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9 聞けていなかった事を思い出しました
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「えっと、こちらのケーキは美味しかったですよ」
二個目のケーキはシンプルにチョコレートケーキにしたのですが、美味しそうに見えたんですかね?
だから食べさせてとか言っているのかと思った私は、皿ごとラルフ様の方に押し出すと、ラルフ様は首を横に振られました。
「食べさせてくれないか。恋人同士はするものなんだろう?」
「え? あ、いや、それはよっぽど仲の良い恋人同士ではないのでしょうか」
自分で言ってから、馬鹿な事を言ってしまった事に気付く。
仲良くなかったら恋人同士にならないですよね…。
というか、そういう事が嫌いな恋人同士だっているでしょうし。
「そうか。もっと仲良くなればしてもらえる訳だな?」
「はい?」
なんというか、思った以上にメルヘンチックなお方なのでしょうか。
二人きりの空間とはいえ、食べさせてほしいだなんておっしゃるなんて。
お顔だけ見れば、そういう事はお嫌いな方のようにしか見えないのですが。
「少しでも早く仲良くなれるように努力する」
「あ、えーと。カンタス伯爵の恋人ってどんな方なんですか?」
恥ずかしくなってきたのもあり、彼女の性格が良くなさそうなのはわかっていますが、詳しい事は知らないので話題を変えてみる。
「ああ。ロレーヌ嬢の事か。彼女は男爵家の令嬢で元々、婚約者はいなかったらしい。どうやら彼女の両親も金遣いが荒い事で有名なんだそうだ」
「そ、そうなのですか」
ディーンは爵位が与えられたと同時に、たくさんのお金をもらったようですが、そんなに金遣いの荒い家族が相手なら、すぐにお金が無くなってしまいそうです。
「彼女は自分達の幸せなところを元婚約者であるリノアに見せつけたいみたいだな」
「は、はあ」
理由が馬鹿らしすぎて何も言えなくなる。
そういえば婚約を解消するようにお願いしに来た時も、私の事を小馬鹿にしていた感じがありました。
思い出すと腹が立ってきた!
「そんなもの見たくもありません! でも、私がそんな態度を見せれば、より調子にのられるのでしょうね!」
声を荒げて言うと、ラルフ様は驚いた顔をしたあと、優しい口調で私に言います。
「あなたが気に食わないのなら、どんな手を使っても」
「駄目です!」
「何も言っていないが?」
「物騒なことを口にしようとされたでしょう?」
口元に笑みを浮かべて言うラルフ様に答えると、首を縦に振ってから言葉を発されました。
「自分の未来の花嫁に仇をなす人物はいない方が良いだろう?」
「発言が物騒すぎるのです! それに私は恨みを買うような事をあちらにした覚えはありません!」
「それは悪かった。そうだな。逆にあなたの方が名誉を傷付けられたのだものな」
「世間ではそうなっておりますわね」
その点に関しては正直に頷く。
世間様からは長年、帰りを待ち続けた婚約者にふられた伯爵令嬢として、面白おかしく噂されているようですので。
「俺が求婚したという噂が流れているのも知っているか?」
「侍女からは聞いております」
元婚約者に捨てられて嘆き悲しんでいる私をラルフ様が不憫に思い、求婚されたという噂も広がっているようなのです。
「それについては、そんな噂を流した本人を探し出そうとしている所だ」
「探し出してどうされるおつもりで?」
「それはもちろん、リノアに謝らせようと思っている」
思ったよりも穏便なやり方だったので胸を撫で下ろしていると、続いた言葉を聞いて笑顔が固まった。
「もちろん、大勢の前で謝罪させる」
「は?」
「そうでもしないと俺の腹の虫がおさまらん」
「んん? あ、私のためではなく、自分のためで、という事ですか」
「なんというか、俺がリノアに結婚を申し込んだのに、申し込ませたみたいに言っている奴らが許せないんだ」
ラルフ様は眉間にシワを寄せて、そうおっしゃいました。
そういえば、ちゃんと聞けていませんでした。
「ラルフ様」
「なんだ?」
「どうしてラルフ様は私に求婚して下さったのです?」
二個目のケーキはシンプルにチョコレートケーキにしたのですが、美味しそうに見えたんですかね?
