2 / 52
1 たまに思い出すくらいにしますね
しおりを挟む
精神的に疲れてはいるけれど、後回しにする話でもないので、屋敷に帰ってすぐに伯父様のところへ、先程のことを報告しに向かった。
「ただいま戻りました」
「おかえり。おや、疲れ切った顔をしているな」
「……ええ、まあ」
「レニスも王城に行っているらしいが会わなかったか?」
「会いました。そのことで伯父様に御報告したいことがあります」
大きく息を吐くと、伯父様は眉根を寄せた。
お姉様のことが大好きな伯父様は話を聞いても、最初は信じてくれなかった。
ちなみにお姉様は伯父様のことをお父様と呼んでいるけれど、私は伯父様のままだ。
公の場ではお父様と呼ぶようにしているけれど、伯父様がお父様と呼んでほしいのは、お姉様だけだったから。
私も別に伯父様を無理にお父様と呼ぶ気にもならなかったから、それはそれで良かった。
伯父様に具体的に国王陛下とジーギス殿下がお姉様を取り合っていたという話をすると頭を抱える。
「お前はそんな嘘をつくような子じゃないしな」
「本当にあった出来事です。疑うようでしたら、王城まで事実を確認しに行っていただいたら良いかと思います」
「そうだな。そうしよう」
伯父様はそう言うと、慌てて部屋から出て行った。
さっきの話は、その時に思いついたことだったのかしら。
そうだとしたら、本当に困った人たちだわ。
伯父様もお姉様に甘すぎるのよね。
貴族の全てがこんな人たちではないけれど、お姉様のような女性がタイプ、もしくは嫌いではない人は呆れてしまうくらいに、お姉様馬鹿になっていく人が多い。
ここまでお姉様に引っかかる人が多いと、お姉様が賢ければ敵国に潜入させて、ハニートラップでもさせたら良いんじゃないかと思ってしまう。
だって、ここまで男性に好かれているのなら、簡単に相手から情報を引き出せそうに思えてしまうんだもの。
……なんて、自分が投げやりな気持ちになってしまっていることはわかっている。
それくらい、ありえないことが起こったのだ。
やってもいないことで婚約破棄を言い渡され、その上、会ったこともない年下の公爵閣下のところに嫁入りしないといけなくなったんだから、多少の現実逃避は許していただきたい。
ロード様がジーギス殿下よりもまともな人であることを祈るしかないわ。
父親である国王陛下があんな人なのだから、除籍されたロード様がどんな人なのか、まったく見当がつかない。
新しい婚約者になったロード様に送る手紙を書いている時にお姉様が伯父様と一緒に邸に帰ってきた。
その後、自分の部屋に真っ直ぐ帰ればいいものを、なぜか、お姉様は私の部屋へとやって来た。
この家のメイドはお姉様のことを好んでいない人が多い。
でも、お姉様は当主のお気に入りでもあり、書類上は当主の娘でもある。
だから、当たり前のことだけれど私情は挟まずに、お姉様の世話をしてくれている。
この家のメイドたちは伯父様たちとは違い、昔の私と同じように駄目なものは駄目だと、お姉様を叱ってくれるし、全面的な味方にはならない。
だから今回も私の部屋の前に立って、お姉様を私の部屋に入れないようにしてくれた。
「そこを退いてくれない? 今頃ミレニアは泣いていると思うの。姉なんだから慰めてあげないといけないのよ」
