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11.5 自信満々な聖女代理(ルルミー視点)
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ソーンウェル王国では小言ばかり言われた。
聖女なんだからあれをしてはいけない、これをしてはいけないだなんて叱られてばかりだった。
特別な人間だから、好き勝手しても良いはずなのに許してもらえなかった。
周りは礼儀だ風習だとかを気にする馬鹿ばっかりだったのよね。
エレーナがわたしを聖女代理にしてくれた時は、もっと楽しめると思っていた。
だから、エレーナからの依頼を引き受けた。
好きなものを買ったり、好きな食べ物を食べたりして、お金のことを気にせずに生きていけると思った。
どんくさいあのクズ女をいじめることは楽しかったし、最初はあいつでストレス発散をしていた。
でも、いつしか純粋に楽しめなくなった。
やり過ぎると、あたしが痛い目に遭わされるから程々にしないといけないことを思い出したからだ。
精霊に傷つけられたら、聖女の治癒魔法でも治せないだなんて酷くない?
神様ってどうして、そんなに偉そうなのかしら。
あの小島にある木を燃やしたら、神様は死ぬのかしら。
そうなると、聖女の力は消える?
別に魔力をもらえなくたって、聖なる力は使えるわよね?
ああ、でも、やっぱりやめておこうっと!
魔物に襲われて殺されるだなんて、絶対に嫌だもん。
偉そうといえば、ノーンコル王国の王族は特に偉そうにしてるわね。
国王陛下が、あのクズ女の父親を斬った時には、正直言うと、本当に驚いた。
助けてあげようかと思ったけど、やっぱりやめた。
あの時すぐに治癒魔法をかけなかったのは、あのクズ女への嫌がらせのつもりだった。
怖がって力を使えないふりをして、あのまま死んでいくのを待とうと思った。
そうしたら、父が死んだと聞いたクズ女が悲しむと思ったから。
だから、血なんて怖い!
ってか弱いふりをしたのに、フワエル殿下からは助けるようにお願いされたし、国王陛下から命令されたから逆らえなかったのよね。
クズ女の父親は今は元気みたいだけど、恐怖で部屋にひきこもっていると聞いた。
ほんとダサい。
「ルルミー様、お茶の用意ができました」
「ありがとう。そこに置いておいてくださる?」
「承知いたしました」
頭を下げて部屋から出て行こうとするメイドを引き止める。
「ちょっと待って。一人でいるのが怖いの。申し訳ないけれど、話し相手になってくれないかしら」
「私などでよろしければ、いくらでもお付き合いさせていただきます」
メイドは笑顔で頷いた。
あたしに付いてくれたメイドはスタイルも悪くないし、顔も可愛いほうだった。
不細工なメイドじゃなくて本当に良かったわ。
だって、気分が優れない時にブスの顔なんて見たくないじゃない?
ソーンウェル王国にいた時は言いたいことを言っていたけど、ノーンコル王国に来てからは、可愛くて大人しい女性というイメージに変えているから「もっと顔の可愛い子に変えて!」なんて言えないのよね。
あと、できれば真面目すぎない奴がいいわ。
あれこれ文句を言われるのは鬱陶しくてしょうがないのよ。
「昨日は大変だったとお聞きしました」
「そうなのよ。本当に国王陛下は怖かったわ。まさか、いきなりラーラル男爵を斬りつけるだなんて思ってもいなかったんです」
「そんな中、勇気を出して治癒魔法を使われたのですよね」
「まあね」
あの時、フワエル殿下のお願いに応じなかったあたしの元に国王陛下はやって来た。
そして、あたしの髪の毛を掴むと、壇の下まで引きずりおろして、無理矢理、治癒魔法を使わせた。
今となっては良かったわ。
あのクズ女は家族と仲が悪いみたいだから、父親が死んでも、あのクズ女にとってはノーダメージだったのよね。
なら、生かしておいてあげたほうが良い。
ラーラル男爵を助けたら、あの家の息子たちは、あたしを天使でも見るような恍惚の目で見ていたわ。
ああいう目を見るのは慣れているはずなのに、やっぱり気持ちが良い。