だから食べさせてとか言っているのかと思った私は、皿ごとラルフ様の方に押し出すと、ラルフ様は首を横に振られました。
「食べさせてくれないか。恋人同士はするものなんだろう?」
「え? あ、いや、それはよっぽど仲の良い恋人同士ではないのでしょうか」
自分で言ってから、馬鹿な事を言ってしまった事に気付く。
仲良くなかったら恋人同士にならないですよね…。
というか、そういう事が嫌いな恋人同士だっているでしょうし。
「そうか。もっと仲良くなればしてもらえる訳だな?」
「はい?」
なんというか、思った以上にメルヘンチックなお方なのでしょうか。
二人きりの空間とはいえ、食べさせてほしいだなんておっしゃるなんて。
お顔だけ見れば、そういう事はお嫌いな方のようにしか見えないのですが。
「少しでも早く仲良くなれるように努力する」
「あ、えーと。カンタス伯爵の恋人ってどんな方なんですか?」
恥ずかしくなってきたのもあり、彼女の性格が良くなさそうなのはわかっていますが、詳しい事は知らないので話題を変えてみる。
「ああ。ロレーヌ嬢の事か。彼女は男爵家の令嬢で元々、婚約者はいなかったらしい。どうやら彼女の両親も金遣いが荒い事で有名なんだそうだ」
「そ、そうなのですか」
ディーンは爵位が与えられたと同時に、たくさんのお金をもらったようですが、そんなに金遣いの荒い家族が相手なら、すぐにお金が無くなってしまいそうです。
「彼女は自分達の幸せなところを元婚約者であるリノアに見せつけたいみたいだな」
「は、はあ」
理由が馬鹿らしすぎて何も言えなくなる。
そういえば婚約を解消するようにお願いしに来た時も、私の事を小馬鹿にしていた感じがありました。
思い出すと腹が立ってきた!
「そんなもの見たくもありません! でも、私がそんな態度を見せれば、より調子にのられるのでしょうね!」
声を荒げて言うと、ラルフ様は驚いた顔をしたあと、優しい口調で私に言います。
「あなたが気に食わないのなら、どんな手を使っても」
「駄目です!」
「何も言っていないが?」
「物騒なことを口にしようとされたでしょう?」
口元に笑みを浮かべて言うラルフ様に答えると、首を縦に振ってから言葉を発されました。
「自分の未来の花嫁に仇をなす人物はいない方が良いだろう?」
「発言が物騒すぎるのです! それに私は恨みを買うような事をあちらにした覚えはありません!」
「それは悪かった。そうだな。逆にあなたの方が名誉を傷付けられたのだものな」
「世間ではそうなっておりますわね」
その点に関しては正直に頷く。
世間様からは長年、帰りを待ち続けた婚約者にふられた伯爵令嬢として、面白おかしく噂されているようですので。
「俺が求婚したという噂が流れているのも知っているか?」
「侍女からは聞いております」
元婚約者に捨てられて嘆き悲しんでいる私をラルフ様が不憫に思い、求婚されたという噂も広がっているようなのです。
「それについては、そんな噂を流した本人を探し出そうとしている所だ」
「探し出してどうされるおつもりで?」
「それはもちろん、リノアに謝らせようと思っている」
思ったよりも穏便なやり方だったので胸を撫で下ろしていると、続いた言葉を聞いて笑顔が固まった。
「もちろん、大勢の前で謝罪させる」
「は?」
「そうでもしないと俺の腹の虫がおさまらん」
「んん? あ、私のためではなく、自分のためで、という事ですか」
「なんというか、俺がリノアに結婚を申し込んだのに、申し込ませたみたいに言っている奴らが許せないんだ」
ラルフ様は眉間にシワを寄せて、そうおっしゃいました。
そういえば、ちゃんと聞けていませんでした。
「ラルフ様」
「なんだ?」
「どうしてラルフ様は私に求婚して下さったのです?」
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