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24 見えてきた目的
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『ピッキーとルルミーが姿を消しました』
神様の言葉を聞いた、わたしたちは何も言えずに息をのんだ。
ルルミー様を監視していた人からは何も連絡はない。
ということは、監視の人にバレないように外に出たということだろうか。
でも、どうやって?
しばらくしてから、ノナが口を開く。
「姿を消したというのは、神様でも行方がわからないということでしょうか」
『そうです』
迷うことのない言葉に、動揺を隠せず、近くにいた聖女同士で顔を見合わせた。
神様がわからないということは、ピッキーたちが神様を裏切り、邪神側についた可能性が高い。
「ピッキーとルルミー様は別行動なのでしょうか。それとも一緒だと思われますか?」
『一緒ではないかと思っています』
もしかしてレッテムが言っていた、ピッキーの恋人はルルミー様だったとかするのかしら。
いや、違うわよね。
それなら、ピッキーの誘いを断るはず。
自らの命を絶ってまで、神様を選んだ人なんだもの。
そう簡単に考えが変わることはないでしょう。
「わたしたちと敵対するつもりなのでしょうか」
『ピッキーやルルミーは敵対するつもりはないでしょう。何をしようとしているかは見当がつきますので』
わたしの質問に神様はそう答えてくれた。
その答えに頷いたあと、また質問する。
「ピッキーがそんなことをしたのは、わたしが原因なのでしょうか」
『……結界のことはあなたのことが関係しているかもしれません。ですが、あなたが悪いわけではありません。ピッキーが勝手に考えて動いたのです』
ピッキーが結界をわざと破ったのは、エレーナ様の責任にして、わたしをノーンコル王国の聖女に戻すためだったのではないかと考えられている。
結界が破られたエレーナ様はわたしよりも駄目な聖女だと思わせようとしたのだ。
ピッキーは、どうしてもディオン殿下とわたしを引き離したかった。
でも、それは神様によって阻止された。
たとえ、神様が手を出さなくても、聖女が替わることはなかったと思う。
ピッキーにはそれがわからなかったのか、それとも一縷の望みにかけたのかは、本人に聞いてみないとわからない。
「どうして、ルルミーと消えたのでしょうか」
ロマ様が尋ねると、少し間を空けてから神様が答える。
『ルルミーの闇の感情に引きずられたのではないかと思っています』
「ですが、精霊は聖女以外の人間と接触することは不可のはずです」
『そうですが、実際は罰則はないですし、不可能でもないのです』
精霊の姿は普通の人には見えないものだと思い込んでいた。
会うことができるという事実に驚いたあと、ロマ様が神様に尋ねる。
「私たちに何かできることはありますでしょうか」
『彼らが現れそうな場所は予想はつきます。邪神の力が活発になってきているので、私はそちらに意識を集中させるつもりです。あなたたちに迷惑をかけて申し訳ないのですが、ルルミーとピッキーのほうは協力してもらえないでしょうか』
「承知いたしました」
わたしたち聖女は、迷うことなく頷いた。
*****
神様からの話を聞き終え、祭壇で力を授かったあと、すぐに王城に向かった。
そして、急用だと無理を言ってソーンウェル王国の両陛下に謁見させてもらい、今回の事情を説明し、手を打ってもらうことになった。
その後、部屋に戻って改めて、一人で考える。
今回の件はわたしにも大きな責任がある。
ルルミー様にチャンスをあげたつもりが、逆に彼女を危険な目に遭わせてしまった。
そして、このままではもっと多くの人に迷惑をかけてしまう。
他の聖女や精霊たちはピッキーが悪いのであって、わたしが悪いわけではないと慰めてくれた。
ルルミー様は邪神に目を付けられていたから、遅かれ早かれ、彼女が魔物化する可能性は高かった。
だけど、魔物になることをあれだけ嫌がっていたのだから、改心してくれると思っていた。
「まだ、魔物になりきっていないのなら、何とか彼女を戻さなくちゃ」
