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31 ヤイネバ卿の考え
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※人によっては怖いと感じられる言葉や表現が出てきます。不快な思いをしていただきたくないので、苦手な方は想像はせずに読み流す、または読む事をお控えください。
ノーラル様が来られ、アザレアとトーリが相手をしに行ってくれてからは、部屋に1人でいると落ち着かない気分になった為、アズの執務室に来ていた。
「大丈夫かしら」
何度目かになる疑問の言葉を、執務室の中にある応接のソファーに座って呟くと、アズが仕事の手は止めずに答える。
「トーリがいるから大丈夫だよ。アザレアも君の侍女として、色々なケースに慣れていかないと駄目だしね。まあ、今回の場合は特殊だから、こんな事はそうないと思うけど」
「そうかもしれませんが、やはり、私が行った方が良かったのではないでしょうか。もう家族ではありませんが、元家族でしたし」
「とにかく、2人が話を終えて、ここに来てくれるのを待とう。くだらない話かもしれないだろ」
アズは苦笑して、ベルでメイドを呼び、私に心の落ち着く効果のあるお茶を用意する様にお願いしてくれた。
私がアズの部屋に来ている事は、アザレア達が話をしている部屋の前に立っている騎士に伝えてあるから、話が終われば、アザレア達は直接、ここに来てくれると思うので、ここでゆっくりさせてもらう事にした。
しばらくして、2人が疲れた顔をして、執務室にやって来たので、とにかく、2人を私の座っていた向かい側のソファーに腰掛けさせた。
「どうだった? アザレアは顔色が悪いわ。ノーラル様に何を言われたの? 嫌な思いをさせてしまったのなら、本当にごめんなさい」
「ルリ様が謝られる事ではございません! ノーラル様がどうこうというよりかは、ヤイネバ卿が問題でして」
アザレアが体を震わせるので、トーリが彼女に手を伸ばそうとしたけれど、私の前だという事に気が付いたから、すぐに手を引っ込めた。
「トーリ、かまわないわ。アザレアを落ち着かせてあげて」
「申し訳ございません」
アザレアとトーリは同時に頭を下げて、トーリはアザレアの体を優しく抱き寄せた。
「悪いけれど、トーリから話をしてもらえる? 口に出すのも嫌な話なのでしょう? アザレアの様子を見ていると、彼女に話せとは言いにくいわ」
「大丈夫です! わたしがお話いたします!」
アザレアはトーリの腕の中から逃れ、胸の前で手を組み合わせて、ノーラル様が2人にした話をしてくれた。
ノーラル様が言うには、ルピノの伯父にあたるヤイネバ卿はルピノに対して異常に執着しているらしく、彼女を自分のものにしようとして必死なのだそう。
ルピノはヤイネバ卿からお金をたくさんもらって、この国で楽しく生活していたみたいだけれど、その対価として、ヤイネバ卿はルピノの命をもらおうとしているのではないかという事だった。
そして、ルピノの命を奪う方法も異常だった。
「命を奪おうとする考え自体異常なのに、そんな事をしようとしているだなんて」
話を聞いた私は、こめかみをおさえながら呟く。
「出来ない事はないだろうけれど、蝋人形にしようだなんて考え方が異常だな。もしかしたら、自分のものにしようとしているだけで、どうしたら死なずに済むか実験はしているかもしれない。もしくは言う事をきかないなら死んでもいいと思っているのかもしれないし」
仕事が一段落したのか、アズが私の横に座って続ける。
「生きたまま人形になんて出来るのでしょうか」
「出来ない事はないだろうけど、手足が自由なら自分で割れるだろうし、言う事を聞かない場合の手段にしようとしているんじゃないかな」
「ルピノがちゃんと言う事をきけば、そんな事にはならないと?」
「じゃないかな。とにかく、彼の事をもっと詳しく調べてみようか。他国の貴族の事だから、こちらは介入しにくいけど、まずは、ルピノ嬢を匿っていたという事で、シイナレンラジ家を攻めて、ルピノ嬢を確保しよう」
「不法入国させた人間を匿っていたという罪ですね?」
アズの言葉にトーリが反応して尋ねた。
「そういう事だ。ルピノ嬢は本来なら強制退去だが、身分を偽っていたという罪で強引に捕まえよう。そうすれば、お金を返す返さないは問題じゃなくなる。保釈金を払って、自分のものにしようとしたいかもしれないけれど、今のヤイネバ家にそんな金はないだろうから」
「ルピノ事は好きではないけれど、助けられる命を見捨てる気にはなれません。あと、ヤイネバ卿については、お父様に相談してみる事にします。もしかしたら、すでに犠牲者がいるかもしれません」
「そうだな。買った奴隷の全てが、奉公先に行けたのかはわからない」
アズが厳しい表情で言った。
ーーーーーーーーーーーーーー
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
ここから下は、本作には関係ありませんので、ご興味ある方にだけ宣伝です!
