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6−4  オルザベート視点

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※ 精神的に追い詰められたり、心神喪失状態が苦手な方は、ご注意下さい。






 エアリスに見捨てられた日、警察に捕まった私は、殺人未遂の罪に問われる事になった。
 住居への不法侵入については、ティンカーがかけた魔法によるものだから、罪に問われるのはティンカーだけになった。
 彼が私を庇ってくれたのもある。
 私を守ろうとしてくれる、こういう所はティンカーの良いところね。

 だけど、ティンカーは魔法を犯罪に使ったという事で、余計に重い罪となる事になった為、もう、私と彼が会う事はなさそう。

 なぜなら、魔法使いを良く思わない人間がいる中、余計にイメージを悪くしたという事で、魔法使い達の方からも厳罰を求められているから。

 出てきたとしても、だいぶ先だろうし、その頃の私には、きっと彼は用無しだろうしね。

 ロンバートは私を刺したという事で、傷害罪で捕まったけれど、心神耗弱の恐れがあるという事で、審議される事になったらしい。

 そして、私に関しては、ミゼライトやカイジス公爵が、心神喪失の恐れがあると言ってくれたらしい。

 ミゼライトはどうして私を助けようとしたのかしら?
 私に殺されるのが怖くなったの?
 だから、恩を売っておこうと思ったのかしら?
 馬鹿よね。
 私はそんな事で許したりしないわ。

 絶対に許さない!

 エアリスと手を繋いで歩くだなんて、私でも出来なかった事なのに!
 許せない!
 絶対に痛い目にあわせてやる!
 
 頭がおかしいフリをしていれば、罪は免れるかもしれない。
 そう考えて、取り調べに対して、私は意味不明な事ばかり話した。

 無実を訴えている最中に、突然、他の話をして笑ってみたり、泣き出したり、怒ったりしていると、取り調べをしていた人間達の態度が変わってきた。

 そして、私は心神喪失者の入れられる施設に入る事になった。

 この施設で、精神的な改善が認められれば、また、外へ出られる様になるらしい。

 正常に戻ったフリをして、少しでも早くにここを出なくっちゃ。

 事前申請があれば、面会も出来るらしいから、両親がここに来てくれたら、エアリスに来てもらえる様に頼んでもらおう。

 そう思っていたのに…。
 施設内は過酷だった。

 出された薬は暴れたふりをして捨てると、鎮静剤を問答無用で打たれ、暴れるからという理由で、ベッドに拘束されて放置される。

 それがわかった私は、すぐに職員に訴えた。
 もう、薬を飲まなくても正常なのだと…。

 けれど、職員は聞き入れてくれなかった。

 そして、こう言った。

「君はもうここから出られない。ああ、でも、君には理解出来ないかな?」

 そんな、そんな事は絶対にない!
 私はここから出なくちゃいけないの!

「私の両親を呼んで!」

 一応、職員は私の望み通りに、私の家族に連絡を入れてくれた様だった。
 けれど、返ってきた返事は「しばらく頭を冷やしなさい」だった。

 そこで、私は両親に見放された事に気が付いた。

 なら、もう助けを求められるのは一人しかいない。

「エアリス! エアリスを呼んで下さい!」
「エアリス…? もしかして、カイジス公爵夫人の事を言っているのか? 公爵夫人を呼べる訳がないだろう」
「エアリスが…公爵夫人に…?」

 エアリスはいつの間にか結婚していた。
 結婚式はまだだけれど、籍を入れたらしい。

 そんなの、報告を受けてない。
 エアリス、あなたは本当に私の事がいらなくなったの?

「酷い、酷いわ…」
「何を言ってるんだ。酷い事をしたのは君の方だろう?」

 職員は扉の向こうから、私にそう言うと、笑いながら去っていった。

 鉄格子付きの小さな窓から入ってくる光を眺めながら、時折聞こえる叫び声を無視して、ベッドの上に座って考える。

 そんな事はないわ。
 職員は間違ってる。
 酷いのは私?

 違うわ。

 エアリス…。
 酷いことをしたのは、あなたの方よ?
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