷に戻ると、扉の前で立っているラルフ様に気付き、慌てて駆け寄る。
「どうなされたのです?」
「あなたの帰りを待ってたんだ」
「中に入って待って下さればよろしいのに」
辺境伯を待たせてしまった上に、屋敷の中にも入れない非常識な令嬢と噂が立っても困ります。
といっても、そんな噂を流す人は、ここにはいないでしょうけれど。
「中へどうぞ」
ソラが扉を開けてくれたので、二人並んで屋敷に入ると、たまたま居合わせたメイドが、ラルフ様を見て飛び上がらんばかりに驚いた表情をしたあと、すぐに頭を下げました。
そんな彼女にお茶の用意を頼んでから、ソラの先導で応接間に着き、私達がソファーに座ったのを確認してから、ソラは一礼して部屋を出ていきました。
「ケイン様から連絡が?」
「ああ。何かあった時に通信のできる魔道具を渡していたんだ」
「そうですか。…で、なぜ、こちらに?」
次のデートの約束は二日後。
ですから、その時に話をするのでも良いと思うのですが…。
「いや、こういう話は早くにしておいた方が良いと思ってな」
「どういう事でしょう?」
「あいつらは、今、建てている家に住む気なんだろう?」
「そうらしいですが、支払うお金があるのかわかりませんね」
首を傾げてから、ラルフ様に答えてから考える。
たしか、家が出来上がってから支払うのが普通です。
ですから、今の状態でお金がないと言っているのなら、建てても支払うお金がないはずなのですが…。
しかも借金がどうとか言っていましたし。
「それで案を思いついたのだがな」
「なんでしょう?」
「俺のところに来ないか?」
「はい?」
何を言い出されたのか、意味がわからず聞き返してしまった時でした。
ガチャン、という音が窓の方から聞こえ、音に驚いた私は立ち上がり、そちらに振り返ろうとしましたが、ラルフ様がローテーブルを飛び越え、後ろにに立つなり私を庇うように抱き寄せたため、私の視界に入るのはラルフ様の白いシャツだけになってしまった。
「ラ、ラルフ様?」
驚いて名を呼ぶと、私の背中に片方の腕を回されました。
大変です!
今、私はラルフ様に抱きかかえられています!
「リノア! クラーク辺境伯、俺の話を聞いて下さい!」
ディーンの声が聞こえて、自由になっている顔だけそちらに向けると、窓ガラスのかけらが部屋の中に散乱していて、窓の向こうにはディーンがいたのです。
「ケインの奴、何をしている」
ラルフ様は小さな声で呟いたあと、ディーンに向かって言った。
「そこは扉ではないぞ」
「わかってます! でも、アトラスが邪魔をして中に入れてくれないんですよ!」
光をとり入れるために、カーテンを締めていなかったのが仇になったみたいです。
カーテンがなければ、中が丸見えですからね。
あと、ディーンの言い方だと、ケイン様も屋敷に戻ってらっしゃるようです。
「何か音が聞こえたようですが!?」
廊下側からソラの声が聞こえると同時、外にはケイン様が現れて、ディーンを羽交い締めにしました。
「アトラス! 君が金を融通してくれれば、こんな事をしなくて良かったんだぞ!」
「お前が選んだ女性の金遣いの荒さを管理できなかったのが原因だろう!」
ディーンは相変わらず、自分が悪いという発想はないようです。
「リノア、やり直そう! やっぱり、俺の妻は君しかいない。ディアラは愛人にする!」
「はあ?」
ここ最近、間抜けな声ばかり出している気がします。
「リノア、本当に俺は君を捨ててしまった事を後悔している!」
「何を馬鹿な事を言ってるんですか!」
「…す」
「…はい?」
ラルフ様の腕の力が強まったのと、何か仰ったようなので聞き返してから、彼を見上げると、それはもう恐ろしい表情をしていらっしゃいました。
「あの、ラルフ様?」
「リノア」
「はい?」
「あいつを始末しても良いか?」
笑顔を作って聞いてこられるので、私も笑顔で答える。
「駄目です」
だって、あんな人間でも伯爵ですからね。
ラルフ様のお立場がこんな事で悪くなるのは良くないのです!
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