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17.5 恋した聖女(エレーナ視点)

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 私、エレーナ・ボレルコットは自分で言うのも何ですが、とても可哀想な境遇の人間です。
 大して可愛くもなく、性格も大人しいため、中々、お友達ができませんでした。

 そんな私は昔から聖女に憧れていました。
 聖女になれば、みんなの人気者になれるのかと思っていたからです。
 だから、ずっと神様に祈っていたんです。
 
 聖女になれた時は本当に嬉しかったです。
 これで友達ができると思いました。

 でも、周りは遠巻きに私を見るだけで友達にはなってくれませんでした。

 どうしてなんでしょう。
 私から声をかけるのは無理です。

 だから、小さい頃から知っているルルミーと一緒にいることにしました。

 ルルミーのことは言葉遣いは悪いけれど、同じ年のお姉さんみたいに思っていました。

 いつしか、ルルミーは私に辛く当たるようになって、どうしたら良いかわからなくなっていた私を助けてくれたのはディオン殿下でした。

 ディオン殿下は私に聞いてきました。

「君はこのままで本当に良いのか」
「良いんです。それにディオン殿下は私が聖女だから優しくしてくれるんでしょう? そんな優しさはいりません」
「聖女だからじゃない。人として心配しているんだ」

 そんなことを言ってくれるのは、両親以外にディオン殿下しかいませんでした。

 それから私はディオン殿下に夢中になりました。

 ディオン殿下を見つめている内に、私は気付きます。

 ディオン殿下には好きな人がいるということを。
 それがリーニ様だったのです。

 リーニ様には婚約者がいらっしゃいましたから、ディオン殿下の片思いだとわかりました。

 ディオン殿下は思いを否定しておられるけれど、絶対に好きだと感じました。
 それは、ディオン殿下がリーニ様のことを語る表情は恋をしている人間のものに見えたからです。
 リーニ様は気づいていないのですが、実は、私とリーニ様は小島で何度かすれ違っています。

 あまりにも足が遅くて、こんな方がディオン殿下の好きな人だなんて信じたくなくて、見ることも嫌になり、彼女を避けるようになりました。
 私は朝早くに来て、リーニ様に気づかれない内に帰りました。
 ピッキーにお願いして、私の名前はルルミーだと思い込ませてもらいました。

「どうして、そんなことするんだよ」
「私の好きな人がリーニ様が好きなんですって。私がその人の横恋慕を邪魔してあげるから手伝ってくれないかしら」
「……わかった」

 ピッキーは自分も片思いをしているから、これ以上、ライバルが増えるのは嫌みたいでした。

 リーニ様はその頃、聖女の友達もいませんでしたから、私のことはルルミーという名前で覚えていたのです。
 すれ違っても存在感を消していましたし、リーニ様は走ることで精一杯で、私の顔を見たことのない状況が続いていたのです。

 ディオン殿下が諦める様子が見えないので、私はリーニ様への嫌がらせを実行しました。
 ルルミーがそうしろと言ったからです。

 あの時の私はルルミーしか頼る人がいませんでした。
 だから、しょうがないと思います。
 レッテムから人の不幸を願ってはいけないと言われましたが、ルルミーは間違っていないと言うし、私もやめるつもりはありませんでした。

 何度か注意を受けましたが、あまりにもうるさいので、レッテムを蹴ってしまった時に、私は足が不自由になったのです。

 ルルミーに騙されていると薄々気がつき始めていた私でしたが、神様から代理人の話をされた時に、ルルミーに相談しました。

 リーニ様を闇落ちさせたくて、ルルミーに頼んだのです。

 でも、リーニ様は思い通りにはなりませんでした。

 そうしている内に、ルルミーが闇落ちするのではないかという話になり、私はルルミーを代理聖女の任から解いたのです。

 レッテムから反省したかと聞かれましたが、そんなわけないですよね。

 か弱いふりをして、同情を買っているリーニ様が許せないです。
 しかも、ディオン殿下と仲良くなっているだなんて!

 あんなに酷い目に遭ったのに、どうして、リーニ様は闇落ちしないのでしょうか。
 
 あまり、ワガママを言うとディオン殿下に嫌われてしまいます。
 とにかく聖女に戻り、自分のポジションを確保してから、新たに作戦を練り直すことにしました。

 そして、初めてノーンコル王国に入国しました。

 私を出迎えてくれたのは、ディオン殿下よりも見た目が素敵な王子様でした。

 王子様は私に言いました。

「僕たちには君しかいないんだ。これからよろしくね」
「は……、はい」

 とっても素敵なお方です。

 神様、本当にありがとうございます。
 私の王子様はディオン殿下ではないと教えてくださったのですね。



神様がリーニに真実を伝えていないのは、リーニにとって悪いことではなかったからです。
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