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29 不審者よ!
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ドアマンが見当たらないので、メイドが扉を開けようとすると、メルちゃんがなぜか急に焦りはじめた。
何かに焦っているような、とても落ち着かない様子で、早く扉を開けてと訴えるようにメイドと扉を交互に見つめてくる。
メイドが扉を開けてあげると、メルちゃんが勢いよく外へ飛び出した。
「メルちゃん、駄目よ! どうしたの!?」
勝手に飛び出していくような子じゃないから焦って声を上げた。
メイドと一緒にメルちゃんを追いかけて止めようとしたけれど、視界に入ってきた光景に驚いて言葉を失う。
手伝いに来てくれている庭師らしき人たちが、なぜか玄関近くに集まっていた。
そして、メルちゃんがその人たちから守るようにハヤテくんの前に立って唸っていた。
一体、どういうことなの?
今日はロード様がでかけているから、警備が薄くなっていることはわかっている。
でも、玄関付近に騎士が一人もいないだなんておかしい。
慌てて私は、屋敷の内部にいる騎士に向かって叫んだ。
「誰か来て! 不審者よ!」
私の声を聞きつけた騎士たちが駆け寄ってくると、男性たちは散らばって逃げていく。
あまりにも不用心な状況に、思わず声を荒らげる。
「敷地内に入れたのは庭師だと名乗ったからなのでしょうけど、敷地内で好き勝手させるのはおかしいでしょう! 庭園内や邸の出入り口を守る騎士は何をしているの!?」
今日の責任者らしい男性が深々と頭を下げる。
「申し訳ございません! この時間帯は休憩中の者と庭園の見回りとで分かれています!」
「ロード様が騎士を連れて行っているから、いつもよりも少ないのはわかるけど、もうちょっとどうにかならなかったの? 前々からわかっていたことでしょう」
こんな甘い警備体制になるなんて、平和ボケし過ぎだわ。
いつもと違って部外者が多く来ているのだから、もっと気を付けなければいけなかったのに。
そんなことをロード様が指示しないとわからないのかしら。
納得いかなくてイライラしていると、キャンッという鳴き声が聞こえて、ハヤテくんが私のほうに走ってくるのが見えた。
「ハヤテくん!」
しゃがんで手を広げると、ハヤテくんは私に飛びついてくる。
「怖かったのね。ごめんね」
声をかけると、ウーッと鳴きながらハヤテくんは私に顔を押し付けてきた。
まるで、どうしてもっと早く来てくれなかったのと言われている気がした。
「本当にごめんね」
抱っこして頭を撫でると、くぅんと鳴いて、私の顔を舐めてくれた。
許してくれたのかもしれない。
暴挙を働いた庭師たちは、メルちゃんと騎士たちに捕まえられ、ロード様が帰ってくるまで、地下牢に閉じ込めておくことになった。
何かに焦っているような、とても落ち着かない様子で、早く扉を開けてと訴えるようにメイドと扉を交互に見つめてくる。
メイドが扉を開けてあげると、メルちゃんが勢いよく外へ飛び出した。
「メルちゃん、駄目よ! どうしたの!?」
勝手に飛び出していくような子じゃないから焦って声を上げた。
メイドと一緒にメルちゃんを追いかけて止めようとしたけれど、視界に入ってきた光景に驚いて言葉を失う。
手伝いに来てくれている庭師らしき人たちが、なぜか玄関近くに集まっていた。
そして、メルちゃんがその人たちから守るようにハヤテくんの前に立って唸っていた。
一体、どういうことなの?
今日はロード様がでかけているから、警備が薄くなっていることはわかっている。
でも、玄関付近に騎士が一人もいないだなんておかしい。
慌てて私は、屋敷の内部にいる騎士に向かって叫んだ。
「誰か来て! 不審者よ!」
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あまりにも不用心な状況に、思わず声を荒らげる。
「敷地内に入れたのは庭師だと名乗ったからなのでしょうけど、敷地内で好き勝手させるのはおかしいでしょう! 庭園内や邸の出入り口を守る騎士は何をしているの!?」
今日の責任者らしい男性が深々と頭を下げる。
「申し訳ございません! この時間帯は休憩中の者と庭園の見回りとで分かれています!」
「ロード様が騎士を連れて行っているから、いつもよりも少ないのはわかるけど、もうちょっとどうにかならなかったの? 前々からわかっていたことでしょう」
こんな甘い警備体制になるなんて、平和ボケし過ぎだわ。
いつもと違って部外者が多く来ているのだから、もっと気を付けなければいけなかったのに。
そんなことをロード様が指示しないとわからないのかしら。
納得いかなくてイライラしていると、キャンッという鳴き声が聞こえて、ハヤテくんが私のほうに走ってくるのが見えた。
「ハヤテくん!」
しゃがんで手を広げると、ハヤテくんは私に飛びついてくる。
「怖かったのね。ごめんね」
声をかけると、ウーッと鳴きながらハヤテくんは私に顔を押し付けてきた。
まるで、どうしてもっと早く来てくれなかったのと言われている気がした。
「本当にごめんね」
抱っこして頭を撫でると、くぅんと鳴いて、私の顔を舐めてくれた。
許してくれたのかもしれない。
暴挙を働いた庭師たちは、メルちゃんと騎士たちに捕まえられ、ロード様が帰ってくるまで、地下牢に閉じ込めておくことになった。
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