34 / 35
26 聖女と精霊の涙
しおりを挟む
レッテムからノーンコル王国の謁見の間に飛ばされると聞いてすぐに、私の目の前の景色が変わった。
気が付いた時には、何度も訪れたことのあるノーンコル王国の謁見の間にいて、目の前にある壇上にはノーンコル王国の国王陛下にフワエル様、そしてルルミー様がいた。
意外だったのは、わたしと一緒にディオン殿下も飛ばされていたことだった。
「一体、どういうことだ」
ディオン殿下が困惑した表情で尋ねてきたので、はっきりとした根拠はないけれど考えられることを口にしてみる。
「わたし一人では物理的に危ないと思って、神様が一緒に飛ばしてくださったのかもしれません」
「……そういうことか」
ディオン殿下は国王陛下の手に長剣が握られているのを確認してから頷いた。
治癒能力が間に合わないような即死攻撃や連続攻撃をされたら、わたしの命は失われてしまう。
わたしのせいでディオン殿下を危険な状況に置いてしまったことは申し訳ないけれど、神様が考えてのことだから、ディオン殿下に何かある時は神様が助けてくれると信じることにした。
「リーニ、帰ってきてくれたんだね!」
ルルミー様の肩を抱いていたフワエル様は彼女から手を離して、こちらに近寄ってこようとした。
そんなフワエル様を慌ててルルミー様が止める。
「フワエル殿下、あたしがいるのに他の女性の所に行くつもりですか!?」
「そういうわけじゃない。リーニにはこの国の聖女として頑張ってもらうだけだよ。結界を張ってもらって魔物から守ってもらわないといけないんだ」
事情がわかっていないルルミー様とフワエル様のやり取りは無視して、国王陛下に話しかける。
「国王陛下、ソーンウェル王国からのお手紙は読んでいただけたのでしょうか」
「読んだ。だが、ルルミーは渡さぬ!」
「どうしてでしょうか」
「俺は10カ国を治める王になるんだ! そのためにはこの女が必要だ!」
国王陛下は立ち上がって叫んだ。
「信じられないことを言ってるが、それより気になるのは、どうして世界を統治するためにルルミーが必要なんだ?」
「邪神がルルミー様を使って国王陛下にコンタクトを取っているからです」
「邪神は聖女の結界を通り抜けられるのか?」
「どう言ったら良いのかわかりませんが、本体は無理です。ですが、思念体としてなら結界の中でも大丈夫なようですね」
「ルルミーを器にしているということか」
わたしとディオン殿下が小さな声で話をしているのが気に食わなかったのか、ルルミー様が叫ぶ。
「何を言われてもソーンウェルには帰らないから! あたしはこの国にいたら特別でいられるの!」
「ルルミー様、あなたは魔物になるつもりですか!?」
「ならないわ! 邪神が約束してくれたもの! 美しい体のまま長生きさせてくれるって!」
ルルミー様は邪神を信じてしまっているようだった。
「邪神の言葉を信じるつもりか」
「神様なんて綺麗事を言うだけで、何にもしてくれないじゃないですか! それなら、ちゃんと話をしてくれる邪神を信じるわ!」
「お前よりも信仰心の強い人が多いだけだと思うがな」
「目に止めてもらわなければ報われないなんて、もううんざりです!」
ルルミー様が叫ぶと、国王陛下もそれに同意する。
「そうだ! 今まで崇めてきた神は何もしてくれん! 頭が固い小娘にしか力を貸さないのなら、俺は邪神を信じる! 俺の全てを邪神に捧げよう!」
国王陛下が叫んだ、その時だった。
ルルミー様の体がふらついたので、フワエル殿下が慌てて彼女の体を支える。
「どうしたんだ、ルルミー」
「足の力が入らなくて……」
フワエル殿下の問いかけに答えたと同時に、ルルミー様の足からどろりとした青い液体が流れ始めた。
「な、何なの、これっ」
ルルミー様が悲鳴を上げたので、この状況を残念に思いながら話しかける。
「ルルミー様、以前にご連絡差し上げたはずです。思い出せませんか」
「思い出せませんかって……嘘でしょ! そんな! 邪神は自分が付いている間は魔物になんかならないって言っていたわ!」
「付いている間は、ですよね」
私の言葉の意味に気が付いたルルミー様は絶叫する。
「嫌よっ! 魔物になんかなりたくないっ!」
「な、なんだ、この足はっ! 化け物じゃないかっ!」