「ミレニア様は強いお方です。レニス様の助けはなくても立ち直ることができるかと思います」
お姉様にメイドがそう答えると、お姉様の泣き声が聞こえはじめた。
「うっ、うっ! そ、そんなっ……いじ、わる、しつゃ駄目よぉっ! そんなにっ、ミレニアが嫌いなのっ!? そんな風にっ、見捨てたりなんか、したら、……っ、そんなっ……のっ、可哀想じゃない!」
お姉様は私がショックで部屋に閉じこもっていると思い込んでいるみたいだった。
しかも、メイドが私に意地悪をして、お姉様が私を慰めることを拒んでいると考えているようだった。
どうせ、思い込んだら何を言っても人の話は聞かない人なのだから、相手はせずに放っておくことにする。
メイドには申し訳ないけれど、しばらくお姉様の相手をしてもらい、ロード様宛の手紙を書き進めていると、お姉様は泣き疲れたのか、自分の部屋に戻っていったようだった。
伯父様はお姉様を可愛がっているけれど、私のことを嫌っているわけではない。
だから、無理矢理、私にお姉様と会ってやれと言ってこないことは本当に助かっている。
この年になるまで、私を面倒見てくれた伯父様には感謝しているし、ここを経つ前に恩返しとして出来ることはやっていこうと思っている。
ロード様への手紙を書き終えると、先に電報を打った。
婚約についての話と、詳しい話は手紙を送ると連絡すると、すぐにロード様から電報で自分の家族の非礼に対する侘びの言葉が返ってきた。
そして2日後、早馬でロード様から手紙が届いた。
国王陛下の代わりに手紙を送ってくれた、私への感謝と謝罪の言葉と私が良いというのであれば、いつでも私を受け入れられると書かれていた。
気になったのは犬は好きかと書かれていたことだ。
嫌いや苦手でないことを祈る、とも書いてあったので、どういうことか、とても気になった。
実家では犬を飼っていたけれど、こちらの家に来てからは動物を飼っていない。
もしかしたら、ロード様の邸には犬がいるのかしら?
そう思うと、心が踊った。
なぜなら、動物全般が好きだけれど、特に犬が好きだからだ。
3日後に出発して2日でそちらに行かせていただけないかということと、犬も大好きだと電報を送ると『それなら良かった。使用人たちも心待ちにしている。迎えの馬車を送るようにするが、気を付けて来てくれ』と連絡があった。
伯父様に3日後に出発するという連絡をすると、国王陛下の側近のほうから近い内に書類が送られてくるので、それを書いてから出ていくようにと言われてしまった。
犬に触れられるかもしれないという嬉しさで、大事なことを忘れてしまっていた自分が嫌になった。
次の日には婚約の書類が送られてきたので、私は契約書をじっくり読んでから、その書類にサインをした。
書類を持ってきてくれた人に聞いたところ、王太子殿下と王妃陛下には、宰相やロード様が連絡を入れてくれたようで、お2人は3日後には王城に戻ってこられるのだそうだ。
だから、私はお2人と入れ違いに出発することになる。
それまではお姉様が暴走して、それと一緒に国王陛下やジーギス殿下が馬鹿なことをしないように目を光らせておかなくちゃいけないわ。
お姉様から解放されると思うと、残りの日にちなんて苦じゃないわ!
王太子殿下はお姉様のようなタイプは好きじゃないから信用できるし、もう少しの辛抱。
何とか乗り越えてみせるわ!
