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「オルザベートが見つかった!?」

 エドから報告を受けて、私は大きな声で聞き返した。

「ああ。まだ、接触はしていないが、彼女らしき人物を見かけて、その家を張っていたら、やはり彼女だったんだそうだ」
「張ってたって、よく不審者扱いされなかったわね…」
「よくわからないが、上手くやったんだろう。夜なら人に気付かれにくいしな」
「オルザベート達は夜に動いてたの?」
「みたいだな。ロードウェルの言っている事を信用するなら、になるけど」

 ある日の朝、エドが食事中にそう教えてくれたはいいけれど、気になる事がいっぱいで彼に尋ねる。

「今はどの辺にいるの?」
「今、彼から連絡がきた場所に他の者を送らせてるから、確認してからでないと、はっきりとはわからない。わかったら連絡する。ロードウェルの連絡の通りなら、そう近くはないから安心していいだろう。もちろん、ちゃんと確認できるまでは、一人で屋敷から出たりしないでくれ」
「わかった」

 頷くと、エドは優しく微笑んでくれた。
 もちろん、エドの言う通り、動いたりするつもりはないけれど、不安な事はたくさんある。

 これから、ロンバートはオルザベートに接触するみたいだけど、どうするつもりなのかしら。
 復縁したいって言ってたから、オルザベートと一緒にどこかへ逃げてくれたらいいけど…、ってオラエル先生がいるんだったわ!
 三角関係のドロドロの関係になるのかしら?
 オルザベートってそんなにモテるのなら、どうして私にこだわらずに、男性に依存しなかったのかしら…。
 学生時代でいえば、オラエル先生に依存しておいてくれれば、こんな事にならなかったのかもしれないのに。

「エアリス」
「はい!」
「手が止まってる」

 考えていたので、食事を進める手が止まっていた事をエドに指摘される。
 どうせなので、食事をする手を休めたまま彼に尋ねる。

「ロンバートの動きは誰かが見張る事になるのよね?」
「ああ。だから、トゥッチ嬢と早くに合流してくれると助かるんだが、ロードウェルはどのタイミングで接触するつもりなのか…」
「考えられるとしたら、オラエル先生がいない時よね?」
「そうだと思うが、オラエルがトゥッチ嬢から離れるタイミングがあるかがわからない」
「ロンバートとオラエル先生が協力する事ってありえるかしら?」
「…さぁな。あいつらの考えている事はよくわからない。ただ何度も言うが、今の段階で言えるのは、あいつらを信用はしない方がいいという事くらいだな」

 エドは大きく息を吐いてから言った。
 そして、この数日後、一気に事態が動く事になる。





 朝、外が騒がしく感じて目を覚ますと、外から人の声が聞こえた。
 入り口に馬車が停まっていて、誰かが来たみたいだった。
 誰かが出かけると思わなかったのは、エドの家にある馬車じゃなかったから。

 気になったので、急いで着替えて降りていったけれど、エントランスホールにはさすがに人がいなかった。
 入り口付近にいた騎士に誰が来たか聞いてみると、ビアラだと教えてくれたので、慌てて応接間に急ぐ。

 朝が早いから気を遣ってくれているのかもしれないけど、きっとオルザベートの話だろうから、私も話を聞きたい。
 そう思って、応接間の扉を叩くと、呆れた顔でエドが扉を開けてくれた。

「何で気付いたんだ」
「人の気配に敏感なのよ」
「そうなると思ったから、朝早くに来たのに意味ないじゃない」

 部屋の中からビアラの声が聞こえた。
 彼女とは学園時代では寮でルームメイトだったから、私の眠りの浅さを知っている。
 わざと私が気付きにくい時間を選んでくれていたみたい。

「で、どうしたの?」

 強引に中に入って、ビアラの隣に座ると、彼女は目の前のローテーブルに置いてある、封筒を指さした。

「勤務先に、昨日の晩に届いたの」
「見てもいい?」
「どうします?」

 尋ねた私には答えずに、ビアラがエドに聞いた。
 エドはこめかみを押さえたあと、ビアラに言う。

「もうバレてしまった以上はしょうがないだろ」
「らしいから、どうぞ?」

 ビアラに促され、私は封筒を手に取る。
 宛名はビアラ宛。
 差出人は書かれていない。
 すでに封は開かれているので、便箋を取り出して内容を読んでみる。

 手紙の内容の中身はオルザベートからビアラに対する脅迫状のようなものだった。
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