完全に魔物化してしまえば、結界の中に入れば死んでしまうから邪神はそこまで彼女を闇に落としていないはずだから、浄化すればまだ間に合う。
ルルミー様が本当に彼女の住んでいる邸内にいないのか確認してもらっている間、わたしはこれから自分ができることを考えた。
そうしている内に、ルルミー様を見張っていた人たちから連絡が来て、やはり彼女が邸内にいないことを知らされた。
邪神が手助けして、ルルミー様を外に出したのだと思われる。
神様が言うには邪神はそう賢くない。
そして、わたしたち聖女や精霊が考えるに、ピッキーもルルミー様もそう賢くない。
だから、彼らがこう動くだろうと予想したわたしたちは、その場にいたエレーナ様に探りを入れてもらうことになった。
ルルミー様はエレーナ様のところに行こうとしていた。
でも、ピッキーと一緒に邪神側に付いたことにより、エレーナ様の所には行けないというよりか、浄化されてしまっては困るので邪神はエレーナ様のところに行かせないはずだ。
そうなった時、ルルミー様たちが近づくと考えられるのは、ノーンコル王国の王族だ。
ルルミー様はピッキーに邪神に手を貸せば、幸せになれるとでも言われたのかもしれない。
そして、邪神も自分に手を貸せば、最終的に魔物になってしまうことを伝えていないのでしょう。
考えたらわかることなのにね。
邪神の目的はきっと、ノーンコル王国の王族の悪意ではないかと思われる。
国王陛下を傀儡にしてしまえば、ノーンコル王国は邪神の思い通りになる。
ピッキーは傀儡になった国王陛下に、聖女をわたしに戻すように言うつもりなのかもしれない。
もし、本当にそうだったとしたら、ピッキーは正常じゃない。
その時、扉がノックされ、レイカの声が聞こえた。
「リーニ様、お出かけになる前に食事をとるようにと、ディオン殿下からのご命令です。そのような気分にならないかもしれませんが、これから聖なる力を使われるようですので、少しでも食事をして体力をつけたほうが良いとおっしゃられています」
「ありがとう。そうね。これから戦わなければいけないんだもの。しっかり力をつけないとね」
頷いて立ち上がると、これからの大仕事に向けて、食事をとることにした。
神様の言葉を聞いた、わたしたちは何も言えずに息をのんだ。
ルルミー様を監視していた人からは何も連絡はない。
ということは、監視の人にバレないように外に出たということだろうか。
でも、どうやって?
しばらくしてから、ノナが口を開く。
「姿を消したというのは、神様でも行方がわからないということでしょうか」
『そうです』
迷うことのない言葉に、動揺を隠せず、近くにいた聖女同士で顔を見合わせた。
神様がわからないということは、ピッキーたちが神様を裏切り、邪神側についた可能性が高い。
「ピッキーとルルミー様は別行動なのでしょうか。それとも一緒だと思われますか?」
『一緒ではないかと思っています』
もしかしてレッテムが言っていた、ピッキーの恋人はルルミー様だったとかするのかしら。
いや、違うわよね。
それなら、ピッキーの誘いを断るはず。
自らの命を絶ってまで、神様を選んだ人なんだもの。
そう簡単に考えが変わることはないでしょう。
「わたしたちと敵対するつもりなのでしょうか」
『ピッキーやルルミーは敵対するつもりはないでしょう。何をしようとしているかは見当がつきますので』
わたしの質問に神様はそう答えてくれた。
その答えに頷いたあと、また質問する。
「ピッキーがそんなことをしたのは、わたしが原因なのでしょうか」
『……結界のことはあなたのことが関係しているかもしれません。ですが、あなたが悪いわけではありません。ピッキーが勝手に考えて動いたのです』
ピッキーが結界をわざと破ったのは、エレーナ様の責任にして、わたしをノーンコル王国の聖女に戻すためだったのではないかと考えられている。
結界が破られたエレーナ様はわたしよりも駄目な聖女だと思わせようとしたのだ。
ピッキーは、どうしてもディオン殿下とわたしを引き離したかった。
でも、それは神様によって阻止された。
たとえ、神様が手を出さなくても、聖女が替わることはなかったと思う。
