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18 悩む聖女
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エレーナ様はディオン殿下に手紙を送ってきたそうで、私のことだけを見てくれる人が見つかったなど、色々と詳しいことが書かれていたと教えてくれた。
ディオン殿下には、今まで迷惑をかけてしまったと謝ってもいたらしい。
「俺のことを諦めて前を向いてくれたのは良かったが、まさか、フワエル殿下を好きになるとは思わなかった」
「フワエル殿下は見た目はとても良いですし、なんの気もなく甘い言葉を吐ける方ですから、男性慣れしていないエレーナ様には、フワエル殿下が魅力的な男性に見えてしまっているのかもしれません」
「エレーナはもうノーンコル王国の聖女だから、こちら側からは干渉するようなことは言えない。でも、フワエル殿下はやめておいたほうが良いと伝えたほうが良いだろうか」
「今のエレーナ様は周りが見えなくなっている状態だと思います。本人自身が真実に気づかなければ目を覚ますことはできません。ですから、様子を見ておいたほうが良いかもしれません。嫉妬していると取られる可能性もありますし」
冷たい言い方かもしれないけれど、今のエレーナ様は周りに何を言われても、フワエル様を諦めることはしないと思う。
何か言えば、余計に燃え上がらせてしまうだけかもしれないので、今は放っておくのが一番なのではないかと思った。
誰を好きになるかは、その人の自由でもある。
エレーナ様がフワエル殿下を良い人に変えてくれる可能性もあるしね。
「そうだな。ではそっとしておくことにする。それから気になることがあるんだが」
「どのようなことでしょうか」
「ノーンコル王国の結界はどうなるんだろうか。エレーナがノーンコル王国の王城にいるということは、結界付近に聖女がいないことになる」
「それはそうですね。でも、結界は兵士の方たちが見張ってくださっていますので、異変があれば気が付いてくれると思います。今のところ、すぐに結界が破られるというようなことはないと思いますし、ソベル大将には今まで通りに戻ったと連絡を入れておきます」
魔物の数があれだけ少なくなったのなら、今まで通りに暮らしていても大丈夫なはずだし、結界が弱ってくれば、エレーナ様が結界のところまで行って、結界を修復すれば良い。
今日のエレーナ様は魔力がないから、何かあれば、わたしと交代してくれるはずだった聖女が助けに行ってくれるはずだ。
「ならいいが、エレーナはこれからどうするつもりだろうか」
「それは本人に聞いてみなければわかりませんね」
エレーナ様が聖女に戻ったのであれば、明日には小島で会うことが可能なはずだ。
話しかけてみようかしら。
……いや、やめておいたほうがいいわよね。
いくら、エレーナ様がフワエル様を好きになったといっても、わたしの顔を見たら憎いと思うかもしれない。
フワエル様はわたしにノーンコル王国の聖女に戻ってほしそうだったけれど、エレーナ様に頑張ってもらえば、もうあんな失礼なことを言われないで済むし、下手に波風を立てたくない。
小島で会ったら挨拶するだけにして、自分から話しかけるのはやめておこう。
向こうから話しかけてきたら応えるといった感じでいいわよね?