そんな風に自分に言い聞かせて過ごしていると、すぐに日は過ぎ、旅立ちの日になった。
旅立ちの日は、雲一つない快晴で心地よい風が吹いていて、お姉様や伯父様だけでなく、多くの使用人が見送りに来てくれた。
「ミレニア、本当にわたしのこと嫌ってない?」
目を真っ赤にしたお姉様が、泣きながら尋ねてきたので笑顔で答える。
「お姉様、今回の件に関しては感謝してますので、本当に気になさらないでください」
「あなたは田舎に行かされるのよ? しかも、ロード様なんて、どんな人かわからないじゃない?」
「悪い人だという話は聞いたことはありませんし、手紙の文面を見ていると、とても良い方のように思います。ですから、私のことは気になさらないでください。では、お姉様お元気で。ジーギス殿下とお幸せに!」
ロード様がジーギス殿下よりかは確実に良い人だと言える。
それに、お姉様から解放されると思うと本当に嬉しいわ。
「ミレニア! わたしのことっ、ひっく、忘れないでねえっ!」
馬車に乗り込む私に、お姉様が手を振りながら叫んだ。
忘れはせずに、たまに思い出すくらいにしますね。
お姉様は大泣きしていたけれど、私の心の中は今日の空のように晴れ晴れとしていた。
「ただいま戻りました」
「おかえり。おや、疲れ切った顔をしているな」
「……ええ、まあ」
「レニスも王城に行っているらしいが会わなかったか?」
「会いました。そのことで伯父様に御報告したいことがあります」
大きく息を吐くと、伯父様は眉根を寄せた。
お姉様のことが大好きな伯父様は話を聞いても、最初は信じてくれなかった。
ちなみにお姉様は伯父様のことをお父様と呼んでいるけれど、私は伯父様のままだ。
公の場ではお父様と呼ぶようにしているけれど、伯父様がお父様と呼んでほしいのは、お姉様だけだったから。
私も別に伯父様を無理にお父様と呼ぶ気にもならなかったから、それはそれで良かった。
伯父様に具体的に国王陛下とジーギス殿下がお姉様を取り合っていたという話をすると頭を抱える。
「お前はそんな嘘をつくような子じゃないしな」
「本当にあった出来事です。疑うようでしたら、王城まで事実を確認しに行っていただいたら良いかと思います」
「そうだな。そうしよう」
伯父様はそう言うと、慌てて部屋から出て行った。
さっきの話は、その時に思いついたことだったのかしら。
そうだとしたら、本当に困った人たちだわ。
伯父様もお姉様に甘すぎるのよね。
貴族の全てがこんな人たちではないけれど、お姉様のような女性がタイプ、もしくは嫌いではない人は呆れてしまうくらいに、お姉様馬鹿になっていく人が多い。
ここまでお姉様に引っかかる人が多いと、お姉様が賢ければ敵国に潜入させて、ハニートラップでもさせたら良いんじゃないかと思ってしまう。
だって、ここまで男性に好かれているのなら、簡単に相手から情報を引き出せそうに思えてしまうんだもの。
……なんて、自分が投げやりな気持ちになってしまっていることはわかっている。
それくらい、ありえないことが起こったのだ。
やってもいないことで婚約破棄を言い渡され、その上、会ったこともない年下の公爵閣下のところに嫁入りしないといけなくなったんだから、多少の現実逃避は許していただきたい。
ロード様がジーギス殿下よりもまともな人であることを祈るしかないわ。
父親である国王陛下があんな人なのだから、除籍されたロード様がどんな人なのか、まったく見当がつかない。
新しい婚約者になったロード様に送る手紙を書いている時にお姉様が伯父様と一緒に邸に帰ってきた。
その後、自分の部屋に真っ直ぐ帰ればいいものを、なぜか、お姉様は私の部屋へとやって来た。
この家のメイドはお姉様のことを好んでいない人が多い。
でも、お姉様は当主のお気に入りでもあり、書類上は当主の娘でもある。
