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10 過去の話を思い出しました
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誰かを食べたいと思うにしても、私にこだわる理由がわからないので聞いてみると、ラルフ様は動揺されたのか、持っていたカップを落としそうになられましたが、反対の手で受け止められて何事もなく済みました。
「聞いてはいけませんでしたか?」
「いや、話さなければいけないとは思っていた」
ラルフ様は私から視線をそらして、言葉を続けます。
「リノアはパートナーなしで、ここ最近は社交場に顔を出していただろう?」
「ええ。あんな人でしたが書類上では婚約者でしたから。弟には婚約者がおりましたし、エスコートしてくれる相手が父くらいしかおりませんでしたので」
パーティーなどに出席する際、異性と出席するなら相手は婚約者か親族が当たり前だから、婚約者以外の男性と出席しようものなら、私達の国では恥知らず扱いされてしまう。
だから、どうしても出席しなければいけない時は一人で出席したりしていた。
「俺はそれでリノアの存在に気が付いた」
「毎回、壁の花でしたからね」
「俺は婚約者がいなかったから、毎回一人だったがな」
「ラルフ様なら、そこに立っているだけで女性が集まってくるのでは?」
「リノアはそんな冗談が言えるんだな」
冗談ではないのですけどね?
謙遜なのかもしれませんし、苦笑して首を横に振る。
「冗談ではありません。ラルフ様はとても素敵ですよ?」
「…ありがとう」
目線は合わせずに礼を言われた後、話を続けて下さる。
「パーティに一人で来る令嬢が珍しくて、ついついリノアを目で追うようになってしまって、あなたが普通の令嬢と少し変わっている事に気が付いた」
「な、何かしでかしていましたか?」
「友人に嫌がらせしようとしていた令嬢のドレスを踏んだりして、ターゲットを自分にしようと仕向けていただろう?」
「うっ。見ていらしたのですか…」
実はそうなのです。
私は人になじられる事がよくありますが、外見などの悪口に対しては、あまり気にしないタイプという事もあり、お友達が困っていると助けたくなってしまいます。
なぜか私の友人を目の敵にしていたご令嬢がいて、あるパーティーで私の友人に持っていた飲み物をかけようと企んでいるお話を聞いてしまいまして、その場面で私はそのご令嬢のドレスの裾をわざと踏んでさしあげた事があるのです。
勢いよく歩いていこうとしていらっしゃいましたから、私に裾を踏まれ、後ろにつんのめったご令嬢は私の友人にではなく、彼女自身に飲み物をかけられたわけです。
もちろん、私もそんな事を計算してやった事ではないので、すぐに謝りもしましたし、お詫びの新しいドレスを後日にはなりますがお送りしたのを覚えています。
もしかすると、ラルフ様はその時のお話をしていられるのかも。
「友人が悲しんでいる姿は見たくありません。それに私は私の事をよく知らない方に何か言われても気にならない性格ですので、ターゲットが私になっても、性格の悪い人が私に何か言っている、というくらいにしか思えないのです」
「…そんなリノアだから結婚してほしいと思ったんだ」
苦笑しながら答えると、ラルフ様は優しく微笑んで言われました。
「で、ですが、それだけで結婚だなんて」
「それからリノアの事を色々と調べさせてもらった」
「え」
ちょ、ちょっと待ってください。
色々と調べたって、その前にやる事があるのでは?
「あの、せめてお声をかけていただく事は出来なかったのでしょうか」
「あなたには婚約者がいただろう?」
「そ、そうでした」
「だから、声は掛けられなかった」
ラルフ様はにっこり微笑んだあと、私にケーキをもっと食べるようにと促してくる。
「手が止まっているぞ? あと、お茶が冷めてしまったな。新しいものを入れてもらうか?」
「お願いできればありがたいですけれども」
せっかくのケーキを食べないわけにはいかないので、食べる事を再開した私でしたが、頭の中では疑問符がぐるぐるとまわっていました。
だって、さっきのラルフ様の言い方だと、本当に私の事を好きみたいじゃないですか。
私みたいな平凡な令嬢をラルフ様が好きになるだなんておかしいです。
私じゃなくても、もっと他に良い方はいるはず。
どうして、私じゃなきゃ駄目なのでしょう?