ルルミー様の足が青色に変わっていくことに気が付いたフワエル様は、ルルミー様の体を壇上から突き落とした。
ルルミー様は悲鳴を上げながら階段を転がり落ちると、わたしたちのすぐ目の前でうつ伏せの状態で動かなくなった。
そうしている内に、ルルミー様の魔物化は進んでいく。
「ルルミー様も酷いですが、フワエル殿下、あなたはもっと酷い人ですね」
気を失っていると見られるルルミー様に治癒魔法と浄化魔法を同時にかけながらフワエル殿下を睨みつける。
「だって、魔物化しているじゃないか」
「そんなことを言ったら、あなたのお父上もそうでしょう」
ディオン殿下が国王陛下のほうに目を向けて言うと、フワエル殿下は怯えたような顔をして、自分の父親に目を向けた。
国王陛下は見たことのない凶悪な顔をして、わたしたちを睨みつけている。
「どうしてしまったというんです、父上!」
「フワエル! 何も怖がらなくても良い! こいつらを片付けたら説明してやるから大人しく待っていろ」
「ですが、父上!」
「待っていろと言っているだろうっ! 言うことを聞かないようなら、お前も排除するぞ!」
国王陛下がフワエル殿下に気を取られている間に、ディオン殿下が素早く動き、持参していた剣の柄で国王陛下の首を強く突いた。
「ぐあっ」
国王陛下は苦しむような叫び声を上げたあと、膝をつき、そのまま前のめりになって倒れた。
そんな国王陛下の背中を見下ろして、ディオン殿下が呟く。
「自分のことしか考えていないんだな」
「それはお前もじゃないか!」
ルルミー様への処置に気を取られて、ピッキーの気配に気が付けなかった。
私の隣に姿を現したピッキーは、ディオン殿下に向かって叫ぶ。
「リーニは僕の運命の相手なんだ! お前なんかに渡さない!」
「何をふざけたことを言ってるんだ」
ディオン殿下が厳しい表情で階段をゆっくりと下りてくる。
「ピッキー! いい加減にして! わたしはあなたの運命の相手でもないし、元恋人でもないのよ!」
「そんなことない! リーニは本当に彼女にそっくりなんだ! 見た目も性格も!」
「それはたまたまよ! 聞いて、ピッキー! あなたに自分の口から真実を伝えたい人がいるの!」
「どうせ神様なんだろう! もうわかってる! オレは闇に落ちるんだ! だから、リーニ、オレとまた、一緒に闇に落ちてくれ」
ピッキーのまとっていた空気が今までの柔らかなものから、邪悪なものに変わった。
邪神が国王陛下からピッキーに乗り移ったのだとわかった。
桁違いの闇の力に恐怖で体が動かない。
「リーニ、怖がらなくてもいいよ」
ピッキーがわたしに顔を近づけた時、わたしの腕が前方に強く引っ張られたかと思うと、一瞬だけ浮き上がった。
そして、それと同時にピッキーが悲鳴を上げる。
「ぎゃああああっ!」
ピッキーのほうを見ると、精霊仲間であるワニのテイラーがピッキーの足に噛みついていた。
「大丈夫か」
恐怖で動けなくなっていたわたしを助けてくれたのはディオン殿下だったようで、わたしを抱き寄せたまま尋ねてきた。
「……ありがとうございます」
闇の力に飲み込まれそうになった恐怖と、目の前の悲しい出来事に目を離せないまま、ディオン殿下の言葉に頷いた。
「ごめんなさい、ピッキー。本当に、本当にごめんなさい」
「ど、どうして、テイラーが?」
倒れたピッキーの体が少しずつ金色の砂になっていく。
そのスピードは緩やかなので、ピッキーはテイラーに尋ねた。
答えを知っているわたしの目から涙がこぼれる。
「ピッキー、あなたの元恋人は私よ」
ピッキーの元恋人の生まれ変わりであるテイラーは、ポロポロと涙を流しながら、ワニの姿からメス鹿の姿に変わったのだった。
気が付いた時には、何度も訪れたことのあるノーンコル王国の謁見の間にいて、目の前にある壇上にはノーンコル王国の国王陛下にフワエル様、そしてルルミー様がいた。
意外だったのは、わたしと一緒にディオン殿下も飛ばされていたことだった。
「一体、どういうことだ」
ディオン殿下が困惑した表情で尋ねてきたので、はっきりとした根拠はないけれど考えられることを口にしてみる。
「わたし一人では物理的に危ないと思って、神様が一緒に飛ばしてくださったのかもしれません」
「……そういうことか」
ディオン殿下は国王陛下の手に長剣が握られているのを確認してから頷いた。
