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10 ご迷惑でなければ!
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次の日の夜、ラルフ様がトラジャス伯爵について、新たな情報が入ったという事を子守唄を歌いに来た私に教えて下さいました。
「だから、歌を歌うのは後にしてくれるか?」
「それはかまいませんが、ベッドに横になって下さい。お話は横になっても出来るのですから」
少しでも身体を休めてもらおうと、ラルフ様を無理矢理、ベッドに横にならせてから、話を聞く事にする。
「どんな事がわかったのですか?」
「どうやら、奴はランドンと関わっているらしい」
「どういう事ですか? ランドン辺境伯と関わって、あの方に何のメリットがあるんです?」
こんな事を言ってはなんですが、ランドン辺境伯は貴族の中では落ち目なはずです。
そんな方とわざわざ関わる必要があるのでしょうか。
それとも、ランドン辺境伯から近付いた?
「手を組んで、俺から辺境伯の爵位を奪おうとしているみたいだな。まあ、小物同士が手を組んでいるだけだから、大した影響力はなさそうだが。それより問題なのが…」
「どうされました?」
「ランドンはどうやら、新たに好きな女性が出来たみたいだ」
「えっ!? パメル様の事は諦めたのですか?」
「諦めざるをえなくなった」
「どういう事です?」
意味がわからなくて先の言葉を急かすと、ラルフ様は苦笑して言いました。
「結婚したんだ」
「えっ!?」
「さすがの男爵も娘を好き勝手させておくわけにはいかなかった様だ。ランドンと結婚するか、他の男と結婚するか選ばせたらしい」
「ランドン辺境伯が諦めたという事はパメル様は他の方との結婚を望まれたんですね…」
それだけ聞くと、ランドン辺境伯も可哀想な気がしますが、彼には自業自得なとこもありますよね。
「パメル様、幸せになって下さるといいのですが…」
「そうだな。彼女に良い印象はないが、不幸になれと願うのもおかしいからな」
「私もそう思います。で、ランドン辺境伯の新たな好きな人というのは?」
「それが、あれだ。リノアが知っている人物だ」
「どこかのご令嬢ですね?」
「そうなるな」
なぜか、ラルフ様は名前を口にするのを躊躇っておられます。
名前を口にしにくいご令嬢とは、どんな方なのでしょう?
「私の知っている令嬢で、ラルフ様が口にしたくないお方ですよね」
「いや、口にしたくないわけじゃないが、リノアに伝えると、彼女に連絡したがるだろうから」
「どんな方なのでしょう?」
「型破りな令嬢だ」
「そんなの、1人しかいないじゃないですか!」
一体、どういう接点で彼女がランドン辺境伯と知り合ったのかが気になり、ラルフ様の予想通り、私は彼女と連絡を取る事に決めました。
1週間後、テツくんの関係で出席する事になったという夜会に私達も出席する事にしていたので、アリスさんと会場で落ち合う事になりました。
「男共は付き合いだなんだと本当に大変よね」
「女性は女性で色々と面倒ですけれどね」
テツくんとラルフ様は相変わらず、私達を置いてどこかへ行ってしまわれました。
この間に女性同士でお話をする事により、女性ならではの情報をつかめたりするので、他の方と話すのも大事な事ではあるのですが、私としてはまず、アリスさんとランドン辺境伯について気になるのもあって、下手にウロウロせずに、アリスさんとお話する事にしました。
「そういえば、今日、リノアが気になってたランドン辺境伯? だっけ。来てるらしいわよ」
「え? そうなのですか? ですけどあの方、社交場に出てはいけないのでは?」
「婚約者同伴であれば良くなったらしいわよ。そうじゃないと婚約者が可哀想だからね。今回の夜会は招待されてなかったらしいけど、私が来ると知ったから、無理矢理、招待状を請求したらしいわ」
アリスさんは壁にもたれかかりながら、手に持っていたグラスの中に入っている果実酒を飲み、小さく息を吐かれました。
「今回の主催も伯爵家ですし、彼より爵位が下だから、そんな事が出来たのでしょうけど、相変わらずのワガママっぷりですね」
呆れた口調で言うと、アリスさんが頷きます。
「そういう奴だから辺境伯なのに今まで結婚も出来てないんでしょう」
「それにしても、アリスさん、ランドン辺境伯と一体、何があったんです? あの方、他の男爵令嬢に猛烈アタックしていたのですよ? それをそんなに簡単に諦められるものなのかと驚きなのです」
「話が長くなるかもしれないけど、聞きたい?」
「ご迷惑でなければ!」
両拳を握りしめて言うと、アリスさんは優しく微笑んで下さいます。
「いいわ。でもここじゃ騒がしいし、休憩室に行きましょ」
会場内では誰の耳があるかわかりませんし、私も異論はないので、ラルフ様とテツくんにその旨を伝えて、一緒に会場の別棟にある、女性用の休憩室に向かう事にしました。
「だから、歌を歌うのは後にしてくれるか?」
「それはかまいませんが、ベッドに横になって下さい。お話は横になっても出来るのですから」
少しでも身体を休めてもらおうと、ラルフ様を無理矢理、ベッドに横にならせてから、話を聞く事にする。
「どんな事がわかったのですか?」
「どうやら、奴はランドンと関わっているらしい」
「どういう事ですか? ランドン辺境伯と関わって、あの方に何のメリットがあるんです?」
こんな事を言ってはなんですが、ランドン辺境伯は貴族の中では落ち目なはずです。
そんな方とわざわざ関わる必要があるのでしょうか。
それとも、ランドン辺境伯から近付いた?
