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4 新居にも訪ねてこられました
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「ブルーミング嬢、会えて良かった」
数日後の朝早く、新しい屋敷へ初めてのお客様がいらっしゃいましたが、それはまさかのクラーク辺境伯でした。
普段は冷たい表情をされている方なのだそうですが、私を見た瞬間、柔らかな笑みを浮かべてくださり、普段とのギャップに戸惑ってしまいましたが、これは罠かもしれない、と自分自身に言い聞かせて、笑顔を作って応対する。
「ごきげんよう、お会いできて嬉しいですわ。けれど、なにぶん、引っ越したばかりでして屋敷内が片付いておりませんの。ですから、大変失礼な申し出になるのですけれど、日を改めて…」
「気にしなくて良い。俺は君の顔を見に来たのだから」
「は、はあ…」
女性の中でも小柄な方の私と、男性でも大柄な方のクラーク辺境伯は立っていると、身長差をより感じるし、座っている時よりも威圧感を感じて、作った笑みが崩れてしまいそうになる。
「えーと、あの、お手紙は届いたのですよね?」
どうしても家の中には入れたくなくて、扉の前で話をしていると、クラーク辺境伯は少し不機嫌そうな表情になったあと、首を縦に振られました。
「届きはした。けれど、納得していない」
「な、何がですか?」
「俺との結婚は嫌だ、と?」
「嫌とは言ってません! 私なんかがクラーク辺境伯様に嫁ぐだなんて恐れ多いと」
「ラルフでいい」
「はい?」
また変な声で聞き返してしまう。
「ラルフと呼んでくれ。あなたの事は、そうだな。リノアと呼んでもいいかな」
「は、はい?」
照れたように視線を斜め下に向けながら、クラーク辺境伯がおっしゃられたので、また間抜けな声で聞き返すと、彼は私の両手を取り、視線を合わせると、はっきりと言葉を口にされました。
「断る」
「な、何がです?」
「結婚は出来ないと手紙に書いていたな?」
「は、はい」
「その断りを断る」
「は、はあ?」
クラーク辺境伯が何をおっしゃっているのかわからず、大声を上げてしまった。
「私の意思を汲み取ってはいただけないのでしょうか?」
「俺にとって問題ない事をあなたが言うからだ」
「いえいえ、問題ないわけないのです!」
人様の前では気を付けていた口癖が興奮したせいで出てしまい、思わず口をおさえると、辺境伯は不思議そうに首を傾げて私に問いかけてきます。
「どうかしたのか?」
「あ、いえ」
口癖が出てしまったからとは言えず、首を横に振ってから、改めて言葉を発する。
「問題なんてないだなんて、そんな訳ありません。クラーク辺境伯様にはもっと素敵なお方が」
「ラルフだ」
「はい?」
「ラルフと呼んでくれと言ったろう?」
優しく微笑んで命令されました。
ああ。
彼は怒っているんでしょうか。
嫌がらせでこんな事を?
だって、噂の彼はこんな人ではないはずです。
大体、どうしてここがわかったんでしょう。
家族や使用人の一部にしか知られてないのに…。
「リノア?」
「えっ! あ、申し訳ございません」
「謝らなくて良い。今日は急すぎたな。日を改める」
「えっ! いや、あのっ!」
私の呼び止める声は彼には届かず、簡素な門を通り抜け、彼はぐるりと屋敷を囲んでいる塀の外に消えていかれました。
せっかくこの地でのんびりしようと思っていたのに、このままでは、のんびりどころか、逆に神経をすり減らす生活になってしまいそう!
まずは、彼がどうして私と結婚をしたがっているのかを調べなくては。
私を嫁にしたいだなんて、何か裏があるに決まっていますから!
数日後の朝早く、新しい屋敷へ初めてのお客様がいらっしゃいましたが、それはまさかのクラーク辺境伯でした。
普段は冷たい表情をされている方なのだそうですが、私を見た瞬間、柔らかな笑みを浮かべてくださり、普段とのギャップに戸惑ってしまいましたが、これは罠かもしれない、と自分自身に言い聞かせて、笑顔を作って応対する。
「ごきげんよう、お会いできて嬉しいですわ。けれど、なにぶん、引っ越したばかりでして屋敷内が片付いておりませんの。ですから、大変失礼な申し出になるのですけれど、日を改めて…」
「気にしなくて良い。俺は君の顔を見に来たのだから」
「は、はあ…」
女性の中でも小柄な方の私と、男性でも大柄な方のクラーク辺境伯は立っていると、身長差をより感じるし、座っている時よりも威圧感を感じて、作った笑みが崩れてしまいそうになる。
「えーと、あの、お手紙は届いたのですよね?」
どうしても家の中には入れたくなくて、扉の前で話をしていると、クラーク辺境伯は少し不機嫌そうな表情になったあと、首を縦に振られました。
「届きはした。けれど、納得していない」
「な、何がですか?」
「俺との結婚は嫌だ、と?」
「嫌とは言ってません! 私なんかがクラーク辺境伯様に嫁ぐだなんて恐れ多いと」
「ラルフでいい」
「はい?」
また変な声で聞き返してしまう。
「ラルフと呼んでくれ。あなたの事は、そうだな。リノアと呼んでもいいかな」
「は、はい?」
照れたように視線を斜め下に向けながら、クラーク辺境伯がおっしゃられたので、また間抜けな声で聞き返すと、彼は私の両手を取り、視線を合わせると、はっきりと言葉を口にされました。
「断る」
「な、何がです?」
「結婚は出来ないと手紙に書いていたな?」
「は、はい」
「その断りを断る」
「は、はあ?」
クラーク辺境伯が何をおっしゃっているのかわからず、大声を上げてしまった。
「私の意思を汲み取ってはいただけないのでしょうか?」
「俺にとって問題ない事をあなたが言うからだ」
「いえいえ、問題ないわけないのです!」
人様の前では気を付けていた口癖が興奮したせいで出てしまい、思わず口をおさえると、辺境伯は不思議そうに首を傾げて私に問いかけてきます。
「どうかしたのか?」
「あ、いえ」
口癖が出てしまったからとは言えず、首を横に振ってから、改めて言葉を発する。
「問題なんてないだなんて、そんな訳ありません。クラーク辺境伯様にはもっと素敵なお方が」
「ラルフだ」
「はい?」
「ラルフと呼んでくれと言ったろう?」
優しく微笑んで命令されました。
ああ。
彼は怒っているんでしょうか。
嫌がらせでこんな事を?
だって、噂の彼はこんな人ではないはずです。
大体、どうしてここがわかったんでしょう。
家族や使用人の一部にしか知られてないのに…。
「リノア?」
「えっ! あ、申し訳ございません」
「謝らなくて良い。今日は急すぎたな。日を改める」
「えっ! いや、あのっ!」
私の呼び止める声は彼には届かず、簡素な門を通り抜け、彼はぐるりと屋敷を囲んでいる塀の外に消えていかれました。
せっかくこの地でのんびりしようと思っていたのに、このままでは、のんびりどころか、逆に神経をすり減らす生活になってしまいそう!
まずは、彼がどうして私と結婚をしたがっているのかを調べなくては。
私を嫁にしたいだなんて、何か裏があるに決まっていますから!
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