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25 聖女の決断(途中で視点変更あり)
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食事をしている時に、エレーナ様から手紙が届いた。
予想通り、ノーンコル王国にルルミー様が現れたそうだ。
ピッキーの姿は見えないようだけれど、何か違和感を感じるらしく、ピッキーも姿を見せないだけで近くにいるのではないかと書かれていた。
エレーナ様の前に姿を見せると、神様からの天罰が下ると恐れているのかもしれない。
食事を終えた頃にディオン殿下がやって来た。
「リーニの話を聞いて、ルルミーをソーンウェル王国に引き渡すようにノーンコル王国の王家に、ソーンウェルと他8国の国王の連名で連絡を入れてもらった」
「ありがとうございます」
「他の聖女も、それぞれの国王陛下に口添えをしてくれていたから楽だったみたいだ」
「国が乗っ取られるということは、わたしたち人間にしてみれば脅威ですものね」
「ああ。今回の件は聖女だけがどうこうという話ではないからな」
両陛下やディオン殿下に詳しい話をしたところ、ピッキーや邪神に騙された可能性はあるけれど、悪い心に染められてしまったのは人間であるルルミー様だと言ってくれた。
ノーンコル王国の国王陛下がルルミー様を受け入れ、引き渡しを拒否するようなことがあれば、ノーンコル王国は魔物が支配する国になってしまう恐れがある。
「もうすでに他の国の聖女は動いていると連絡が来た」
「では、私も動くことにします」
ノーンコル王国の国王陛下に善良な心が残っていると信じたい。
でも、現実は願い通りにはならなかった。
◆◇◆◇◆◇
(エレーナ視点)
リーニ様たちに手紙を送ったあと、私はノーンコル王国の国王陛下に謁見を求めました。
すぐに許可が下りたので、メイドに車椅子を押してもらって謁見の間に向かいました。
その途中で殴られでもしたのか、頬が腫れ上がっている王妃陛下と出会ったので聞いてみます。
「どうかされましたか」
「どうもこうもないわ! わたくしはここを出ていきます! 勝てもしない戦争に巻き込まれたくありません!」
どうやら、各国の国王陛下からの書状を読まれたようです。
そして、この様子ですと国王陛下はルルミーをソーンウェルには戻さないつもりのようです。
そんなことをしたら各国との戦争になるだけではなく、自分の身も危なくなりますのに、冷静な判断ができていないようです。
王妃陛下はそれがわかったので、ルルミーを渡すように伝えて、それで殴られたというところでしょうか。
「この城から離れるのは懸命な判断かと思います」
今までの両陛下のやって来たことは許されるものではありません。
でも、王妃陛下は実行犯ではありませんから、罪に問うには難しいところです。
陛下に殺されることが怖くて止められなかった可能性もありますから。
駄目だと神様が判断された時は、王妃陛下はこの城から出られないでしょう。
それを確認する前に、私にはやらなければならないことがあります。
王妃陛下と別れ、謁見の間にたどり着いた私は扉を開けてもらい、自分で車椅子を押して中に入りました。
謁見の間は邪悪な空気のせいか澱んでいるように感じました。
神様から聖なる力を授かっているので、部屋の空気は簡単に浄化できました。
警備に立っていた兵士の顔色も良くなったので上手くいったようです。
壇上にはフワエル殿下、国王陛下、ルルミーがいました。
国王陛下は玉座にふんぞり返って座っていて、フワエル殿下たちはその後ろに立っていました。
ルルミーはフワエル殿下にぴったりと体をくっつけています。
国王陛下に挨拶をしたあと、ルルミーに話しかけてみます。
「ルルミー! あなたはソーンウェルに戻るように言われています!」
「嫌よ。あたしはここにいても良いと言われてるんだから! でしょう?」
ルルミーはフワエル殿下の胸に顔を寄せました。
「悪いけど、僕とルルミーは結婚することに決めたんだ」
フワエル殿下はルルミーの肩を抱いて言いました。
酷いです。
私はフワエル殿下のことを運命の人だと感じたのに。
一方的に運命だと思っていても意味がないのだと、再度、思い知らされた気分でした。
さすがの私も勉強しました。
どうして聖女になりたかったのか。
それは、人気者になるためでした。
不純な動機かもしれませんが、神様は認めてくれました。
だから、私はその願いを貫きます。
フワエル殿下のお嫁さんになれなくても良いです。
悪い人を成敗する人になって、多くの人から敬ってもらいたいです。
だから、私は聖女の仕事をしようと思います。
「国王陛下、ルルミーをソーンウェル王国に返さなければ、何の罪もない人が犠牲になってしまうかもしれません」
「国民が何人死のうが構わん! 大体、魔物に結界を破られるだなんて迷惑な聖女め! 今すぐに聖女をリーニに戻せ!」
国王陛下が壇上から威嚇してきました。
「私にはそんな権限はございません。ですが、リーニ様をここに呼ぶことはできます。でも、その前にルルミーと話をさせてください」
もう二度と会えなくなるかもしれません。
だから、伝えておこうと思います。
「何よ」
「今までありがとう、ルルミー。あなたがいたから、私は学園に通えたの。いっぱい助けてもらったのに、助けてあげられなくてごめんなさい」
「何なのよ! あたしはあんたに助けてもらわなくても生きていけるのよ! とっとと消えて!」
ルルミーが叫んでいる途中で、私の体はソーンウェル王国にある、実家に戻っていたのでした。