ピッキーにはそれがわからなかったのか、それとも一縷の望みにかけたのかは、本人に聞いてみないとわからない。
「どうして、ルルミーと消えたのでしょうか」
ロマ様が尋ねると、少し間を空けてから神様が答える。
『ルルミーの闇の感情に引きずられたのではないかと思っています』
「ですが、精霊は聖女以外の人間と接触することは不可のはずです」
『そうですが、実際は罰則はないですし、不可能でもないのです』
精霊の姿は普通の人には見えないものだと思い込んでいた。
会うことができるという事実に驚いたあと、ロマ様が神様に尋ねる。
「私たちに何かできることはありますでしょうか」
『彼らが現れそうな場所は予想はつきます。邪神の力が活発になってきているので、私はそちらに意識を集中させるつもりです。あなたたちに迷惑をかけて申し訳ないのですが、ルルミーとピッキーのほうは協力してもらえないでしょうか』
「承知いたしました」
わたしたち聖女は、迷うことなく頷いた。
*****
神様からの話を聞き終え、祭壇で力を授かったあと、すぐに王城に向かった。
そして、急用だと無理を言ってソーンウェル王国の両陛下に謁見させてもらい、今回の事情を説明し、手を打ってもらうことになった。
その後、部屋に戻って改めて、一人で考える。
今回の件はわたしにも大きな責任がある。
ルルミー様にチャンスをあげたつもりが、逆に彼女を危険な目に遭わせてしまった。
そして、このままではもっと多くの人に迷惑をかけてしまう。
他の聖女や精霊たちはピッキーが悪いのであって、わたしが悪いわけではないと慰めてくれた。
ルルミー様は邪神に目を付けられていたから、遅かれ早かれ、彼女が魔物化する可能性は高かった。
だけど、魔物になることをあれだけ嫌がっていたのだから、改心してくれると思っていた。
「まだ、魔物になりきっていないのなら、何とか彼女を戻さなくちゃ」
完全に魔物化してしまえば、結界の中に入れば死んでしまうから邪神はそこまで彼女を闇に落としていないはずだから、浄化すればまだ間に合う。
ルルミー様が本当に彼女の住んでいる邸内にいないのか確認してもらっている間、わたしはこれから自分ができることを考えた。
そうしている内に、ルルミー様を見張っていた人たちから連絡が来て、やはり彼女が邸内にいないことを知らされた。
邪神が手助けして、ルルミー様を外に出したのだと思われる。
神様が言うには邪神はそう賢くない。
そして、わたしたち聖女や精霊が考えるに、ピッキーもルルミー様もそう賢くない。
だから、彼らがこう動くだろうと予想したわたしたちは、その場にいたエレーナ様に探りを入れてもらうことになった。
ルルミー様はエレーナ様のところに行こうとしていた。
でも、ピッキーと一緒に邪神側に付いたことにより、エレーナ様の所には行けないというよりか、浄化されてしまっては困るので邪神はエレーナ様のところに行かせないはずだ。
そうなった時、ルルミー様たちが近づくと考えられるのは、ノーンコル王国の王族だ。
ルルミー様はピッキーに邪神に手を貸せば、幸せになれるとでも言われたのかもしれない。
そして、邪神も自分に手を貸せば、最終的に魔物になってしまうことを伝えていないのでしょう。
考えたらわかることなのにね。
邪神の目的はきっと、ノーンコル王国の王族の悪意ではないかと思われる。
国王陛下を傀儡にしてしまえば、ノーンコル王国は邪神の思い通りになる。
ピッキーは傀儡になった国王陛下に、聖女をわたしに戻すように言うつもりなのかもしれない。
もし、本当にそうだったとしたら、ピッキーは正常じゃない。
その時、扉がノックされ、レイカの声が聞こえた。
「リーニ様、お出かけになる前に食事をとるようにと、ディオン殿下からのご命令です。そのような気分にならないかもしれませんが、これから聖なる力を使われるようですので、少しでも食事をして体力をつけたほうが良いとおっしゃられています」
「ありがとう。そうね。これから戦わなければいけないんだもの。しっかり力をつけないとね」
頷いて立ち上がると、これからの大仕事に向けて、食事をとることにした。
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