治癒能力が間に合わないような即死攻撃や連続攻撃をされたら、わたしの命は失われてしまう。
わたしのせいでディオン殿下を危険な状況に置いてしまったことは申し訳ないけれど、神様が考えてのことだから、ディオン殿下に何かある時は神様が助けてくれると信じることにした。
「リーニ、帰ってきてくれたんだね!」
ルルミー様の肩を抱いていたフワエル様は彼女から手を離して、こちらに近寄ってこようとした。
そんなフワエル様を慌ててルルミー様が止める。
「フワエル殿下、あたしがいるのに他の女性の所に行くつもりですか!?」
「そういうわけじゃない。リーニにはこの国の聖女として頑張ってもらうだけだよ。結界を張ってもらって魔物から守ってもらわないといけないんだ」
事情がわかっていないルルミー様とフワエル様のやり取りは無視して、国王陛下に話しかける。
「国王陛下、ソーンウェル王国からのお手紙は読んでいただけたのでしょうか」
「読んだ。だが、ルルミーは渡さぬ!」
「どうしてでしょうか」
「俺は10カ国を治める王になるんだ! そのためにはこの女が必要だ!」
国王陛下は立ち上がって叫んだ。
「信じられないことを言ってるが、それより気になるのは、どうして世界を統治するためにルルミーが必要なんだ?」
「邪神がルルミー様を使って国王陛下にコンタクトを取っているからです」
「邪神は聖女の結界を通り抜けられるのか?」
「どう言ったら良いのかわかりませんが、本体は無理です。ですが、思念体としてなら結界の中でも大丈夫なようですね」
「ルルミーを器にしているということか」
わたしとディオン殿下が小さな声で話をしているのが気に食わなかったのか、ルルミー様が叫ぶ。
「何を言われてもソーンウェルには帰らないから! あたしはこの国にいたら特別でいられるの!」
「ルルミー様、あなたは魔物になるつもりですか!?」
「ならないわ! 邪神が約束してくれたもの! 美しい体のまま長生きさせてくれるって!」
ルルミー様は邪神を信じてしまっているようだった。
「邪神の言葉を信じるつもりか」
「神様なんて綺麗事を言うだけで、何にもしてくれないじゃないですか! それなら、ちゃんと話をしてくれる邪神を信じるわ!」
「お前よりも信仰心の強い人が多いだけだと思うがな」
「目に止めてもらわなければ報われないなんて、もううんざりです!」
ルルミー様が叫ぶと、国王陛下もそれに同意する。
「そうだ! 今まで崇めてきた神は何もしてくれん! 頭が固い小娘にしか力を貸さないのなら、俺は邪神を信じる! 俺の全てを邪神に捧げよう!」
国王陛下が叫んだ、その時だった。
ルルミー様の体がふらついたので、フワエル殿下が慌てて彼女の体を支える。
「どうしたんだ、ルルミー」
「足の力が入らなくて……」
フワエル殿下の問いかけに答えたと同時に、ルルミー様の足からどろりとした青い液体が流れ始めた。
「な、何なの、これっ」
ルルミー様が悲鳴を上げたので、この状況を残念に思いながら話しかける。
「ルルミー様、以前にご連絡差し上げたはずです。思い出せませんか」
「思い出せませんかって……嘘でしょ! そんな! 邪神は自分が付いている間は魔物になんかならないって言っていたわ!」
「付いている間は、ですよね」
私の言葉の意味に気が付いたルルミー様は絶叫する。
「嫌よっ! 魔物になんかなりたくないっ!」
「な、なんだ、この足はっ! 化け物じゃないかっ!」
ルルミー様の足が青色に変わっていくことに気が付いたフワエル様は、ルルミー様の体を壇上から突き落とした。
ルルミー様は悲鳴を上げながら階段を転がり落ちると、わたしたちのすぐ目の前でうつ伏せの状態で動かなくなった。
そうしている内に、ルルミー様の魔物化は進んでいく。
「ルルミー様も酷いですが、フワエル殿下、あなたはもっと酷い人ですね」
気を失っていると見られるルルミー様に治癒魔法と浄化魔法を同時にかけながらフワエル殿下を睨みつける。
「だって、魔物化しているじゃないか」
「そんなことを言ったら、あなたのお父上もそうでしょう」
ディオン殿下が国王陛下のほうに目を向けて言うと、フワエル殿下は怯えたような顔をして、自分の父親に目を向けた。
国王陛下は見たことのない凶悪な顔をして、わたしたちを睨みつけている。
「どうしてしまったというんです、父上!」