ソーンウェル王国では、国王陛下もディオン殿下も、その周りにいた男たちも、あたしのことを下に見ていた。
でも、この国では違う。
あたしは女神のようなものなのよ。
あたしの価値を正しく判断してくれる場所がやっと見つかった。
「国王陛下もラーラル男爵もルルミー様に感謝しておられると思います。瀕死の方の傷を治すだなんて、聖女様にしかできないことですから」
尊敬の眼差しで、あたしを見つめてくるメイドに微笑む。
「そんなことないわ。最初は怖くて何もできなかったんですもの」
「でも、最終的には治して差し上げたのでしょう? やはり、ルルミー様は偉大な聖女様です」
「やだ。褒めたって何も出ないですよ?」
「ルルミー様がノーンコルの聖女になってくださっているだけで十分でございます」
ソーンウェル王国でも、こんな風に言ってくれる人はたくさんいた。
だけど、なぜかしら。
今のほうが気分が良い。
そう思った瞬間、足に激痛が走った。
ポーラに噛まれたところだ。
こんなに痛いのに警告だって言うんだから、実際はどんなことをされるのかしら。
そうだわ。
あのクズ女を嵌めて、精霊に罰を与えて貰えば良いのよ。
もし、あたしのせいだってわかっても、あの小島に行かなければ、痛い思いをしなくて良い。
魔力をもらえなくても、いざとなったら助けてくれるでしょう。
だって相手は神様なんだから。
「……ルルミー様、どうかされましたか?」
「何でもないわ。楽しいことを考えていたのよ」
「それなら良かったですわ」
ニコニコと微笑むメイドに、話を聞いてくれたお礼としてチップを渡すと、恐縮しながらも受け取った。
「リーニ様の時はこのようなことはありませんでした。ありがとうございます!」
メイドは上機嫌で部屋から出て行った。
褒められたことに満足して、一眠りしようかと思った時、部屋の扉が叩かれた。
あたしが返事をする前に、扉の向こうから焦った声が聞こえてくる。
「ルルミー様! 国王陛下よりご命令です! 南のほうで魔物が異常に集まっているので、結界を確認するようにとのことです!」
「……わかりました!」
あたしは焦った声を出して返事をした。
せっかく寝ようと思ったのにしょうがないわね。
エレーナの代理とか言われてるけど関係ないわ。
聖なる力が使える、あたしが聖女なのよ。
あたしの力がどんなに凄いか、ノーンコル王国の人たちに見せてあげるわ。
ソーンウェル王国は、あたしを手放したことを後悔するでしょうね。
聖女なんだからあれをしてはいけない、これをしてはいけないだなんて叱られてばかりだった。
特別な人間だから、好き勝手しても良いはずなのに許してもらえなかった。
周りは礼儀だ風習だとかを気にする馬鹿ばっかりだったのよね。
エレーナがわたしを聖女代理にしてくれた時は、もっと楽しめると思っていた。
だから、エレーナからの依頼を引き受けた。
好きなものを買ったり、好きな食べ物を食べたりして、お金のことを気にせずに生きていけると思った。
どんくさいあのクズ女をいじめることは楽しかったし、最初はあいつでストレス発散をしていた。
でも、いつしか純粋に楽しめなくなった。
やり過ぎると、あたしが痛い目に遭わされるから程々にしないといけないことを思い出したからだ。
精霊に傷つけられたら、聖女の治癒魔法でも治せないだなんて酷くない?
神様ってどうして、そんなに偉そうなのかしら。
あの小島にある木を燃やしたら、神様は死ぬのかしら。
そうなると、聖女の力は消える?
別に魔力をもらえなくたって、聖なる力は使えるわよね?
ああ、でも、やっぱりやめておこうっと!
魔物に襲われて殺されるだなんて、絶対に嫌だもん。
偉そうといえば、ノーンコル王国の王族は特に偉そうにしてるわね。
国王陛下が、あのクズ女の父親を斬った時には、正直言うと、本当に驚いた。
助けてあげようかと思ったけど、やっぱりやめた。
あの時すぐに治癒魔法をかけなかったのは、あのクズ女への嫌がらせのつもりだった。
怖がって力を使えないふりをして、あのまま死んでいくのを待とうと思った。
そうしたら、父が死んだと聞いたクズ女が悲しむと思ったから。
だから、血なんて怖い!