「聞いてはいけませんでしたか?」
「いや、話さなければいけないとは思っていた」
ラルフ様は私から視線をそらして、言葉を続けます。
「リノアはパートナーなしで、ここ最近は社交場に顔を出していただろう?」
「ええ。あんな人でしたが書類上では婚約者でしたから。弟には婚約者がおりましたし、エスコートしてくれる相手が父くらいしかおりませんでしたので」
パーティーなどに出席する際、異性と出席するなら相手は婚約者か親族が当たり前だから、婚約者以外の男性と出席しようものなら、私達の国では恥知らず扱いされてしまう。
だから、どうしても出席しなければいけない時は一人で出席したりしていた。
「俺はそれでリノアの存在に気が付いた」
「毎回、壁の花でしたからね」
「俺は婚約者がいなかったから、毎回一人だったがな」
「ラルフ様なら、そこに立っているだけで女性が集まってくるのでは?」
「リノアはそんな冗談が言えるんだな」
冗談ではないのですけどね?
謙遜なのかもしれませんし、苦笑して首を横に振る。
「冗談ではありません。ラルフ様はとても素敵ですよ?」
「…ありがとう」
目線は合わせずに礼を言われた後、話を続けて下さる。
「パーティに一人で来る令嬢が珍しくて、ついついリノアを目で追うようになってしまって、あなたが普通の令嬢と少し変わっている事に気が付いた」
「な、何かしでかしていましたか?」
「友人に嫌がらせしようとしていた令嬢のドレスを踏んだりして、ターゲットを自分にしようと仕向けていただろう?」
「うっ。見ていらしたのですか…」
実はそうなのです。
私は人になじられる事がよくありますが、外見などの悪口に対しては、あまり気にしないタイプという事もあり、お友達が困っていると助けたくなってしまいます。
なぜか私の友人を目の敵にしていたご令嬢がいて、あるパーティーで私の友人に持っていた飲み物をかけようと企んでいるお話を聞いてしまいまして、その場面で私はそのご令嬢のドレスの裾をわざと踏んでさしあげた事があるのです。
勢いよく歩いていこうとしていらっしゃいましたから、私に裾を踏まれ、後ろにつんのめったご令嬢は私の友人にではなく、彼女自身に飲み物をかけられたわけです。
もちろん、私もそんな事を計算してやった事ではないので、すぐに謝りもしましたし、お詫びの新しいドレスを後日にはなりますがお送りしたのを覚えています。
もしかすると、ラルフ様はその時のお話をしていられるのかも。
「友人が悲しんでいる姿は見たくありません。それに私は私の事をよく知らない方に何か言われても気にならない性格ですので、ターゲットが私になっても、性格の悪い人が私に何か言っている、というくらいにしか思えないのです」
「…そんなリノアだから結婚してほしいと思ったんだ」
苦笑しながら答えると、ラルフ様は優しく微笑んで言われました。
「で、ですが、それだけで結婚だなんて」
「それからリノアの事を色々と調べさせてもらった」
「え」
ちょ、ちょっと待ってください。
色々と調べたって、その前にやる事があるのでは?
「あの、せめてお声をかけていただく事は出来なかったのでしょうか」
「あなたには婚約者がいただろう?」
「そ、そうでした」
「だから、声は掛けられなかった」
ラルフ様はにっこり微笑んだあと、私にケーキをもっと食べるようにと促してくる。
「手が止まっているぞ? あと、お茶が冷めてしまったな。新しいものを入れてもらうか?」
「お願いできればありがたいですけれども」
せっかくのケーキを食べないわけにはいかないので、食べる事を再開した私でしたが、頭の中では疑問符がぐるぐるとまわっていました。
だって、さっきのラルフ様の言い方だと、本当に私の事を好きみたいじゃないですか。
私みたいな平凡な令嬢をラルフ様が好きになるだなんておかしいです。
私じゃなくても、もっと他に良い方はいるはず。
どうして、私じゃなきゃ駄目なのでしょう?
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