「フワエル! 何も怖がらなくても良い! こいつらを片付けたら説明してやるから大人しく待っていろ」
「ですが、父上!」
「待っていろと言っているだろうっ! 言うことを聞かないようなら、お前も排除するぞ!」
国王陛下がフワエル殿下に気を取られている間に、ディオン殿下が素早く動き、持参していた剣の柄で国王陛下の首を強く突いた。
「ぐあっ」
国王陛下は苦しむような叫び声を上げたあと、膝をつき、そのまま前のめりになって倒れた。
そんな国王陛下の背中を見下ろして、ディオン殿下が呟く。
「自分のことしか考えていないんだな」
「それはお前もじゃないか!」
ルルミー様への処置に気を取られて、ピッキーの気配に気が付けなかった。
私の隣に姿を現したピッキーは、ディオン殿下に向かって叫ぶ。
「リーニは僕の運命の相手なんだ! お前なんかに渡さない!」
「何をふざけたことを言ってるんだ」
ディオン殿下が厳しい表情で階段をゆっくりと下りてくる。
「ピッキー! いい加減にして! わたしはあなたの運命の相手でもないし、元恋人でもないのよ!」
「そんなことない! リーニは本当に彼女にそっくりなんだ! 見た目も性格も!」
「それはたまたまよ! 聞いて、ピッキー! あなたに自分の口から真実を伝えたい人がいるの!」
「どうせ神様なんだろう! もうわかってる! オレは闇に落ちるんだ! だから、リーニ、オレとまた、一緒に闇に落ちてくれ」
ピッキーのまとっていた空気が今までの柔らかなものから、邪悪なものに変わった。
邪神が国王陛下からピッキーに乗り移ったのだとわかった。
桁違いの闇の力に恐怖で体が動かない。
「リーニ、怖がらなくてもいいよ」
ピッキーがわたしに顔を近づけた時、わたしの腕が前方に強く引っ張られたかと思うと、一瞬だけ浮き上がった。
そして、それと同時にピッキーが悲鳴を上げる。
「ぎゃああああっ!」
ピッキーのほうを見ると、精霊仲間であるワニのテイラーがピッキーの足に噛みついていた。
「大丈夫か」
恐怖で動けなくなっていたわたしを助けてくれたのはディオン殿下だったようで、わたしを抱き寄せたまま尋ねてきた。
「……ありがとうございます」
闇の力に飲み込まれそうになった恐怖と、目の前の悲しい出来事に目を離せないまま、ディオン殿下の言葉に頷いた。
「ごめんなさい、ピッキー。本当に、本当にごめんなさい」
「ど、どうして、テイラーが?」
倒れたピッキーの体が少しずつ金色の砂になっていく。
そのスピードは緩やかなので、ピッキーはテイラーに尋ねた。
答えを知っているわたしの目から涙がこぼれる。
「ピッキー、あなたの元恋人は私よ」
ピッキーの元恋人の生まれ変わりであるテイラーは、ポロポロと涙を流しながら、ワニの姿からメス鹿の姿に変わったのだった。
193
お気に入りに追加
2,255
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します
nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。
イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。
「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」
すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

婚約者の様子がおかしいので尾行したら、隠し妻と子供がいました
Kouei
恋愛
婚約者の様子がおかしい…
ご両親が事故で亡くなったばかりだと分かっているけれど…何かがおかしいわ。
忌明けを過ぎて…もう2か月近く会っていないし。
だから私は婚約者を尾行した。
するとそこで目にしたのは、婚約者そっくりの小さな男の子と美しい女性と一緒にいる彼の姿だった。
まさかっ 隠し妻と子供がいたなんて!!!
※誤字脱字報告ありがとうございます。
※この作品は、他サイトにも投稿しています。

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。

親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる