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4−1  計略

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 オルザベートがビアラに宛てた手紙の内容は、私にしてみれば全く、意味のわからない内容だった。

 要約すると、ビアラがオルザベートから私を奪った事になっていて、その事を鼻にかけていて忌々しいなど、ダラダラと文句が書かれていた。
 親友のポジションにいられるのも今の内だとも書いてあった。
 オルザベートが私の元へ戻ったら、必ず、オルザベートを選ぶという様な事が書かれており、夜道を1人で歩く場合は気をつけろだの、いつか殺してやるなどという脅迫ととれる内容も書かれていた。

 オルザベートはやっぱり病んでるわよね。
 そういう病院に連れて行った方が良いような気がしてきた。
 だけど、完璧に病んでいるわけじゃないから、その場では正気に戻ったふりをするかもしれないし、一緒かしら。
 
「この内容だとビアラがの身が危険という事よね?」
「まあ、念の為に、警察の寮で寝泊まりさせてもらおうかと思ってる」
「警察の寮って男の人ばかりとかじゃないの?」
「それはそうかもしれないけど」
「トゥッチ嬢達の動きは把握できているから、そこまで心配しなくてもいいと思うが、こちらに近付いて来ているのは確かだ。ただ、エアリスに会う目的より、ビアラを狙う方が目的になっているかもしれないな」
 
 エドは難しい顔で言うので、ビアラが答える。

「まあ、なんとかなると思います。魔法も多少は使えるようになりましたし」
「油断はするなよ。あと、ディランにも報告しておくからな」
「別にそんな事をしなくても」
「じゃあ、自分で報告するか?」
「…報告をお願いします」
 
 ビアラがエドに向かってしおらしく頭を下げた。
 すると、エドがこめかみをおさえながら言う。

「ビアラ、君、ディランから逃げられると思ってるのか? 君がディランを好きである以上、彼は諦めないぞ。諦めさせたいなら、他の男を好きになって、彼の前に連れて行く事だな。さすがに、ディランも無理矢理、略奪しようとはしないだろう」
「ちょっと、エド! そんな事を言ったのがバレたら、ディラン様に怒られるわよ!」
「あいつ、僕がエアリスの結婚を知ってショックを受けた時に、君にも良い女性が見つかるよ、なんて事を言いやがったからな」

 エドは思い出して怒ってるみたい。
 言いやがった、なんて言ってるし。

「ディランがビアラにフラれたら、僕もそう言ってやる」
「なんて事を言うのよ! あなた、ディラン様とお友達なんでしょ!?」
「友人は友人だが、それとこれとは別だ」

 鼻で笑うエドに、ビアラが半眼で言う。

「自分と同じ悲しみを味あわせたくないとか言うならまだしも、同じ事を言い返そうとしてるなんて、まあまあひどいわね」
「性格の悪い友人だと言われないためにも、頼んだよ、ビアラ」
「……しまった」

 エドに悪い笑みを浮かべられてお願いされたビアラは、苦虫を噛み潰したような顔になった。

 それから、ビアラとディラン様の話を止めて、これからの事を再確認する事にした。

「ビアラが言っている寮は職場の近くにあるのか?」
「はい。すぐ近くに、というか向かいにあります」
「それなら、あと何日か後には、寮になるかはわからないが、1週間くらい、どこかに寝泊まり出来る準備だけすすめておいてくれ」
「了解しました」

 エドの言葉にビアラが頷き、出勤の時間が近付いているからと、慌てて部屋から出て行った。

「朝ごはん、一緒に食べたかったな」

 しょんぼりしていると、エドが聞いてくる。

「僕と二人じゃ駄目なのか?」
「そういう訳じゃないけど、目の前にビアラがいてくれる方が安心するじゃない。私のせいで、命を狙われてるんだから」
「そう思うなら、少しでも早くに僕らやビアラが楽になるために、エアリスにお願いしたい事があるんだが」
「え? どういう事? 私に何か出来る事があるの?」
「視察に付き合ってくれないか?」
「視察?」

 どうしてそれが私達やビアラが楽になるにつながるのかがわからなくて聞き返す。

「ああ。僕達の新婚旅行先にどうかなと思うところ」
「そんな悠長な事を言ってる場合じゃないでしょ」
「まあ、最後まで聞いてくれ」

 エドは立ち上がって私の横に座ると、肩を抱き寄せてから、向かう場所の地名を教えてくれた。

「それって…」

 エドが教えてくれた場所は、ロンバートとオルザベート達が現在潜伏していると思われる場所の地名だった。
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