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3 お断りのお手紙を書きました
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「えっと、今、なんと?」
「結婚してほしい、と言った」
「けっ、こん?」
もしかして、この方は結婚の意味をわかっていらっしゃらない?
え、それとも偽物?
その可能性はありえます。
だって、クラーク辺境伯は無口で有名ですのに、口数が多いとは言いませんが、普通に話してくださってますもの。
ああ、でも偽物はさすがに厳しいでしょうか。
だって、自分になりすました人間を許すようなお方でもなさそうですし、バレたらきっと、命が危ぶまれますものね。
罰ゲームとか?
他の辺境伯の方と賭けでもして、私にプロポーズして、式の間近にフッてやれば良いとか?
そういえば、この方は何人ものご令嬢と噂になっておられますが、婚約までされた、という話は聞かない上に、相手にもされずに捨てられたとおっしゃる方が多いと聞きました。
いつも、こうやってプロポーズをして、相手がその気になったら、捨てるパターンでしょうか?
二度も捨てられたなんて噂されたくありません!
「あの、ありがたいお申し出ではあるのですが、家族と話をさせていただいても良いでしょうか?」
「構わないが、何か不都合でもあるのか?」
「いいえ」
嘘です。
大ありですよ!
すぐに捨てられるとわかっていて、そのプロポーズ、お受けします、なんて人はいないでしょう?
そう言ってしまいたい衝動をなんとかおさえて、今日の所はお引取りいただく事になりました。
クラーク辺境伯をお見送りしたあと、心配していた家族が私の所へ集まってきたので、ティールームでお茶を飲みながら、先程のお話を伝えたところ、お父様が唸ったあと、私を見て言いました。
「そんな冗談や嘘を言われる方ではないんだけどなぁ」
「という事は本気だという事ですか?」
ヒナタがお父様に聞くと、これまた首を傾げてしまわれる。
「いや、そうだと思うんだが、どうしてリノアなんだろうか、と思ってな」
「あら、私の可愛いリノアに何かご不満でも?」
「そうですよ。姉さまは俺の婚約者の次に可愛らしい方です。もちろん、お母様はお美しい方として一番ですよ」
お母様の視線に気が付いたのか、ヒナタはにっこり微笑んでお母様へのフォローを入れたあと、私の方を見て続けます。
「姉さまは彼とどこかでお会いした事があるのですか?」
「わからないのです。もしかすると、社交場でお会いしているのかもしれませんが、お話した記憶は全くないのですよね」
なんとか記憶を探り出そうと、こめかみに手を当てて考えてみますが、あんなに素敵な殿方との接点でしたら、すぐに思い出しても良さそうなものなのですが…。
「彼は女性嫌いで有名なんだ。だから、もしかしたら今回のプロポーズも何か裏があるのかもしれない。角が立たない様にお断りするしかないだろうね」
「お父様のお立場は大丈夫ですか?」
「何も報復がない事を祈るしかない」
私の向かい側に座るお父様は苦笑したあと、言葉を続けます。
「断られたからと言って嫌がらせをしてくるようなタイプの方ではないから心配しなくても良いよ」
それから、私は急いで新しい屋敷を探し、数日後、お断りのお手紙を送りました。
文面としては「大変ありがたいお申し出ではございますが、私のような婚約者に捨てられた人間には、あなた様の様な素敵な方はもったいなさすぎますので、お断りさせていただきます」というシンプルなもので、ささやかながらお詫びの品と一緒にお送りしました。
もしかすると、怒って我が家まで来るかもしれないと家族に心配された私は、大変失礼な事をしているとわかっていながらも、夜逃げをするような形で家を出たのでした。
「結婚してほしい、と言った」
「けっ、こん?」
もしかして、この方は結婚の意味をわかっていらっしゃらない?
え、それとも偽物?
その可能性はありえます。
だって、クラーク辺境伯は無口で有名ですのに、口数が多いとは言いませんが、普通に話してくださってますもの。
ああ、でも偽物はさすがに厳しいでしょうか。
だって、自分になりすました人間を許すようなお方でもなさそうですし、バレたらきっと、命が危ぶまれますものね。
罰ゲームとか?
他の辺境伯の方と賭けでもして、私にプロポーズして、式の間近にフッてやれば良いとか?
そういえば、この方は何人ものご令嬢と噂になっておられますが、婚約までされた、という話は聞かない上に、相手にもされずに捨てられたとおっしゃる方が多いと聞きました。
いつも、こうやってプロポーズをして、相手がその気になったら、捨てるパターンでしょうか?
二度も捨てられたなんて噂されたくありません!
「あの、ありがたいお申し出ではあるのですが、家族と話をさせていただいても良いでしょうか?」
「構わないが、何か不都合でもあるのか?」
「いいえ」
嘘です。
大ありですよ!
すぐに捨てられるとわかっていて、そのプロポーズ、お受けします、なんて人はいないでしょう?
そう言ってしまいたい衝動をなんとかおさえて、今日の所はお引取りいただく事になりました。
クラーク辺境伯をお見送りしたあと、心配していた家族が私の所へ集まってきたので、ティールームでお茶を飲みながら、先程のお話を伝えたところ、お父様が唸ったあと、私を見て言いました。
「そんな冗談や嘘を言われる方ではないんだけどなぁ」
「という事は本気だという事ですか?」
ヒナタがお父様に聞くと、これまた首を傾げてしまわれる。
「いや、そうだと思うんだが、どうしてリノアなんだろうか、と思ってな」
「あら、私の可愛いリノアに何かご不満でも?」
「そうですよ。姉さまは俺の婚約者の次に可愛らしい方です。もちろん、お母様はお美しい方として一番ですよ」
お母様の視線に気が付いたのか、ヒナタはにっこり微笑んでお母様へのフォローを入れたあと、私の方を見て続けます。
「姉さまは彼とどこかでお会いした事があるのですか?」
「わからないのです。もしかすると、社交場でお会いしているのかもしれませんが、お話した記憶は全くないのですよね」
なんとか記憶を探り出そうと、こめかみに手を当てて考えてみますが、あんなに素敵な殿方との接点でしたら、すぐに思い出しても良さそうなものなのですが…。
「彼は女性嫌いで有名なんだ。だから、もしかしたら今回のプロポーズも何か裏があるのかもしれない。角が立たない様にお断りするしかないだろうね」
「お父様のお立場は大丈夫ですか?」
「何も報復がない事を祈るしかない」
私の向かい側に座るお父様は苦笑したあと、言葉を続けます。
「断られたからと言って嫌がらせをしてくるようなタイプの方ではないから心配しなくても良いよ」
それから、私は急いで新しい屋敷を探し、数日後、お断りのお手紙を送りました。
文面としては「大変ありがたいお申し出ではございますが、私のような婚約者に捨てられた人間には、あなた様の様な素敵な方はもったいなさすぎますので、お断りさせていただきます」というシンプルなもので、ささやかながらお詫びの品と一緒にお送りしました。
もしかすると、怒って我が家まで来るかもしれないと家族に心配された私は、大変失礼な事をしているとわかっていながらも、夜逃げをするような形で家を出たのでした。
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