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プロローグ
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「リノア姉さん、大変だ!」
「どうかしたの?」
ある日の昼下り、苦手な刺繍を克服するため、自室で刺繍の先生に指導してもらっていたら、私、リノア・ブルーミングの弟であるヒナタがノックもせずに扉を開けて中に入り込んで来ました。
「入って良いなんて許可してませんよ?」
手に持っていた刺繍枠や針を置き、黒色の軽くウェーブのかかった腰まである長い髪を揺らして咎めると、先生がいるにも関わらず、ヒナタは彼の髪色と同じ紺色の瞳を揺らしながら叫びました。
「そんな事を言ってる場合じゃないよ! やっぱりあいつは裏切ったんだ!」
「あいつ…?」
小首をかしげて聞き返すと、ヒナタはじれったいと言わんばかりに華奢な身体を上下に揺らしたあと、小柄な私を見下ろして、また叫びます。
「ディーンだよ! ディーンの奴、手柄を立てて伯爵の爵位を得たと同時に、旅の途中で出会った女性と結婚が決まったって!」
「あら。それはおめでたいのです」
「おめでたいのです、じゃないでしょ! 怒らないの!?」
「どうして怒るんです? だって、どうせわかってましたから」
整った顔立ちで有名な可愛い我が弟に笑いかけると、ヒナタは私よりも憤慨しながら私に聞いてきます。
「本当に良いの!?」
「かまいませんよ?」
「だって、婚約者だったんだよ?」
「他の女性と結婚するのであれば、破棄してくるでしょうね」
ニコニコして言うと、ヒナタは崩れ落ちるように、近くにあった椅子に座り、頭を抱えました。
婚約者がいるのに、破棄なり解消なりの手続きもせずに、他の女性と結婚の話をすすめるおバカさんなんて、こっちからお断りですよ。
「どうかしたの?」
ある日の昼下り、苦手な刺繍を克服するため、自室で刺繍の先生に指導してもらっていたら、私、リノア・ブルーミングの弟であるヒナタがノックもせずに扉を開けて中に入り込んで来ました。
「入って良いなんて許可してませんよ?」
手に持っていた刺繍枠や針を置き、黒色の軽くウェーブのかかった腰まである長い髪を揺らして咎めると、先生がいるにも関わらず、ヒナタは彼の髪色と同じ紺色の瞳を揺らしながら叫びました。
「そんな事を言ってる場合じゃないよ! やっぱりあいつは裏切ったんだ!」
「あいつ…?」
小首をかしげて聞き返すと、ヒナタはじれったいと言わんばかりに華奢な身体を上下に揺らしたあと、小柄な私を見下ろして、また叫びます。
「ディーンだよ! ディーンの奴、手柄を立てて伯爵の爵位を得たと同時に、旅の途中で出会った女性と結婚が決まったって!」
「あら。それはおめでたいのです」
「おめでたいのです、じゃないでしょ! 怒らないの!?」
「どうして怒るんです? だって、どうせわかってましたから」
整った顔立ちで有名な可愛い我が弟に笑いかけると、ヒナタは私よりも憤慨しながら私に聞いてきます。
「本当に良いの!?」
「かまいませんよ?」
「だって、婚約者だったんだよ?」
「他の女性と結婚するのであれば、破棄してくるでしょうね」
ニコニコして言うと、ヒナタは崩れ落ちるように、近くにあった椅子に座り、頭を抱えました。
婚約者がいるのに、破棄なり解消なりの手続きもせずに、他の女性と結婚の話をすすめるおバカさんなんて、こっちからお断りですよ。
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