「手を組んで、俺から辺境伯の爵位を奪おうとしているみたいだな。まあ、小物同士が手を組んでいるだけだから、大した影響力はなさそうだが。それより問題なのが…」
「どうされました?」
「ランドンはどうやら、新たに好きな女性が出来たみたいだ」
「えっ!? パメル様の事は諦めたのですか?」
「諦めざるをえなくなった」
「どういう事です?」
意味がわからなくて先の言葉を急かすと、ラルフ様は苦笑して言いました。
「結婚したんだ」
「えっ!?」
「さすがの男爵も娘を好き勝手させておくわけにはいかなかった様だ。ランドンと結婚するか、他の男と結婚するか選ばせたらしい」
「ランドン辺境伯が諦めたという事はパメル様は他の方との結婚を望まれたんですね…」
それだけ聞くと、ランドン辺境伯も可哀想な気がしますが、彼には自業自得なとこもありますよね。
「パメル様、幸せになって下さるといいのですが…」
「そうだな。彼女に良い印象はないが、不幸になれと願うのもおかしいからな」
「私もそう思います。で、ランドン辺境伯の新たな好きな人というのは?」
「それが、あれだ。リノアが知っている人物だ」
「どこかのご令嬢ですね?」
「そうなるな」
なぜか、ラルフ様は名前を口にするのを躊躇っておられます。
名前を口にしにくいご令嬢とは、どんな方なのでしょう?
「私の知っている令嬢で、ラルフ様が口にしたくないお方ですよね」
「いや、口にしたくないわけじゃないが、リノアに伝えると、彼女に連絡したがるだろうから」
「どんな方なのでしょう?」
「型破りな令嬢だ」
「そんなの、1人しかいないじゃないですか!」
一体、どういう接点で彼女がランドン辺境伯と知り合ったのかが気になり、ラルフ様の予想通り、私は彼女と連絡を取る事に決めました。
1週間後、テツくんの関係で出席する事になったという夜会に私達も出席する事にしていたので、アリスさんと会場で落ち合う事になりました。
「男共は付き合いだなんだと本当に大変よね」
「女性は女性で色々と面倒ですけれどね」
テツくんとラルフ様は相変わらず、私達を置いてどこかへ行ってしまわれました。
この間に女性同士でお話をする事により、女性ならではの情報をつかめたりするので、他の方と話すのも大事な事ではあるのですが、私としてはまず、アリスさんとランドン辺境伯について気になるのもあって、下手にウロウロせずに、アリスさんとお話する事にしました。
「そういえば、今日、リノアが気になってたランドン辺境伯? だっけ。来てるらしいわよ」
「え? そうなのですか? ですけどあの方、社交場に出てはいけないのでは?」
「婚約者同伴であれば良くなったらしいわよ。そうじゃないと婚約者が可哀想だからね。今回の夜会は招待されてなかったらしいけど、私が来ると知ったから、無理矢理、招待状を請求したらしいわ」
アリスさんは壁にもたれかかりながら、手に持っていたグラスの中に入っている果実酒を飲み、小さく息を吐かれました。
「今回の主催も伯爵家ですし、彼より爵位が下だから、そんな事が出来たのでしょうけど、相変わらずのワガママっぷりですね」
呆れた口調で言うと、アリスさんが頷きます。
「そういう奴だから辺境伯なのに今まで結婚も出来てないんでしょう」
「それにしても、アリスさん、ランドン辺境伯と一体、何があったんです? あの方、他の男爵令嬢に猛烈アタックしていたのですよ? それをそんなに簡単に諦められるものなのかと驚きなのです」
「話が長くなるかもしれないけど、聞きたい?」
「ご迷惑でなければ!」
両拳を握りしめて言うと、アリスさんは優しく微笑んで下さいます。
「いいわ。でもここじゃ騒がしいし、休憩室に行きましょ」
会場内では誰の耳があるかわかりませんし、私も異論はないので、ラルフ様とテツくんにその旨を伝えて、一緒に会場の別棟にある、女性用の休憩室に向かう事にしました。
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