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8 とんでもない事を言われました
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辺境伯と伯爵との財力は、かなり違う、というか、ラルフ様の家が特に財力があるだけなのかはわからないけれど、なんと連れて行かれたのは、一見さんお断りで有名なスイーツ店で、しかもお店の奥にある豪華な個室だった。
大きな窓の向こうには、手入れされた庭園が広がっている。
「ここは苺のタルトが美味いと有名らしい」
「苺は大好きです」
我が家は貧乏というわけではありませんが、贅沢を嫌っていましたので、スイーツを外で食べたりするのは、月に一度あるかないかなので心が躍る。
運ばれてきたケーキは私達二人では到底食べきれない量だったので慌てると「使用人のために包んでもらえば良い」とラルフ様は仰って下さいました。
「美味いか?」
「とっても美味しいです!」
「女性は甘いものが好きだな」
「全ての方ではないと思いますが、好きな方の割合は多いでしょうね」
「そうか。何にしろ、リノアが喜んでくれたなら良かった」
私の食べる姿を優しく見つめてくださる視線は、とても有り難いのですが、もしや、私を太らせようとしているのでは? とも勘ぐってしまう。
「あの、ラルフ様、こんな時になんなのですが、カンタス伯爵についての先程のお話の続きをお聞きしてもよろしいですか?」
タルトを一つ食べ終えてから、フォークを置いて言うと、ラルフ様は不満そうな顔をされました。
「あ、あの何か、私、失礼な事を言ってしまいました?」
「いや、カンタス伯爵の理由を思い出すと、腹が立つからな」
「腹が立つ、ですか?」
「ああ。あまり、リノアには教えたくないが、やはり知りたいんだろう?」
「もちろんです! 嫌がらせをされている様なものですから!」
実際、本当にただの嫌がらせかもしれないから、もしそうなら、お父様達にお願いして、ディーンをどうにかして排除しなければならない。
私は普通の令嬢のように優しい令嬢ではありませんから!
自分や周りの人達がどう楽しく、どう幸せに過ごせるかが一番です!
「リノアはカンタス伯爵に婚約破棄をされて悲しくはなかったのだな?」
「もちろんです。そういう方だとわかっていましたから、こんな事になるだろうと予測しておりました。どちらかといえば、手柄を立てるのが遅いなぁと思っていたくらいです」
「…そうか。それなら良かった」
ラルフ様は軽く吹き出すようにして笑った後、私の質問についての答えを教えてくれる。
「カンタス伯爵が君の家の近くに自分の家を建てようとしているのは、どうやら、君の事が惜しくなったらしい」
「どういう事です?」
話の途中で聞き返してしまった。
私が惜しくなった、なんて意味がわかりません!
「彼は一時、今の恋人である彼女に夢中だったようだが、彼女の金遣いの荒さを知って困っているようだ」
「私なら無駄遣いはしないから、マシという事でしょうか…」
「君の場合は君の家の財産もあるからな」
「そういえば、お相手の方はどちらかのご令嬢ではないのでしょうか?」
全く興味がなかったので、相手の方の事を調べていなかったので聞いてみると、ラルフ様は一口紅茶を飲んでから答えてくださいます。
「令嬢ではあるが男爵家で、しかもあまり財力のないところのようだな」
「お相手の方は、伯爵の財産を狙って?」
「最初はそうかもしれないが、今はわからないな」
「本当に愛し合っていらっしゃるなら、無駄遣いなどせずとも、一緒にいられるだけで幸せですのにね?」
愛というものはよくわからないけれど、恋愛小説を呼んでいると、大体のヒロインはそんな感じなので想像して言ってみると、ラルフ様は表情を柔らかくして頷かれた。
「俺もそう思う」
「…ラルフ様にもそういう方がいらっしゃるのですね」
「…どうして伝わらないんだ」
はあ、と大きくため息を吐いてラルフ様は頭を抱えられました。
私、変な事を言いましたかね?
「あの、ラルフ様。ケーキ、美味しいです」
場を和まそうと笑ってみせると、ラルフ様は困ったように笑ったあと、とんでもない事を口にされた。
「リノアが食べさせてくれないか」
「何をです?」
「俺に、リノアが美味しいと思うそのケーキを食べさせてくれないだろうか」
危うくフォークを手から落としそうになりましたが、何とかこらえる。
今、なんておっしゃいました?