ってか弱いふりをしたのに、フワエル殿下からは助けるようにお願いされたし、国王陛下から命令されたから逆らえなかったのよね。
クズ女の父親は今は元気みたいだけど、恐怖で部屋にひきこもっていると聞いた。
ほんとダサい。
「ルルミー様、お茶の用意ができました」
「ありがとう。そこに置いておいてくださる?」
「承知いたしました」
頭を下げて部屋から出て行こうとするメイドを引き止める。
「ちょっと待って。一人でいるのが怖いの。申し訳ないけれど、話し相手になってくれないかしら」
「私などでよろしければ、いくらでもお付き合いさせていただきます」
メイドは笑顔で頷いた。
あたしに付いてくれたメイドはスタイルも悪くないし、顔も可愛いほうだった。
不細工なメイドじゃなくて本当に良かったわ。
だって、気分が優れない時にブスの顔なんて見たくないじゃない?
ソーンウェル王国にいた時は言いたいことを言っていたけど、ノーンコル王国に来てからは、可愛くて大人しい女性というイメージに変えているから「もっと顔の可愛い子に変えて!」なんて言えないのよね。
あと、できれば真面目すぎない奴がいいわ。
あれこれ文句を言われるのは鬱陶しくてしょうがないのよ。
「昨日は大変だったとお聞きしました」
「そうなのよ。本当に国王陛下は怖かったわ。まさか、いきなりラーラル男爵を斬りつけるだなんて思ってもいなかったんです」
「そんな中、勇気を出して治癒魔法を使われたのですよね」
「まあね」
あの時、フワエル殿下のお願いに応じなかったあたしの元に国王陛下はやって来た。
そして、あたしの髪の毛を掴むと、壇の下まで引きずりおろして、無理矢理、治癒魔法を使わせた。
今となっては良かったわ。
あのクズ女は家族と仲が悪いみたいだから、父親が死んでも、あのクズ女にとってはノーダメージだったのよね。
なら、生かしておいてあげたほうが良い。
ラーラル男爵を助けたら、あの家の息子たちは、あたしを天使でも見るような恍惚の目で見ていたわ。
ああいう目を見るのは慣れているはずなのに、やっぱり気持ちが良い。
ソーンウェル王国では、国王陛下もディオン殿下も、その周りにいた男たちも、あたしのことを下に見ていた。
でも、この国では違う。
あたしは女神のようなものなのよ。
あたしの価値を正しく判断してくれる場所がやっと見つかった。
「国王陛下もラーラル男爵もルルミー様に感謝しておられると思います。瀕死の方の傷を治すだなんて、聖女様にしかできないことですから」
尊敬の眼差しで、あたしを見つめてくるメイドに微笑む。
「そんなことないわ。最初は怖くて何もできなかったんですもの」
「でも、最終的には治して差し上げたのでしょう? やはり、ルルミー様は偉大な聖女様です」
「やだ。褒めたって何も出ないですよ?」
「ルルミー様がノーンコルの聖女になってくださっているだけで十分でございます」
ソーンウェル王国でも、こんな風に言ってくれる人はたくさんいた。
だけど、なぜかしら。
今のほうが気分が良い。
そう思った瞬間、足に激痛が走った。
ポーラに噛まれたところだ。
こんなに痛いのに警告だって言うんだから、実際はどんなことをされるのかしら。
そうだわ。
あのクズ女を嵌めて、精霊に罰を与えて貰えば良いのよ。
もし、あたしのせいだってわかっても、あの小島に行かなければ、痛い思いをしなくて良い。
魔力をもらえなくても、いざとなったら助けてくれるでしょう。
だって相手は神様なんだから。
「……ルルミー様、どうかされましたか?」
「何でもないわ。楽しいことを考えていたのよ」
「それなら良かったですわ」
ニコニコと微笑むメイドに、話を聞いてくれたお礼としてチップを渡すと、恐縮しながらも受け取った。
「リーニ様の時はこのようなことはありませんでした。ありがとうございます!」
メイドは上機嫌で部屋から出て行った。
褒められたことに満足して、一眠りしようかと思った時、部屋の扉が叩かれた。
あたしが返事をする前に、扉の向こうから焦った声が聞こえてくる。
「ルルミー様! 国王陛下よりご命令です! 南のほうで魔物が異常に集まっているので、結界を確認するようにとのことです!」
「……わかりました!」
あたしは焦った声を出して返事をした。
せっかく寝ようと思ったのにしょうがないわね。
エレーナの代理とか言われてるけど関係ないわ。
聖なる力が使える、あたしが聖女なのよ。
あたしの力がどんなに凄いか、ノーンコル王国の人たちに見せてあげるわ。
ソーンウェル王国は、あたしを手放したことを後悔するでしょうね。
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