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「思ってた以上にクソ野郎でしたね。手首を折ってやりたかったけど我慢しましたよ」
私以上にイライラした様子で、ソラは部屋に戻った私の所までやって来ると言いました。
「ソラ。助けてくれたのはありがたいのですが、あんな方でも伯爵なのですから敬意は払わないと」
「そこは反省してます。ただ、本当に戦場で手柄なんて立てれたんかと思うけどな!」
丁寧な言葉を使おうと努力していたようですが、最後の方は諦めたようです。
「あの方、お金に困っているのかしら」
「新しい婚約者の金遣いが荒いらしいからな。そりゃ、事業も何もしていない伯爵がお金を湯水の如く使ってたら底をつくだろ」
「金を返せと言われたのは衝撃的だったのです」
はあ、とため息を吐いたと同時に、部屋の外にいた侍女がノックをして部屋に入るなり、慌てた表情で言う。
「クラーク辺境伯がいらっしゃってます!」
「はい?」
自分の耳を疑って、思わず聞き返してしまう。
おかしいです。
だって次は一週間後と仰ってましたのに!
「お会いするので、応接間に通してもらえる?」
「畏まりました」
侍女が部屋を出ていってから、ソラに尋ねる。
「タイミングが良すぎませんか?」
「ですね。もしかすると…」
ソラは言葉を止めましたが、彼が何を言おうとしたかはわかったので、先を促す事は止めておいた。
応接間に入ると、ラルフ様はソファーから立ち上がって、私の方に近寄って来られました。
「リノア、カンタス伯爵が来たみたいだが大丈夫か?」
「大丈夫でしたよ? ふざけた事を言ってはおられましたが」
「どんな事を?」
「復縁するつもりはないけれど、ブルーミング家の財力は欲しいと言われました」
「ふざけているな」
まだお若いのに、眉間に深く刻まれたシワをより深くさせながら、ラルフ様は吐き捨てるように言いました。
「ラルフ様、それについてのお話もさせてはいただきたいのですけれども、まずは他の事をお聞きしてもよろしいですか」
「どうした?」
「まずはお掛けになって下さいませ」
お茶を入れるためにメイドが入ってきましたが、立ったまま話をしている私達に戸惑っていたため、ラルフ様にはソファーに掛けていただき、私は向かい側に座る。
お茶を出し終えたメイドが出ていくのを見送ったあと、私はラルフ様に向き直り、口を開いた。
「ラルフ様、私を監視しておられますね? もしくは、この屋敷に出入りする人物を、なのかもしれませんが」
「どうしてそう思う?」
「早すぎます」
簡単に答えますと、私が怒っているように思われたのか、片手をこめかみに当てて、小さく息を吐かれました。
「そうだ。リノアがいる、この屋敷だけでなく、君の実家の方にも人をやっている。勘違いしないでほしいが、屋敷の中には入らせていない」
「屋敷の周りで待機されている方がいらっしゃるのですね」
「俺が信頼している部下の何人かに頼んでいる。リノアやリノアの家族に何かあってはいけないからな」
しゅんとした様子でお話をして下さいますが、そういう事は勝手にやらないでいただきたかったです!
「私の為にやって下さったという事はわかりました。お気持ちもありがたいです。ですから、その方々をお客様としてお迎えいたします」
「お客様?」
「ええ。屋敷内にお部屋をご用意いたします。ですが、屋敷内のプライベートな場所に入っていただくのは禁止です」
「いや、リノア。そこまでしなくても良いんだ」
慌てるラルフ様に正直に伝える。
「正直、誰かに見えないところから見られているというのは私自身も嫌ですし、屋敷で働いている者達も良い気はしないでしょう。それに、ラルフ様の部下という事はお強いのでしょう?」
「…まあな」
「でしたら、この屋敷には男性が少ないですので、護衛代わりになっていただけますとありがたいです。情報が必要でしたら、聞いていただければお教えしますし、普段はエントランスにいらっしゃるようにするのはどうでしょう?」
どうせ婚約するかしないかも結婚するかしないかも今のところ、私には決定権がないのです。
それならこれくらいの自由はさせていただかなくては!