大きな窓の向こうには、手入れされた庭園が広がっている。
「ここは苺のタルトが美味いと有名らしい」
「苺は大好きです」
我が家は貧乏というわけではありませんが、贅沢を嫌っていましたので、スイーツを外で食べたりするのは、月に一度あるかないかなので心が躍る。
運ばれてきたケーキは私達二人では到底食べきれない量だったので慌てると「使用人のために包んでもらえば良い」とラルフ様は仰って下さいました。
「美味いか?」
「とっても美味しいです!」
「女性は甘いものが好きだな」
「全ての方ではないと思いますが、好きな方の割合は多いでしょうね」
「そうか。何にしろ、リノアが喜んでくれたなら良かった」
私の食べる姿を優しく見つめてくださる視線は、とても有り難いのですが、もしや、私を太らせようとしているのでは? とも勘ぐってしまう。
「あの、ラルフ様、こんな時になんなのですが、カンタス伯爵についての先程のお話の続きをお聞きしてもよろしいですか?」
タルトを一つ食べ終えてから、フォークを置いて言うと、ラルフ様は不満そうな顔をされました。
「あ、あの何か、私、失礼な事を言ってしまいました?」
「いや、カンタス伯爵の理由を思い出すと、腹が立つからな」
「腹が立つ、ですか?」
「ああ。あまり、リノアには教えたくないが、やはり知りたいんだろう?」
「もちろんです! 嫌がらせをされている様なものですから!」
実際、本当にただの嫌がらせかもしれないから、もしそうなら、お父様達にお願いして、ディーンをどうにかして排除しなければならない。
私は普通の令嬢のように優しい令嬢ではありませんから!
自分や周りの人達がどう楽しく、どう幸せに過ごせるかが一番です!
「リノアはカンタス伯爵に婚約破棄をされて悲しくはなかったのだな?」
「もちろんです。そういう方だとわかっていましたから、こんな事になるだろうと予測しておりました。どちらかといえば、手柄を立てるのが遅いなぁと思っていたくらいです」
「…そうか。それなら良かった」
ラルフ様は軽く吹き出すようにして笑った後、私の質問についての答えを教えてくれる。
「カンタス伯爵が君の家の近くに自分の家を建てようとしているのは、どうやら、君の事が惜しくなったらしい」
「どういう事です?」
話の途中で聞き返してしまった。
私が惜しくなった、なんて意味がわかりません!
「彼は一時、今の恋人である彼女に夢中だったようだが、彼女の金遣いの荒さを知って困っているようだ」
「私なら無駄遣いはしないから、マシという事でしょうか…」
「君の場合は君の家の財産もあるからな」
「そういえば、お相手の方はどちらかのご令嬢ではないのでしょうか?」
全く興味がなかったので、相手の方の事を調べていなかったので聞いてみると、ラルフ様は一口紅茶を飲んでから答えてくださいます。
「令嬢ではあるが男爵家で、しかもあまり財力のないところのようだな」
「お相手の方は、伯爵の財産を狙って?」
「最初はそうかもしれないが、今はわからないな」
「本当に愛し合っていらっしゃるなら、無駄遣いなどせずとも、一緒にいられるだけで幸せですのにね?」
愛というものはよくわからないけれど、恋愛小説を呼んでいると、大体のヒロインはそんな感じなので想像して言ってみると、ラルフ様は表情を柔らかくして頷かれた。
「俺もそう思う」
「…ラルフ様にもそういう方がいらっしゃるのですね」
「…どうして伝わらないんだ」
はあ、と大きくため息を吐いてラルフ様は頭を抱えられました。
私、変な事を言いましたかね?
「あの、ラルフ様。ケーキ、美味しいです」
場を和まそうと笑ってみせると、ラルフ様は困ったように笑ったあと、とんでもない事を口にされた。
「リノアが食べさせてくれないか」
「何をです?」
「俺に、リノアが美味しいと思うそのケーキを食べさせてくれないだろうか」
危うくフォークを手から落としそうになりましたが、何とかこらえる。
今、なんておっしゃいました?
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