「ノーンコル王国で幸せになってくれれば良いんだがな」
「馬鹿なことを考えずに、真面目に聖女の役割を果たしているだけなら幸せになれると思います」
「でも、妻にはなれないんだぞ」
「……どういうことでしょうか」
フワエル様がエレーナ様を選ばなかったら意味がないということかしら。
はっきりとした理由がわからないので聞いてみると、ディオン殿下は答えてくれる。
「フワエル殿下はルルミーのような女性がタイプらしい。だから、結婚はルルミーとするかもしれないと言っていた。本当は君と結婚したいだなんて馬鹿なことも言っていたので、それは勝手にお断りさせてもらったんだが良かったかな」
「断っていただきありがとうございます。今更、フワエル殿下とどうこうなるつもりはありませんから」
頭を下げてから苦笑すると、ディオン殿下が安堵したような表情を浮かべた。
「なら良かった」
「ところで、フワエル殿下は本当にルルミー様と結婚するつもりなのでしょうか」
「……気になるのか?」
「少しだけ。ルルミー様はお金が好きそうですから、フワエル殿下と結婚したがりそうですね」
「エレーナのためにルルミーをノーンコル王国に送ってやろうかと思ったが、やめておいたほうが良いだろうか」
「ルルミー様とエレーナ様の双方が望むようでしたら良いとは思いますが……」
ルルミー様とエレーナ様がフワエル殿下を取り合って修羅場になるだなんて、友達同士をわざと仲が悪くさせるようなことをするのは良くない。
「2人には確認しておくようにする。それから、ルルミーが君に会いたがっているんだが、君は会いたいか?」
「ルルミー様がわたしに会いたがっているんですか?」
「ああ。手を治してほしいと言っていたな」
「手を治す? 怪我をされたんでしょうか」
「大怪我をしているようだ。痛くて眠れないらしい」
そんなことを聞いてしまうと、助けざるを得なくなる。
でも、ルルミー様に甘い顔はしたくない。
「命に関わるものではないようですし、自然治癒を待てば良いかと思いますし、精霊につけられた傷でしたら、わたしにもどうしようもできません」
「わかった。そう伝えておこう」
ディオン殿下は頷くと「また何かあれば連絡する」と言って帰っていった。
わざわざ、会いに来て伝えてくれるなんて律儀な人なのだと思っていると、メイドが「ディオン殿下は少しでもリーニ様に会おうと必死ですわね」と言ってきた。
本当にそうなのかはわからない。
というか、それだけではないと思う。
あまりにも色々なことが起こってるんだもの。
エレーナ様のことが上手くいけば、わたしもディオン殿下のことを前向きに考えても良いのかしら。
そう思うと恥ずかしくなって、気持ちを切り替える。
わたしは聖女なんだから、聖女のやるべきことをしないといけないわ。
今日はソーンウェル王国の結界の確認と、明日は神様に確認した後に、ソーンウェル王国とノーンコル王国の間の結界を元に戻しに行くことにした。
そして次の日、わたしはピッキーの背中に乗ったエレーナ様と初めて会うことになった。
ディオン殿下には、今まで迷惑をかけてしまったと謝ってもいたらしい。
「俺のことを諦めて前を向いてくれたのは良かったが、まさか、フワエル殿下を好きになるとは思わなかった」
「フワエル殿下は見た目はとても良いですし、なんの気もなく甘い言葉を吐ける方ですから、男性慣れしていないエレーナ様には、フワエル殿下が魅力的な男性に見えてしまっているのかもしれません」
「エレーナはもうノーンコル王国の聖女だから、こちら側からは干渉するようなことは言えない。でも、フワエル殿下はやめておいたほうが良いと伝えたほうが良いだろうか」
「今のエレーナ様は周りが見えなくなっている状態だと思います。本人自身が真実に気づかなければ目を覚ますことはできません。ですから、様子を見ておいたほうが良いかもしれません。嫉妬していると取られる可能性もありますし」
冷たい言い方かもしれないけれど、今のエレーナ様は周りに何を言われても、フワエル様を諦めることはしないと思う。
何か言えば、余計に燃え上がらせてしまうだけかもしれないので、今は放っておくのが一番なのではないかと思った。
誰を好きになるかは、その人の自由でもある。
エレーナ様がフワエル殿下を良い人に変えてくれる可能性もあるしね。
「そうだな。ではそっとしておくことにする。それから気になることがあるんだが」
「どのようなことでしょうか」
「ノーンコル王国の結界はどうなるんだろうか。エレーナがノーンコル王国の王城にいるということは、結界付近に聖女がいないことになる」
「それはそうですね。でも、結界は兵士の方たちが見張ってくださっていますので、異変があれば気が付いてくれると思います。今のところ、すぐに結界が破られるというようなことはないと思いますし、ソベル大将には今まで通りに戻ったと連絡を入れておきます」
魔物の数があれだけ少なくなったのなら、今まで通りに暮らしていても大丈夫なはずだし、結界が弱ってくれば、エレーナ様が結界のところまで行って、結界を修復すれば良い。
今日のエレーナ様は魔力がないから、何かあれば、わたしと交代してくれるはずだった聖女が助けに行ってくれるはずだ。
「ならいいが、エレーナはこれからどうするつもりだろうか」
「それは本人に聞いてみなければわかりませんね」
エレーナ様が聖女に戻ったのであれば、明日には小島で会うことが可能なはずだ。
話しかけてみようかしら。
……いや、やめておいたほうがいいわよね。
いくら、エレーナ様がフワエル様を好きになったといっても、わたしの顔を見たら憎いと思うかもしれない。
フワエル様はわたしにノーンコル王国の聖女に戻ってほしそうだったけれど、エレーナ様に頑張ってもらえば、もうあんな失礼なことを言われないで済むし、下手に波風を立てたくない。
小島で会ったら挨拶するだけにして、自分から話しかけるのはやめておこう。
向こうから話しかけてきたら応えるといった感じでいいわよね?