だから、当たり前のことだけれど私情は挟まずに、お姉様の世話をしてくれている。
この家のメイドたちは伯父様たちとは違い、昔の私と同じように駄目なものは駄目だと、お姉様を叱ってくれるし、全面的な味方にはならない。
だから今回も私の部屋の前に立って、お姉様を私の部屋に入れないようにしてくれた。
「そこを退いてくれない? 今頃ミレニアは泣いていると思うの。姉なんだから慰めてあげないといけないのよ」
「ミレニア様は強いお方です。レニス様の助けはなくても立ち直ることができるかと思います」
お姉様にメイドがそう答えると、お姉様の泣き声が聞こえはじめた。
「うっ、うっ! そ、そんなっ……いじ、わる、しつゃ駄目よぉっ! そんなにっ、ミレニアが嫌いなのっ!? そんな風にっ、見捨てたりなんか、したら、……っ、そんなっ……のっ、可哀想じゃない!」
お姉様は私がショックで部屋に閉じこもっていると思い込んでいるみたいだった。
しかも、メイドが私に意地悪をして、お姉様が私を慰めることを拒んでいると考えているようだった。
どうせ、思い込んだら何を言っても人の話は聞かない人なのだから、相手はせずに放っておくことにする。
メイドには申し訳ないけれど、しばらくお姉様の相手をしてもらい、ロード様宛の手紙を書き進めていると、お姉様は泣き疲れたのか、自分の部屋に戻っていったようだった。
伯父様はお姉様を可愛がっているけれど、私のことを嫌っているわけではない。
だから、無理矢理、私にお姉様と会ってやれと言ってこないことは本当に助かっている。
この年になるまで、私を面倒見てくれた伯父様には感謝しているし、ここを経つ前に恩返しとして出来ることはやっていこうと思っている。
ロード様への手紙を書き終えると、先に電報を打った。
婚約についての話と、詳しい話は手紙を送ると連絡すると、すぐにロード様から電報で自分の家族の非礼に対する侘びの言葉が返ってきた。
そして2日後、早馬でロード様から手紙が届いた。
国王陛下の代わりに手紙を送ってくれた、私への感謝と謝罪の言葉と私が良いというのであれば、いつでも私を受け入れられると書かれていた。
気になったのは犬は好きかと書かれていたことだ。
嫌いや苦手でないことを祈る、とも書いてあったので、どういうことか、とても気になった。
実家では犬を飼っていたけれど、こちらの家に来てからは動物を飼っていない。
もしかしたら、ロード様の邸には犬がいるのかしら?
そう思うと、心が踊った。
なぜなら、動物全般が好きだけれど、特に犬が好きだからだ。
3日後に出発して2日でそちらに行かせていただけないかということと、犬も大好きだと電報を送ると『それなら良かった。使用人たちも心待ちにしている。迎えの馬車を送るようにするが、気を付けて来てくれ』と連絡があった。
伯父様に3日後に出発するという連絡をすると、国王陛下の側近のほうから近い内に書類が送られてくるので、それを書いてから出ていくようにと言われてしまった。
犬に触れられるかもしれないという嬉しさで、大事なことを忘れてしまっていた自分が嫌になった。
次の日には婚約の書類が送られてきたので、私は契約書をじっくり読んでから、その書類にサインをした。
書類を持ってきてくれた人に聞いたところ、王太子殿下と王妃陛下には、宰相やロード様が連絡を入れてくれたようで、お2人は3日後には王城に戻ってこられるのだそうだ。
だから、私はお2人と入れ違いに出発することになる。
それまではお姉様が暴走して、それと一緒に国王陛下やジーギス殿下が馬鹿なことをしないように目を光らせておかなくちゃいけないわ。
お姉様から解放されると思うと、残りの日にちなんて苦じゃないわ!
王太子殿下はお姉様のようなタイプは好きじゃないから信用できるし、もう少しの辛抱。
何とか乗り越えてみせるわ!
