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一家の恥と言われていた令嬢は嫁ぎ先で本領発揮する
タイミング(ルーラスside)
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初めてリルを見た時は、病気なんじゃないかと思うくらいにやせ細っていた。
だから第一印象は病弱そうだった。
一緒に過ごすようになって、顔色も良くなったし、骨と皮に近かったリルの体型はまだ痩せすぎではあるものの、見ていて心配になるほどではなくなった。
色々と問題も解決し、夜に子供にならなくなったが、未だキス止まりの上に、なぜか向こうからしてくる。
こっちとしてはリルの侍女や専属メイドから話を聞いて、ムードが必要だと散々言われてきた。
だけど、今かと思えばするりとかわされる。
しかも、本人に悪気がまったくないから責めることもできない。
ただ、このままリルに押されたままでは、何か違う。
「男性だから何かしないといけないというのは違うんじゃないかしら。リルーリアがそんな気持ちになっていないと駄目よ。あなたがしたい時とリルーリアがしたい時が同じとは限らないんだから」
母上からは何も言っていないのに、そんなことを言われてしまった。
リルがよく読んでいる恋愛小説では、見つめ合って自然に……というパターンが多い気がする。
だから、俺もリルがドキドキするようなシチュエーションを作れば良いのだと思ったわけだが……。
「ルーラス様、最近、私の読んでいる恋愛小説をよくお読みになっているのですが、そういうお話がお好きなのですか?」
寝室のベッドの上で、上半身だけ起こしたリルが無邪気な笑顔を見せて聞いてきた。
「妻の好みを知るのは必要なことだろ?」
「では、私もルーラス様のお好きな本を読もうと思います!」
「いや、別に俺のことは気にしなくても」
「駄目です! 今は何を読んでおられるのですか?」
「領地管理の本」
「領地……管理」
目をキラキラさせていたリルだったけど、目の光が失われていくのがわかった。
こういうわかりやすいところは、いつか公爵位を授かる人間の妻としては良くないのかもしれないが、俺にしてみれば可愛らしく思えるところでもある。
リルは俺が苦笑したことに気が付いて、右手を挙げて叫ぶ。
「読みます!」
「気持ちは嬉しいけど、違う意味で俺に興味を持ってほしいんだが」
一応、俺だって年頃の男だし、リルに触れたくないわけがない。
俺は彼女のことを異性として好きだけど、リルは妻としての義務を果たすくらいにしか思ってないことはわかっている。
ただ、少しくらい意識してくれてもいいんじゃないか?
「違う意味ですか?」
リルは小首を傾げたあと、ぱあっと明るい笑顔を見せる。
あ、この笑顔は勘違いしてるな。
「キスのリベンジですね!」
「いや、まあそれもあるけど」
「お任せください!」
「なんでそうなるんだよ!? どうしてリルからしようとするんだ!?」
「妻の役目かと思いまして!」
「じゃあ、夫として言うから聞いてくれ」
少し強い口調で言ったからか、リルが困ったような顔をする。
俺が怒ったと思っているのかもしれない。
そんな顔をさせたいわけじゃないから焦る。
「悪い。強く言い過ぎた」
「気になさらないでください。私のキスが下手くそなのですよね?」
「違う! そうじゃなくて」
「ルーラス様!」
リルがぎゅうっと俺の体にしがみついてきた。
ふわりとリルの髪から甘い花の香りがして、一瞬、理性が飛びそうになった。
「リ、リル」
「怒っていらっしゃるのですよね? 謝りますので仲直りしてもらえませんか?」
抱きついたまま上目遣いで見られると、心臓が破裂するんじゃないかと思うくらいに痛くなった。
「怒ってなんかない。ただ、俺から」
「今日の晩、ニンニクを食べすぎてしまいました。ホクホクしておりましてつい……」
「あ、いや。俺も食べたから、それはいいんだが」
「そんな口でキスをするのは良くありません! ですので、明日の晩でよろしいでしょうか?」
きっと料理人たちは俺を応援するためにニンニク料理を出してくれたんだと思う。
でも、リルも食べているし、リルは口臭などをすごく気にする。
臭いが気になるのは明日くらいからのような気がするし、別に今日は気にしなくていいんじゃないか?
「駄目だ、リル!」
「駄目ですよね! では、今日は離れますね」
「いや、そっちの駄目じゃなくてだな!」
リルは良い意味でも悪い意味でもマイペースだ。
過去に辛いことがありすぎて、鈍感になってしまっている。
自衛本能だと思うし、繊細な性格なら早くに潰れてしまってるんだろう。
だから、わからないことはないんだが……。
「おやすみなさい、ルーラスさま」
ふわあと手で口を隠しながらあくびをすると、リルは横になってしまう。
「いや、リル」
話しかけたけれど遅かった。
彼女は幸せそうな笑みを浮かべて眠りについてしまった。
「……」
寝顔があまりにも可愛いから、このままキスしようか。
そう思ったけれど、違うような気がした。
それに起こしてしまったら良くない。
いつになったら俺は彼女にキスできるのか。
それから、いつになったら初夜を迎えられるのか。
毎日チャンスがあるはずなのに手が出せない。
タイミングっていつなんだ!?
