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「本日はありがとうございました」
お店を出たあとは何事もなく、ラルフ様に連れられるままに色々なお店をまわり、なぜかたくさんの服やアクセサリー、小物などを買っていただきました。
婚約者でもない人間にこんな事をしないで下さい、とお願いしたのですが、変なところ頑固なので聞き入れてくれない上に、彼の中では自分の妻は私以外にいないから気にしなくて良いと言われてしまいました。
友人を守りたいという気持ちはありましたが、たまたまドレスの裾を踏んだくらいで恋に落ちられるとは、単純すぎませんか?
もちろん、理由はそれだけではないみたいでしたが…。
「リノア、どうかしたのか?」
「いえ、今日は色々とありましたもので…。でも、とても楽しかったです。それに、お土産だけでなく、他にもたくさん買っていただいて申し訳ありません」
「そこは謝るのではなく、お礼を言ってほしいところだな」
「…承知しました。では改めて。たくさんの贈り物をありがとうございました。大事にさせていただきます」
深々と頭を下げてから、ラルフ様の顔を見上げると嬉しそうな表情で私を見ておられました。
「あの、ラルフ様」
「次のデートはいつにしようか」
「デートするたびに贈り物をいただいては気が引けますので、そんなに頻繁である必要はないかと」
「俺は少しでも早くリノアと仲良くなりたいんだ」
私が引き気味な事に気が付かれたのか、ラルフ様は悲しげな表情をされました。
そういう表情はずるいです!
断りづらくなるじゃないですか!
「わかりました。では1ヶ月後でどうでしょう!」
「ないな」
きっぱりと却下されてしまいました。
「ですがラルフ様、私とあなたは別に婚約者同士という訳でもないですし」
「そうか。結婚を急ぐから駄目なのだな? では、婚約者からはじめよう」
「どうしてそっちに話が飛ぶんですか!」
「リノアには好きな男性がいるわけではないのだろう?」
「そ、それは、まあ」
「なら、他の誰かに出会う前に俺にしておけばいい」
にっこり笑って言われました。
思った以上に強引な方ですね。
まあ、この年で何度も戦いに出られた上に、辺境伯としての仕事をこなされている訳ですから、これくらいの決断力がないといけないのかもしれませんが…。
「あの、その点に関しては両親と話し合いを」
「そう言って前回は断ってきただろう? 正式な申込みの書類を君の実家に送っておこう。もちろん、断るという選択肢は無しだ」
「……」
あまりの強引なお話に何も言えないでいると、ラルフ様は私の右頬にキスをした後、優しい笑みを浮かべて言います。
「では一週間後に。毎日会いたいのは山々だが、俺も仕事があるのでな」
彼の唇が触れた感触に驚いて、頬を手で押さえて固まっている間に、ラルフ様は転移の魔道具を使って消えてしまわれました。
な、なんという事を!!
まだ婚約者というわけでもなく、ましてや恋人同士でもないのに、頬にキスだなんて!!
プリプリしながら屋敷の中に入っていくと、幼なじみでもあり、現在は執事であるソラから「顔が真っ赤ですよ。熱でもあるんですか?」なんて事を言われてしまった。
次の日、侍女と一緒にラルフ様に買っていただいたものを整理していた時、ソラがふてくされた様な顔をして部屋にやって来た。
「リノア様、お客様がいらっしゃってますが。どうします? 追い返しますか? 許可いただけるなら殴り倒しますが」
執事のソラは私と同じ年齢で平民出身だけれど、彼のお父様の綺麗な黒い髪や目鼻立ちのはっきりした顔立ちが、私のお母様の好みだったらしく、お父様と共に小さな頃から、使用人として雇っていたのですが、私や弟のヒナタとも仲が良く、彼の恋人のメイドが私に付いてきてくれる事になったので、彼を執事として一緒に連れて来る事になったのです。
丁寧な言葉を使うように努力はしているようですが、元々気性が荒いタイプなので、たまに言動が悪い時があるのです。
「誰が来てるの?」
「クソ野郎です」
「ソラ、またそんな言葉を」
「ディーン・カンタスです」
ディーン?
