上 下
12 / 12

12 両思い?

しおりを挟む


「リリンラ様が離縁された?」

 レストランの個室でランチを一緒に食べていた際、ラルから聞かされた話に驚いて聞き返した。

 リリンラ様は、お子さんを生んで少ししてから、コッポプ伯爵が決めた相手と結婚された。

 けれど、すぐにリリンラ様が他の貴族の男性と浮気しているのが発覚し、そのせいで離縁され、現在はコッポプ伯爵家に子供と一緒に戻ってきているのだと教えてくれた。

「浮気する奴はまた浮気する可能性が高いって本当だな」
「お子さんが可哀想だわ…」
「コッポプ伯爵にとって血の繋がった孫ではないけど、赤ちゃんに罪はないから面倒はみるんじゃないか? 生んだ本人は、子供をナニーに任せて、自分は遊び回ってるみたいだ。それに関しては本当の母親も呆れているらしいから、彼女は家から見捨てられる可能性はあるな」
「そうなのね…」

 このままだと、生まれてきた赤ちゃんは、本当のお父様とお母様の事を知らずに育つのね…。

 その方が幸せなのかしら…?

「それにしても、言葉遣いをなおすのって難しいもんだな」
「私は言葉遣いの悪いラルが好きだったけれど、なおすと決めたものね」

 この頃のラルは、言葉遣いを直そうとしていた。

 それがなぜかはわからない。

 聞いたら、曖昧な答えが返ってきたから。

 自分と相手の為だと言っていた。

 やっぱり、ラルには好きな人がいるのね…。

 この頃にはラルへの気持ちを自覚していたけど、自覚してすぐに失恋だなんて、恋愛運が悪すぎるわ。

「そういや、今度、パーティーに誘われてるんだけど、一緒に行ってくれないか?」
「……別にかまわないけれど、ラルには誘いたい人がいるんじゃないの?」
「だから、誘ってるだろ」
「………どういう事?」
「フリーになったから、遠慮する必要がなくなっただろ」

 パチパチと目を瞬かせると、ラルは不機嫌そうな顔になって、身を乗り出して、向かい側に座っていた私の鼻をつまむ。

「鈍い」
「鈍くなんかないわ! それに、身を乗り出したら駄目よ」
「それは失礼しました。貴族って本当に面倒だよな」
「……面倒なのに、どうして爵位をもらったの? 他にも報酬は選べたんでしょう…?」
「……」

 ラルは不機嫌そうな顔のまま、私を見つめる。

「本当にわかんねぇの?」
「言葉遣い」
「本当にわからないんですか」

 ラルは私から視線をそらさない。

 もしかして…、その、自惚れてもいいの…?

「あのね、ラル」
「ん?」
「好きよ」
「それで合って……、は?」

 合ってると言おうとしたみたいだけど、どういう意味かはわからない。
 だけど、勢いで言ってしまうことにする。

「私、ラルが好きみたい」
「……みたい?」
「じゃなくて、好き」
「……男女間の友情は成り立つって言ってなかったか?」
「成り立つわ! 成り立つけど…、私とラルは別…」

 言葉が尻すぼみになっていく。

 だんだん恥ずかしくなってきた。
 
 俯いていると、ラルが動いたのか、椅子が引かれる音がした。

 そして、ラルの靴が俯いている私の視界に入った。

「反則だろ」
「……え?」

 顔を上げて尋ねると、ラルは少しだけ頬を染めて、不満そうに言う。

「ジリジリ逃げられなくなるまで…、言い訳できなくなるまで追い詰めてから言おうと思ってたのに」
「……どういう事?」
「俺も好きだよ」

 ラルはそう言うと身を屈めて、彼を見上げた私の唇を彼のそれで塞いだ。

「………」

 触れるだけのキスの後、私が呆然としていると、ラルは照れくさそうにして、視線をそらしてから言う。

「遠慮すんのはやめるから」
「……ほどほどでお願いします」

 消え入りそうな声でお願いすると、ラルが笑う。

「嫌に決まってんだろ」
「だ、駄目よ、駄目!」

 ラルがまたキスしてこようとしたから、慌てて彼の顔をおさえて叫ぶと、ラルは私の手を掴んで文句を言う。

「なんでだよ」
「だって、まだ、食事の途中でしょう!?」
「………」

 ラルは渋々といった感じで、自分の席に戻った後に言う。

「覚悟してろよ」
「何を!?」

 彼の言う通り、私はこの日から、たまに憎まれ口を叩かれながらも、ラルにデロデロに甘やかされる事になる。

 ちなみに、ラルの気持ちをお父様もお母様も知っていらして、両思いだという事を報告すると、笑顔で婚約を認めてくれた。

 それは、ラルのご両親もだ。

 ラルの気持ちを知らなかったのは、私だけだったらしい。

 お父様が次の婚約者を探そうとしなかったのは、ラルがいたからなんだそう。

 私とラルが卒業後に結婚の話を進めている最中、リリンラ様が家を追い出され、娼館で働く様になってしまうのだけれど、それはまた、別の話。


 




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



お読みいただき、ありがとうございました!


言葉遣いの悪い子が好きで、ラルを書いてて楽しかったので、また、いつか書けたら良いなと思っています。

続編希望の方とかはいらっしゃれば特に…!

感想をひらきますが、○ね! ○せ!など、攻撃的な言葉、キャラクターに対する誹謗中傷が書かれていた場合は非承認とさせていただきます。話への批判につきましては受け止めさせていただきますが、返信しない事をご了承ください。



そ、そして、なんと、この度、たまはるぽんぽん様から、アンジェのイメージイラストをいただきました!
すごく美人さんなのです✨










いただいた時は嬉しくて、声を上げそうになりました。

今回の話は書いてる途中に間違えて投稿したものでしたが、こんな素敵なイラストをいただけるなら、間違えて投稿して良かったです。


このプレゼントが嬉しくて、調子にのって、またもや、新作を投稿しました。
「婚約破棄していただき、本当に感謝しています!」
そちらでも、お会いできますと嬉しいです。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
しおりを挟む
感想 16

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(16件)

sanzo
2024.08.22 sanzo
ネタバレ含む
風見ゆうみ
2024.08.22 風見ゆうみ

感想をありがとうございます。

どうなんでしょうか😱

解除
ねず
2023.07.04 ねず

アホバカおっとアバホカ並のおばかさんでしたねー😁
次の作品も楽しみにしてます。
完結お疲れ様でした♪

風見ゆうみ
2023.07.04 風見ゆうみ

お祝いのお言葉をありがとうございますヽ(=´▽`=)ノ

かなりのおバカさんでしたΣ(・∀・;)

お読みいただき、ありがとうございました✨

解除
あとさん♪
2023.07.03 あとさん♪

完結お疲れさまでした!
(*´▽`*)面白かったです!
12話のアンジェちゃんに言いたい!
ラルの気持ちを知っていた人のなかに、ご両親だけでなくあなたのお友だちもいますよと!(笑)

これから、名前のとおり天使みたいに心やさしくて、でもちょっとぽやぽやしているアンジェちゃんをラルは守っていくんだろうなぁ(によによ)と楽しくなるお話をありがとうございました♡

風見ゆうみ
2023.07.03 風見ゆうみ

誤字報告いただき、ありがとうございました🙇‍♀

ラルの知らなかったのはアンジェだけ…?(*^^*)
そんな事も少しずつ知っていくと思います。
この2人は楽しく書けたので、また書いてしまいそうですΣ(・∀・;)

お読みいただき、ありがとうございました✨

解除

あなたにおすすめの小説

婚約者に好きな人がいると言われました

みみぢあん
恋愛
子爵家令嬢のアンリエッタは、婚約者のエミールに『好きな人がいる』と告白された。 アンリエッタが婚約者エミールに抗議すると… アンリエッタの幼馴染みバラスター公爵家のイザークとの関係を疑われ、逆に責められる。 疑いをはらそうと説明しても、信じようとしない婚約者に怒りを感じ、『幼馴染みのイザークが婚約者なら良かったのに』と、口をすべらせてしまう。 そこからさらにこじれ… アンリエッタと婚約者の問題は、幼馴染みのイザークまで巻き込むさわぎとなり―――――― 🌸お話につごうの良い、ゆるゆる設定です。どうかご容赦を(・´з`・)

婚約破棄宣言は別の場所で改めてお願いします

結城芙由奈 
恋愛
【どうやら私は婚約者に相当嫌われているらしい】 「おい!もうお前のような女はうんざりだ!今日こそ婚約破棄させて貰うぞ!」 私は今日も婚約者の王子様から婚約破棄宣言をされる。受け入れてもいいですが…どうせなら、然るべき場所で宣言して頂けますか? ※ 他サイトでも掲載しています

【完結】その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。

新川ねこ
恋愛
ざまぁありの令嬢もの短編集です。 1作品数話(5000文字程度)の予定です。

婚約者をないがしろにする人はいりません

にいるず
恋愛
 公爵令嬢ナリス・レリフォルは、侯爵子息であるカリロン・サクストンと婚約している。カリロンは社交界でも有名な美男子だ。それに引き換えナリスは平凡でとりえは高い身分だけ。カリロンは、社交界で浮名を流しまくっていたものの今では、唯一の女性を見つけたらしい。子爵令嬢のライザ・フュームだ。  ナリスは今日の王家主催のパーティーで決意した。婚約破棄することを。侯爵家でもないがしろにされ婚約者からも冷たい仕打ちしか受けない。もう我慢できない。今でもカリロンとライザは誰はばかることなくいっしょにいる。そのせいで自分は周りに格好の話題を提供して、今日の陰の主役になってしまったというのに。  そう思っていると、昔からの幼馴染であるこの国の次期国王となるジョイナス王子が、ナリスのもとにやってきた。どうやらダンスを一緒に踊ってくれるようだ。この好奇の視線から助けてくれるらしい。彼には隣国に婚約者がいる。昔は彼と婚約するものだと思っていたのに。

【完結】もう結構ですわ!

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
 どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。  愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/29……完結 2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位 2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位 2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位 2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位 2024/09/11……連載開始

[完結]想ってもいいでしょうか?

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
貴方に逢いたくて逢いたくて逢いたくて胸が張り裂けそう。 失ってしまった貴方は、どこへ行ってしまったのだろう。 暗闇の中、涙を流して、ただただ貴方の事を考え続ける。 後悔しているの。 何度も考えるの。 でもどうすればよかったのか、どうしても分からない。 桜が舞い散り、灼熱の太陽に耐え、紅葉が終わっても貴方は帰ってこない。 本当は分かっている。 もう二度と私の元へ貴方は帰ってこない事を。 雪の結晶がキラキラ輝きながら落ちてくる。 頬についた結晶はすぐに溶けて流れ落ちる。 私の涙と一緒に。 まだ、あと少し。 ううん、一生でも、私が朽ち果てるまで。 貴方の事を想ってもいいでしょうか?

姉が私の婚約者と仲良くしていて、婚約者の方にまでお邪魔虫のようにされていましたが、全員が勘違いしていたようです

珠宮さくら
恋愛
オーガスタ・プレストンは、婚約者している子息が自分の姉とばかり仲良くしているのにイライラしていた。 だが、それはお互い様となっていて、婚約者も、姉も、それぞれがイライラしていたり、邪魔だと思っていた。 そこにとんでもない勘違いが起こっているとは思いもしなかった。

私は王子の婚約者にはなりたくありません。

黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。 愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。 いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。 そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。 父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。 しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。 なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。 さっさと留学先に戻りたいメリッサ。 そこへ聖女があらわれて――   婚約破棄のその後に起きる物語

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。