だから第一印象は病弱そうだった。
一緒に過ごすようになって、顔色も良くなったし、骨と皮に近かったリルの体型はまだ痩せすぎではあるものの、見ていて心配になるほどではなくなった。
色々と問題も解決し、夜に子供にならなくなったが、未だキス止まりの上に、なぜか向こうからしてくる。
こっちとしてはリルの侍女や専属メイドから話を聞いて、ムードが必要だと散々言われてきた。
だけど、今かと思えばするりとかわされる。
しかも、本人に悪気がまったくないから責めることもできない。
ただ、このままリルに押されたままでは、何か違う。
「男性だから何かしないといけないというのは違うんじゃないかしら。リルーリアがそんな気持ちになっていないと駄目よ。あなたがしたい時とリルーリアがしたい時が同じとは限らないんだから」
母上からは何も言っていないのに、そんなことを言われてしまった。
リルがよく読んでいる恋愛小説では、見つめ合って自然に……というパターンが多い気がする。
だから、俺もリルがドキドキするようなシチュエーションを作れば良いのだと思ったわけだが……。
「ルーラス様、最近、私の読んでいる恋愛小説をよくお読みになっているのですが、そういうお話がお好きなのですか?」
寝室のベッドの上で、上半身だけ起こしたリルが無邪気な笑顔を見せて聞いてきた。
「妻の好みを知るのは必要なことだろ?」
「では、私もルーラス様のお好きな本を読もうと思います!」
「いや、別に俺のことは気にしなくても」
「駄目です! 今は何を読んでおられるのですか?」
「領地管理の本」
「領地……管理」
目をキラキラさせていたリルだったけど、目の光が失われていくのがわかった。
こういうわかりやすいところは、いつか公爵位を授かる人間の妻としては良くないのかもしれないが、俺にしてみれば可愛らしく思えるところでもある。
リルは俺が苦笑したことに気が付いて、右手を挙げて叫ぶ。
「読みます!」
「気持ちは嬉しいけど、違う意味で俺に興味を持ってほしいんだが」
一応、俺だって年頃の男だし、リルに触れたくないわけがない。
俺は彼女のことを異性として好きだけど、リルは妻としての義務を果たすくらいにしか思ってないことはわかっている。
ただ、少しくらい意識してくれてもいいんじゃないか?
「違う意味ですか?」
リルは小首を傾げたあと、ぱあっと明るい笑顔を見せる。
あ、この笑顔は勘違いしてるな。
「キスのリベンジですね!」
「いや、まあそれもあるけど」
「お任せください!」
「なんでそうなるんだよ!? どうしてリルからしようとするんだ!?」
「妻の役目かと思いまして!」
「じゃあ、夫として言うから聞いてくれ」
少し強い口調で言ったからか、リルが困ったような顔をする。
俺が怒ったと思っているのかもしれない。
そんな顔をさせたいわけじゃないから焦る。
「悪い。強く言い過ぎた」
「気になさらないでください。私のキスが下手くそなのですよね?」
「違う! そうじゃなくて」
「ルーラス様!」
リルがぎゅうっと俺の体にしがみついてきた。
ふわりとリルの髪から甘い花の香りがして、一瞬、理性が飛びそうになった。
「リ、リル」
「怒っていらっしゃるのですよね? 謝りますので仲直りしてもらえませんか?」
抱きついたまま上目遣いで見られると、心臓が破裂するんじゃないかと思うくらいに痛くなった。
「怒ってなんかない。ただ、俺から」
「今日の晩、ニンニクを食べすぎてしまいました。ホクホクしておりましてつい……」
「あ、いや。俺も食べたから、それはいいんだが」
「そんな口でキスをするのは良くありません! ですので、明日の晩でよろしいでしょうか?」
きっと料理人たちは俺を応援するためにニンニク料理を出してくれたんだと思う。
でも、リルも食べているし、リルは口臭などをすごく気にする。
臭いが気になるのは明日くらいからのような気がするし、別に今日は気にしなくていいんじゃないか?
「駄目だ、リル!」
「駄目ですよね! では、今日は離れますね」
「いや、そっちの駄目じゃなくてだな!」
リルは良い意味でも悪い意味でもマイペースだ。
過去に辛いことがありすぎて、鈍感になってしまっている。
自衛本能だと思うし、繊細な性格なら早くに潰れてしまってるんだろう。
だから、わからないことはないんだが……。
「おやすみなさい、ルーラスさま」
ふわあと手で口を隠しながらあくびをすると、リルは横になってしまう。
「いや、リル」
話しかけたけれど遅かった。
彼女は幸せそうな笑みを浮かべて眠りについてしまった。
「……」
寝顔があまりにも可愛いから、このままキスしようか。
そう思ったけれど、違うような気がした。
それに起こしてしまったら良くない。
いつになったら俺は彼女にキスできるのか。
それから、いつになったら初夜を迎えられるのか。
毎日チャンスがあるはずなのに手が出せない。
タイミングっていつなんだ!?
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