「ノーンコル王国で幸せになってくれれば良いんだがな」
「馬鹿なことを考えずに、真面目に聖女の役割を果たしているだけなら幸せになれると思います」
「でも、妻にはなれないんだぞ」
「……どういうことでしょうか」
フワエル様がエレーナ様を選ばなかったら意味がないということかしら。
はっきりとした理由がわからないので聞いてみると、ディオン殿下は答えてくれる。
「フワエル殿下はルルミーのような女性がタイプらしい。だから、結婚はルルミーとするかもしれないと言っていた。本当は君と結婚したいだなんて馬鹿なことも言っていたので、それは勝手にお断りさせてもらったんだが良かったかな」
「断っていただきありがとうございます。今更、フワエル殿下とどうこうなるつもりはありませんから」
頭を下げてから苦笑すると、ディオン殿下が安堵したような表情を浮かべた。
「なら良かった」
「ところで、フワエル殿下は本当にルルミー様と結婚するつもりなのでしょうか」
「……気になるのか?」
「少しだけ。ルルミー様はお金が好きそうですから、フワエル殿下と結婚したがりそうですね」
「エレーナのためにルルミーをノーンコル王国に送ってやろうかと思ったが、やめておいたほうが良いだろうか」
「ルルミー様とエレーナ様の双方が望むようでしたら良いとは思いますが……」
ルルミー様とエレーナ様がフワエル殿下を取り合って修羅場になるだなんて、友達同士をわざと仲が悪くさせるようなことをするのは良くない。
「2人には確認しておくようにする。それから、ルルミーが君に会いたがっているんだが、君は会いたいか?」
「ルルミー様がわたしに会いたがっているんですか?」
「ああ。手を治してほしいと言っていたな」
「手を治す? 怪我をされたんでしょうか」
「大怪我をしているようだ。痛くて眠れないらしい」
そんなことを聞いてしまうと、助けざるを得なくなる。
でも、ルルミー様に甘い顔はしたくない。
「命に関わるものではないようですし、自然治癒を待てば良いかと思いますし、精霊につけられた傷でしたら、わたしにもどうしようもできません」
「わかった。そう伝えておこう」
ディオン殿下は頷くと「また何かあれば連絡する」と言って帰っていった。
わざわざ、会いに来て伝えてくれるなんて律儀な人なのだと思っていると、メイドが「ディオン殿下は少しでもリーニ様に会おうと必死ですわね」と言ってきた。
本当にそうなのかはわからない。
というか、それだけではないと思う。
あまりにも色々なことが起こってるんだもの。
エレーナ様のことが上手くいけば、わたしもディオン殿下のことを前向きに考えても良いのかしら。
そう思うと恥ずかしくなって、気持ちを切り替える。
わたしは聖女なんだから、聖女のやるべきことをしないといけないわ。
今日はソーンウェル王国の結界の確認と、明日は神様に確認した後に、ソーンウェル王国とノーンコル王国の間の結界を元に戻しに行くことにした。
そして次の日、わたしはピッキーの背中に乗ったエレーナ様と初めて会うことになった。
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