そんな風に自分に言い聞かせて過ごしていると、すぐに日は過ぎ、旅立ちの日になった。
旅立ちの日は、雲一つない快晴で心地よい風が吹いていて、お姉様や伯父様だけでなく、多くの使用人が見送りに来てくれた。
「ミレニア、本当にわたしのこと嫌ってない?」
目を真っ赤にしたお姉様が、泣きながら尋ねてきたので笑顔で答える。
「お姉様、今回の件に関しては感謝してますので、本当に気になさらないでください」
「あなたは田舎に行かされるのよ? しかも、ロード様なんて、どんな人かわからないじゃない?」
「悪い人だという話は聞いたことはありませんし、手紙の文面を見ていると、とても良い方のように思います。ですから、私のことは気になさらないでください。では、お姉様お元気で。ジーギス殿下とお幸せに!」
ロード様がジーギス殿下よりかは確実に良い人だと言える。
それに、お姉様から解放されると思うと本当に嬉しいわ。
「ミレニア! わたしのことっ、ひっく、忘れないでねえっ!」
馬車に乗り込む私に、お姉様が手を振りながら叫んだ。
忘れはせずに、たまに思い出すくらいにしますね。
お姉様は大泣きしていたけれど、私の心の中は今日の空のように晴れ晴れとしていた。
500
お気に入りに追加
1,813
あなたにおすすめの小説
【完結】偽物と呼ばれた公爵令嬢は正真正銘の本物でした~私は不要とのことなのでこの国から出ていきます~
Na20
恋愛
私は孤児院からノスタルク公爵家に引き取られ養子となったが家族と認められることはなかった。
婚約者である王太子殿下からも蔑ろにされておりただただ良いように使われるだけの毎日。
そんな日々でも唯一の希望があった。
「必ず迎えに行く!」
大好きだった友達との約束だけが私の心の支えだった。だけどそれも八年も前の約束。
私はこれからも変わらない日々を送っていくのだろうと諦め始めていた。
そんな時にやってきた留学生が大好きだった友達に似ていて…
※設定はゆるいです
※小説家になろう様にも掲載しています
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
虐待され続けた公爵令嬢は身代わり花嫁にされました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
カチュアは返事しなかった。
いや、返事することができなかった。
下手に返事すれば、歯や鼻の骨が折れるほどなぐられるのだ。
その表現も正しくはない。
返事をしなくて殴られる。
何をどうしようと、何もしなくても、殴る蹴るの暴行を受けるのだ。
マクリンナット公爵家の長女カチュアは、両親から激しい虐待を受けて育った。
とは言っても、母親は血のつながった実の母親ではない。
今の母親は後妻で、公爵ルイスを誑かし、カチュアの実母ミレーナを毒殺して、公爵夫人の座を手に入れていた。
そんな極悪非道なネーラが後妻に入って、カチュアが殺されずにすんでいるのは、ネーラの加虐心を満たすためだけだった。
食事を与えずに餓えで苛み、使用人以下の乞食のような服しか与えずに使用人と共に嘲笑い、躾という言い訳の元に死ぬ直前まで暴行を繰り返していた。
王宮などに連れて行かなければいけない場合だけ、治癒魔法で体裁を整え、屋敷に戻ればまた死の直前まで暴行を加えていた。
無限地獄のような生活が、ネーラが後妻に入ってから続いていた。
何度か自殺を図ったが、死ぬことも許されなかった。
そんな虐待を、実の父親であるマクリンナット公爵ルイスは、酒を飲みながらニタニタと笑いながら見ていた。
だがそんあ生き地獄も終わるときがやってきた。
マクリンナット公爵家どころか、リングストン王国全体を圧迫する獣人の強国ウィントン大公国が、リングストン王国一の美女マクリンナット公爵令嬢アメリアを嫁によこせと言ってきたのだ。
だが極悪非道なネーラが、そのような条件を受け入れるはずがなかった。
カチュアとは真逆に、舐めるように可愛がり、好き勝手我儘放題に育てた、ネーラそっくりの極悪非道に育った実の娘、アメリアを手放すはずがなかったのだ。
ネーラはカチュアを身代わりに送り込むことにした。
絶対にカチュアであることを明かせないように、いや、何のしゃべれないように、舌を切り取ってしまったのだ。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……
藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」
大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが……
ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。
「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」
エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。
エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話)
全44話で完結になります。
え?私、悪役令嬢だったんですか?まったく知りませんでした。
ゆずこしょう
恋愛
貴族院を歩いていると最近、遠くからひそひそ話す声が聞こえる。
ーーー「あの方が、まさか教科書を隠すなんて...」
ーーー「あの方が、ドロシー様のドレスを切り裂いたそうよ。」
ーーー「あの方が、足を引っかけたんですって。」
聞こえてくる声は今日もあの方のお話。
「あの方は今日も暇なのねぇ」そう思いながら今日も勉学、執務をこなすパトリシア・ジェード(16)
自分が噂のネタになっているなんてことは全く気付かず今日もいつも通りの生活をおくる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる