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30 よりによって、あの人ですか?
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「そういえばラス様、あれからバーベナ様から何かあったりしました?」
「いいえ。ただ、ユウヤにはあったようですよ」
「え、どういう事?!」
人の迷惑にならないよう、私達、というか、主にラス様と私が手をはなしたり、つなぎ直すという面倒な事をしながら、今日の目的地に向かう途中に話をしていた。
はたから見ればどんな風に見えるんだろう。
仲の良い兄妹とかに見えてるのかな?
というか、今はそれどころではなく。
「向こうの親から娘の無礼を許してほしいって、ユウマは呼んだけど来なかったから、オレだけ、とりあえず了承はしておいた」
「ユウヤくんの脅しをちゃんと両親に話したんだね」
「脅しって言うなよ」
「脅しでしたよ」
「誰の為に言ったと思ってんだ」
私とラス様に言われ、ユウヤくんが不貞腐れた顔をするので、フォローに入る。
「カッコ良かったよ」
「………ならいい」
「単純ですね」
笑顔に戻ったユウヤくんにラス様が憎まれ口を叩く。
仲が良いからできることなんだろうなあ。
「あそこですかね」
ラス様が手をはなし、人が行き交いしている屋敷の方を指差す。
「貴族の庭園って言ってましたけど、知り合いの人ではないんですか?」
「庭園のために作った屋敷ですから、あそこに住んでるのは庭師やその家族です」
「それはそれですごいですね」
高い塀に囲まれた向こうに見えるお屋敷は、私達が今住まわせてもらっているものよりも一回り以上大きくて、貴族のお家と間違えてしまいそう。
門のところで、入場料を払うのか列ができていたけど、そこに並んでいる多くは家族連れやカップルで、身なりだけでは、貴族らしき人物の姿は見えなかった。
まあ、貴族はああやって並ばなくても入れるのかもしれないけど。
「わあ、どんなところなんでしょう! 楽しみですね」
ミランダ様が私の横に立つと、嬉しそうに話しかけてくれた。
「ミランダ様はお花がお好きなんですか?」
「はい! でも、育てたりはできませんけど」
「簡単なものなら誰にでもできますよ。それに、だいたい、お城とか庭師さんがやるようなものは素人では難しいでしょうし、できなくて当たり前だと思いますよ」
「では、ユーニ様と一緒に簡単なものを植えてみたいです」
それはもう嬉しそうにしてくれて、そんな笑顔を見せてもらえるのは、とても嬉しいのだけど、一緒に植える、というのは城内で、ってこと?
それとも、将来の話をしているの???
「どうした?」
手を繋いだままだったユウヤくんが、私が足を止めたことにより、自分も足を止めて顔を覗き込んでくる。
「ううん、なんでもない。ミランダ様が嬉しそうで良かったなあって」
ジンさんはどうしているのか、と思って探してみると、ラス様の横にいて、どこか疲れた顔をしていた。
うーん、まだ緊張してるのかな。
「ジン様はラス様が本当にお好きなんですね」
ミランダ様がうっとりした表情で言う。
なぜ、そこでうっとりするのかはわからないけど、まあ、ジンさんとラス様が並んでいると目の保養にはなるか。
「ジンさんだけじゃないですよ。ユウヤくんもだよね?」
「………まあな」
ユウヤくんは顔を背けて小さく答えると、ミランダ様が瞳をキラキラさせて、とんでもない事を言い出した。
「仲の良いお友達が男性同士の恋愛が好きで、ラス様と殿下の」
「ミランダ様、不敬罪に問われるかもなので、あとで二人で話しましょう!」
慌てて私はミランダ様の口をふさぐ。
先日のお茶会で、エアリー様から聞いた話だけど、一部の貴族の女子の間で、男性同士の恋愛の小説が流行っているらしく、現実面でもそういう目でみてしまう人もいるのだとか。
ユウヤくんやユウマくん、ラス様は目立つからその対象になっていると聞いた。
ただ、本人がそんな話を聞いたら、すごく嫌がるに決まっているので、なるべくなら本人の耳に入れないようにしようと決めていた。
だって、想像するのは人の自由だもんね。
それに、ユウヤくんもユウマくんも恋愛感情抜きなら、ラス様のことが好きなのは間違いないだろうし。
私だって、三人が仲良くしてるのを見ると、なんか良い! って思ってしまうし。
「今、男性同士の恋愛って言ったか?」
「え? あ? と、とんでもございません」
ミランダ様に話しかけたユウヤくんの笑顔がとても怖かったため、彼女も言ってはいけない話だと気付いたらしく、ぶんぶんと首を横に振る。
「聞き間違いだよ、ね、ミランダ様」
「はい! そうです!」
「じゃあ、なんて言おうとしたんだよ」
しつこいな。
そう思い、ユウヤくんを軽くにらむと、ため息を吐きはしたけれど諦めてくれた。
「行きますよ」
私達が話をしている間に、ラス様が五人分の入場券を買ってくれたらしく、ジンさんはミランダ様にそれを手渡し、ラス様は私とユウヤくんに一枚ずつ渡してくれた。
うーん、こういうところがラス様はデート慣れしているような気がする。
それとも、公爵家ともなると、こういう事も教えられたりするんだろうか。
「なにか?」
ついついラス様を見てしまっていたらしく、不思議そうに聞いてくるので、思っていたことを言ってみる。
「ラス様って、こういうの慣れてますよね」
「こういうの、とは?」
「その、デート、とかですよ」
「さあ、どうでしょう?」
ラス様はくすりと笑って、軽く首を傾げて答えを曖昧にする。
「気になるじゃないですか」
「そうですか?」
「そうです!」
勢い込んで言ってしまったけれど、なんで気になるんだろう?
「こいつ、仕事関係でそういう接待系多いし、それでじゃねぇの?」
ユウヤくんに言われ、納得する。
そう言われればそうかも。
来賓があったら色々と案内したりするだろうし、下調べなり段取りなどはラス様が外交の仕事上、やっていそうな気がする。
「そっか」
「どうしたんだよ」
「いや、こういう時、ユウヤくんは動いてないなあって思って」
「オマエと二人だったらちゃんとやってるよ」
「お仕事のときは?」
尋ねると、ユウヤくんは顔を背けてしまった。
ちゃんとやってないんだな。
「そういうのは私に任せっきりですよね」
ラス様は笑顔だけれど、冷たい口調で言う。
「兄さん達、行かないんですか?」
立ち止まって話をしていたせいか、ジンさんが声を掛けてくれたので、慌てて歩きはじめる。
入口付近で長いこと立ち止まっていたら邪魔だもんね。
それに、考えたら立ち止まっている時間が長いと、誰かに見られやすい気もするし。
中に入ってみると、聞いていたとおり、貴族の人、というよりかは平民らしき服装の人が多くてホッとした。
「私は先に行ってます」
ラス様がそう言って歩き出そうとするので、今までは髪ばかりつかんでしまってたけれど、ちゃんと服をつかんで引き止める。
「一緒にまわりましょうよ」
「そういう訳にはいかないでしょう。誰か知り合いに会っても困りますし」
「それを言ったらユウヤくんだってそうじゃないですか」
「あー、たぶんだけど」
ユウヤくんが繋いでいた手をはなし、その手で私の頭を撫でながら続ける。
「噂の三人で歩くのは良くないって事じゃねぇの?」
「うう」
そうだった。
お茶会メンバーに会いたくない、という気持ちばかりでいたけれど、根本的な噂がある限り、三人で歩いていると、その噂が本当だった、と肯定しちゃう感じになっちゃうのか。
「でも、ラス様が一緒にいなくても、同じ時間、同じ場所にいることでも怪しくないですか?」
「まあ、それはそうではありますが」
ラス様は苦笑して続ける。
「なんにしても今日の主役はあの二人ですからね」
「そうですね。私達のせいで台無しになってもいけないですし」
少し先を歩くミランダ様とジンさんの姿を見ながら頷いた時だった。
「失礼ですが、ユウヤ殿下でいらっしゃいますでしょうか」
ユウヤくんにそう尋ねたのは、貴族に仕えているのだろうか、メイド服姿の女性だった。
「・・・・・そうだけど」
下手に嘘をつくわけにもいかないのか、ユウヤくんが小声で肯定すると、女性は後ろを振り返り、そちらに向かって首を縦に振った。
「最悪だな」
彼女の視線の先を見て、ユウヤくんが声を漏らした。
視線の先に立っていたのは、よりにもよって一番会いたくない相手、ユウヤくんに思いを寄せている、マーガレット様だった。
「いいえ。ただ、ユウヤにはあったようですよ」
「え、どういう事?!」
人の迷惑にならないよう、私達、というか、主にラス様と私が手をはなしたり、つなぎ直すという面倒な事をしながら、今日の目的地に向かう途中に話をしていた。
はたから見ればどんな風に見えるんだろう。
仲の良い兄妹とかに見えてるのかな?