本日より「幸せなお飾りの妻になります!」の公開を開始しました。
以前、投稿していたものの改稿版で、プロットに大幅な変更はないですが、文章、台詞、エピソードなどを書き換えたり、かなり増やしております。
もし、ご興味ありましたら、読んでいただけますと嬉しいです。
ノーラル様が来られ、アザレアとトーリが相手をしに行ってくれてからは、部屋に1人でいると落ち着かない気分になった為、アズの執務室に来ていた。
「大丈夫かしら」
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「そうかもしれませんが、やはり、私が行った方が良かったのではないでしょうか。もう家族ではありませんが、元家族でしたし」
「とにかく、2人が話を終えて、ここに来てくれるのを待とう。くだらない話かもしれないだろ」
アズは苦笑して、ベルでメイドを呼び、私に心の落ち着く効果のあるお茶を用意する様にお願いしてくれた。
私がアズの部屋に来ている事は、アザレア達が話をしている部屋の前に立っている騎士に伝えてあるから、話が終われば、アザレア達は直接、ここに来てくれると思うので、ここでゆっくりさせてもらう事にした。
しばらくして、2人が疲れた顔をして、執務室にやって来たので、とにかく、2人を私の座っていた向かい側のソファーに腰掛けさせた。
「どうだった? アザレアは顔色が悪いわ。ノーラル様に何を言われたの? 嫌な思いをさせてしまったのなら、本当にごめんなさい」
「ルリ様が謝られる事ではございません! ノーラル様がどうこうというよりかは、ヤイネバ卿が問題でして」
アザレアが体を震わせるので、トーリが彼女に手を伸ばそうとしたけれど、私の前だという事に気が付いたから、すぐに手を引っ込めた。
「トーリ、かまわないわ。アザレアを落ち着かせてあげて」
「申し訳ございません」
アザレアとトーリは同時に頭を下げて、トーリはアザレアの体を優しく抱き寄せた。
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ノーラル様が言うには、ルピノの伯父にあたるヤイネバ卿はルピノに対して異常に執着しているらしく、彼女を自分のものにしようとして必死なのだそう。
ルピノはヤイネバ卿からお金をたくさんもらって、この国で楽しく生活していたみたいだけれど、その対価として、ヤイネバ卿はルピノの命をもらおうとしているのではないかという事だった。
そして、ルピノの命を奪う方法も異常だった。
「命を奪おうとする考え自体異常なのに、そんな事をしようとしているだなんて」
話を聞いた私は、こめかみをおさえながら呟く。
「出来ない事はないだろうけれど、蝋人形にしようだなんて考え方が異常だな。もしかしたら、自分のものにしようとしているだけで、どうしたら死なずに済むか実験はしているかもしれない。もしくは言う事をきかないなら死んでもいいと思っているのかもしれないし」
仕事が一段落したのか、アズが私の横に座って続ける。
「生きたまま人形になんて出来るのでしょうか」
「出来ない事はないだろうけど、手足が自由なら自分で割れるだろうし、言う事を聞かない場合の手段にしようとしているんじゃないかな」
「ルピノがちゃんと言う事をきけば、そんな事にはならないと?」
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「不法入国させた人間を匿っていたという罪ですね?」
アズの言葉にトーリが反応して尋ねた。
「そういう事だ。ルピノ嬢は本来なら強制退去だが、身分を偽っていたという罪で強引に捕まえよう。そうすれば、お金を返す返さないは問題じゃなくなる。保釈金を払って、自分のものにしようとしたいかもしれないけれど、今のヤイネバ家にそんな金はないだろうから」
「ルピノ事は好きではないけれど、助けられる命を見捨てる気にはなれません。あと、ヤイネバ卿については、お父様に相談してみる事にします。もしかしたら、すでに犠牲者がいるかもしれません」
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