その名前を聞いて、ソラに言動を注意するのを止めてしまった私は、令嬢としてはいけない人間でしょうか。
お店を出たあとは何事もなく、ラルフ様に連れられるままに色々なお店をまわり、なぜかたくさんの服やアクセサリー、小物などを買っていただきました。
婚約者でもない人間にこんな事をしないで下さい、とお願いしたのですが、変なところ頑固なので聞き入れてくれない上に、彼の中では自分の妻は私以外にいないから気にしなくて良いと言われてしまいました。
友人を守りたいという気持ちはありましたが、たまたまドレスの裾を踏んだくらいで恋に落ちられるとは、単純すぎませんか?
もちろん、理由はそれだけではないみたいでしたが…。
「リノア、どうかしたのか?」
「いえ、今日は色々とありましたもので…。でも、とても楽しかったです。それに、お土産だけでなく、他にもたくさん買っていただいて申し訳ありません」
「そこは謝るのではなく、お礼を言ってほしいところだな」
「…承知しました。では改めて。たくさんの贈り物をありがとうございました。大事にさせていただきます」
深々と頭を下げてから、ラルフ様の顔を見上げると嬉しそうな表情で私を見ておられました。
「あの、ラルフ様」
「次のデートはいつにしようか」
「デートするたびに贈り物をいただいては気が引けますので、そんなに頻繁である必要はないかと」
「俺は少しでも早くリノアと仲良くなりたいんだ」
私が引き気味な事に気が付かれたのか、ラルフ様は悲しげな表情をされました。
そういう表情はずるいです!
断りづらくなるじゃないですか!
「わかりました。では1ヶ月後でどうでしょう!」
「ないな」
きっぱりと却下されてしまいました。
「ですがラルフ様、私とあなたは別に婚約者同士という訳でもないですし」
「そうか。結婚を急ぐから駄目なのだな? では、婚約者からはじめよう」
「どうしてそっちに話が飛ぶんですか!」
「リノアには好きな男性がいるわけではないのだろう?」
「そ、それは、まあ」
「なら、他の誰かに出会う前に俺にしておけばいい」
にっこり笑って言われました。
思った以上に強引な方ですね。
まあ、この年で何度も戦いに出られた上に、辺境伯としての仕事をこなされている訳ですから、これくらいの決断力がないといけないのかもしれませんが…。
「あの、その点に関しては両親と話し合いを」
「そう言って前回は断ってきただろう? 正式な申込みの書類を君の実家に送っておこう。もちろん、断るという選択肢は無しだ」
「……」
あまりの強引なお話に何も言えないでいると、ラルフ様は私の右頬にキスをした後、優しい笑みを浮かべて言います。
「では一週間後に。毎日会いたいのは山々だが、俺も仕事があるのでな」
彼の唇が触れた感触に驚いて、頬を手で押さえて固まっている間に、ラルフ様は転移の魔道具を使って消えてしまわれました。
な、なんという事を!!
まだ婚約者というわけでもなく、ましてや恋人同士でもないのに、頬にキスだなんて!!
プリプリしながら屋敷の中に入っていくと、幼なじみでもあり、現在は執事であるソラから「顔が真っ赤ですよ。熱でもあるんですか?」なんて事を言われてしまった。
次の日、侍女と一緒にラルフ様に買っていただいたものを整理していた時、ソラがふてくされた様な顔をして部屋にやって来た。
「リノア様、お客様がいらっしゃってますが。どうします? 追い返しますか? 許可いただけるなら殴り倒しますが」
執事のソラは私と同じ年齢で平民出身だけれど、彼のお父様の綺麗な黒い髪や目鼻立ちのはっきりした顔立ちが、私のお母様の好みだったらしく、お父様と共に小さな頃から、使用人として雇っていたのですが、私や弟のヒナタとも仲が良く、彼の恋人のメイドが私に付いてきてくれる事になったので、彼を執事として一緒に連れて来る事になったのです。
丁寧な言葉を使うように努力はしているようですが、元々気性が荒いタイプなので、たまに言動が悪い時があるのです。
「誰が来てるの?」
「クソ野郎です」
「ソラ、またそんな言葉を」
「ディーン・カンタスです」
ディーン?
その名前を聞いて、ソラに言動を注意するのを止めてしまった私は、令嬢としてはいけない人間でしょうか。
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