というか、今はそれどころではなく。
「向こうの親から娘の無礼を許してほしいって、ユウマは呼んだけど来なかったから、オレだけ、とりあえず了承はしておいた」
「ユウヤくんの脅しをちゃんと両親に話したんだね」
「脅しって言うなよ」
「脅しでしたよ」
「誰の為に言ったと思ってんだ」
私とラス様に言われ、ユウヤくんが不貞腐れた顔をするので、フォローに入る。
「カッコ良かったよ」
「………ならいい」
「単純ですね」
笑顔に戻ったユウヤくんにラス様が憎まれ口を叩く。
仲が良いからできることなんだろうなあ。
「あそこですかね」
ラス様が手をはなし、人が行き交いしている屋敷の方を指差す。
「貴族の庭園って言ってましたけど、知り合いの人ではないんですか?」
「庭園のために作った屋敷ですから、あそこに住んでるのは庭師やその家族です」
「それはそれですごいですね」
高い塀に囲まれた向こうに見えるお屋敷は、私達が今住まわせてもらっているものよりも一回り以上大きくて、貴族のお家と間違えてしまいそう。
門のところで、入場料を払うのか列ができていたけど、そこに並んでいる多くは家族連れやカップルで、身なりだけでは、貴族らしき人物の姿は見えなかった。
まあ、貴族はああやって並ばなくても入れるのかもしれないけど。
「わあ、どんなところなんでしょう! 楽しみですね」
ミランダ様が私の横に立つと、嬉しそうに話しかけてくれた。
「ミランダ様はお花がお好きなんですか?」
「はい! でも、育てたりはできませんけど」
「簡単なものなら誰にでもできますよ。それに、だいたい、お城とか庭師さんがやるようなものは素人では難しいでしょうし、できなくて当たり前だと思いますよ」
「では、ユーニ様と一緒に簡単なものを植えてみたいです」
それはもう嬉しそうにしてくれて、そんな笑顔を見せてもらえるのは、とても嬉しいのだけど、一緒に植える、というのは城内で、ってこと?
それとも、将来の話をしているの???
「どうした?」
手を繋いだままだったユウヤくんが、私が足を止めたことにより、自分も足を止めて顔を覗き込んでくる。
「ううん、なんでもない。ミランダ様が嬉しそうで良かったなあって」
ジンさんはどうしているのか、と思って探してみると、ラス様の横にいて、どこか疲れた顔をしていた。
うーん、まだ緊張してるのかな。
「ジン様はラス様が本当にお好きなんですね」
ミランダ様がうっとりした表情で言う。
なぜ、そこでうっとりするのかはわからないけど、まあ、ジンさんとラス様が並んでいると目の保養にはなるか。
「ジンさんだけじゃないですよ。ユウヤくんもだよね?」
「………まあな」
ユウヤくんは顔を背けて小さく答えると、ミランダ様が瞳をキラキラさせて、とんでもない事を言い出した。
「仲の良いお友達が男性同士の恋愛が好きで、ラス様と殿下の」
「ミランダ様、不敬罪に問われるかもなので、あとで二人で話しましょう!」
慌てて私はミランダ様の口をふさぐ。
先日のお茶会で、エアリー様から聞いた話だけど、一部の貴族の女子の間で、男性同士の恋愛の小説が流行っているらしく、現実面でもそういう目でみてしまう人もいるのだとか。
ユウヤくんやユウマくん、ラス様は目立つからその対象になっていると聞いた。
ただ、本人がそんな話を聞いたら、すごく嫌がるに決まっているので、なるべくなら本人の耳に入れないようにしようと決めていた。
だって、想像するのは人の自由だもんね。
それに、ユウヤくんもユウマくんも恋愛感情抜きなら、ラス様のことが好きなのは間違いないだろうし。
私だって、三人が仲良くしてるのを見ると、なんか良い! って思ってしまうし。
「今、男性同士の恋愛って言ったか?」
「え? あ? と、とんでもございません」
ミランダ様に話しかけたユウヤくんの笑顔がとても怖かったため、彼女も言ってはいけない話だと気付いたらしく、ぶんぶんと首を横に振る。
「聞き間違いだよ、ね、ミランダ様」
「はい! そうです!」
「じゃあ、なんて言おうとしたんだよ」
しつこいな。
そう思い、ユウヤくんを軽くにらむと、ため息を吐きはしたけれど諦めてくれた。
「行きますよ」
私達が話をしている間に、ラス様が五人分の入場券を買ってくれたらしく、ジンさんはミランダ様にそれを手渡し、ラス様は私とユウヤくんに一枚ずつ渡してくれた。
うーん、こういうところがラス様はデート慣れしているような気がする。
それとも、公爵家ともなると、こういう事も教えられたりするんだろうか。
「なにか?」
ついついラス様を見てしまっていたらしく、不思議そうに聞いてくるので、思っていたことを言ってみる。
「ラス様って、こういうの慣れてますよね」
「こういうの、とは?」
「その、デート、とかですよ」
「さあ、どうでしょう?」
ラス様はくすりと笑って、軽く首を傾げて答えを曖昧にする。
「気になるじゃないですか」
「そうですか?」
「そうです!」
勢い込んで言ってしまったけれど、なんで気になるんだろう?
「こいつ、仕事関係でそういう接待系多いし、それでじゃねぇの?」
ユウヤくんに言われ、納得する。
そう言われればそうかも。
来賓があったら色々と案内したりするだろうし、下調べなり段取りなどはラス様が外交の仕事上、やっていそうな気がする。
「そっか」
「どうしたんだよ」
「いや、こういう時、ユウヤくんは動いてないなあって思って」
「オマエと二人だったらちゃんとやってるよ」
「お仕事のときは?」
尋ねると、ユウヤくんは顔を背けてしまった。
ちゃんとやってないんだな。
「そういうのは私に任せっきりですよね」
ラス様は笑顔だけれど、冷たい口調で言う。
「兄さん達、行かないんですか?」
立ち止まって話をしていたせいか、ジンさんが声を掛けてくれたので、慌てて歩きはじめる。
入口付近で長いこと立ち止まっていたら邪魔だもんね。
それに、考えたら立ち止まっている時間が長いと、誰かに見られやすい気もするし。
中に入ってみると、聞いていたとおり、貴族の人、というよりかは平民らしき服装の人が多くてホッとした。
「私は先に行ってます」
ラス様がそう言って歩き出そうとするので、今までは髪ばかりつかんでしまってたけれど、ちゃんと服をつかんで引き止める。
「一緒にまわりましょうよ」
「そういう訳にはいかないでしょう。誰か知り合いに会っても困りますし」
「それを言ったらユウヤくんだってそうじゃないですか」
「あー、たぶんだけど」
ユウヤくんが繋いでいた手をはなし、その手で私の頭を撫でながら続ける。
「噂の三人で歩くのは良くないって事じゃねぇの?」
「うう」
そうだった。
お茶会メンバーに会いたくない、という気持ちばかりでいたけれど、根本的な噂がある限り、三人で歩いていると、その噂が本当だった、と肯定しちゃう感じになっちゃうのか。
「でも、ラス様が一緒にいなくても、同じ時間、同じ場所にいることでも怪しくないですか?」
「まあ、それはそうではありますが」
ラス様は苦笑して続ける。
「なんにしても今日の主役はあの二人ですからね」
「そうですね。私達のせいで台無しになってもいけないですし」
少し先を歩くミランダ様とジンさんの姿を見ながら頷いた時だった。
「失礼ですが、ユウヤ殿下でいらっしゃいますでしょうか」
ユウヤくんにそう尋ねたのは、貴族に仕えているのだろうか、メイド服姿の女性だった。
「・・・・・そうだけど」
下手に嘘をつくわけにもいかないのか、ユウヤくんが小声で肯定すると、女性は後ろを振り返り、そちらに向かって首を縦に振った。
「最悪だな」
彼女の視線の先を見て、ユウヤくんが声を漏らした。
視線の先に立っていたのは、よりにもよって一番会いたくない相手、ユウヤくんに思いを寄せている、マーガレット様だった。
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