今日の事もあり、騎士が一人でも多く欲しかった所ですから、ちょうど良かったのです!
ラルフ様のご厚意を利用するという事だけは心苦しくはありますが…。
私以上にイライラした様子で、ソラは部屋に戻った私の所までやって来ると言いました。
「ソラ。助けてくれたのはありがたいのですが、あんな方でも伯爵なのですから敬意は払わないと」
「そこは反省してます。ただ、本当に戦場で手柄なんて立てれたんかと思うけどな!」
丁寧な言葉を使おうと努力していたようですが、最後の方は諦めたようです。
「あの方、お金に困っているのかしら」
「新しい婚約者の金遣いが荒いらしいからな。そりゃ、事業も何もしていない伯爵がお金を湯水の如く使ってたら底をつくだろ」
「金を返せと言われたのは衝撃的だったのです」
はあ、とため息を吐いたと同時に、部屋の外にいた侍女がノックをして部屋に入るなり、慌てた表情で言う。
「クラーク辺境伯がいらっしゃってます!」
「はい?」
自分の耳を疑って、思わず聞き返してしまう。
おかしいです。
だって次は一週間後と仰ってましたのに!
「お会いするので、応接間に通してもらえる?」
「畏まりました」
侍女が部屋を出ていってから、ソラに尋ねる。
「タイミングが良すぎませんか?」
「ですね。もしかすると…」
ソラは言葉を止めましたが、彼が何を言おうとしたかはわかったので、先を促す事は止めておいた。
応接間に入ると、ラルフ様はソファーから立ち上がって、私の方に近寄って来られました。
「リノア、カンタス伯爵が来たみたいだが大丈夫か?」
「大丈夫でしたよ? ふざけた事を言ってはおられましたが」
「どんな事を?」
「復縁するつもりはないけれど、ブルーミング家の財力は欲しいと言われました」
「ふざけているな」
まだお若いのに、眉間に深く刻まれたシワをより深くさせながら、ラルフ様は吐き捨てるように言いました。
「ラルフ様、それについてのお話もさせてはいただきたいのですけれども、まずは他の事をお聞きしてもよろしいですか」
「どうした?」
「まずはお掛けになって下さいませ」
お茶を入れるためにメイドが入ってきましたが、立ったまま話をしている私達に戸惑っていたため、ラルフ様にはソファーに掛けていただき、私は向かい側に座る。
お茶を出し終えたメイドが出ていくのを見送ったあと、私はラルフ様に向き直り、口を開いた。
「ラルフ様、私を監視しておられますね? もしくは、この屋敷に出入りする人物を、なのかもしれませんが」
「どうしてそう思う?」
「早すぎます」
簡単に答えますと、私が怒っているように思われたのか、片手をこめかみに当てて、小さく息を吐かれました。
「そうだ。リノアがいる、この屋敷だけでなく、君の実家の方にも人をやっている。勘違いしないでほしいが、屋敷の中には入らせていない」
「屋敷の周りで待機されている方がいらっしゃるのですね」
「俺が信頼している部下の何人かに頼んでいる。リノアやリノアの家族に何かあってはいけないからな」
しゅんとした様子でお話をして下さいますが、そういう事は勝手にやらないでいただきたかったです!
「私の為にやって下さったという事はわかりました。お気持ちもありがたいです。ですから、その方々をお客様としてお迎えいたします」
「お客様?」
「ええ。屋敷内にお部屋をご用意いたします。ですが、屋敷内のプライベートな場所に入っていただくのは禁止です」
「いや、リノア。そこまでしなくても良いんだ」
慌てるラルフ様に正直に伝える。
「正直、誰かに見えないところから見られているというのは私自身も嫌ですし、屋敷で働いている者達も良い気はしないでしょう。それに、ラルフ様の部下という事はお強いのでしょう?」
「…まあな」
「でしたら、この屋敷には男性が少ないですので、護衛代わりになっていただけますとありがたいです。情報が必要でしたら、聞いていただければお教えしますし、普段はエントランスにいらっしゃるようにするのはどうでしょう?」
どうせ婚約するかしないかも結婚するかしないかも今のところ、私には決定権がないのです。
それならこれくらいの自由はさせていただかなくては!
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