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5−2 オルザベート視点

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 ロンバートに連れられて向かった場所は、潜伏先からそう遠くない繁華街だった。
 
「この繁華街の中にあるカフェのどれかにエアリスがいるはずだ。不自然に店の周りをウロウロしている奴がいたら、その店にいる可能性が高い」

 私にそう言ったロンバートの表情は、一緒に暮らしていた頃の彼よりも頼もしく思えた。
 刑務所に入って、少し逞しくなったのかしら。
 重労働だったのか、腕の筋肉などもついている様な気がした。
 それに比べて、ティンカーは周りを気にしてオドオドしすぎだった。
 監視されているのはわかっているんだから、諦めて気にしないフリをすればいいのに。

 少しでも早くエアリスの姿を見たくて駆け足になる。
 この繁華街には何回か来た事があるから、どこにカフェがあったかはうろ覚えではあるけれど覚えてはいる。

 手分けして探そうかと、人の多い通りではあるけれど、そんな事は気にせずに、一度、立ち止まろうとした時だった。
 私達がいる歩道の馬車道をはさんだ反対側に、小洒落たカフェがあった。
 そして、その窓際の席に、エアリスの姿があったのだ。

「いたわ!」

 久しぶりに見るエアリスは、前にあった時よりも髪が伸びたみたい。
 シュミーズドレスなのかしら。
 薄いピンク色の袖の服に身を包んでいて、横顔だけれど笑顔が見えた。

 ああ、エアリスに会って、なんて話をしよう。
 その服、可愛いわね。
 どこで買ったの?
 おそろいにしない?

 でも、エアリスはそういうの嫌ってたわね。
 小物くらいはおそろいにするのは許してくれたけれど、服やアクセサリーはすごく嫌がっていた。
 親友なんだから、同じ服を着て、手を繋いで歩きたかったのに…。

 ううん。
 今は、そんな事はどうでもいいわ。
 会って、抱きしめてあげないと!
 絶対に私に会って喜ぶはず。
 たとえ忘却魔法をかけられていたって!

 反対側にの通りに向かって足を進めようとした時だった。

 笑いながら、エアリスが自分の食べていたパンケーキの皿を、相手の方に押し出したのだ。
 そして、その相手というのが、ミゼライトだった。

 どうして、あの女はいつも私のポジションにいるの!?
 もしかして、私がこんな目に合っているのは、全部あの女のせいなんじゃないの!?
 そうよ、絶対にそうだわ。
 あの女が私の悪口をエアリスに言いふらしたに決まっている!
 純粋なエアリスはそれを全部信じてしまったんだわ!

 手を繋ぐ事を嫌がったのも、洋服をおそろいにする事を嫌がったのも、全部全部、あの女のせいなのよ!

 許せない。
 絶対にあの女を許さない。

 立ち止まり、拳を強く握りしめて、あの女を睨んでいると、ロンバートが声を上げた。

「オルザベート!」

 ロンバートは私を守るように自分の腕の中に抱き寄せる。

「何なの!?」

 どうしていきなりこんな事をするのか意味がわからなくて、ロンバートに尋ねたと同時、聞きたくない声が耳に届いた。

「久しぶりだな、トゥッチ嬢。まさか子供を置いて逃げるだなんて思わなかったよ。薄情な母親だな」

 私達の前に現れたのは、カイジス公爵だった。
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