※
あと2話で完結になります。
もう少しだけお付き合いくださいませ。
予想通り、ノーンコル王国にルルミー様が現れたそうだ。
ピッキーの姿は見えないようだけれど、何か違和感を感じるらしく、ピッキーも姿を見せないだけで近くにいるのではないかと書かれていた。
エレーナ様の前に姿を見せると、神様からの天罰が下ると恐れているのかもしれない。
食事を終えた頃にディオン殿下がやって来た。
「リーニの話を聞いて、ルルミーをソーンウェル王国に引き渡すようにノーンコル王国の王家に、ソーンウェルと他8国の国王の連名で連絡を入れてもらった」
「ありがとうございます」
「他の聖女も、それぞれの国王陛下に口添えをしてくれていたから楽だったみたいだ」
「国が乗っ取られるということは、わたしたち人間にしてみれば脅威ですものね」
「ああ。今回の件は聖女だけがどうこうという話ではないからな」
両陛下やディオン殿下に詳しい話をしたところ、ピッキーや邪神に騙された可能性はあるけれど、悪い心に染められてしまったのは人間であるルルミー様だと言ってくれた。
ノーンコル王国の国王陛下がルルミー様を受け入れ、引き渡しを拒否するようなことがあれば、ノーンコル王国は魔物が支配する国になってしまう恐れがある。
「もうすでに他の国の聖女は動いていると連絡が来た」
「では、私も動くことにします」
ノーンコル王国の国王陛下に善良な心が残っていると信じたい。
でも、現実は願い通りにはならなかった。
◆◇◆◇◆◇
(エレーナ視点)
リーニ様たちに手紙を送ったあと、私はノーンコル王国の国王陛下に謁見を求めました。
すぐに許可が下りたので、メイドに車椅子を押してもらって謁見の間に向かいました。
その途中で殴られでもしたのか、頬が腫れ上がっている王妃陛下と出会ったので聞いてみます。
「どうかされましたか」
「どうもこうもないわ! わたくしはここを出ていきます! 勝てもしない戦争に巻き込まれたくありません!」
どうやら、各国の国王陛下からの書状を読まれたようです。
そして、この様子ですと国王陛下はルルミーをソーンウェルには戻さないつもりのようです。
そんなことをしたら各国との戦争になるだけではなく、自分の身も危なくなりますのに、冷静な判断ができていないようです。
王妃陛下はそれがわかったので、ルルミーを渡すように伝えて、それで殴られたというところでしょうか。
「この城から離れるのは懸命な判断かと思います」
今までの両陛下のやって来たことは許されるものではありません。
でも、王妃陛下は実行犯ではありませんから、罪に問うには難しいところです。
陛下に殺されることが怖くて止められなかった可能性もありますから。
駄目だと神様が判断された時は、王妃陛下はこの城から出られないでしょう。
それを確認する前に、私にはやらなければならないことがあります。
王妃陛下と別れ、謁見の間にたどり着いた私は扉を開けてもらい、自分で車椅子を押して中に入りました。
謁見の間は邪悪な空気のせいか澱んでいるように感じました。
神様から聖なる力を授かっているので、部屋の空気は簡単に浄化できました。
警備に立っていた兵士の顔色も良くなったので上手くいったようです。
壇上にはフワエル殿下、国王陛下、ルルミーがいました。
国王陛下は玉座にふんぞり返って座っていて、フワエル殿下たちはその後ろに立っていました。
ルルミーはフワエル殿下にぴったりと体をくっつけています。
国王陛下に挨拶をしたあと、ルルミーに話しかけてみます。
「ルルミー! あなたはソーンウェルに戻るように言われています!」
「嫌よ。あたしはここにいても良いと言われてるんだから! でしょう?」
ルルミーはフワエル殿下の胸に顔を寄せました。
「悪いけど、僕とルルミーは結婚することに決めたんだ」
フワエル殿下はルルミーの肩を抱いて言いました。
酷いです。
私はフワエル殿下のことを運命の人だと感じたのに。
一方的に運命だと思っていても意味がないのだと、再度、思い知らされた気分でした。
さすがの私も勉強しました。
どうして聖女になりたかったのか。
それは、人気者になるためでした。
不純な動機かもしれませんが、神様は認めてくれました。
だから、私はその願いを貫きます。
フワエル殿下のお嫁さんになれなくても良いです。
悪い人を成敗する人になって、多くの人から敬ってもらいたいです。
だから、私は聖女の仕事をしようと思います。
「国王陛下、ルルミーをソーンウェル王国に返さなければ、何の罪もない人が犠牲になってしまうかもしれません」
「国民が何人死のうが構わん! 大体、魔物に結界を破られるだなんて迷惑な聖女め! 今すぐに聖女をリーニに戻せ!」
国王陛下が壇上から威嚇してきました。
「私にはそんな権限はございません。ですが、リーニ様をここに呼ぶことはできます。でも、その前にルルミーと話をさせてください」
もう二度と会えなくなるかもしれません。
だから、伝えておこうと思います。
「何よ」
「今までありがとう、ルルミー。あなたがいたから、私は学園に通えたの。いっぱい助けてもらったのに、助けてあげられなくてごめんなさい」
「何なのよ! あたしはあんたに助けてもらわなくても生きていけるのよ! とっとと消えて!」
ルルミーが叫んでいる途中で、私の体はソーンウェル王国にある、実家に戻っていたのでした。
※
あと2話で完結になります。
もう少しだけお付き合いくださいませ。
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